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2015年10月

2015年10月31日 (土)

資本主義の暴走

貪欲な資本主義は、利益を出すためにどんなことでもする。
フォルクスワーゲンが違法ソフトで排ガス規制をごまかし、嘘のデータで世界一の販売台数を達成した。
ユーザーをだまし、空気を汚した。
とんでもないことだ。
東洋ゴムが免震の嘘データで糾弾されたが、鉄道車両の防振ゴムも嘘データを使っていたことが発覚。
東洋ゴムは2007年にも断熱パネルの性能データを偽造している。
三井不動産が売った、傾きマンションも問題だ。
基礎工事を行った旭化成建材はデータを改ざんし、杭が硬い地盤に届いていなかった。

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資本主義を選ぶしかないのはわかっているが、資本主義は万全ではない。
経済の自由主義があまりにも行きすぎると、企業はもうけるためにとんでもないことをする。
東芝もそうだ。
大企業というモンスターが暴走したりしないように、透明性を高めさせるルールを徹底させる必要があるように思う。

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2015年10月30日 (金)

本日ハロウィンの点灯式

諏訪中央病院のグリーンボランティアがハロウィンの準備。
いま約50人の人たちが毎週、集まって活動している。

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グリーンボランティアは自主的な活動が盛んで、バザーをして利益を出し、
ハロウィンのときには、かぼちゃのスープを小児病棟や産婦人科病棟、緩和ケア病棟に配ったりしてくれる。
30日夕方はハロウィンの点灯式が行われる。

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2015年10月29日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(241)

「光のノスタルジア」「真珠のボタン」
岩波ホールで上映されている2本。
138億年前、ビッグバンが起き、宇宙の誕生。
46億年前、地球ができ、38億年前に奇跡のように生命が生まれる。
人間がアフリカのサバンナに生まれたのは、700万年前。
人間と大地、星々の光、そして溶け合うように水が介在し、水の物語が始まる。
水には記憶がある。水には音楽がある。
不思議な作品だ。
監督は、ドキュメンタリーのパトリシオ・グスマン監督。

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20世紀後半、独裁政権となったチリでは、たくさんのインディオが殺されていく。
想像を絶する美しい光景と、そこに生きる人間の残虐さ。
こんな映画があるのだろうかと思うような新しい映画。
詩と音楽が混在し、人間と地球と宇宙を描いていく。
すばらしい映画だ。

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2015年10月28日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(240)

「NORIN TEN 稲塚権次郎物語」
コシヒカリの元を作った育種家・稲塚権次郎の物語。
小麦の改良に取り組み、農林10という品種をつくった。
条件が悪いところでも育つ強い小麦で、世界の小麦の80%の元になっている。
生きていれば、ノーベル賞をもらえた人物。

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稲塚権次郎の生き方をみると、人間にとって、夢中になることがどれほど大切かわかる。
夢の中でクレージーに生きた人生は、なんとも幸せそうだ。
世界の小麦を育てた日本人。
世界を救った小麦の種が誕生して80年。
ぼく自身も「夢中」に生きてみたいと思っている。

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2015年10月27日 (火)

Spinaches Are Crying

音作家のかつふじたまこさんが、鎌田實の絵本「ほうれんそうはないています」に感動し、動画を作成してくれました。

英語訳つき、音響つきです。

この絵本は、世界中の人に読んで頂きたいです。

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鎌田實の一日一冊(254)

「服従」(ミシェル・ウエルベック著、河出書房新社)
世界でベストセラーになっている。
2022年フランスにイスラム政権が誕生する、というとんでもない小説なのだ。
大統領選で、極右の国民戦線が穏健イスラム政党と決戦投票になる。
そのとき、中道のUNPや左派の社会党などが穏健イスラム政党を支持し、イスラム教徒が大統領になる。
ヨーロッパの近代知性がよくわかるようになっている。
同時に主人公の40代のデカダン作家ユイスマンスの研究者の教授の人生観や知性が語られ、
根源的に人間を問うていく。

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キーワードは「服従」。
イスラム教がもっている神への服従。
いくつもの「服従」により、服従することの生きやすさが語られていく。
北アフリカや北欧まで徐々にイスラムの色が濃くなっていくなか、
フランス語を話すイスラム圏が大きくなることによって、フランスも強くなっていくという想定外の物語。
とにかく面白い。
一日で読み切った。

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2015年10月26日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(239)

唐組56回公演「鯨リチャード」
暴君といわれるシェイクスピアの「リチャード三世」。
そのリチャード三世が新宿駅西口しょんべん横丁の鯨かつ屋になっていた。
プロザックという抗うつ薬が出てきたり、馬が出てきたり、なんだかわからない唐十郎得意の
妄想や幻想の渦に巻き込まれ、鯨油の臭いにまみれた青春の野望が沸き立つ唐十郎六十代の作品。

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ぼくは紅テントが大好き。
芝居は脚本だけでなく、演じる役者に負うところが大きい。
唐十郎がワンシーンでも登場すると、舞台の空気が変わる。
その点で言うと、異様な雰囲気をもった役者が少なくなった。
かつての四谷シモンや麿赤児、李麗仙、大久保鷹といった、舞台に立つだけで空気を変える力をもった役者。
女優の土屋真衣がいい味をだしはじめている。
が、久保井研が演出だけでなくもっと大役を演じたり、
とんがった空気をもっている藤井由紀や赤松由美をもっとおもしろく使ったほうがいい。
南智章はどのくらいのセリフがしゃべれるのかわからないが、異様な空気があり、
今後に期待したい。
辻孝彦なんかももっと起用したほうがいい。
唐組の革命を期待している。

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2015年10月25日 (日)

鎌田實の一日一冊(253)

「弱いつながり 検索ワードを探す旅」(東浩紀著、幻冬舎)
ネットは階級を固定する道具。
所属も固定され、その人間関係をより深め、逃げ出せなくするメディアだという。
その関係を断ち切るためには、どうしたらいいか。
1、無責任でもいい。
2、偶然を大事にする。
3、失敗してもいい。
4、ネットは緩く接続しておく
5、ときどきネットを無視する。そのためには旅にでるのがいちばんいい。
6、レスポンスに捕らわれるな。
著書は、友人に捕らわれるな、必要以上に人間関係を大切にするなと言っている。

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チェルノブイリのダークツーリズムにならい、福島のダークツーリズムを提唱している著者は、
毎日新聞で開沼博さんとガチンコの往復書簡をしている。
これが、実におもしろい。
東さんは、移動すること、観光することにこだわっている。
福島県人が福島のダークツーリズムを言いだすならわかりやすいのだが、
福島の人の立場にたってみると、そうでない人にダークだと言われるのはつらいだろうなと思う。
哲学者としておもしろいなと思うのは、
「旅先で新しい情報に出会う必要はありません、出会うべきは新しい欲望なのです」という言葉。
情報はいくらでも複製できるが、時間や欲望は複製できない。
複製不可能なものは旅しかないと語っている。
「強いつながり」のネットという視点もおもしろい。
強いつながりに縛られすぎないことが大切だ。

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2015年10月24日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(238)

「裁かれるは善人のみ」
ゴールデングローブ賞受賞、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞など、数々の映画賞を受賞した。
人間とは何かが、壮大な映像美のなかで問い続けられる。
たくさんの悪意のなかで壊れていく人間。
一人一人の人間が個性的である。
悪や闇、陰謀が渦巻く。
神はなかなか出てこない。
映画を観終わっても、本当は何が起きたのかわからない。
主人公の自動車修理工が妻を殺していないことだけは確か。
しかし、主人公は15年の刑に処せられる。

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人間の弱さ、強さ、偏屈さ、愛、憎しみ、孤独。
修理工の若い妻はどうしたら死なないですんだのだろう。
この土地の呪縛から逃れ、自由になることが大事だったのではないか。
人間にとって自由は大事だ。
すばらしい映画である。

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2015年10月23日 (金)

ぜひ、子守歌を聴きに来て

クミコさんが歌う「うまれてきてくれてありがとう」がヒットしています。
作詞はJIM-NETを応援してくれている湯川れい子、作曲は喉頭がんで声を失ったつんく。
この時代に合った子守歌です。
11月6日の「INORIチャリティコンサート&トークライブ」では、その子守歌をはじめとするクミコさんの「広い河の岸辺」「INORI~祈り~」「先生のオルガン」を堪能できます。
豊島公会堂、18時15分開場。

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鎌田のミニ講演もあります。
また、今年のチョコ募金をいち早くお分けすることができます。
毎年、多くの人が楽しみにしてくれているチョコ缶。
今年は、白血病のローリンちゃんがかいた「火炎樹」の絵をプリントし、食べた後も捨てられない美しい缶に仕上がりました。
ローリンちゃんは一時、腸炎で生死をさまよいましたが、「絶対にシリアに元気で帰る」と懸命に生きています。
入場料2000をいただきますが、すべて子どもたちのために使います。
チケットはあと150枚。
ぜひ、ぜひ、応援をお願いいたします!!
詳しくはこちら↓

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心配な森林火災

今年4月からチェルノブイリ原発の30キロゾーン内で、大規模森林火災が繰り返されている。
放射線のモニタリングポストの数値は「多くは上がっていない」とウクライナ政府は発表しているが、
信用していいかわからない。
セシウムが基準値の10倍に達した地域もあるという。
4年ほど前にも、ロシアとベラルーシの国境で森林火災が起きた。
このときもロシア側からは大気中の放射性物質について、きちんとした発表はなかった。

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チェルノブイリ原発の30キロ圏内には、1991年から4回ほど入った。
許可を取って、施設内にも入ったこともあった。
そのとき原発を管理するシステムの説明を受けたが、最も多く人員を割いていたのが消防隊員であった。
汚染された森林が燃えると、放射性核種が空に舞い上がり、新しい汚染を引き起こすからだ。
山林の汚染については、福島第一原発も同様の問題を抱えている。
森林火災については24時間制で、多くの人員を配備していたにもかかわらず、火災が起きている。
ウクライナ政府はもともと管理する能力が低いところへ、ウクライナ東部の問題に頭を悩ませ、汚染の森の管理がおろそかになった可能性がある。
心配である。

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2015年10月22日 (木)

泥沼化するシリア

過激派組織ISが、化学兵器のマスタードガスをまいた可能性があるという。
フセイン政権では、化学兵器が開発されており、かつてクルド自治区で使われたことがある。
スンニ派のフセインの関係者が行き場がなくなり、ISに流れた可能性があるといれていた。
この一年、全体をみれば、圧倒的にペシュメルガが勝っているわけでないが、
ISはじりじりと陣地を小さくしている。
その焦りが化学兵器の使用につなかったことも考えられる。
シリア内戦でも化学兵器が使われたといわれている。
アサド側が使ったという情報と、反政府側が使ったという情報があり、錯綜している。

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注意すべきは、ロシアがシリアを空爆すると同時に、
イランがアサド政権を応援する精鋭部隊をシリアに送ったこと。
イランは弾道ミサイルの実験にも成功したと伝えられる。
このアサド政権よりのロシア・イランと、アメリカを中心にした連合軍が、シリアの戦いをますます泥沼化させているように見える。
とにかく一度、戦争状態をとめるべきである。
そうしないかぎり、シリアの難民を救うことはできない。
人口2200万人のシリア人のうち、国内避難民になったのは760万、国外へと難民となって逃れたのは410万人。
とんでもない状況になっている。
まず、シリアの内戦状態を止めること。
アメリカやロシア、イラン、トルコは手出ししないことが大事だ。

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2015年10月21日 (水)

11月11日介護の日セミナー

世界に先駆ける超高齢社会の日本。
「死ぬまで楽しく生きる方法」を、介護を受ける側、する側それぞれの視点から考えてみませんか。
2015年「介護の日」セミナー
「死ぬまで楽しく生きる方法」
日時 2015年11月11日(水)
会場 有楽町朝日ホール
   東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11階
参加費 1口500円(複数口歓迎)
    東日本大震災被災地の介護支援を目的として、寄付を募ります。
主催 がんばらない介護生活を考える会

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プログラム
午前の部 11:00~12:00(開場10:30)
「排泄なんでも相談セミナー」
午後の部 13:30~16:00(開場12:30)
・鎌田實トークショー
・「生涯現役を貫くために~ゆるやかな社会参加をめざして」(江崎禎英氏)
・「とにかく働くことが大事」(上田研二氏)
・トークセッション「死ぬまで楽しく生きるには ~地域で命を支えるということ」
(鎌田實/勝部麗子氏/西村かおる氏/別府明子氏/よし田美知子氏)
申し込みはが必要です。
WEB申し込みフォームにてお申込みください。
問い合わせ
「がんばらない介護生活を考える会」事務局
電話03-3541-6262(平日10~17時)

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2015年10月20日 (火)

電力自由化

2016年4月から電力自由化が始まる。
あと半年だ。
送電線の利用料金をできるだけ安くし、競争によって電力が安くなるといい。
消費者が電力会社を選べるようになり、「原発による電力」は選ばないという人が出てくるはず。

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そうした新しい哲学をもった電力消費者が出てくるのはいいことだ。
どの地域でもそういう選択ができるような電力自由化を期待している。

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2015年10月19日 (月)

またもクラスター弾

ロシアがシリアを空爆しはじめた。
ISだけでなく、アサド政権への反政府軍に対しても攻撃をしている。
ロシアは自国の海軍基地などに理解を示すアサド政権が崩壊するのを面白く思っていない。
そのためにアサドに敵対するISだけだなく反政府軍を攻撃している。
問題なのはクラスター爆弾を使用していることだ。
クラスター爆弾は、空中で爆発し、数千個の小爆弾を雨あられと降らす。
同時に大量の不発弾が発生し、戦争が終わった後も、子どもたちを殺したり、手足を吹き飛ばしたりする。
人道的にも許されない爆弾と言われている。
JIM-NETは、すべての国がクラスター爆弾を使用しないように国連などでロビイ活動を行ってきた。
日本は、クラスター爆弾の禁止条約に2009年、署名しているが、
ロシアや米国、中国などはこの条約に署名していない。
クラスター爆弾の全面的(保有、製造、輸出、使用)禁止を、すべての国が守るべきである。

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2015年10月18日 (日)

鎌田實の一日一冊(252)

「嫌老社会を超えて」(五木寛之著、中央公論新社)
百歳を過ぎたら選挙権は返上する。
資産をもつ老人は年金を返上する。
若者には16歳から選挙権を与えて、政治は若者に任せる。
「嫌老社会」を超えて、自立した老人による「賢老社会」をつくろうと五木さんは言う。

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高齢者自身が高齢者産業にかかわり、画期的な老眼鏡や入れ歯などを作ったり、
日本を老人カルチャーのメッカにしようなどとユニークな提案をする。
「心肺停止」ではなく、「心配停止」社会をつくろうともいっている。
現代は、「搾取する老人」と「搾り取られる若者」の対立であるとし、
老人駆除ではない何か新しいスタイルを考えようとしている。
個人的にはタイトルがいまいち好きになれないが、
とてもおもしろい内容だった。

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2015年10月17日 (土)

花の庭で

帯広へ講演に行った。
午前9時半。
午後1時からの講演まで時間があったので、ガーデンを見せてもらった。
80代のおばあちゃんがやっている有名なところだ。

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美しい白樺に囲まれ、丹精こめらて育てられた花々が咲いていた。
庭のテーブルでコーヒーを飲むと、何だか別世界にいるようだ。
その後、市内の料理屋さんで豚とろ丼を食べた。

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講演が終わると東京へとんぼ返り。
わずかな時間だが、いい風景に包まれて、おいしいものを食べるとエネルギーをわいてくる。

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2015年10月16日 (金)

希望の足プロジェクト②

JIM-NETでは、主にシリア内戦で手や足を失った難民を対象に、義手や義足の提供を行っている。
以下は、ヨルダンの支援責任者、福田さんからのレポート。
多くの難民たちの自立と自由を支援する「希望の足プロジェクト」にぜひ、ご協力をお願いします。

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アイマンさん(35歳)
2015 年3 月、カラムーン山地と呼ばれる地域で、戦車から発砲された砲弾が彼のすぐ近くに着弾、破片が左脚に突き刺さり、
そのままヨルダンの病院に搬送され、左脚くるぶしから下を切断しました。
以前は建設業に携わっていましたが、内戦が激化した3 年ほど前からずっと仕事がない状態が続いていたとの事。
義足ができるまでは松葉杖での生活だったので、
「これから松葉杖を使わずに歩くのがとても楽しみだ」と言います。
モハンマドさん(40歳)
2013 年1 月、戦闘に巻き込まれ負傷した人々を搬送する途中、その車両を砲弾が襲いました。
一緒に乗っていた2 人はその場で亡くなったとの事です。

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その後ヨルダンに搬送され、ヨルダンの病院で足を切断。
約半年後に義足を作成しましたが、大腿部を包むシリコン素材のソケット部分が傷んできたため、部品交換を行いました。
「この義足を自分の本物の足のように思っています。この足で、遠くまで歩いていく事もできるのです」とのこと。
この日も炎天下の中、自宅から義肢製作所まで汗をかきながら歩いてやってきました。
自分の足で歩く事ができる喜びを、日々の生活の中で感じています。
アフマドさん(25歳)
東グータ出身。ベドウイン(遊牧民)として生活する彼は、戦闘を避け、家族と家畜とともにア
ル・ドゥメイル地区へと避難していましたが、避難先で負傷しました。

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野に出て羊の世話をしていた2015 年4 月、彼のすぐ近くに戦車からの砲撃が落ち、彼の右腕と右
足を奪っていきました。
「また歩く事ができるようになるのは素晴らしい事だ。
松葉杖を使わずに歩くのは大きな変化だろう」と言うアフマドさん。
以前、野で家畜の世話をする時にはやかんやグラスなどの“お茶セット”を持ち歩き、火を焚いてお茶を飲みながら羊が草を食むのを眺めていたとのこと。
その「甘い紅茶が恋しい」とのこと。
またそのような平和な日々が戻ってくる事を願います。

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2015年10月15日 (木)

希望の足プロジェクト①

JIM-NETでは、主にシリア内戦で手や足を失った難民を対象に、義手や義足の提供を行っている。
義手や義足をつくり、機能回復訓練を行ってきた。
義手、義足は難民となり負傷した人たちの自立と自由のために大切なものだ。
しかし、それらにはお金がかかる。
たとえば、ひざ下の精巧な義足は一足6万8000円から8万5000円。
それもほとんどが材料費で、製作はシリア人技師義肢装具士がボランティアで担っている。
以下は、ヨルダンの支援責任者、福田さんからのレポートだ。
多くの子どもを含む難民たちを支援する「希望の足プロジェクト」にぜひ、ご協力をお願いします。

<義肢支援レポート>

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モハンマド君(8歳)
シリア南部・ダラア出身。たる爆弾が爆発し、破片が突き刺さり右足膝下を切断しました。
モハンマド君は足を失った時、たる爆弾の破片で胸部も負傷しました。
もうあと少し傷が深かったら命を失っていたかもしれないとのことです。
2014 年6 月に作成した義足が使い込んで傷んできたため、また成長期にあり義足のサイズが合わなくなってきていたため、今回、JIM-NET の支援で作り直しを行いました。
義肢装具士によれば「2014 年に初めて義肢製作所に来た時は、足を失ったショックで話すこともできなかった」というモハンマド君ですが、
今では自慢げに、義足で力一杯走る姿を見せてくれます。
義足がなければ、学校に行く事もできませんでしたが、今では自分で歩いて学校に行く事ができ、学校ではたくさんの友人と楽しく学び、元気に遊ぶ毎日です。
アブデルラザックさん(47歳)
シリア南部・ダラア出身。
2013 年5 月24 日に負傷し、一週間後にヨルダンに搬送されました。
数人の友人と家にいた時、その家を戦車からの砲弾が襲い、一緒にいた1 人は亡くなり彼ともう1 人が負傷。
彼は足とともに腕、腹部も負傷しました。
もともと左利きですが、左手も負傷し自由がきかないため、Mobility Solutions での理学療法も今後行っていく予定です。

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今は、日常動作の中で右手を使うよう日々練習しているとの事です。
シリアでは2012 年頃まで、建設の仕事に携わっていました。
彼自身の家も空爆で全壊したとのこと。
4 人の子どもと奥さんとともに、支援に頼らざるをえない生活をしています。
初めて義足を装着した時は、動作が少し難しくまた義足を重いと感じたとの事ですが、今は義足で自信をもって歩く事ができるとの事です。

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2015年10月14日 (水)

少年の夢

イラクのアルビルの難民キャンプにいた14歳のマージッド君が骨肉腫で亡くなった。
骨肉腫で左腕を切断した直後、ISが彼の住む地域を攻撃。
傷が癒えないうちに、難民キャンプに逃げてきた。

1dsc03642_3 アルビルの難民キャンプで、マージッド君と

1月、2月、6月と難民キャンプに行ったが、
6月にマジット君の父親が病院で撮影した胸のレントゲンを見せてくれた。
両肺に転移がみられた。
非常に厳しい状況だった。
少年は、サッカーが大好きだった。
難民キャンプで、ぼくやJIM-NETのスタッフとボールを蹴り合ったりした。
彼はなかなかの技量をもっていた。
その1か月後、スタッフが日本の有名なサッカー選手のサインやユニフォームを届けに行った。
JIM-NETの働きかけで、人気ナンバーワンのイラク代表選手のマフムード選手が、ぼくたちが支援しているナナカリ病院に来てくれ、マージッド君を励ましたりした。
50℃近くなる真夏のイラクを少しでも過ごしやすくするために、
テントでも使える冷房器具を送ったりした。
しかし、マージッド君を助けることはできなかった。
その後、彼の祖父がカラシニコフ銃で命を絶った。
「ぼくはすべてを失った。家もふるさとも学校も失った。そして、病気で腕も失った」
少年の悲しそうな声を忘れることはできない。
サッカーをすること。
少年の夢はもう叶わない。

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2015年10月13日 (火)

ノーベル平和賞

ノーベル平和賞がチュニジアの民主対話カルテットに与えられた。
が、チュニジアの市民は冷めた反応という。
失業率は40%。
3月、6月とテロがあり、つい最近も国会議員の暗殺未遂事件が起こっている。
アラブの春が次々に失敗し、ひとつでも成功してほしいという願望が込められた受賞なのだろう。

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ノーベル平和賞は、ときどき疑問符のつく受賞がある。
2009年のオバマ大統領は、プラハの演説で核軍縮を訴えただけだった。
その後、彼は何もしていない。
1974年の佐藤栄作もそうだ。
彼の保守的な行動で、国民やマスコミから批判がでたとき、「核兵器をもたず、つくらず、もちこませず」という非核三原則を打ちだした。
にもかからわず、核を配備した米軍艦船が寄港、通行するのを見て見ぬふりをした。
シュバイツァーやキング牧師、マザー・テレサももらっているが、
あまり平和に貢献しない人にも、ときどき間違って与えられてしまう賞のようだ。
本当にふさわしい人に与えられる賞であってほしい。

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2015年10月12日 (月)

カキ、秋刀魚

この前はとんぼ返りだった北海道。
今度は、札幌と苫小牧で講演のため、一泊。
おいしいものをたくさん食べた。
麺や粉もの大好きのカマタだが、いつもB級グルメばかりではない。

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札幌のお寿司屋さんでは、厚岸のカキ、秋刀魚を食べた。
秋刀魚は不漁だと聞くが、今年初めての秋の味に舌鼓。

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2015年10月11日 (日)

鎌田實の一日一冊(251)

「Yの木」(辻原登著、文藝春秋)
芥川賞や谷崎潤一郎賞、司馬遼太郎賞など、文学賞を総なめにしている作家。
文学というものがどういうものか、この本を読むとよくわかる。
二人の主人公は自殺するが、自殺を除けば、二人とも文学的生き方ができてない。
そのために文学に恋をし、文学に打ちのめされていく。

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谷崎潤一郎や太宰治は、やはり文学をしていたという感じがする。
文学をしながら、文学を書くことができると、きっと幸せなんだろう。
まっとうな社会生活をしながら、文学を書こうとして苦しんでいるたくさんの作家たちの苦しみがわかる本でもある。
文学するということは、死に備えることであり、死を乗り越えることであり、あるいは死を手繰り寄せることだったりする。
この小説は、何のために生きるのか考え続けているぼくには、刺激的であった。

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2015年10月10日 (土)

B級グルメ三昧

神戸で2日続けて講演。
元町の中華街に行き、担担麺とマーボ豆腐のランチを食べた。
1000円。
安くてうまい。大満足。

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翌日は、長田区のお好焼やさんでそば飯を初めて食べた。
お好み焼きのハーフというがある。
ハーフといっても、東京では一人前くらいの大きさはある。
それに、牛筋とこんにゃくをポン酢で食べる鉄板焼き。
関西の食文化はすばらしい。

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東京に舞い戻り、今度は、大好きな新宿西口の焼き鳥屋街--本当の名前はよく知らないが--自分で勝手に「ションベン横丁」と呼んでいるところの若月という店の焼きそばが大好き。

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この後、とんぼ返りで北海道へ。
慌ただしく、何かひとつ食べようと思って、飛行機に乗る前の10分間、
空港の雪あかりというラーメン屋で味噌ラーメンを食べた。
めちゃくちゃうまかった。
B級グルメファンとしてはこれも大満足。

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粉ものや麺はおいしいが、ついつい食べてばかりいると、体重が増加する。
78キロだった体重が、5キロ痩せて73キロまでいっていたのに、
76キロに戻りかけている。
丼物を頼んだときには、ちょっとごはんは残さなければいけないなと自分に言い聞かせている。

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2015年10月 9日 (金)

ノーベル平和賞は?

ノーベル平和賞に日本の「憲法九条の会」が候補にあがっている。
憲法九条は傷だらけだが、
ノーベル平和賞受賞を機に、一つでも多く、戦争を放棄する国が増えれば、世界は平和に近づくに違いない。
広島、長崎の被爆者でつくる協議会にも、ノーベル平和賞を受賞してほしい。
核軍縮は足踏み状態で、いっこうに進んでいない。
オバマ大統領は、ノーベル平和賞を返還したほうがいいと思う。
大統領の任期中に、広島、長崎を訪ね、核軍縮を取りまとめるべきである。

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2015年10月 8日 (木)

アレクシエービッチの言葉

ノーベル文学賞に最も近い作家といわれるスベトラーナ・アレクシエービッチ。
次のようなことを語っている。

「旧ソ連邦は核戦争を想定してきましたから、我々そういうものを準備してきたわけです。
我々は核戦争と原発の平和利用を分けて考えていたわけです。
例えば旧ソ連邦の学者アレクサンドロフは、原発を考えました。
サハロフは平和利用を言っていました。
しかし、今日は戦争の利用と平和利用は意味が同じではないかといえると思います。
私の『チェルノブイリの祈り』はすでに17か国語で翻訳されています。
しかしベラルーシでは出版されていない。
全体主義体制に踊っている。
民主的な考え方をする人々が消されてしまっています」

Dsc08096001_2 チェルノブイリ原発の近くにある廃墟となった遊園地で

「チェルノブイリは多くの哲学的問題を引き起こしています。
キリスト教には万物の霊長という言葉がありますが、チェルノブイリ以降はその考え方が崩されました。
移住のとき、人々の乗ったバスを、豚や牛がじっと見ていた。
私もそういう人々の話を聞きましたが、目を合わせるのが恐ろしい。
動物を残していくとき、その目はとても悲しいと言われています。
たくさんの人たちは自分の飼っていた猫や犬の名前を書き残してきました。
兵士がそれらの動物を射殺していったのです。
猫や犬の共同墓地があります。
人間はそれだけのことをする価値をはたしてもっているのでしょうか。
それは大きな問題です。
チェルノブイリという実験場で、ベラルーシ人は自らチェルノブイリ人になってしまった。
ほかの民族と違った特殊な民族になってしまったかのようです。
人類の知識が蓄積されてきたわけですが、そこにいた人々はほかの人々と同じような生き方ができない。
たまたま原発の近くに住んでいて、風が吹いて、汚染されてしまったというそれだけのことなんですね。
たとえば飛行を記録しているブラックボックスと同じように、ベラルーシ人はチェルノブイリの実験場で起こっていることに
自分たちの身体で記録して協力しているということを言う人がいます」

勇気のある、威厳に満ちた作家である。
アレクシエービッチがノーベル文学賞を受賞したら、もっと多くの人が彼女の作品から人間の真実を読み取ると思う。

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2015年10月 7日 (水)

ノーベル文学賞の最有力候補

ベラルーシの女性作家スベトラーナ・アレクシエービッチが、ノーベル文学賞の最有力候補だと下馬評に上がっている。
彼女は、ここ数年、候補として名前がうわさされているが、今年はどうなるのだろうか。

アレクシエービッチ氏が来日したとき、対談したことがある。
1948年生まれのぼくと同い年。
ベラルーシのミンスクで活動している作家である。

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第二次世界大戦に従軍した女性を取材した「戦争は女の顔をしていない」や、
進撃してくるドイツ軍を、「頭からかぶったオーバーのボタン穴から見てました」という子どもの視点から、戦争を描いた「ボタン穴から見た戦争」、
アフガン戦争の実像を知らせた「亜鉛の少年たち」
チェルノブイリ原発事故の被害者や作業員の声を集めた「チェルノブイリの祈り」など、
優れた作品がある。

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「アフガン帰還兵の証言」など、アフガン戦争のことも描いている。
不凍港がほしいソ連は、アフガニスタンが内戦状態になった機を逃さず侵攻。
泥沼の戦いになっていく。
このときの戦いがいま世界の脅威になっているテロリストを生み出していく。
ソ連の侵攻がなかったら、「イスラム国」も生まれなかった可能性がある。
1983年に「戦争は女の顔をしていない」書いたとき、平和主義と言われ2年間、出版を差し止められた。
「私は村を離れた」では反体制的ジャーナリストというレッテルを貼られた。
いつも権力に負けなかった。

ほくとの対談で印象に残ったのは、
「自分たちに起こったことを理解しようとするときに、
科学とか数学、物理が力になるのではなく、ただ一つのすべきこと「人間の愛」が、
これからの人たちのよりどころになっていくだろう」
「歴史を本当に証言するのは政治家でも偉人でもない。普通の人々なのだ」
スベトラーナ・アレクシエービッチがノーベル文学賞をとったら、すばらしいなと思っている。

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2015年10月 6日 (火)

どうしんFan-Funフェスタ

9月19~20日、どうしんFan-Funフェスタ「ありがとうの日。」が開催され、閉幕イベントとして鎌田實・講演会が行われた。

約650人の聴衆を前に、「長野はなぜ健康長寿で、がん死亡が少ないのか」というテーマで、長野県の取り組みを紹介しながら、がんを防ぐコツをお話しした。

◎北海道新聞「号外」として報道された

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千羽鶴

兵庫県の高畑さんから、それは見事な千羽鶴が送られてきました。
鎌田の椎間板ヘルニアや左指の複合性疼痛症候群、左肩の骨折の跡の完治を祈ってくれたようです。
諏訪中央病院のぼくのデスクの横に飾らせてもらいました。

1509217 見事な千羽鶴、ありがとうございます

たくさんの方に心配をおかけしましたが、理学療法と作業療法に通い、
東洋医学センターの鍼灸治療を受けて、全快を目指しています。
なるようにしかならないが、
やるべきことはやっていきたいと思っています。

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2015年10月 5日 (月)

INORIチャリティコンサート&トークライブ

戦後70年の今年、平和への願いと祈りを込めた歌とトークの集いを開催します。
出演は、日ごろからJIM-NETの活動を応援して下さっているクミコさん(歌手)、佐々木祐滋さん(シンガーソングライター)、斉藤とも子さん(俳優)。
クミコさんは「広い河の岸辺」が大ヒットし、コンサートは大盛況。
「先生のオルガン」や喉頭がんで声を失ったつんく♂作曲・プロデュースの「うまれてきてくれてありがとう」が話題となっています。
忙しいなか、ボランティアで出演を快諾してくれました。
ぜひ、クミコさんらの祈りを込めた歌を聴きに来てください。
いま世界には600万人近いの難民がいるといわれています。
安倍首相も国連で、イラクやシリア難民のために9百数十億円の寄付を申し入れました。
2004年に設立したJIM-NETは、イラクの小児がんや白血病の子どもたちの支援として医薬品の援助や医療技術指導を行ってきました。
東日本大震災以降は福島の子どもたち、そして現在はシリア難民の支援にも取り組んでいます。
コンサートでは、JIM-NETの取り組みについても報告します。
また、冬季限定キャンペーンとして取り組んでいる「チョコ募金」が12月1日から始まります。そのスタートダッシュとして、今年のチョコレートもお披露目する予定です。
今回は2000円の入場料をいただきますが、
すべて子どもたちのために使います。
コンサートに来てくれることが、応援になります。
鎌田のミニ講演もあります。
ぜひ、ぜひ、ご参加ください!!

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戦後70周年企画&2016チョコ募金キックオフ
INORIチャリティコンサート&トークライブ
 ~戦争で失われたすべての「いのち」のために~


2015年11月6日(金)
 18:15 開場 
 18:45 プレトーク(JIM-NET鎌田實代表&佐藤真紀事務局長) 
 19:00 開演
出演:
 クミコ (歌手) 
 佐々木 祐滋 (サダコ・レガシー副理事長、シンガーソングライター)
 斉藤 とも子 (俳優)
 鎌田實 (JIM-NET代表理事、医師)
会場:
豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)
「東京メトロ池袋駅」(東口)より徒歩5分「JR池袋駅」(東口)より徒歩5分
入場料:2000円(小中高生1000円 幼児無料)
お申込み方法:
以下の郵便振替口座にチケット代を必要枚数分お振り込みください。
お振り込みを確認次第、チケットをお送りいたします。
 ・ お振り込みの締め切りは10月30日(金)です。
 ・ 全席自由席となります。
 ・ チケットをお持ちの方が優先的にご入場となります。
【お振込み先】
 郵便振替口座: 00540-2-94945 日本イラク医療ネット
 (振替用紙に「11月6日チケット代」とご記入のうえ、枚数をご明記ください)
【お問い合わせ先】
 080-4837-4015  E-mail: info-jim@jim-net.net
詳しくはこちら↓

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2015年10月 4日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(237)

「進撃の巨人 エンド・オブ・ザ・ワールド」

実写版の後編である。
原作は世界で5000万部も読まれている。
場違いな感じがしたが、時代の風を感じたいと思って映画館に足を運んだ。
巨人は生物兵器として作り出されたが、その過程で爆発的な感染がおこり広がったものだった。
人類は身を守るために、三重の壁を築き、いちばん内側に政府の幹部、次にエリートたちがいる。
庶民はいちばん外の壁だけに守られていて、ときどき巨人が侵入する。
巨人の伝説で恐怖心を植え付け、壁の外へは行かないようにさせていた。
そのことに気が付いたシキシマ隊長は、壁を壊し、巨人を入れて、世の中を変えようとする。

1509253 新宿のゴジラのビル

巨人同士の戦いになると、なんだかゴジラとモスラが戦っているようで貧弱。
ただ、日本の特撮のなつかしい感じがしないでもない。
超巨人と人類が闘っているのはおもしろい。
きっともう少しお金をかけたり、工夫したりすれば、世界で売れる映画になるような気がするが、ちょっと残念。
前篇後編に分ける必要も感じられない。
後編はちょっと長い。

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2015年10月 3日 (土)

難民映画祭

昨日から第10回UNHCR難民映画祭が開かれている。
東京、札幌、仙台で「グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~」など約10作品が上映される。
「グッド・ライ」はスーダンからの難民3人がアメリカへの第三国定住の機会を得て、新しい土地で生きていく物語が、とてもすばらしい。
シリア難民を描いたドキュメンタリーもある。
どの作品も、難民の生活の厳しさが伝わってくる。

Dsc_0115 ゲール・ドゥエイニーさんと鎌田

この映画祭のために来日しているUNHCRの親善大使をしているゲール・ドゥエイニーさんと、日本テレビで対談した。
この模様は、「ニュース・エブリィ」で来週木曜8日の4時20分ごろから放送される。

ゲール青年はスーダン生まれ。
国が政府軍と反政府軍の熾烈な戦いになり、エチオピアへ逃れた。
そこで家族は離散。
彼は、エチオピアからケニアへ行く。
食べるものもなく、一人ではなかなか生きていけなかった。
砂漠の小さな村に、シェルターと水と食べ物があり、少年兵にさせられた。
生きるために少年兵になるしかなかった。
続けたくなかった彼はそこを脱走し、難民キャンプにたどり着いた。
そこからさらにアメリカへ行き、第三国定住の移住が認められた。

ゲールさんは、アメリカでは初めて教育を受けた。
スーダンではほとんど教育を受けなかった。
そのうえ、英語も話せない。
勉強で自信を失いかけるが、バスケットがあった。
ハイスクールのバスケット部で活躍できた。
自分が存在している意味も見えてきた。
今はモデルと俳優をしている。

安倍首相はシリアとイラクの難民を救援するため960億円の寄付をすると宣言したが、
難民の受け入れに関しては言及しなかった。
日本は難民の受入が極端に厳しい。
政治難民でもないとなかなか受け入れらない。
留学生や研修生という名目で一時的に受け入れている、と安倍さんは胸は張るが、
実際はていのいい低賃金の労働力で、数年経ったら出て行ってもらうというのが現状だ。
これでは生活の基盤を築くことはできず、夢や希望につながらない。

少年兵だったゲール青年は、いま俳優やモデルとなり、生い立ちの伝記を書いている。
そんなことができるのも、きちんと教育を受け、その国の文化を学んだからである。
日本は国連常任理事国を目指しているならば、
大人の国として、先進国の責任を果たすほうがいいように思う。

難民映画祭
ゲールさんのメッセージ

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2015年10月 2日 (金)

ふたたび長寿王国・沖縄へ

沖縄に講演に行った。
会費2000円にもかかわすらず、参加希望者が多く、主催者はうれしい悲鳴だという。
テーマは、「鎌田實 平和を語る」
健康、命、平和、女性をキーワードに、自然や命を守るために、どれほど平和が大事か話した。
かつて長寿日本一だった沖縄は、長野県に抜かれたが、
いまでも返り咲く素地はたくさん残っている。
塩分摂取量は10g以下。
昆布を中心にしたダシ文化が根付いている。
発酵文化もある。
海に囲まれているので、新鮮な魚がいつでも手に入る。
気候は温暖で、野菜も一年中とれる。
台風の被害は多いが、低気圧ほど長寿であるという説もある。
だから、沖縄にはアドバンテージが多いのだ。
それにしても、沖縄にはおいしいものがいっぱいだ。
行列ができる人気店「千日」で、沖縄ぜんざいを食べた。

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若鳥の香草にんにく焼き。
イワシの塩辛がのった島豆腐。
おいしくて健康的なものがたくさんある。
こういう食べ物をみると、沖縄はすぐにでも長寿王国に返り咲けると思う。
しかし、弁当屋が多く、400円くらいで高カロリーのものを売っている。
揚げ物やフライがごはんを覆い尽くしている。
沖縄そばには豚肉が2つ3つ乗っていて、さらにじゅうしいという混ぜご飯がついてくる。
安くてうまいので、いくらでも食べてしまうが、
これはちょっと考え直したい。
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ヨモギを練り込んだフーチイパーそばのように、健康志向が高いものがある一方で、
沖縄の人はこってりした味も好きだ。
以前、久米島に講演に行ったとき、島のお年寄りはみそ汁に油を垂らしていた。
この油を垂らす習慣や揚げ物を控えるだけでも、違うのではないか。
もともといい食文化をもっているので、ほんのちょっと変えてみるだけで、長寿王国を奪還できるのではないか、と話した。

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自分の健康を大切にするということは、命を守るということ。
それは、平和につながっている。
子どもを生み、命を守る性である女性たちは、しがらみがなく自由だ。
平和を守るために、きちんと発言することができる強さをもっている。
沖縄はもっともっと健康長寿となり、どの地域よりも平和や自由を尊ぶ地域になってほしい、と話した。

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2015年10月 1日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(236)

「エール!」
フランス映画。
耳の聞こえない家族のなかで、ただ一人聞こえる女の子の青春を描いている。
歌が歌えるとか、声がいいなんて、考えてもみなかった。
その女の子が家族を思い、好きな人ができ、旅立っていく。
人間ていいなということを信じさせてくれる。
どんな壁があっても、強く生きることができる。

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ミッシェル・サンルーの曲がすばらしい。
好きな男の子と学校の演奏会で「愛の叫び」を歌う。
しかし、家族は聴覚障害があり、聞くことができない。
聞こえない父親は、娘ののどに触れながら、もう一度歌ってくれという。
このシーンもとてもいい。
オーディションを受けることになる少女が、歌う歌もすばらしい。
会場に聞きに来た家族に向けて、手話でも語りかけながら、鳥かごから旅立とうとする心を切々と歌う。
泣けた、泣けた。

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