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2016年7月 2日 (土)

鎌田實の一日一冊(291)

「ねこのおうち」(柳美里著、河出書房新社)
柳美里さんの2年ぶりの小説。
この作家のすごさがよくわかる作品だ。
著者が生き物が好きなのは、彼女の作品をたくさん読んできて知っている。
世の中猫ブームで、多くの写真集などが出ているが、写真集だけではわからない猫の大変さや愛が、
美しく描かれている。
ちなみにぼくは猫好きではない。
犬好きでもない。

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中盤からぐいぐいと引き込まれ、いろいろなことが仕込みまれていることに気付く。
そして、ついついもう一度読みたいという気持ちになる。
簡単に書かれていたことの裏には、人間と人間の関係があり、人間と猫の関係があり、猫と猫の関係がある。
その一つひとつがベールをはぐように見えてくる。
人間という「秘密」をもった生き物が、どれほど猫に支えられているかがみえてくる。
この作家は、被災地の南相馬に移住した。
そこでお会いしたとき、とても生き生きとしていた。
この作品にも、彼女がもつ生き生きとした力があふれ、読む人に元気を与えてくれる。
二度読み終わって、人間ていいなと思った。

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