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2016年5月19日 (木)

チェルノブイリ30年から何を学ぶか16

ミンスク甲状腺がんセンターの所長で、ミンスク第一病院の腫瘍外科のユーリ・ジェミチェク医師は、毎年1000人の甲状腺がんの手術を行っている。
甲状腺がんについて聞いた。
                    ◇
「原発事故当時、子どもだった人は今30、40代になっている。
その人たちからも甲状腺がんが出ている。
もちろん、原発事故と関係のない甲状腺がんもある。
子どもの甲状腺がんが毎年、22~25人出ている。
人口900万人で、子ども22人くらいに甲状腺がんが出ているということだ。
放射性ヨウ素(131)の半減期は8日なので、原発事故との関係は考えられない。
福島の甲状腺検診では、1巡目でがんは100人、がんの疑いが15人出た。
日本のスクリーニングは精度が高いので、検診をしたために見つかった可能性が高い。
スクリーニング効果だと考えられる。
2巡目でがんが16人、がんの疑いが35人見つかった。
それでも、現時点では何ともいえない。
しかし、今後、さらにがんやがんの疑いのある子どもが増えてくるとなれば、やはりスクリーニング効果とはいえなくなる。
ベラルーシでは放射線の汚染が低いところでも、甲状腺がんは見つかっている。
放射性ヨウ素が刺激となり、長期間時間をかけてがんになる可能性があるという。
福島で放射性ヨウ素の放射線量が低くても、長期間、検診を続けたほうがいいだろう」

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--検診で見つかったがんについて、日本では「見つけなくていいがんを見つけた」という意見もあるが、どう思うか聞いた。
すると、ジェミチェク医師は、こう答えた。
「子どもの甲状腺がんはリンパ腺転移をする確率が高いのが特徴。
ベラルーシで、手術をせず様子をみた例と、手術をした例では、子どもの寿命は格段に違った。
手術をすればほとんどの場合、高齢者になるまで健康に生きることができる。
見つけたがんは必ず手術したほうがいい。
数年経過をみれば、次にする手術が大きな手術になる可能性が高い。
だから、見つかったらすぐに手術をすすめたい。
それが30年間、チェルノブイリで甲状腺がんと闘ってきた自分の考えだ」という。
放射性ヨウ素の被ばく量が低くても、甲状腺がんになる可能性があることは、福島にとって頭に入れておくべきことだと思う。
コストと成果の両方を考えて、日本でも長期間のフォローしていく必要がある。
「ベラルーシではコストの問題で、ゴメリを中心にした高汚染地域でのみ甲状腺検診を行っている。
ゴメリでは今後も検診を継続していく。
日本は経済的に余裕があるので、福島県全体で検診を継続していく必要があると思う。
日本全体でやる必要があるかどうかは、コストの問題だ」
ジェミチェク医師から、大切な示唆をもらった。

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