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2016年6月 7日 (火)

地域包括ケアシステムとは何か13

脳幹梗塞の中年男性のところへ往診に行った。
介護する部屋は、バリアフリーで広々として気持ちがいい。
彼は、ロックドイン症候群(閉じ込め症候群)。
大脳皮質は障害は受けていないが、脳幹部に障害を受けているため、
わずかに口が動く、そして少しだけ飲み込むことができる。
パソコンを使うと、複雑な会話もできる。
でも、奥さんは、彼のわずかな口の動きで、言おうとすることがほぼわかるようだ。
栄養は主に胃瘻からとり、あとは好きなものを食べさせているという。
壁には、彼の作った俳句がびっしりと貼られている。
自由律俳句の山頭火のような作風だ。
「わがままか とにかく帰ろう自宅へと」
どんなにつらくても、家がいいと思っている。
そんな彼を、家族が必死に支えている。
奥さんに「頑張り過ぎないように」と言うと、
「ショートステイはあまり利用したくない。この人がどんなに家がいいかわかっているから」という答えが返ってきた。
それから、奥さんは2人のなれそめや、子育ての話を聞かせてくれた。
夫はそれを聞き、泣き出した。
青年のころからずっと一緒だという。

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彼は、ロックドイン症候群になって体は不自由だが、自由律俳句をつくるなど、心は自由だ。
たくさんのいい俳句ができていた。
ぼくがほめると、2人はうれしそうに照れた。
「パイン みそ汁 あんパン せんべい 甘酒 レーズン」
これも、彼の俳句だ。
何度も声に出して繰り返すと、いいリズムがついてくる。
「すごいね」と言って、お宅を出ようとしたら、
奥さんが「今日は力をもらいました」と涙目で言った。
地域包括ケアのいちばんの要は、自己決定できること。
自分の生き方を自分で決められる。
それを支えるためにサービスが入る。
彼がパインやみそ汁、あんパンなどを食べられるように、諏訪中央病院からST(言語聴覚士)という嚥下の訓練士がときどき通っている。

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