聴診器でテロと闘う(26)
難民キャンプ訪問記③
ドホークからシンジャールに向かう途中、ラピアを通った。
ラピアもISに完全に破壊されていた。
その破壊された町を、子どもを連れた羊飼いが羊に残っている草を食べさていた。
羊飼いに声をかけた。
「ISはこわかった。町を全部壊し、ヤジディ教徒を殺し、若い女性たちを連れて行った」
あまりにも残虐な行為を見て、人々は山へ逃げるしかなかった。
その山にいまも1万7000人がテントで生活をしている。
そこへ、法律家として市で働いている保健省のスレイマンさんと、
ペシュメルガの軍隊を退役したムスタファさんがカラシニコフ銃と拳銃をもってぼくたちを護衛するように着いてきてくれた。
◇
クルド自治政府の意向でミルクとおむつ、女性の生理用品を難民キャンプに届けてほしいということで、トラックを一杯にして持って行った。
物資を配った後、難民キャンプの生活をみ見せてもらったが、冬のテント生活は特に厳しい。
ISがまだ町の外側にいる可能性があり、自分の町にはこわくて帰れないという。
「ISはイスラム教徒ではない。
単なる犯罪者だ。
おれたちの生活をすべて奪った。おれのうちはまだ焼かれないだけいい。
話によると、おれのうちのものはすべて空っぽになったと聞く。
なぜ、おれたちヤジディ教徒はこんなひどい仕打ちをうけなくちゃいけないのだ」
ヤジディ教徒の若者のなかには、ペシュメルガに入り、ISと闘う者も出てきたそうだ。
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