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2016年5月 6日 (金)

チェルノブリ30年から何を学ぶか5

ゴメリ市から東へ約30分行ったところにゴメリ州ベトカ地区がある。
放射能のホットスポットが点在し、強制移住地域になったため、4万の人口が2万に減った。
そのなかに、バルトメトフカ村がある。
かつて2000人が暮らしていたが、今は4人である。
村を訪ねると、厚い眼鏡をかけた70歳のレイバさんが出てきた。
ぼくの手を握り、親しげに話しかけてくる。
人恋しいのだろう。
話し相手がほしいようだった。
86歳のエレナさんの家に招かれた。
エレナさんは、強制移住で都市部に新しい家を与えられた。
だが、見ただけで住む気にはなれなかった。
「私の家はバルトメイフト村」と言う。
家の中は、とてもきれいにしてあった。
色鮮やかなベラルーシ刺繍をたくさん飾っている。
自慢なのだろう。

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あと二人の住民は、パートナーになって暮らしている。
エレナさんに、さびしいかと聞いた。
さびしい、さびしいと繰り返した。
「それでもこの家を離れたくない、ふるさとはここだから。
ここ以外のところへ行ってもいいことなんてかなった。
バルトメイフト村を出てった人たちもさびしいと言っていた」
原発事故さえなければ、こんなさびしさを味わうことなんてかなっただろう。
70歳のレイバさんはこう言った。
「さびしいときもあるし、さびしくないときもある。
でも、自分でここで生きることを決めたんだ」

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「サマ」という言葉が何度も出てきた。
「自分」という意味だ。
強制移住地で住んではいけないはずなのに、そこに住んでいる人を「サマショーロ」と言う。
以前、「わがままな人」と通訳に聞いた。
今、日本でも「サマショーロ(わがままな人)」と書かれているものが多い。
ぼくが、出所かもしれない。
しかし、よく聞いてみると、「サマ」は「自分」、「ショーロ」は「村」。
自分で村に住むことを決めた人という意味である。
自己決定をした人たちのことで、決して批判的な言葉ではない。
村では、サマゴンという酒をつくっている。
「ゴン」は「つくる」という意味、つまり、サマゴンは自分で造った酒ということだ。
ここの人たちには、みんな「自分」がある。
住んではいけないところに住み、密造酒をつくっている。
自分の生き方を、自分で決めている。

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