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2015年12月14日 (月)

鎌田實の一日一冊(260)

「大川周明と狂気の残影-アメリカ人従軍精神科医とアジア主義者の軌跡と邂逅」
(エリック・ヤッフェ著、樋口武志訳、明石書店)

一貫してアジア主義を唱えていた、近代日本を代表する思想家、大川周明。
大川は、真珠湾攻撃の後、NHKラジオで有名な連続講義を行った。
西洋が日本に対して行ったあらゆる圧力を語り、日本がアジアに対して行っていることは拡張政策だとは一切言わなかった。
アジアを統一しようとしているのであって、征服しようとしているのではないと訴え続けた。
彼の主張は、決して多くのアジアの国からは賛同されなかった。

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戦争が終わり、彼は東京裁判にかけられる。
奇行を繰り返し、東条英機の頭をひっばたいたりした。
「精神異常」と診断したアメリカ人の精神科医。
米国は、戦場で兵士たちが精神異常をきたすことを認識し、精神科医を従軍させるようにしていた。
大川の精神診断をした医師は、著者の祖父にあたる。
法的に決めつけず、できるだけ医学的に大川の精神の問題をとらえようとしている。
大川周明は結果として、精神異常の診断のもと、裁判から免れた。
祖父が下した診断が正しかったのかどうか、孫にあたる著者も中立的な立場で考察している。
力強いドキュメント作品だ。

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