聴診器でテロと闘う(37)
難民キャンプ訪問記⑬
講演する前、朝ご飯も食べられないスタッフがいたので、
シュワルマ屋で朝食をとることにした。
たくさんの野菜と、鶏か羊をはさんで巻いて食べるファストフードである。
ハンバーガーよりずっとうまい。
今、多くの難民がヨーロッパに向かっているが、どう思っているのか、
シュワルマを食べながら、周囲の人たちに聞いた。
買い物に来たという、この難民キャンプの近所に住んでいるというイラク人青年。
君はヨーロッパに行くのかと聞いたら、
「自分は行かない。このイラクが好き。いま混沌として命も危ないが、ここでなんとか頑張ってみる」という。
シュワルマ屋のおやじは、シリアから逃げてきた。
もともと食料品店をやっていた。
生きてくために、この店を月300ドルで借りた。
テナント料を払うのが大変だが、何にもしないわけにはいかない。
一か八かだという。
「ヨーロッパは行きたいけれど無理だな。金がない」
旅費は、一人3000ドル、日本円で30万円といわれる。
「海を渡っていくなんて、おれの年で、こんな太っちゃったら考えにくいもんな。
ヨーロッパへ行くのがすべてじゃない。
おれはシリアが平和になることを考えている。
早くアサドがいなくなるといい。
アサドがいなくなれば、話し合いが始まる。
そして、みんなが力を合わせてISを抑え込むんだ。
そうしたらシリアに帰れる」
理路整然としている。
夜、アルビルのダウンタウンへ行った。
蕪のスープの屋台が並ぶが、鎌田屋台の参考にしたいと思ったのだ。
スープを二つ頼んだ。
うまい。
ちょっと甘い味がするのは、ナツメヤシの味だ。
蕪は少し苦みがあり、和辛子があれば、まるでおでんの大根だ。
店番をやっている若い青年に、どこから来たか聞いた。
「ラマディだ」
ラマディは、2、3日前、ISを制圧でき市庁舎に政府軍の旗が立った。
これからどうするんだ、と聞くと、
「2週間以内くらいに帰りたいと思う」というが、内心複雑なものを抱えていた。
「おれたちはみんなスンニ派。ISはスンニ派なので、おれたちはISの味方のように思われている。
どこへ逃げてもいじめられる。おれたちは悪くないのに、ISのためにいじめられるんだ。
ラマディにいてもISに脅かされる。
アルビルに逃げて来ても、おまえらISの仲間じゃないかと言われ、いたたまれない」
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