« 鎌田實の一日一冊(280) | トップページ | 義肢の支援にご協力ください »

2016年4月20日 (水)

鎌田實の一日一冊(281)

「セシウムの雨」(今野金哉著、現代短歌社)

福島で生活する不安やつらさを短歌に詠んだ。

                  ◇
避難して三年経てる 君言えり 酒に溺るる日々うとましと

戻れない もう戻れない 戻りたい 三者三様に今を苦しむ

廃炉には何年かかるものなのか 「長い戦い」と老いの言ひたり

原発の廃炉行程の先見えず 今日も汚染水漏るる事故あり

遅々として進まぬ除染にいらだつか 君もアル中の風に入りゆく

三十年のちの廃炉を見て死なむ と思えど残る命少なし

自らの命絶たむと思えども 東電憎くしこのまま死ねず

セシウムの雨降る街に並びつつ 水求めむと幾時間待つ
                  ◇

福島第一原発の事故発生当時から続く避難の様子、その後の廃炉作業、そして町への帰還が少しずつはじまるなかで、苦しむ人たちの思いが迫ってくる。
ぜひ、この歌集を読んでもらいたい。

|

« 鎌田實の一日一冊(280) | トップページ | 義肢の支援にご協力ください »

書籍・雑誌」カテゴリの記事