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2016年4月22日 (金)

伊那谷の老子を偲ぶ

伊那谷の老子と言われた加島祥造さんが昨年12月、92歳で亡くなった。
彼と対談したことがある。
「ぼくの文学の仕事はしゃべり言葉のリズムが中心です」
と言われた。
ぼくも本を書くときには、息づかいを意識して文章をつくってきた。
一息で読み切れる短いセンテンスにこだわっている。
同じだなと思った。
「宇宙に満ちているエナジーとぼくたちはつながっているんだ」
「今ここ、が大事なんだ」
「生きるという欲望は絶対で、子孫を残すという欲望も絶対。
なおかつという部分に関して“がんばらない”とか、“求めない”ということがあるんです」
ぼくの「がんばらない」は、老子の中庸に通じると話してくれた。
「無為無策と無作為では質が大きく違うけど、本当は同じことを言っているんだよ。
鎌田さんの本『いいかげんがいい』じゃないけど、いい加減とよい加減が同じことを言っているのと同じなんだ。
実は無作為という言葉ほど東洋の芸術や人間の在り方において重要な言葉はないかもしれない。
無造作も無邪気も、いい言葉なんですよ」
邪気がない、あるがままを受け入れて自然体で生きる。
こんな生き方が老子のいう「宇宙につながる」ということなんだろうと思った。
大切なことを教えていただいた加島祥造さん。
ご冥福をお祈りします。

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