鎌田實の一日一冊(250)
「平和をとわに心に刻む三〇五人詩集 十五年戦争終結から戦後七十年」(コールサック社)
なんとも重い詩集。
二度と戦争をしてはいけないことがよくわかる。
新川和江の詩「この足のうら」で始まる。
さては悪性黒色腫(メラノーマ)?癌センターに駆け込み 検診を受け杞憂とわかったが恥ずべきである この狼狽ぶりはたかがひと粒の血豆のごときに野原を走って行く少年のすこやかな脚が 今地雷を踏んで片っぽ 吹っ飛んだかも知れないのだ少年にこの先与えられていた数千数万キロの光る道をどうやったら償ってあげられる?砂糖黍を ライ麦をすくすく育てる土のぬくとさとを吹っ飛んだ足のうらにどうやったら伝えてあげられる?奪ったのは わたしかも知れないのだいいえわたしだ自分ひとりを支えるのに汲汲としている情けない 腑甲斐ないこの足のうらよ(一部抜粋)
学徒出陣壮行会の詩などは、胸が痛む。
2万5000人の女子学生が戦争に行く学生たちを祝福する。
若者たちは、国、家族、恋人のために、不条理な状況のなかで戦争に行かされる。
まるで魔術をかけられたように。
そして、国家のためにと若者たちは散っていった。
二度と戦争を起こしてはいけないというのが、この詩集を読むとわかる。
安保法案で重箱の隅をつつきあっている政治家。
特に安倍首相には静かな気持ちで、この詩集を読んでもらいたい。
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