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2016年6月30日 (木)

地域包括ケアシステムとは何か29

現在の地域包括ケアシステムを支えているのは、大きな意味で介護保険制度である。
もちろん、医療保険制度でも回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟がつくられたりしている。
訪問看護や訪問診療は、多くの場合、医療保険制度のなかで行われている。
しかし、地域包括ケアを支えているのは介護保険である。
この介護保険制度がどのようにしてつくられたかを紐解いていくと、地域包括ケアが何を目指しているのかが見えてくる。
「介護保険制度史」(社会保険研究所、4600円+税)という本が出た。
制度以前、「家族介護を大事にしよう」という意見に対して、「家族を大事にしながら、できるだけ社会的介護にするのだ」という議論が起きたこと。
介護予防やリハビリに力を入れようとしたが、うまくいかなった反省点も載っている。
24時間対応の大切さや各種のサービスの充実の大切さも書かれている。

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前院長の故・今井澄さんは、野党に身を置きながら介護保険に積極的に取り組んだ。
与党側が保険料の負担の軽減を訴えて、選挙の道具にしようとしたとき、「中東半端な介護保険をつくるな」と述べているのが面白い。
介護保険料を上げさせないために、入院や入所は今までどおり社会的措置で行い、
在宅ケア系のみ介護保険でやったらどうかという姑息な意見が出ていたときに、
真っ向から反対し、「すべて介護保険で行うべき」とした。
老人病院や老人ホームを従来のように措置で扱うことになれば、日本中を収容所列島で扱うようになる、自立支援にもっと力をおくべき、と訴えた。
当たり前のことを言う人がいなかったとき、志が高い政治家がいたことは大きかったと思う。
いま自民党は選挙を前に、再度、消費増税の延期をした。
選挙に勝つためならば何でもするという近視眼的な考えが、この国をしっかりした柱のない国にしてきた。
「介護保険制度史」は、そういう状況のなかで、志高く、何とかまっとうな介護保険制度をつくろうとしたあたたかな物語である。
とてもわかりやすい。
少し高いが、地域包括ケアを勉強している人にはすばらしい参考書になると思う。

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