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2015年11月 7日 (土)

鎌田實の一日一冊(255)

「私の恋人」(上田岳弘著、新潮社)
本年度の三島由紀夫賞を受賞。
めちゃくちゃおもしろい。
時空を超えて生まれ変わる「私」が、10万年という時を超えて恋をする。
「私」は10万年前、シリア近くの洞窟のなかで、人間という生き物の未来を予測して、
自分にしかわからない文字を使って書きつけているクロマニョン人である。

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人類は三周目の旅をしてる。
一周目の旅は出アフリカ。
南アメリカまで、あるいはニュージーランドまで旅をする。
二周目の旅は、1945年に終わる。
広島、長崎に原爆が落とされ、ナチスの収容所でたくさんの人が殺された。
三周目の旅は、世界が一つになり、インターネット上の非リアルな社会が広がり、
人間より賢い人工頭脳がつくられていく。
その旅のなかに、「私」の恋人がでてくる。
ときには純な少女であり、ときには苛烈な女である。
絶世の美人が落ちて麻薬中毒になる。
そこから救われる末期がんの内科医が、人類がたどった旅をし、「私」の恋人と会う。
この作家は、芥川賞の候補にもなった。
空想の世界と10万年の人類の流れと一人の人間が息苦しいなかで生きている。
この作品はそれを、丁寧に小説にしている。
すばらしい。
読んでみてほしい。

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