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2016年2月

2016年2月29日 (月)

聴診器でテロと闘う(40)

無事にイラクのアルビルに着いた。
バスラやバクダッド、アルビルのナナカリ病院のドクターたち20人ほどが集まって、
JIM-NET会議を開いた。
厳しい状況のなかで、子どもたちを助けようとすると専門家たちのカンファランスだ。

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このカンファランスはもう12年続いている。
ここで議論したことをもとに、この一年、それぞれの小児科医たちが支援を展開していく。
とても大切な会議だ。
白血病の治療成績もここで発表され、成績が少し停滞したりすると、みんなで活発な議論する。
感染症対策が弱いのではないか、貧困で子どもたちが通院できなくなっているのではないかなど、医科学的にも社会的にも多方向から議論し、解決するために努力していく。
いよいよ大事な仕事が始まる。
                    ◇
実は、イスタンブールでの8時間のトランジットで、心房細動に襲われた。
今までも経験したことがあるため、今回のイラク訪問から帰国した後は、循環器のドクターから抗不整脈薬や脳血栓予防薬などをもらう予定になっていた。
出発の前日には、心電図をとった。
普通の心電図では異常はなかった。
だが、ちょっと無理がたたったようだ。
もちろん想像以上に体が老いているということもある。

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夕方、アルビルに到着後は、ドクターたちと歓迎会をする予定だったが、
心房細動の不整脈が続いており、今回はパスした。
とにかく眠り続けた。
やさしい人たちの差し入れを食べて、生き返った。
コーヒーは、トルキッシュコーヒー。
泥水のように濃く、上澄みを飲む。
ぼくはコーヒーのなかのコーヒーと思っている。

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2016年2月28日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(257)

「緑はよみがえる」
エルマンノ・オルミ監督。
この監督の作品は大好き。
「木靴の樹」は、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞している。
第一次世界大戦、イタリア軍とオーストリア軍がアルプスの山の中で対峙している。
イタリア軍は劣勢。
砲撃され続けられ、恐怖に身を凍らせれる兵士たちの目に映るのは、人間の愚かな行為と、
アルプスの美しい景色だった。
塹壕から見る毅然としたアルプス。
夜、キツネが出てくるシーンは美しい。
そして、一本の唐松が、人間の愚かさをじっと見ている。
「秋、ほかの木がみんな錆色になったとき、この唐松だけは黄金色に輝く」と兵士はつぶやく。

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戦争はなんと無意味で無益な行為か。
「愛する母さん、今夜の山はなんて美しいのだろう」
兵士たちの詩的な言葉が語られる。

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2016年2月27日 (土)

武雄の焼肉弁当と図書館

佐賀県の武雄市に講演に行ったとき、 武雄温泉駅で売っている佐賀牛の焼き肉駅弁を食べた。
九州駅弁グランプリで2年連続優勝したという。
2年連続というのは珍しいが、他を圧倒しているということなのだろう。
いまぼくは軽い炭水化物絶ちをしているので、お弁当のご飯は半分残すことにしているが、 このお弁当は焼き肉のおいしいたれがご飯にしみていて、全部食べきってしまった。

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武雄では、武雄市図書館も見学した。
市がツタヤ系列の会社に民間委託し、話題を呼んでいる図書館だ。
年中無休で、午前9時から午後9時まで開館しているため、30~40代の人の利用者が増え、仕事帰りでも利用しやすくなった。
利用者は3倍に増えたという。

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たくさんの市民に本を読む習慣ができるのはいいことだ。
運営費は、年間1億1000万円で、市が運営していたときより1000万円削減できている。
おまけに賃料の600万円近くも、市の収入となる。
まだまだ問題点があり批判もあるが、プラスもあるように感じた。

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2016年2月26日 (金)

おたふく風邪流行の兆し

流行性耳下腺炎、いわゆるおたふく風邪が4年半ぶりに全国的な流行の兆しを見せている。
おたふく風邪は、あごや耳の下が腫れ、38℃ぐらいの熱がでることもある。
1~2週間で腫れは引く。
ちょっとやっかいないのは、まれに髄膜炎や難聴、精巣炎、卵巣炎を起こすこと。
以前は、大人が精巣炎を起こして不妊の原因になるといわれたが、いまはその確率は低いといわれている。
1000~5000人に一人の割合で脳炎が起こったり、膵炎が起こることもある。

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感染は飛沫感染と接触感染。
手洗いやマスクが大事になる。
予防接種も重要な対策の一つだ。
だが、日本はワクチン後進国といわれ、他のワクチンも含め、なかなか広がらない。
アメリカでは予防接種が徹底しているので、おたふく風邪の年間の発生率は300例くらいといわている。
日本では予防接種は任意。
そのため、大人になってから罹り、重症化することもある。
現在のおたふく風邪のワクチンは、副反応のリスクも少なくなった。
任意の予防接種は自己決定が大事なので、よく勉強してもらい決めてもらうことが大事だ。
あわてることはないが、みんながワクチンによるメリットとリスクを冷静に判断できるようにして、健康と命を守っていきたい。
日本はワクチン後進国といわれている。

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2016年2月25日 (木)

カマタの怒り(19)

選挙前のアメと、選挙後のムチ
政府は2018年度の介護報酬改定に向けた議論を開始している。
要介護1の軽度者向けのサービスの見直しが取り沙汰され、
住宅改修費用の全額自己負担化、福祉用具の自己負担化なども検討されているという。
現在の保険料は平均約5500円だが、これが2025年には8000円を超えると予測されている。
要介護3以上の人は現在224万人から、2060年には421万人に増加する。
このために保険料の負担を現在40歳以上から、20~30歳に引き下げる案も検討されている。
しかし、何と姑息なことに、決めるのは参院選後。
参院選前に3万円をバラマキ、その後、負担増が強烈にのしかかってくる。
現政権の最大の評価は、実質経済を改善してはないが株価を上げたことだろう。
株価を上げるために円安にした。
そのために参院選までは税金を使ってムチを入れるのだろう。
だが、そのムチのつけは選挙後、国民に向かう。
なんと日本の政治は骨がか細いことか。
もっと長いスパンで、骨太の政策を考えるべきである。

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2016年2月24日 (水)

ばばば!

先日、陸前高田を訪ねたとき、災害公営住宅で楽しい芝居が上演された。
「劇団ばばば☆」による、減塩を呼びかけるお芝居だ。
いま岩手県は、秋田県を抜いて、脳卒中死亡率ワースト1位になった。
塩分摂取量も日本一多い。
被災地の住民に減塩の大切さをわかってもらうため、
「陸前高田在宅療養を支える会」の医師や看護師、栄養士、介護施設の職員らが演じている。
たくさんの住民が集まって、笑いながら命や健康の勉強をした。
「ばばば」というのは、朝ドラで有名になった「じぇじぇじぇ」と同じように、驚いたときに発するこの地方の言葉だという。
陸前高田は造成工事の真っ最中で、建物が建つのはこれから。
建物の復興はまだが、心の復興は人によってだいぶ違う。
80%という人もいれば、20%という人もいた。
心の復興はまだまだ時間がかかると思うが、陸前高田ではこの会の取り組みを通して、
人と人との関係の復興は他の地域より進んでいるように見える。
これからも、うれしい驚きの「ばばば」がたくさん飛び出すよう応援していきたい。
             ◇
陸前高田の「劇団ばばば☆」と地域包括ケアの取り組みについて、
2/24の毎日新聞「さあこれからだ」に書いた。
ぜひ、お読みください。

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2016年2月23日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(256)

「増田進 患者さんと生きる」

医師・増田進さんのドキュメンタリー映画。
岩手県旧沢内村という豪雪、短命、貧困という地域で地域医療に取り組み、
日本初の医療費無料を行い、地域を明るく健康にした。
医療の基本であるマンツーマンを大事にしながら、地域でチームをつくり命を守るゾーンディフェンスという手法を考えた。
そういう増田進さんを、ぼくは勝手に「地域医療の神様」と尊敬してきた。
対話と触診の医療を続ける80歳の医師の姿は、光輝いている。

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3/4まで渋谷アップリンクで上映中。
この後、大阪、浜松などで上映された後、全国150か所で自主上映会が開催される。
ぜひ、たくさんの人に見てもらいたい。

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2016年2月22日 (月)

どうなる日本の介護(4)

川崎の老人ホームで入居者が3人転落死した事件。
元介護スタッフが殺人で逮捕され、供述をはじめたようだ。
被害者の男性は、要介護3で認知症があった。
「男性は風呂になかなか入ってくれず困った。手がかかる人だった」という。
なんとも悲しい話だ。
認知症のケアで最も大切なのは、その人の価値を認めること。
相手が価値ある人と思えるかどうかで、対応が違ってくる。
こうした考え方は、バリデーションというケアの手法にもなっている。

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おそらく容疑者は、「面倒な人」と思い、「価値ある人」と思わなかった。
ここに大きな問題があったのではないか。
価値ある人と思って対応してくれるスタッフとは、認知症でわからなくても、心が通ったり、「この人といると安心」と思えたりして、
症状が和らいだりする。
これは、認知症のケアだけに言えることではない。
すべて人と対応するときに共通するように思う。
認知症のケアは、人と人との関係を築く基本的な手法や考え方を教えてくれるもので、
そこに介護の奥深さがあるはずなのに、
こんな結果になり、残念でならない。

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2016年2月21日 (日)

鎌田實の一日一冊(273)

「世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉」(佐藤美由紀著、双葉社)
人口300万人の小さな国ウルグアイの第40代大統領ホセ・ムヒカ。
彼は、13年間、ゲリラ活動をしたことで逮捕され、獄中生活を送る。
その後、民主的な手法で国や世界を変えようと政治家になった。
ホセ・ムヒカ大統領の、2012年リオ国際会議で行ったスピーチは、最も衝撃的なスピーチといわれた。

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彼は、私たちはグローバリゼーションの消費社会にコントロールされている、と言う。
消費が止まれば、経済がマヒする。
経済がマヒすれば、不況のお化けが現れる。
このハイパー消費を続けるためには、商品の寿命を縮め、多く売らなければならない。
使い捨ての社会を続けなければならなくなる。
ものが欲しくなり、そのためにローンを組む。
ローンの支払いのために、2倍働き、自分の自由な時間を手放していく。
環境の未来を語り合ったリオ会議で、格調高い演説をし、全員が立ち上がって拍手を送ったという。
「私は貧乏ではない。質素なだけです。世界でもっとも貧しい大統領と自負しています」
なかなか素敵な本。

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2016年2月20日 (土)

鎌田實の一日一冊(272)

「ぼくはアスペルガーなお医者さん」(畠山昌樹著、KADOKAWA)
人の感情が読めない、表情も読めない、心と心がつながったなんてというのは感じたことがないという。
親友もいない。
初恋もしたが、討死。
小説で恋愛の勉強をしたが、本当のところはわからないという。
でも、高機能なので課題を出されるとものすごく頑張る。
中高一貫校の全寮制に入ったことで、厳しいルールを守りながら、受験技術に磨きをかけた。
ほかの医学部よりルールが厳しいといわれる防衛医大に合格。
これが畠山先生にとってはよかったようだ。

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整形外科の医師になった。
一度開業したが、そのクリニックは法人に運営をまかせ、自分はパート医を務めている。
患者さんに理解にあるやさしい医者は技術でやれるという。
共感は苦手、幸せを感じたことはあまりない。
それでもおもしろいことはいっぱいあって、人生は楽しいという。
子どもの6.3%が発達障害といわれるから、40人クラスに2人くらいいる可能性がある。
著者は、発達障害は脳の個性で、非定型発達といったほうが正確だという。
おもしろいのは、畠山式ケトン食。
ケトン食とは、糖や炭水化物を減らして、チーズやお肉を多くするもの。
てんかん患者にケトン食を出すと、てんかん発作が減るというデータもある。
その科学データを使い、アスペルガー症候群に畠山式ケトン食というのをはじめてから、
精神的な安定がつくられたという。
著者自身も、ケトン食をとるようになってから、怒りが爆発しづらくなったという。
僕自身も多動性ぎみなので、ケトン食というほどではないが炭水化物を減らしている。
ちょっと魅力的な本。

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2016年2月19日 (金)

食品ロスと食べられない子ども

日本では廃棄食品の横流しが問題になったが、
フランスでは、大型スーパーに対し、売れ残った食品の廃棄を禁止する法律が決まった。
売れ残った食品のうち食べられるものは慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や農業用の堆肥に転用することを義務付けている。
2/21の「日曜はがんばらない」(10時~、文化放送)では、あさやけ子ども食堂の店主山田和夫さんをゲストに迎え、活動についてお聞きする。
日本は子どもの貧困率が高く、食べられない子どもたちがいる。
その一方で、年間約1700万トンの食品廃棄物を排出。
このうち食べられるのに廃棄されている「食品ロス」は年間500~800万トンと言われている。

Photo ゲストに山田和夫さん(中央)をお迎えする村上信夫さんと鎌田

すでにフードバンクなどの仕組みがあるが、食品を有効活用し、食べられない家庭に配るシステムがもっともっと広がるといいと思う。
食品にも、命があったはず。
その大切な命をいただいていることを忘れないようにしたい。
ぜひ、番組をお聴きください。

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2016年2月18日 (木)

カマタの怒り(18)

大企業が得をする政策減税
企業の税金を特別に安くする政策減税が行われている。
その合計額は2014年度で1兆2000億円以上。
この恩恵を受けるのは、ほどんど一流企業。
6割が資本金100億円超の大企業である。
減税額は、トヨタ自動車が1083億円、キヤノンは157億円とみられる。
こういった企業は政府が超金融緩和を行い市場にお金をタブつかせ、円安をつくったことにより、一円円安になるごとに、何億円ものの利益が上がるようになっている。
黒字を出しているトヨタのような大企業に、はたして政策減税は必要なのだろうか。
2016年は法人実効税率を20%台まで下げる。

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日本の借金体質を改善するため、消費税を上げ、子育て、介護、医療などを充実させるはずだったのに、庶民の安心には結びついていない。
大企業に有利な政策をする一方で、労働者の実質賃金は下がり続けている。
政治は国民の税金を上手に使い、国民一人ひとりが希望をもって幸せに生活できるようにすることが大きな目標のはず。
政府はもっと国民の生活を改善できる方向にお金を使ってほしいものである。

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2016年2月17日 (水)

看護師さんの「木遣」

諏訪中央病院の回診中、おもしろいことが起こった。
息子さんが御柱祭のくじ総代で、「いいくじを引いてくれるといいな」といつも気にしているおばあちゃんの患者さんがいた。
くじ総代はとても大事な役目。
御柱は、上社で8本、下社で8本合計16本がある。
どの地区がどの柱を担当するかは、諏訪大社で抽選式を開き、それぞれの地区の代表であるくじ総代がくじを引く。
みんな「本宮一」(通称ホンイチ)という先頭を走る太い丸太を引きあてたいが、
8番目を引いたりすると、くじ総代は肩身が狭い。
村では生きていけないくらい(笑)はずかしい思いをするらしい。
くじ総代の息子を心配していたおばあちゃん。
抽選式でいいくじを引いたようで、とてもうれしそう。
「本二」という、全体でみると二番目にいいくじだったそうで、先日はお祝いをしたという。
おばあちゃんはがんと闘っているが、4、5月の山だし、里曳きにはお客さんがたくさん来るので、そこまでは生きたいと、前向きな発言が多くなった。
                        ◇
2週間前、病院で節分の豆まきをした。
ぼくがお面をつけて鬼の役をしたら、鬼は外と元気に豆を打つ男性患者さんがいた。
それがいいきっかけになったのか少し元気になって、今週は「外に出たい」と言い、ラウンジにお茶を飲みに出てきた。
そのラウンジになぜか、御柱の木遣りのおんべが飾ってあった。
理由を聞くと、なんと緩和ケア病棟の看護師が木遣りコンクールで4位になったという。
看護師は、患者さんたちにうながされ、はやし立てられ、しかたなく白衣姿で木遣りを披露することになった。
患者さんたちはもう大喜び!
ベッドのまま出てきたこの男性は、「おれ、元気になるぞ」。
丸太をすすめる木遣りの声、早くもみんなの心を浮き立たせている。

久々の動画像、ぜひ、ご覧ください。

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2016年2月16日 (火)

カマタの怒り(17)

国会議員に失望
今お騒がせ中の宮崎議員。
それに、昨年夏、「未公開株に議員枠があるから」と知人にもちかけトラブルを起こし、自民党を離党した武藤議員。
どちらも共通しているのは公募で入ったことである。
議員としての質が問われる。
新人議員だけでなく、大臣もおかしい。
甘利元経済財政政策担当大臣は、口利き疑惑で大臣を辞めた。
丸川環境大臣は、「1ミリシーベルトに意味はない」と発言したことを指摘され、撤回した。
チェルノブイリ事故のウクライナやベラルーシでは、自然放射線とは別に年間1ミリシーベルトにこだわりながら子どもたちを守っていた。
放射線は余計に受けるのはよくない、というのは常識だ。
病院の職員たちは、放射線を使う検査のときにはフィルムバッジをつける。
被曝をできるだけ少なくするために努力している。
福島も年間1ミリシーベルト以下にするため、毎時0.23マイクロシーベルト以下になるよう除染を続けてきた。
なのに、なぜ環境大臣が非常識なことを言うのだろうか。
何を言ってもいい、何をやってもいいという自民党のおごりか。
「歯舞」を島尻沖縄北方大臣が読めないというのも恥ずかしい。
高市総務大臣が、放送法を盾に「公平中立な放送」をしろとプレッシャーをかける。
とんでもないことだ。
もう少し質の高い国会議員や大臣でいてほしいと思う。

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2016年2月15日 (月)

元気シニアを介護の担い手に

60歳以上の人口は約3900万人。
そのうち3300万人は元気なシニアだという。
「まだまだ働きたい」「社会の役に立ちたい」という元気なシニアは多い。
一方、介護スタッフは2025年までに100万人が不足するといわれている。
ヘルパー二級や介護福祉士の資格をもった人が働いているのは、15%にとどまるという数字もある。
「かい援隊本部」は、人手がほしい施設や在宅介護のNPOなどと、少しでも働きたいというシニアをマッチングする。
介護スタッフだけでなく、車の運転でもいい。
年齢制限はない。
体力的に一人分の仕事がむりでも、二人一組でシフトに入る。
一日おき、あるいは週2~3日など、働き続けることで、生きがいにもつながるのではないか。
ぼくは、この「かい援隊」のリーダーになった。
若い人の介護人材を集めるのは大切なことだが、難しい。
イケメンの介護士の写真集を出すなどして、介護はダサクないとアピールしているところもある。
だが、元気シニアたちが無理なく、介護の担い手として参加できれば、人手不足の解消とともに、介護予防にもなるのではないか。
とにかく、少しでもシニアの働く場を確保することが大事、と代表の新川さん。
高齢社会での果たす役割は大きい。

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2016年2月14日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(255)

「ルーム」
アカデミー主要4部門にノミネートされ、国際映画祭でいくつもの賞を受賞している。
原作は、エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」。
作者みずから脚色、シナリオを書いた。

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24年間、地下に閉じ込められた親子の物語。
実話である。
息子は、その部屋で生まれて、外の世界を知らない。
天窓から見る空が、唯一の世界だ。
小さなルームが、二人の宇宙。
そこで交わされる言葉はまるで詩のようだ。
息子がいるから母は生きることができ、母がいるから息子は生きることができた。
しかし、圧倒的に5歳の息子が母を支えているのがわかる。
脱出した後、次々に問題がふりかかるが、二人は絶望を希望に変えていく。
感動の映画である。

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2016年2月13日 (土)

「いのちの花展」開催中

イラクややシリア難民の子どもたちが描いた絵画や写真はJIM-NETの宝物の一つ。
その展覧会「いのちの花展」が開催中です。

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原画と絵画「いのちの花展」
日時 2月12~17日
会場 ギャラリー日比谷
   〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-5 
           TEL:03-3591-8945(会期中のみ)
アクセス 東京メトロ・日比谷駅(A4出口)から徒歩1分
     東京メトロ・銀座駅(C1出口)から徒歩2分
     JR・有楽町駅(日比谷口)から徒歩3分
入場料・各イベント参加費:無料(募金歓迎)

主催:特定非営利活動法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
15日の14時からは鎌田の「がんばらないトーク」(定員50人要予約)
問い合わせはJIM-NET(03-6228-0746)
ここでは、先日売り切れてしまったチョコ募金のチョコレートがあります。
数はわずかです。
ぜひ、お越しください。

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2016年2月12日 (金)

ご冥福をお祈りします

青森県の岩木山の麓で「森のイスキア」を主宰していた佐藤初女さんが2月1日に亡くなった。
94歳だった。
疲れた人、心に何か抱えた人たちが岩木山の麓を訪れる。
初女さんはおむすびを結ぶ。
そのおむすびを食べると、心がほどけ、問わず語りに思いを語りだす。
初女さんはそれを静かに聞いてくれる。
ゆったりした時間が流れ、なぜか、多くの人が救われていく。
初女さんのおむすびをいただいたのは、8年ほど前。
丁寧にご飯を炊き上げ、空気をふくませるように握る。
真ん中には、自家製の梅干し。
おむすびは手で持っても崩れないけれど、口のなかでやわらかくほどける。
おいしかった。
佐藤初女さんのご冥福をお祈りいたします。

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2016年2月11日 (木)

鎌田健康塾(5)

気仙沼のホテル観洋で、ビュッフェに「アザラ」という郷土料理が並んだ。
酸っぱくなった白菜の古漬けとメヌケという魚のアラを酒粕で煮込んだものという。
もともとは正月の残り物を使った郷土料理らしい。
発酵食品である漬物や酒粕が使われているので、とても腸によさそうだ。
腸は、多くの免疫細胞が集まるところ。
腸を健康にし、機能を高めることは免疫力を高めることにもなる。
そのために、発酵食品はいい働きをしてくれるのである。
発酵食品の効果的なとり方について、おもしろい論文が昨年末に発表された。
善玉菌はいろんな種類をとって生存競争させると活性化し、腸にプラスの効果をもたらすというものだ。
納豆やヨーグルト、チーズを食べるのはいいが、いつも同じものを食べるよりは、産地や菌の種類、材料が違う多様なものを食べたほうがいいようだ。
ぼくは全国を旅しているが、その土地に伝わる発酵食品に出会えるというのも、旅の醍醐味でもある。
アザラなどは、家庭でも簡単に真似できそうだ。
魚のアラが出たときなどに作ってみてはどうだろう。
またひとつ発酵食品を知ることができ、ぼくの腸も満足である。

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2016年2月10日 (水)

鎌田實の一日一冊(271)

「マナーの正体」(中央公論新社)
新聞夕刊での連載が一冊の本になった。
荻野アンナさんや角田光代さん、綿谷りささん、さだまさしさんらが、いろんなマナーについて語るおもしろいエッセイ集である。
ぼくも、著者の一人。

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新聞連載では、山本容子さんが原稿を読んでから、カラーのエッチングを手掛けてくれるのがうれしくて、連載を続けた。
怠け者のマナー、肉筆のマナー、楽観力のマナーなどを書いた。
ぜひ、お読みください。

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2016年2月 9日 (火)

北朝鮮のミサイル発射

金正恩、34歳。
スイスに留学した経験があるので世界を見ているはずなのに、
若くして父親からもらった権力をどう使ったらいいのかわからないようにみえる。
国のリーダーは、国民を食べさせることだが、それができていない。
マイナス成長だった経済は、12~14年約1%の成長率になったが、15年は干ばつがあり、再び経済が悪化している。
100人の軍人の幹部を粛清し、徹底的に自分に忠誠を誓わせている。
そして、自分と父親の名前をつけたミサイルを発射。
とんでもないことだ。
この国がもつプルトニウムから推測すると原爆17個、ウランも利用すればさらに6個の原爆か水爆もどきを保有している可能性がある。

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中国が煮え切らないのがいけない。
国際的な経済制裁を加えないかぎり、北朝鮮は次々にルール違反をしてくるだろう。
ミサイルを発射したからといって、アメリカが話し合いのテーブルにつくわけがない。
原爆の実験をしたり、ミサイルを発射したりして、国際舞台で発言権をもてると思ったら大間違いだ。
若い将軍は、全体が読めていないのではないか。
次期アメリカ大統領が共和党から誕生したら、朝鮮半島は一気に修羅場になる可能性もある。
今のうちに国連で厳しい制裁措置をとるべきだ。

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2016年2月 8日 (月)

原画と写真「いのちの花展」

イラクややシリア難民の子どもたちが描いた絵画や写真はJIM-NETの宝物の一つ。
その展覧会を開催します。
ぜひ、ご来場ください。

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原画と絵画「いのちの花展」
日時 2月12~17日
会場 ギャラリー日比谷
   〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-5 
           TEL:03-3591-8945(会期中のみ)
アクセス 東京メトロ・日比谷駅(A4出口)から徒歩1分
     東京メトロ・銀座駅(C1出口)から徒歩2分
     JR・有楽町駅(日比谷口)から徒歩3分
入場料・各イベント参加費:無料(募金歓迎)
主催 定非営利活動法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
15日14時~ 鎌田實の「がんばらないトーク」(定員50人要予約)
15日16~17時 佐藤百子先生による「羊ぐるぐるワークショップ」(材料費1000円、定員15人)
 ワークショップ申し込みフォーム
問い合わせはJIM-NET(03-6228-0746)
展覧会の会場では、先日売り切れてしまったチョコ募金のチョコレートを、数はわずかですがご用意しています。
チョコ募金にご興味のある方も、ぜひ、お越しください。

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2016年2月 7日 (日)

鎌田實の一日一冊(270)

「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」(高橋三千綱著、幻冬舎)
芥川賞作家高橋三千綱の初の描き下ろし自伝的小説。
糖尿病を皮切りに、肝硬変、食道がん、胃がんを発症するが、病気に負けない作家魂がすごい。
病気との距離の取り方が独特である。
作中に、鎌田も登場するが、高橋さんのことを評して「がんも逃げ出す楽天家」と書かれている。
ぼくに関しては、「(初めての印象は)「『がんばらない』という医者は実はがんばる人だ」と見透かされていた。

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「がんばりぬいた末に、がんばらずに生きていく道もあると発見したからものわかりのいい医者が誕生し、
不治の病に冒された人々に希望というの光を与えることができるようになったのではないか。
もう残された日数の少ない患者に向かって、明日への夢を抱かせ、励ますことが自然体でできているのである」
食道がんや胃がんに対しての距離の取り方は独特。
高橋さんは手術後のリスクを考えて、胃がんは手術せず、命が尽きるまでそのまま行こうと考えている。
ゴジラのように、がんが大きくならないように“氷詰め”にする暗示をかけているとか。
その冗談のような、高橋さんと鎌田との会話はちょっとおもしろい。
とにかく読んでみてください。

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2016年2月 6日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(254)

「母よ、」
監督はイタリアのナンニ・モレッティ。
「ローマ法王の休日」を撮っているとき、監督自身が母親を失うという経験をした。
自分や家族の悲しみを、ユーモアや愛情たっぷりに、
別れの悲しさ、苦しさをさりげなく見事に演出している。
主人公は、女流映画監督。
アメリカの個性派俳優を主役に、新作を撮影中という設定だ。
この個性派俳優にかきまわされ、撮影はなかなか進まない。
プライベートでも、夫と離婚し、娘は反抗期。彼氏とも別れた。
孤独のなかで映画をつくりながら、母を看病する。
母の余命がわずかと知らされ、主人公は悩む。

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この主人公を演じるのはイタリアを代表するマルゲリータ・ブイ。
難しい役をさわやかに演じている。
世界の映画祭で絶賛されている。
家族の問題をじっくり描く、いい映画だ。
3/12ロードショー。

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2016年2月 5日 (金)

沖縄で低炭水化物ランチ

沖縄の県庁に呼ばれ、トンボ帰りで講演に行った。
沖縄は長寿王国奪還に向けて、着々と戦略を練っている。
県庁の方と昼ごはんを食べたが、約800円のランチで、野菜と海藻たっぷりの低炭水化物食というメニューがあるのに驚いた。
ご飯はなし。

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沖縄はもともと塩分摂取量が少ない。
野菜と魚を多く食べるようになれば健康長寿は近い。
沖縄ではみそ汁に油を入れるなど、油を多用する傾向があるようだが、
それをなくそうという呼びかけも始めている。
沖縄が本気になると、再び長寿王国に返り咲く可能性は高い。
どこでも中高年は健康の意識が高いが、若者の意識はどうか。
お店の人に聞くと、若い人たちも低炭水化食を注文する人が多いという。
若い世代もそういう意識を持ち始めたら、しめたものである。

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2016年2月 4日 (木)

どうなる日本の介護③

昨年の介護の日11月11日に開催された「がんばらない介護生活を考える会」主催の介護セミナー。
その会場に置いた募金箱に集まった約35万円を、気仙沼市長に届けた。
地域包括ケアの活動に使ってほしいとお願いした。
介護セミナーでは、地域包括ケアとは何か、介護の心とは、認知症をどう乗り越えるか、そんな話をした。
たくさんの方が来場、気仙沼大島から船でわざわざ聞きに来てくださった方々もいた。
昨年の5月、大島に巡回診療に行ったり、老人施設の春圃苑にうかがった。
この施設は定員以上最大110人ほどの被災した寝たきりの高齢者を受け入れ、長期にわたって看てきた。
そのことを新聞に「まだまだ看護、介護、リハビリの応援やボランティアが必要」と書いて以来、ときどき連絡を取り合っている。

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春圃苑では、人が集まりだしているが、気仙沼では介護士が100人近く足りない。
大王製紙のアテントのおむつを寄付しにいった新設の特養では、70人の定員のところ、
介護人材がいないため30床しか開いていなかった。
人材不足はたいへん大きな問題である。
現場のスタッフたちは明るく、一生懸命働いている。
一人ひとりに聞くと、楽しい、やりがいがあると言いながらも、人手がないため、燃え尽きそうなほど忙しいのも現状のようだ。
これからは、介護を支える人材を確保するため、介護の仕事のやりがいについて、多くの人に知ってもらうことも重要だと思った。

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2016年2月 3日 (水)

鎌田實の一日一冊(269)

「女性と子どもの貧困~社会から孤立した人たちを追った~」(樋田敦子著、大和書房)
「なぜ普通の主婦がヤミ金にまで手を出してしまうのか
なぜ普通の学生が奨学金を返せず借金地獄に陥るのか
誰でも「転落」する時代」
帯には、センセーショナルな文句が踊る。
離婚、がん、奨学金、介護、失業、DV……些細なことをきっかけに、一気に人生が変わった人たちを丁寧に取材して書いている。

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子育てを支援する認定NPO法人カンガルーの会の理事長で小児科医の澤田敬氏に、
虐待について聞いているところがおもしろい。
「赤ちゃん部屋のお化け現象」というのがあるらしい。
母親の解決されていない幼いころの心の「物語写真」が浮かび上がり、
訳が分からなくって腹だたしくなった母親は、赤ちゃんを怒鳴りつけてしまう。
赤ちゃんは母親に巻き込まれて、さらに泣く。
そして、母親はさらに怒鳴りつける。
「物語写真」とは、心のカメラでいろんな場面を撮ったもので、それは記憶となる。
それぞれの人生のなかで、みんなこの「心のカメラ」をもっているのではないか。
おそらく、おなかのなかの胎児のときから、始まっているのかもしれない。
それは、「胎児の世界」を著した恩師三木成夫先生から教わったことだ。
いろんなことを考えさせてくれる力作である。

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2016年2月 2日 (火)

鎌田健康塾(4)

1/27の「鎌田健康塾」(2)で、ニューヨークのレストランで始まった“塩分”表示について書いたが、
この記事について、アメリカ在住の方からメールをいただき、
「塩分」ではなく「ナトリウム」だとご指摘をいただいた。
ぼくのミス。訂正したいと思う。
参考にしたロイター通信の翻訳には、
「2300㎎以上の塩分を含む場合に表示が義務付けられる。
2300㎎は、多くの栄養士が一日の摂取上限として推奨している量で、ティースプーン一杯程度。
これ以上の塩分を含むメニューには黒い△のなかに、ソルトシェーカーの絵柄がかかれた表示が加えられる」
と書かれていた。
それを読んだぼくは、「塩分」と思い込んでしまった。
ご指摘をいただいてから、あらためて原文を読むと、「sodium」と書かれていた。
「ナトリウム」の意味だが、「塩化ナトリウム」を指すこともあり、あいまいな点もある。
そもそも、ナトリウム(Na)と、塩化ナトリウム(NaCL)は違うものだ。
心臓に大きな問題を起こし、むくみを起こし、血圧を上げたりするのはナトリウムのせい。
だからアメリカでは、ナトリウムに注意している。
だが、日本では食塩(塩化ナトリウム)に注目してきた。
言うまでもなく、食塩はナトリウムを含むので、間違いではないが、本当は、日本でもナトリウムを直接的に問題視したほうがすっきりする。
言い訳ではないが、ロイターニュースの翻訳ミスも、ぼくが思い混んでしまった背景にも、こうしたアメリカと日本の違いもあるのだ。

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ナトリウムは、食塩(塩化ナトリウム)に換算できる。
 ナトリウム(㎎)×2.54=塩化ナトリウム(㎎)
つまり、ニューヨークのレストランが表示を義務付けた「ナトリウム2300㎎」以上のメニューは、
「2300×2.54」で食塩(塩化ナトリウム)5842㎎という、とても高塩分のメニューということになる。
一食で5.842g。仮に三食とると17gを超えてしまう。
せっかく表示を義務付けるなら、もっと少ない値から表示をしたほうがいいと思う。
ちなみに、WHOが発表しているナトリウム摂取の新しいガイドラインは、一日2000㎎以下。
食塩(塩化ナトリウム)に換算すると、約5グラム以下だ。
WHOのガイドラインを守るには、かなりしっかり注意しなければならない。
これを守っている都道府県は日本には一つもない。
ご指摘いただいたアメリカ在住の方は、
心不全をおこし、一日当り1000㎎以下の低ナトリウム食事療法を行って元気になったという。
重要なご指摘をいただき、感謝である。
また、アメリカでブログ「八ヶ岳山麓日記」を、丁寧に読んでくださっていることも感激だ。
これを機に、「ナトリウム」と「塩化ナトリウム」の話ができたこともよかったと思う。
日本の食品の表示を注意してみると、「NaCL○g」というものと、「Na○g」と表示されるものがある。
高血圧や心不全の人は、上の換算式に当てはめてみるといい。
高血圧でなかなかコントロールできない方、慢性の心不全で悩まれている方など、
厳密な塩分制限、一歩進んでナトリウムに注目してみてはどうだろうか。

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2016年2月 1日 (月)

カマタの怒り(16)

ココイチの「廃棄カツ」を産廃業者が不正横流しをした問題。
産廃業者ダイコーが横流ししたものは中間業者を通じて次々に売られた。
食品の廃棄量は年間1800万トン。
世界には飢餓にあえぐ子どもたちがいるなかで、とんでもないことである。
3分の1ルールといのうがある。
製造日から賞味期限の期間で、残り3分の1になると、できるだけ商店の棚には載せないというルールらしい。
日本は、子どもの貧困率16.3%といわれる。
賞味期限が近いものが売れないなら、
できるだけフードバンクにまわし、賞味期限内に子どもにわたるようにしてあげるべきである。

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消費者にとって、安い商品は魅力であるが、食の安全性も大事なものである。
安く売られる理由をきちんと明記してあれば、納得しやすい。
形が崩れた、大きさが規格に合わない、など安全性や味に問題がなければ、
ワケあり商品はかえって人気がある。
理由が明記されてないものに関しては、なぜ安いのか確認する習慣も必要になってくるかもしれない。
食品を扱う業者は、「もうかればいい」ではなく、食の安全に心を砕いてほしい。

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