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2016年6月 8日 (水)

地域包括ケアシステムとは何か14

間質性肺炎で在宅酸素療法を行っている80代の女性を往診した。
数メートルはつかまり歩きができる。
不自由なことも多いだろうが、彼女は「一人で生活していきたい」と考えている。
もちろん、介護施設や病院にいたほうが安全なのではないか、と心の迷いもある。
しかし、自分の暮らしができるという点は譲れないようだ。
たとえば、施設や病院では夜9時に消灯になる。
すると、夜中に目が覚めてしまい、なかなか眠れない。
これは大事な問題だ。
80歳くらいになると、睡眠時間は6時間くらいか。
9時に寝ると、夜中の3時には目が覚めてしまう。
朝6時に起床するなら、11時くらいまで本を読んだり、音楽を聞いたりする自由な時間があってもいいはすだ。
自宅では好きなことができる。
施設や病院は共同生活のルールがあるが、自由に過ごせるというのが本来の姿だと思う。

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彼女が利用しているサービスはそれほど多くない。
これから、訪問入浴サービスが来るという。
買い物は、時々ヘルパーに頼む。
冷凍野菜ラーメンを買ってきてもらって、冷凍庫に入れている。
一食はラーメンを食べ、次の食事はそのスープに冷やごはんを入れておじやのようにして食べる。
炊事も、簡単なものだが、自分でやる。
そうやって、やりくりしながら、在宅で暮らそうと思っているという。
彼女は、とても聡明な人だ。
周囲の人への心配りもすごい。
見学をしている医学部の学生さんに、「よく勉強して、いいお医者さんになって」と励ます。
いつ、突然、お迎えが来てもいいように、荷物も整理しはじめている。
「荷を軽くしている」
にこにこしながらそう言う、素敵なおばあちゃんだ。
一人暮らしで生活がきつくても、丁寧に生活している。
人生を投げ出していない。
この人は最後の最後まで、きちんと彼女らしく生きるだろう。
自分の人生を、自己決定しているところがすばらしい。
みんながもっと、自分の人生観を語るようになればいいと思う。
地域包括ケアは、それぞれの人生観をかなえ、支えるためにサービスを展開していくのが目的だ。
つまり、地域包括ケアは、その人の人生を応援するシステムなのだ。
「なんであんなに達観しているのかね」と、思わず奥先生に聞いてしまった。
奥先生は、彼女の主治医として、何度もICUで、重症の喘息発作や心筋梗塞など、命の修羅場をくぐり抜けてきた。
退院した後、主治医が往診に来てくれること自体も、この方の心の支えになっているように感じた。

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