鎌田實の一日一冊(286)
「政府は必ず嘘をつく増補版」(堤未果著、角川新書)
著者の話は衝撃的だ。
2002年に導入された住基ネットは、2000億円もの税金が投入されたにもかかわらず、14年経った今も住基カードの普及率はたった5パーセント。
いったい、これだけの税金はだれの役に立ったのか。
地方自治情報センターに総務省から天下りした役員たちに高額報酬があり、批判が集まりだしたときに、渡りに船とばかりにマイナンバーが登場した。
2015年にさらに700億円の予算を計上してマイナンバーが始まった。
日本はこんな無駄なことをやっている余裕があるのだろうか。
著者は、国民皆保険制度の存続危機にも警鐘を鳴らす。
政府は、国民皆保険制度をつぶさないと何度も強調している。
TPPで、アメリカの高額な新薬が持ち込まれ、日本で消費されても、
国民皆保険制度があるため、高くても新薬は使われる。
だが、医療費が膨大になり、将来的に高い薬が保険外になったりしたら、
民間の保険会社にでも入らなければ、十分な医療が受けられなくなる。
すでにがん保険は、アメリカのものが日本を制圧している。
ISDS条項が妥結されると、これからとんでもないことが起きてくる。
現在、中医協が薬価をコントロールとしているが、そこへアメリカが介入してくる可能性がある。
国民皆保険制度は守られても、アメリカのグローバル企業が好き放題をしていく。
おもしろくて、怖い本である。
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