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2016年6月 4日 (土)

鎌田實の一日一冊(287)

「認知症の私からあなたへ 20のメッセージ」(佐藤雅彦著、大月書店)
51歳で若年性アルツハイマー病と診断され、医師からは施設に入るよう勧められたが、自由に生きたいと思い、一人暮らしを続けている。
少し不便でも、時々間違っても、自由に生きることを選んだ。
自分の病気のことを隠さず、たくさんの仲間から応援を得ている。
孤独を楽しんでいるが、孤立してはいない。
認知症になるとできないことが多くなったが、できないことにこだわらない。
したいことをする、ということにこだわっている。
そんな彼から学ぶことは多い。
「できなくなったことを嘆くのではなく、できることに目を向ける」
「いまの苦難は永遠に続かないと信じる」
「自分が自分であることは何によっても失われない」
いい言葉がたんさん書かれている。

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佐藤さんからは週2回ほど、メールがくる。
彼がぼくのことを気に入ってくれたのは、彼の話をじっくりと聞くからではないかと思う。
「私には私の意思がある」
なのに、認知症という理由で、周囲の人が代わって答えようとする。
認知症の専門医ですら、本人ではなく、家族など周囲の人に問いかける。
本人にとってはつらいことだ。
佐藤さんのすてきな本ができた。
巻末にぼくのエッセイも収録されている。
認知症の人にも、家族の人にも、介護のプロの人にも読んでもらいたい。
認知症とは何か、目からウロコである。
そして、彼の生き方は認知症があっても、なくても、参考になる。
生きる哲学がたくさんある本である。

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