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2016年7月 1日 (金)

地域包括ケアシステムとは何か30

緩和ケア病棟を回診していたとき、摂食・嚥下障害看護認定看護師とばったり出会った。
そのとき、ある患者さんのことに話題が及んだ。
脳幹部梗塞で嚥下障害がある患者さんだ。
                     ◇
往診のとき、患者さんの手の届くところに、推理小説があったのに目が留まった。
テレビはベッドからかなり遠くにある。
テレビよりも、本のほうが好きなのではないか、と思った。
この患者さんは、大脳皮質はやられていないので、集中力さえあれば、本を読める可能性がある。

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本人に、この推理小説を読んでいるのかと聞いてみると、
案の定、本人が読んでいるという。
しめた、と思った。
介護している息子さんに、
「図書館で本を借りてきたあげたら、お父さんはうれしいんじゃないか」
と提案した。
                     ◇
その後、看護師が訪問し、息子さんから様子を聞いた。
「父は何もできない人と思いこんでいたが、鎌田先生に本が読めるかもしれないといわれて、図書館で本を借りてきた」
図書館の本を見せると、「昔、読んだことがある」と言われてしまった。
「でも、父はうれしそうだった」
「もう一回読むよ」と言われた。
介護の日々で、あまりいい会話ができていなかったが、久しぶりに、親子で大人の会話ができるようになったという。
「そういえば、父は本を置いている部屋を2部屋ももっていた。
また本を読みだしてくれ、父のすてきな一面を思い出した」
そう息子さんは語ったという。
この話を聞いて、ぼくはうれしくなった。
今日より明日、成長していくことができるのが、地域包括ケアの願いでもある。

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