地域包括ケアシステムとは何か28
71歳のYさんは、直腸がんが膀胱や仙骨に転移した。
直腸と膀胱がつながって、排泄が苦しい状態になっている。
それでも前向きで、いつでも明るい。
ぼくが病室に入ると、よく眠っていた、
声をかけずに出ようとしたら、気が付いたようで、目と目が合って、にこっと笑った。
「先生、今日は焼き肉だ」
そう、この日は緩和ケア病棟の焼き肉会だ。
近々お迎えが来ることを受容している。
全部了解している。
家族はいない。
いとこやおばさんなど親戚がよく看てくれている。
持っているお金をどうするか決めた。
葬式の仕方も決めたという。
「今日は、焼き肉と一口だけのビール」
みんなで乾杯。
Yさんは、みんなの幸せを願っているとスピーチした。
いつも笑顔が零れ落ちそうである。
人生を肯定的に見ている。
楽しかった、いい人生だった、といつも彼はいう。
久しぶりの焼き肉をおいしそうに食べた。
◇
地域包括ケアは、できるだけ地域で診るステムであるが、
病気によっては、在宅ではむずがしい場合がある。
がん性の腹膜炎、腸閉そく、吐血などである。
そのためにも、二次医療圏に一つ、緩和ケア病棟があったほうがいい。
ほぼ在宅、苦しいときは上手に病院を使う。
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