聴診器でテロと闘う(57)
ユーイング肉腫の7歳の男の子の相談を受けた。
再々発である。
3年前、シリアのダマスカスで手術を受けた。
その後、再発したが、シリアでは内戦状態で治療ができないため、
ドホークの病院に来て化学療法を受けた。
しかし、最近になって再発。
脳が大きく腫れあがるようになった。
CTを見せてもらうと、かなり大きな腫瘍である。
アルビルの私立病院で手術してくれるという。
公立病院では3か月から半年待ちで、いつになるかわからない。
脳の腫瘍はかなり大きいので、本当に手術が有効かどうかわからない。
日本に帰って脳外科医にCTを見てもらうつもりだ。
手術の費用は、公立病院はタダだが、私立病院では150万円かかるという。
難民にとっては、つらい判断である。
父親も母親も兄弟たちも、シリアのカミシリから出られず、
祖母がこの7歳の男の子を連れて逃げてきた。
祖母のつれあいは、つい最近ISに殺された。
いくつものの悲劇が重なり合っている。
戦争が起こると、子どもたちはまともな医療が受けられない。
もちろん、医療をもってしても、すべての命を助けることはできない。
でも、助かる可能性のある命は救うべきである。
救命できない場合も、納得できるということが大事だ。
戦争は、ベストを尽すことも、納得することも邪魔している。
どんな理由があっても、戦争をしていいことはない。
シリア内戦が始まって5年。
ばかげた戦争のために、犠牲を出すのはもうたくさんだ。
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