鎌田實の一日一冊(284)
「AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声」(非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ、長沖暁子編著、萬書房)
非配偶者間人工授精のことをAIDという。
日本では1948年から、不妊症の人の生殖医療として使われるようになった。
家族制度が色濃い時代、「子どもがいない」ということは冷ややかに見られていた。
その風潮は、今も少しは残っている。
もっと多様な生き方があっていいはずなのに。
不妊の原因の半分は男性にある。
夫の精子に問題があった場合、だれかわからない人の精子を使って人工授精し、
妻の子宮で育て、出産する。
AIDを行っても、多くの妊産婦は近所の産婦人科に受診し、出産することになる。
周囲からはわからない。
生まれた子どものなかには、自分のアイデンティティを探して苦しむ人もいる。
世界では子ども人権条約のなかで、子どもは親を知る権利があるといわれている。
「親自身も隠すことが息苦しく、夫婦の気持ちにもズレが生じることがある。
親たちも孤独なのです」と語るのは、Iさん。
「日曜はがんばらない」に出ていただいた。
スウェーデンやオーストラリアなどでは、親のことを知りたい子どもには、権利として、親のことを知ることができるように変えてきた。
日本もそうすることが大事だと思う。
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