聴診器でテロと闘う(41)
マルチシムーニ教会の4つの診療所は64人の人々で1年半維持されてきた。
その多くはモスルやカルクーシュなどでISに迫害され、着の身着のままで逃げてきた人たちだ。
ドクターから掃除のおばさんまで、職種に関係なく、半年以上働いた64人のスタッフの労をねぎらって、一時金を渡した。
このお金は日本のキリスト教徒の医師団が募金活動をし、JCFとJIM-NETに寄付してくれたものだ。
ボランティアとして働いたこの人たちも、長期化にともなって、望郷の念が強まっている。
診療所のドクター・ハナにインタビューした。
「本当につらい状況だった。
何が起きたかわからなかった。
自分の命を守ることだけで精一杯だった。
しかし、小さなテントのなかで熱を出し、死にかけている人を見て、
自分が医者であることを思い出した。
産婦人科医であるが、人々の命を救わなければと思った。
日本人のおかげで、薬を供給してもらい、避難民の人々の健康を守ることができた」
ISから逃げて避難生活をはじめたときの様子を語った。
診療所を支えてきたドクター・ハナだが、
彼女の7歳の子どもが糖尿病になってしまったという。
発病にはストレスが関係しているようで、遺伝性の糖尿病ではないようだ。
日本でも南相馬と相馬で大々的な調査が行われ、大人ではあるが被災者の6割に新しく糖尿病が発生していることがわかった。
避難生活ではストレスが大きい。
同時に、救援のために配られる食糧は糖質に偏りがちである。
国連では、小麦と砂糖と油を配った。
これも、糖尿病のリスクを高める一因ではないか。
ドクター・ハナは難民となり、息子とともに、ドイツへ行く決意をした。
「この国ではキリスト教徒は受難である。
ドイツで医師としての仕事を見つけられるかわからないが、とにかく決意した。
今日はうれしい。
こうやって表彰状と金一封をもらえた。
日本人に感謝します」
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