地域包括ケアシステムとは何か2
ある小規模の有料老人ホームを訪ねると、リーダーが駆け寄ってきた。
彼女のお父さんを以前、診させてもらったことがある。
お父さんは、諏訪中央病院で手術してから元気になったが、交通事故で寝たきりになった。
お父さんを看た後、お母さんか寝たきりになったという。
今から15年前、ぼくたちが「福祉21茅野」という、市民を中心にした新しい地域包括ケアシステムを考えていたときだった。
そういう空気が町中に広がっていたのかもしれない。
彼女はすばらしい発想をした。
「介護に疲れ、このままでは、とんでもない事件を起こしてしまうかもしれない」と危機感を持ち、
自宅を改造し、5人が入れる有料老人ホームをつくったのだ。
家賃と光熱費は必要だが、入所時の費用はいらない。
そして、その横に、24時間体制の訪問介護ステーションをつくった。
利用者は、自分の母親のほか4人の合計5人。
昼間は3人の介護士、夜は1人の介護士がみる。
介護チームは23人、看護師もいる。
諏訪中央病院の元婦長も相談役になっている。
往診をしている医師の依頼で、嚥下の診断や今後の見込み、訓練などの評価をしてほしいという。
ふだん、このホームでは、食事の前、誤嚥を防ぐために、
この方が好きなイチゴを噛んで食べてもらう。
食べるという意識をもち、集中力を高めることで、誤嚥を防ぐためだ。
それでも嚥下が難しくなってきており、ぼくたちが呼ばれた。
在宅でできる内視鏡をもって、声帯や食道の動きを観察しながら、
食べるときの体位で変化があるか観察した。
みそ汁は明らかに気管に入っていることがわかり、要注意であることがわかった。
どんな食べ物がいいか注意しながら、あるポジションにすると、右側の食道壁を通って、胃のほうに流れ落ちることがわかった。
若い内科医が絵を書きながら、介護士やスタッフ、家族にわかりやすく説明し、教育すると、みな納得できたようだ。
きちんと安全に食べるために必要なことをおさえながら、
どんなに注意しても万が一のことがあるかもしれないことも確認。
そして、祭りの日など、特別な日には、患者さんが好きなカツを食べられるようにしたいね、という声も出た。
その旨を主治医に報告し、主治医もその方向で診ていくことになる。
ぼくも、この患者さんが笑顔を取り戻せるか楽しみである。
それにしても、このホームではいいケアが行われていた。
近所の子育てが終わった人たちが介護の勉強をしながら、こうやってお年寄りを助けている。
とても勉強になった。
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