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2016年7月11日 (月)

鎌田實の一日一冊(293)

「ピレネーの城」(ヨースタイン・ゴルデル著、NHK出版)

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ゴルデルはベストセラー「ソフィーの世界」の作者。
この作品は、恋愛小説であり、ミステリーであり、哲学書である。
とても切ない。
現実と霊的なもの、宇宙と地球、肉体と魂。
かつて5年間同棲していた二人が、30年ぶりに再会したのを機に、メールをやりとりする。
魂から魂に向けて、文章をつづっていく。
見えないものをどう信用するか、二人の格闘が続く。
グリアム・グリーンの「情事の終わり」では、神の存在を信じるかが語られるが、
この作品は、愛についての小説である。

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タイトル「ピレネーの城」は、巨大な岩が浮遊するルネ・マグリットの絵である。
幻想的で、いろんな想像が湧いてくる。
浮遊する岩の上にある城に、どうしたら到達することができるのか。
想像力だけがその方法である。
人間というやっかいな生き物のなかに、どうしたらたどり着くことができるか。
ゴルデル、うまいなと思った。

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