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2016年5月27日 (金)

6年ぶりの再会

長野県の飯田に講演に行った。
患者さんが6年ぶりに訪ねてきた。
肺がんで、難しい場所にあったため、手術ができないといわれた。
抗がん剤治療を受けていたが、飯田から茅野の諏訪中央病院に予約をとってやってきた。
「たいへん混んでいる外来で、私の診察に30分も割いてくれた」と当時を振り返る。
彼女は、免疫療法のひとつである樹状細胞治療を受けたいと話したという。
それに対し、ぼくはこんなことを言ったらしい。
「○か×かではなく、△というところでしょう」
ぼくは覚えてない。
だが、どうしてもというならば、信州大学付属病院がやっている樹状細胞治療が信頼できる、と言ったという。
これを開発した会社の社長が、諏訪中央病院でパート医をしていたことがある。
診察の最後に「あなたはポジティブな方だから、大丈夫ですよ」とぼくがいい、握手をしたのが忘れられないと話してくれた。

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6年経った今、腫瘍は消えていないが、成長はしていない。
抗がん剤治療はいまも受けているという。
抗がん剤がすごく効いているのだろう。
樹状細胞療法も2年間やったが、少しは役に立ったのかもしれないが、科学的にはわからない。
免疫療法は、まだ開発段階であるが、免疫チェックポイント阻害剤という新しいタイプの薬も出てきた。
がんと闘える武器が少しずつ増えているのはいいことである。
それでもすべてのがん患者を助けることはできない。
医療は、そういう限界をいつも痛感する。
だが、そのなかで、彼女のように「元気です」と久しぶりに顔を見せてくれる患者さんがいることは、とてもうれしいことである。

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