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2016年10月

2016年10月31日 (月)

鎌田写真館~ハロウィン

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諏訪中央病院の庭にも、カボチャのランタン

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2016年10月30日 (日)

鎌田實の一日一冊(304)

「老夫婦が壊される 老老介護の地獄度と劣化する社会保障」(柳博雄著、三五館)
著者は70代のパーキンソン病で、ヤール重症度Ⅴ度、要介護4。
パーキンソン病の薬が効いたり、効かなくなったりする現象をオン・オフ現象というが、
突然、薬が切れてまったく動けなくなったりする。
トイレに行くことができたのに、帰りにオフになり、そこで動けなくなってしまう。
そんな状態の彼を、妻が介護していたが、妻も腰痛症で倒れて要介護2になる。

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老老介護は簡単ではない。
介護保険のサービス費用は、次々に値上げされていく。
要介護3以上でなれば、特養には入れない。
夫婦で特養に入れればいいが、空きもない。
老々介護はとんでもなく大変であることがこの本を読むとよくわかる。

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2016年10月29日 (土)

地域包括ケアシステムとは何か64

医学生たちが地域を救うアイデアを出し合った「地域包括ケア甲子園」。
ユニークな発想の案が出た。
「ドクターG研修会」を地域の目玉にするというアイデアを出したグループも。
これは、NHKのドクターGに出るような先生に来てもらって、医学生らを集めてキャンプをする。
そして、本別町の魅力を知ってもらう。
これに近いアイデアは、ほかの班からも出た。
「オーロラ病院キャンプ」「満点星空病院キャンプ」など。
オーロラや星空をみながら、有名なドクターにきてもらってキャンプをやったらどうかというもの。定期的に年何回か開する。
メディカルフェスをやったらどうかという案も。
ホームシアターの機器で映画上映会をして、ディスカッションしたり、楽しい企画を考えていくことで町を活性化する。
また、本別で2年、医師として働くと、1年間アメリカの先端医療の病院や、国内を希望する場合は国内の病院で技術を磨き、
本別に戻ってきてもらう制度をつくる、というアイデアもあった。

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今回、地位包括ケア甲子園は急に開催したのだが、
呼びかけに応じてくれる学生たちのおかげで、ユニークな企画がたくさん出た。
第二回はさらに、後援企業なども募って、医学部の医師の卵だけでなく、看護や介護の学生にも参加してもらいたい。
若い人たちの力でこの日本を変えていく面白い核になってほしい。
この模様は、いずれ、日本テレビのニュースエブリや介護専門誌「おはよう21」で目に見える形で報告されると思う。
期待してください。

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2016年10月28日 (金)

地域包括ケアシステムとは何か63

「地域包括ケア甲子園」では、本別町側では高橋町長が審査員長、地域包括ケア研究所側では、鎌田が責任者となって理事らが審査した。
医学生たちからはユニークな案が出されたが、「トリプルアクセル」というプロジェクトを企画したグループが栄冠を得た。
こんな内容だ。
人口減少をブロックするための、3つのターンが必要だという。
一つは「×ターン」
エックスターンではなく、バツターンと読むそうだ。
本別は保育園の準備も万端。
シングルで子育てする人を、本別に戻ったり、移住したりするように支援する。
シングルで子どもを育てようとするとき、地域の応援もあり、仕事もあり、みんなから感謝もされる。
子どもの貧困と一人親というのは関連が深い場合がある。
保育所のある風俗店に子どもを預けて仕事をするという現実もある。
子どもを育てながら安定した職が得にくい現実もある。
そんな一人親も介護の勉強をしながら、子どもをのびのび育てることができる。
雇用の問題や子育ての問題、新しい生活など、この×ターンの発想を使えば、おもしろいことが起きてくるだろう。

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場合によっては空き家を利用したシングルマザーのシェアハウスもおもしろい。
子どもは病気になりやすいが、お母さんたちが協力し合ったら、安心のシステムができているくのではないか。
二つ目は「インターン」。
移住には、お試し期間も大事。
一か月でいいから、寝泊まりを確保して、医師や看護師にきてもらう。
すぐに移住を決められなくても、いつか移る人も出てくる。
三つ目が、「Uターン」。
高校生たちに医療や看護、介護の勉強に出てもらって、帰ってきてもらう。
どうすれば、住みたい町になるか、人口減少を食い止められるか。
おもしろい話がいっぱい出てきた。

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2016年10月27日 (木)

地域包括ケアシステムとは何か62

地域包括ケアシステムについて、若い人たちに考えてもらおうと、「地域包括ケア甲子園」を開催した。
都内の10の医学部の学生たち17人が参加した。
5つのブロックに分かれて、地域包括ケアの魅力的な案を考えた。
北海道の本別町の域包括ケアにかかわる職員や高橋町長がスカイプで参加。
町の状態を話してくれた。
本別町では10年以上前から認知症の人たちの見守り隊ができ、認知症の人を閉じ込めず、安心して地域へ出ていけるように、お互いに助け合いながら生きていける町づくりをしてきた。
2015年台風で大雨になったとき、要支援や要介護の人たちを、若い人たちや学生がいちはやく救助にかけつけて、安全なところへ誘導したという。
福祉マップをつくって取り組んでいる。

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人口7000人の十勝地区の町である。
国保病院には常勤医師が4人、医師も看護師も外来や入院患者、透析患者を守りながら、救急外来を維持するのがとても大変な状況にある。
どうしたら医師が移住することができるか。
地方が看護師や福祉従事者をどう確保するか。
将来、死に場所難民を回避するにはどんなシステムがあったらいいか。
まちに住む人がしあわせになるための医療、福祉とは何か。
こんな課題で、医学生たちによるアイデアを競う甲子園が繰り広げられた。

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2016年10月26日 (水)

地域包括ケアシステムとは何か61

介護専門誌の月刊「おはよう21」で、ぼくは連載対談をしている。
今月発売の12月号では、リハビリ専門医の長谷川幹先生の在宅訪問リハビリテーションに同行した。
長谷川先生は、リハビリの専門クリニックの院長をしながら、日本脳損傷者ケアリング・コミュニティー学会の理事長をしている。
高次脳機能障害というわかりにくいが深刻な障がいのある人たちと医療の専門家がいっしょに、学会をつくった。
日本にはあまりないスタイルの学会である。
障がいがテーマの場合は、当事者を入れることが大事だと考えている。
ぼくは、地域包括ケアには当事者の主体性が大事だと思ってこの30年、取り組んできたが、
長谷川先生も同じように考えてきたことがわかった。
長谷川先生も地域訪問リハビリをはじめて30年になるという。
同じような時期に、同じようなことを考えてきた。
日本のいろんなところに熱い志を持っている人たちがたくさんいるということだと思う。

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大企業で幹部を務めた人が脳卒中になり、失語症になる。
言葉の半分くらいしか通じない。
話しても相手に伝わらないから、話すことに自信を失っていた。
訪問で、ぼくはその男性と話をした。
妻の実家の京都までお墓参りに行ってきたこと。
お墓まで坂があり、よろよろして歩きにくかったが、それでも行ってきたという。
そのやりとりを聞いていた長谷川先生から、おほめの言葉をいただいた。
「鎌田先生がうまくひき出してくれた。
京都に行ってきたという達成感を自分の言葉で語るのはとても大切なのんだよ。
自分の状況を言語化するということは、リハビリにとっていちばん必要なことなんです」
興味のある方は、「おはよう21」をご覧ください。

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2016年10月25日 (火)

鎌田實の一日一冊(303)

「男の詫び状」(野坂昭如著、文芸春秋)
吉永小百合や永六輔、吉行和子、瀬戸内寂聴らとの書簡のやりとりが載っている。
「ぼくの言葉を誰かが覚えているかぎり、ぼくは死なない」
野坂昭如は、かっこいい男である。

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「絶筆」(野坂昭如著、新潮社)

倒れてから12年、どんな思いで病気と格闘し、病気とねんごろになり、
それでも日本のことを心配しながら、最後まで無頼として生きた。

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2016年10月24日 (月)

鎌田實の一日一冊(302)

「ドキュメント水平をもとめて 皮革の仕事と被差別部落」(鎌田慧著、解放出版社)
人間は動物とどういう命のやりとりをしてきたか、この本を読むとよくわかる。
動物を食べてきた。
毛皮を利用してきた。
楽器にもなった。
歌舞伎や文楽、浄瑠璃など、微妙な響きの楽器には、動物の皮が張られている。
それを作る人は差別を受けながら、長い歴史のなかで、屠場や革産業など、われわれの生活を支えてきた。

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本書は、熱い志をもって仕事をしている人たちを、静かな目で取材している。
すぐれたドキュメントだと思う。

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2016年10月23日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(303)

劇団唐組58回公演「夜壺」(作・唐十郎、演出・久保井研と唐十郎)
いつも紅テントに行くと、唐十郎さんと会う。
ディレクターチェアを2つ用意してもらって、2人で並んでみることもある。
今回は、風邪っぽいようで、唐さんは来なかった。
2000年の作品。
唐十郎が得意にしている人形の話だ。
幻想的。
唐十郎の世界はいつも、水たまりやマネキン、ブリキのおもちゃから異世界へ入っていく。
つぶれかかったマヌカンの会社の物語である。
清掃車に吸い込まれるマヌカンの手を救うため、清掃車に手を突っ込みかけた主役の女性、それを救う清掃職員。
会社をつぶして、靴屋をやろうとする。
靴とマネキンの足。
唐十郎のこだわりの世界、異世界へと入り込んでいく。

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赤松由美が好演している。
辻孝彦、藤井由紀も元気。
若い役者たちも育ちつつある。
南智章、奥山ばらば、丸山正吾。
かつての麿赤児や四谷シモンのように舞台にいるだけで客の心を奪ってしまうような役者がでてくるといいな。

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エンディングは見てのお楽しみだが、相変わらずすばらしい。
11/6までの、多くは土日に公演。
ぜひ、ご覧ください。

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2016年10月22日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(302)

「母の残像」
ノルウェーのヨアキム・トリアー監督が、ニューヨークを舞台に映画をつくった。
母は戦場カメラマン、3年前、戦場で死をとげた。
その母の回顧展を開くことになった。
夫と息子2人が、シリアでの作品がないことに気が付く。
そして、母の秘密にも気が付いていく。
父はやさしい父親で、不在がちな母に代わって、俳優をやめ、教師になった。
必死に息子たちによりそうが、次男とはどうもウマが合わない。
次男は父と若い教師がハグをしているところを見てしまい、爆発する。
次男には、母の死の真相が語られていなった。
長男は優秀で、大学教授になり、結婚し、子どもが生まれた。
しかし、長男にも、秘密がある。
それぞれが問題を抱えながら、家族の絆が少しずつ深まっていく。

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詩情豊かなみずみずしい画面のなかに、ときどき、戦場カメラマンの母の活動が映る。
全体をとおして、生と死が語られる。
愛の複雑な姿も語られる。
それぞれが孤立しながら、もだえている姿が描かれていく。
監督の叔父は、鬼才ラース・フォン・トリアー監督。
鬼才の遺伝子を継ぐと、ヨーロッパで高い評価を得始めている。
すてきな作品だ。
「母の残像」という邦題は、的確ではないように思う。
たんに母を回顧する話ではない。
人間という秘密に迫る映画だと思う。

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2016年10月21日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(301)

「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」
実際にあった話だ。
ローレルとステイシーという二人の女性の愛の物語。
米国ニュージャージー州で20年以上警察官をしていた正義感の強いローレルが、若い女性と恋に落ちる。
郊外に一軒家を買い、犬を飼い、二人で幸せな生活をはじめようとする。
その矢先、ローレルが肺がんとわかる。
やつれていくローレルを、ジュリアン・ムーアが好演する。
認知症の女性をえがいた「アリスのままで」でアカデミー賞主演女優賞をとったジュリアン・ムーア。
あぶらが乗り切っている。

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ローレルは死を覚悟しながら、自分の死後、パートナーのステイシーに遺族年金が支給されるように訴え続けていく。
その訴えに耳を傾ける人が増え、やがて社会的な運動となって全米へと広がり、雪崩現象がおこる。
2015年6月、アメリカの最高裁が同性婚を含むすべてのアメリカ人の婚姻を保障するという判決に至る。
LGBTの人を取り囲む壁をとりはらうことになった実話。
それを正面からとりあげるこうした映画は、さらに壁を壊していくことだろう。

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2016年10月20日 (木)

11/19チャリティトーク&コンサート「光を世界へ」開催

JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)は、イラク戦争後からイラクの小児がんと白血病の子どもたちの支援に取り組んで12年目を迎えました。
戦争から長い年月が経過しましたが、現地のインフラは整わず、病院や学校も疲弊している状況が続いています。
イラクやシリアでの紛争の激化で急増した難民や国内避難民の中にもがん患者さんが存在しており、
国外での治療を希望する声に触れることも多くなりました。 
難民に関する報道が多かった2016年も残り僅かとなり、冬季限定キャンペーンとして取り組んでいる「チョコ募金」が12月1日から始まります。
その「チョコ募金」キックオフとして、日頃からJIM-NETの活動を応援してくださっているゲストをお迎えし、
「平和」への願いと祈りを込めた音楽とトークの集いを開催いたします。
ぜひ、ご参加ください。

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チョコ募金キックオフ
 チャリティトーク&コンサート「光を世界へ」
◇出演
ウォン・ウィンツァンさん(ピアニスト・作曲家)
湯川れい子さん(音楽評論家・作詞家)
斉藤とも子さん(女優)
鎌田實(JIM-NET代表理事・医師)
◇日時
2016年11月19日(土)
18.30開場 19.00開演
◇会場
南大塚ホール
JR山手線:大塚駅南口より 徒歩約5分
都電荒川線:大塚駅前より 徒歩約5分
地下鉄丸の内線:新大塚駅より 徒歩約8分
◇入場料
3000円(前売り券)/3500円 (当日券)
小中高生1000円/幼児無料
◇お申し込み方法
郵便振替口座にチケット代を必要枚数分お振り込みください。
お振り込みを確認次第、チケットをお送りいたします。
◆お振り込みの締め切りは11月11日(金)です。
◆全席指定席(お申込順)
郵便振替口座 00540-2-94945 日本イラク医療ネット
*振替用紙に「11月19日チケット代」とご記入のうえ、枚数をご明記ください
詳しくはこちら



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2016年10月19日 (水)

モスル奪還戦がはじまった

イラクのアルビル事務所にいるJCFの加藤君からスカイプで連絡が入った。
いよいよイラク軍とクルド自治政府軍が、ISの拠点モスルの奪還作戦を開始したという。
アルビルは平穏な状態で、治安はいい。
テレビで攻撃の様子が生放送されているという。
地上戦をはじめたイラク軍とクルド自治政府軍を、多国籍軍があと押している。
ISの戦闘員は、4000人という人もいるが、おそらく1万人いるのではないか。
しかし、モスルには最大250万人、2015年でも170万人、モスルから多くの人が脱出しているが、現在でも100万人いるのではないかといわれている。
この人たちをISは盾にとって、市街戦をしようとしている。

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これから、100万人近いモスルの市民が避難民として脱出してくる可能性がある。
その人たちの命をどう守るか。
JCFは、新しくつくっている難民キャンプのなかに、どんな医療施設をつくったらいいのか、
会議にオブザーバーとして呼ばれている。
12年間、アルビルを拠点に医療活動を続けてきた日本のNPOに対して、信頼はあつい。
こうしたなかで、ぼくたちの活動も、いっそう期待されている。
ぜひ、JCFやJIM-NETの応援をお願いします。

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2016年10月18日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(300)

「バースデーカード」
今年の秋は「手紙」がキーワードの映画が多い。
メールの時代になったが、手紙はもっと大切なものを伝える力があるような気がする。
忙しい現代人が忘れてはいけない文化ではないか。

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10歳のとき、母親が亡くなる。
その母親から20歳になるまでバースデーカードがおくられてくる。
宮崎あおいがまさかの母親役。
とてもいい感じ。
橋本愛が娘役を演じている。
18歳になった娘は、手紙を読もうとしなかった。
亡き母親にコントロールされたくなかったのだ。
母と娘の複雑な一面がよくわかる。
娘は10歳のとき、学校のクイズ大会に選ばれて、一問も答えられなかった。
臆病で自信がない。
答えはわかっているのに、手をあげられない。
「私に期待しないでほしい」
と娘は言う。
そして「ママは希望どおりの人生が送れているの? 満足できているの?」と聞く。
その答えが、20歳になった娘へとの手紙に書かれていた。
諏訪や茅野が舞台だ。
霧ヶ峰も出てくる。
手紙には力がある。
そばにいなくても伝わる愛があるのだ。

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2016年10月17日 (月)

人生を肯定する力

緩和ケア病棟を回診した。
卵巣がんの50代の女性だ。
手術したが、縦郭のリンパ腺に転移し、胸膜炎も起きている。
ぼくが病室に入っていくと、えっと大きな声を出して起き上がろうして、
少しせき込んだ。
ぼくの本を読んでいるという。
まさか、ぼくが来るとは思わなかったようだ。
呼吸が苦しくなると、うつむいて上半身が前屈してしまいがちになるが、少しだけでも胸をひろげるようにすると、呼吸も大きくなるとアドバイスした。
にこにこしている。
笑顔のいい人は、ここからよくなることが多い、とぼくが言うと、
さらに、にこにこした。
常勤ではないが、長く教師を務めてきたという。
小学校1年の時、親に買ってもらった絵本を、ぼろぼろになった今も大切に持っている。
絵本には分校のような学校が出てくる。
「それが私の夢でした」という彼女は、小学校の先生になった。
結婚したのち、子宮内膜症になり、子どもはできないのかと思っていたら、
2人も子どもを授かった。
その子どももすでに成人した。
代用教員だったが、夢の教師になれて、とても満足しているという。
自分の人生を肯定的にとらえている。
語りながらときどき涙があふれてくるが、タオルでぬぐうとまたいい笑顔になった。
よその病院で治療をうけてきた。
つらいこともあったが、諏訪中央病院にきてほっとしているという。
すべてを納得しているという。
このところ人生の晩年に訪れる「遊行期」ついて考えている。
自分らしくきちんと生きるには、学生期や家住期、林住期のときから遊行の精神をもち、自分の生きたい生き方をしていくことが大切なのかなと思った。

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2016年10月16日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(299)

「古都」
川端康成原作の「古都」は、
西陣織の伝統世界に生きる女性と、北山杉のなかで明るく自由に生きる女性という双子の姉妹の物語だが、
この映画では、姉妹のその後を描いている。
姉妹にそれぞれに娘がいて、その娘がフランスへと旅立っていく。

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京都の古い習慣と、パリの自由な空気とを対比させながら、
2人の母親、2人の娘が必死に自分を探していく。
自分とは何か、自分らしく生きるとは何か。
「私」にこだわった映画になっている。
美しい映画だ。

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2016年10月15日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(298)

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
久しぶりに、激しい人と人との関係性と人間の不思議さを描いた、迫力のある映画をみた。
友情の映画であり、父と子の映画であり、人間がいだく夢の映画である。
マックス・パーキンズは、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどを売り出した伝説的な編集者。
無名だったトスス・ウルフの作品をベストセラーにしていく。
パーキンズは何度も「君の作品だ」という。
ウルフの原稿を大幅に削除し、整理しても、最後のところは、作家にきちんと委ねている。
「失われしもの」というウルフ自身がつけたタイトルも、ウルフ自身が「天使よ故郷を見よ」と変えている。
本をつくるというのはこういうことか。
原稿の贅肉をそぎ落としているが、編集者は加筆をしていない。
タイトルも作家が決めている。
作家のなかで行動変容が起きてくるのを、じっと待っているのだ。

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ロスト・ジェネレーション時代の作家たちは、生活そのものが文学だった。
そんな匂いが映画からたち込めてくる。
エンディングは圧巻。
37歳で亡くなるトマス・ウルフが、再びパーキンズの心に戻ってくる。
人間というやっかいな生きものを描きながら、2人の友情が涙を誘う。
名作だ。

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2016年10月14日 (金)

地域包括ケアシステムとは何か60

NHKスペシャルで、「健康格差」が取り上げられた。
コメンテーターとして出演した。
収入の差によって、健康に格差が生じているという内容だ。
低所得者のほうが高所得者に比べ、肥満や脳卒中、骨粗鬆症のリスクが約1.5倍高くなる。
精神疾患はなんと3.4倍。
非正規雇用のほうが正規雇用に比べて、糖尿病になる確率が1.5倍も高い。
低所得者にはうつが多い。
食事にも注意できなくなり、コンビニで炭水化物中心のものを食べ、
肥満や糖尿病を合併してしまうことが多い。
                 *
地域格差も大きな問題だ。
被災地の南相馬の調査では、被災後、糖尿病が60%増えている。
避難生活の大きなストレスと、緊急時の食料が炭水化物中心だったことが問題ではないかと思う。
支援のしかたも考えなければいけないということだ。
自殺は、秋田を中心に東北に多い。
短命県は、ずっと青森が一位になっている。
脳卒中が多いのは、岩手。
かつては長野は2位だったが、そこから脱した。
北海道は、がんの死亡率が高く、脳卒中も多い。
                  *
長野県は決して県民所得が高いわけではない。
野菜摂取量日本一になったのは、生活習慣を変えるという行動変容を起こしたからだ。
地域包括ケアは、一人ひとりの住民の意識がかわることの集積として、マスとして意識が変わることが大事である。
病気の予防、介護予防がおこなわれていること。
そして、認知症になっても、孤立させず、進行させないようにすること。
そうすれば、医療や介護の費用も抑えることができる。
地域の経済と雇用、健康もふくめた人生の満足度はみんなつながっている。
地域包括ケアは、たんに医療と看護、介護のネットワークではない。
もっと大きな視点で、幸せの満足度やまちづくりを考えていくことが必要だと思う。

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2016年10月13日 (木)

巨匠アンジェイ・ワイダを偲ぶ

好きな映画監督はと聞かれたら、ゴダールとフェリーニ、そして、アンジェイ・ワイダと答える。
そのワイダが10月9日、90歳で亡くなった。
ポーランドのクラクフに行ったとき、ワイダがつくったという日本美術博物館に寄った。
現地では、「まんが館」といわれていた。
ワイダは日本が大好きだった。
京都賞をもらった賞金をもとに、日本で募金をつのり、浮世絵などを集めて美術館をつくったのだ。
「地下水道」という作品で、ワイダの名はカンヌ映画祭にとどろいた。
衝撃的な映画である。
なんといってもおもしろいのは代表作「灰とダイヤモンド」(1957)。
第二次大戦後のポーランドで暗殺者となる青年の物語だ。
レジスタンスの映画ともみえるが、青春映画でもある。
若者がどう生きていいのか、のたうちまわりながら、何が正義かを考える。
主人公の青年を演じたズビグニエフ・チブルスキーは、存在感が圧倒的だった。
彼は、この9年後、転落死している。
魅力的な人間は早く亡くなってしまう。
ラストシーンは圧倒的。
洗濯物干場で、主人公の青年が追い込まれ、壮絶な死を遂げる。

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「灰とダイヤモンド」は、ポーランドの作家アンジェイェフスキが、
一人の青年を通して、戦争が終結する4日間を見事に描き上げた大河小説だが、
それをワイダが新しい芸術作品としてのこした。
その後もワイダは、「鉄の男」や「カティンの森」などすぐれた作品を作り続けた。
大好きなワイダが亡くなって、悲しい。
ぜひ、名作「灰とダイヤモンド」をレンタルなどで見てほしい。

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2016年10月12日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(297)

「ジュリエッタ」
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督作品。
2013年にノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローの3編の短編を一つの映画にした。
美しい映画だ。
一人の女性の現在と過去が描かれる。
NHKのテレビドラマ「情熱のシーラ」で評判になったアドリアーナ・ウガルテが、過去の若き日のジュリエッタを、エマ・スアレスが中年になった現在のジュリエッタを演じる。
おそらく55歳くらいに至るまでの日々が美しくつづられている。
アルモドバルの美しい映像。
彫刻家の作品が出てきたり、日本映画の名作「砂の女」の武満徹の音楽が使われたりしている。

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漁師の夫が嵐で亡くなる。
最愛の娘はピレネーに瞑想に行った後、行方知れずになる。
仲がよかったはずの母と娘が、何も理解しあっていなかったことがわかってくる。
娘は3人の子どもの母となっていると噂を聞く。
あのとき気付かなかった娘の思いを想像しながら、母としての愛を伝えようと、
封印していた過去と向き合いながら、娘への手紙を書き始める。
過去を思い出していく手紙は、まるで詩のようである。
娘への手紙を書き終えたとき、娘から封書が届く。
母と娘の葛藤と愛の美しい物語だ。

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2016年10月11日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(296)

「手紙は憶えている」
70年前、ナチスに家族を殺された。
殺したナチスを探せ、と手紙がきた。
主人公は90歳。
少し前、妻が死んだことも覚えていない。
認知症になっていた。

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友人のマックスから、「君が忘れてもだいじょうぶなように、すべてを書いた」と手紙が来た。
そこには、家族を殺した犯人の名も書かれていた。
犯人は名前を変えて生きていたが、主人公は殺すために訪ねていく。
主人公は、収容所でいれられた「78814」という番号の入れ墨をみるたび、
アウシュビッツで受けたつらい記憶をかみしめる。
しかし、そのつらい記憶も、目覚めるたびに薄れていく。
90歳の認知症の老人が、最後に犯人にたどり着く。驚愕のラスト。
映画はおもしろいなと思った。
心が揺さぶられる映画だ。
10/28ロードショー。

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2016年10月10日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か59

なぜ、諏訪中央病院にロダンの彫刻があるのか。
「神の木を神の子がひく御柱」
という句を詠んだ原天明さんという有名な俳人が茅野市にいる。
NHKでも俳句の選者をしていた人だ。
その天明のお父さんを、ぼくは外来で長い間診ていた。
好奇心旺盛な人で70年前にロシアに行き、クロユリの種を持って帰り、自分の庭に咲かせたりした。
晩年の20年前くらい前から、この人は「遊行」を覚悟して生きる自由人だった。
脳卒中で倒れ、8日間ほど入院したが、
どうしても家がいいということで、息子の天明さんが本人のいうとおりに在宅医療に踏み切った。
諏訪中央病院の医師や看護師が往診するようになった。
91歳で天寿を全うした。
亡くなってしばらくしてから、天明さんからお礼の手紙が来た。
家での介護は、家族にとっては楽しい半年間だったという。
亡くなる一か月前に、紙をもってこさせ、里謡を口ずさんでそれを書かせたという。
「うちのそばには一年中お湯の出ているところあり」
実際は温泉が出ているところはないが、それほどあたたかいということらしい。
「日ごろ温泉好きだった父の満足感にあふれたうたであり、家族、親戚、友人、知人にあてた心からのメッセージでもあります」と天明さんは説明している。
ロダンの彫刻は、やはり茅野の有名な彫刻家矢崎虎夫さんから天明さんがうけついだもので、それを諏訪中央病院に寄贈してくれたのだ。
地域包括ケアは、人から人へ、人から地域へといろいろなものを「伝える」という働きのなかで、機能するシステムである。

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2016年10月 9日 (日)

鎌田實の一日一冊(301)

「戸井十月全仕事」(小学館)
かつて生きるように旅をし、旅をするうに生きた男がいた。
作家でありレポーター、コメンテーターであり映画監督、まんが原作者であり、バイクで世界中をまわる冒険家でもあった。
その男の全仕事を網羅した本だ。
かぎりなく×に近い、とんがった△な生き方をした。
死ぬ間際に言った言葉がすごい。
「今まででいちばんすごい冒険をしてしまった」
肺がんが脊髄転移し、耐えがたい痛みですら「冒険」と考えた。

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ぼくはいま「遊行」ついての本を書いているが、戸井十月は「遊行」のテイストをもった男だ。
元気に世界中を飛び回っていたときですら、彼の生き方には死のにおいがする。

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2016年10月 8日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(295)

「小さな園の大きな奇跡」
つぶれそうな幼稚園の園長の募集があった。
日本円にして6万円ほどの給料。
一般的な園長の6分の1の給料だ。
子ども5人という最低の数でぎりぎり継続されている。
そこへ、エリート教育をしていた園長がやってくる。
5人はみんな問題を抱えた家庭の子どもたち。
卒園式がすごい。
幼稚園の子どもがこんなことを話せるかというくらい、すごいのだ。

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夢について、子どもたちに教える場面がある。
子どもたちは、お父さんお母さんに、夢について聞いていく。
生活に追われて夢どころではなかった親たちが、夢について考え、思い出していく。
それがとても実現しそうにない夢だったりするのだが、目つきが変わってくる。
義足の父親がアスリートになりたかった夢をもっていた。
ミス香港になりたいというおばさんもいた。
その夢を語った後、魅力的になっていく。
夢は実現できるかどうかというより、夢をもっいてるということが大事なのだ、ということがみえてくる。
うれしくなるような映画。
姫路の播磨高校に講演に行く途中、新幹線のなかで見たのだが、
はずかしいほど涙が出てきた。
11月ロードショー。

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2016年10月 7日 (金)

熊本を訪ねて③

他県に嫁いだ娘の元に、被災した親が身を寄せる例も多い。
避難暮らしより快適だろう。
だが、環境が変わったことで、認知症を発症する人もいるという。
避難所や仮設住宅での新たな暮らしも、高齢者には記憶や心の混乱を招きやすい。
不眠症になっている人もいる。
避難所での生活で腰痛症になった人もいる。
震災直後、エコノミークラス症候群になり、今も治療中の人もいる。

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体だけではない。
震災後、心を休めていない人が多い。
役場の人たちもそう、企業の責任者たちもそうだ。
自分も被災しながら、町をどうしようか、会社をどうしようか、と片時も心が休まらない。
「今みんな疲れている。
こんなときこそ、日常性の回復が大事」と、益城病院の理事長をしている精神科のドクターは言う。
本当にそうだ。
半日休んで、家族と日帰り温泉に入ったり、
みんなでファミリーレストランに行ってみたり、
かつて当たり前にやっていたことを取り戻さなければいけない。

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これから稲刈りが始まる。
地震と大雨で農家はかなりのダメージを受けた。
それでも稲刈りは心が躍るという。
田んぼがぬかるんでいるため、機械が入らない。
手刈りをするには、手間も経費もかかる。
ボランティアが来てくれたらいいな、と農家の人が言った。
地震発生から半年。
まだまだ応援が必要だ。
稲刈りだけではなく、いろんなボランティアが必要とされている。
ボランティアに行けない人は、熊本のお米を買うことも応援になる。
熊本に馬刺しを食べに行ったり、南阿蘇村の葉祥明美術館に行ったりするのもいい。
「もう観光に来てくれていい」と言ってくれた。
大切なことは、忘れないこと。
それぞれの方法で熊本を応援したいものだ。

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2016年10月 6日 (木)

熊本を訪ねて②

益城町の被災状況はとても厳しい。
しかし、そこにはあたたかな空気が流れていた。
「大地震、大洪水、いつもそこにはユートピアが出現した。
なぜか、そのとき特別な共同体が立ち上がるのだ」
レベッカ・ソルニットは、『災害ユートピア』と名付けた。

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益城町でもそんな光景がみられた。
避難所になっている体育館で、みんなが集まってお弁当を食べている。
野菜やたんぱく質が足りないということで、野菜や豆腐を買ってきたりして、
買い行けないお年寄りに配っている人たちがいた。
その一人である73歳の女性は、火の国熊本の女というような情に厚い人だった。
夫は脳卒中の後遺症があるが、体育館で生活している。
夫の世話をしながら、饅頭屋さんに働きにでているという。
「少しでも働いているほうが気分が晴れる」
年齢や地震なんかに負けてられない、という。
そうやって得た収入でみんなに「タンパク質、タンパク質」といいながら、豆腐などを配ったりしている。
                     *
巨大な仮設住宅ができ、仮設商店街ができた。
益城プリンを売っている店は、もともと酒屋だったが、この地震で全壊した。
解体の順番を待っているという。
酒を売る許可が出ないので、駄菓子を売っている。
おかげで子どもたちがいっぱいやってくる。
「子どもたちの心も傷ついている。ここは子どもたちがうれしくなる場所。
駄菓子なので、お店の経営は苦しいが、子どもの笑顔を見ていたら、つらさがなくなっていく」とご主人。
不幸の中にありながら、人は困っている人や子どもに手を差し伸べることができる。
すごいなと思った。

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2016年10月 5日 (水)

熊本を訪ねて①

4月、熊本では最大震度7の大地震が2度もあった。
その後も、大きな余震が続いている。
ゴーっという地鳴りのような、地球の深いところから聞いたこともないような音がして、
大きく揺れた。
家の中にいる人も外にいる人も、逃げるというよりも、その場にへたりこむしかなかったという。

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5月中旬に訪ねたときの熊本県益城町

5か月を過ぎたが、益城町は大変な状況が続いている。
熊本市内はだいぶ復興してきたが、商店街の食堂などで聞くと、
地震の爪痕はまだまだ残っているようだ。
熊本市のがれきは、横浜市が引き受けた。
益城町では、がれきが処分できず、道のそばに積まれている。
災害の大きかった地域のがれきを引き受けるだけでも、復興をスピードアップできるのではないか。

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2016年10月 4日 (火)

廃炉事業のトップを

核燃料のメーカーが壁にぶつかっているという。
日立、東芝、三菱重工が出資する3社の原発メーカーは、核燃料もつくっている。
が、現在、稼働している原発は3基だけということもあり、壁にぶつかっている。
持ち株会社の方式をつかって、3社で核燃料事業会社を統合しようという話が出ているようだ。
しかし、原発が稼働しなくてもエネルギー供給に問題がないことを考えると、長いスパンで原発を止める方向の未来図をきちんと書いたうえで、議論したほうがいいように思う。
それ以前に、3社はフランス系の大企業やアメリカ系の大企業と手を組んでいるので、
燃料事業だけ分けることはできないのではないか。
原発を止めると、原発のある町の雇用や町の衰退などが問題となる。
だが、そこはきちんと時間をかけて、原発をゼロにするという路線のなかで、
廃炉事業として、人を雇用し、町の衰退を防ぐ方法はあるのではないか。
世界に目を向けると、アメリカやドイツでは原発を新たにつくらなくなりだしている。
いずれどの先進国でも、廃炉という問題とつきあわなければらならない。
そこで日本の優れた技術を廃炉に特化して進展させ、世界の廃炉事業の先頭を走っていくのが賢い選択のように思う。

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2016年10月 3日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か58

健康づくり運動の大切な核となるものは、行動変容である。
わかりやすくいえば、住民をその気にさせることである。
諏訪中央病院ではリハビリに関連する医師や施療者が勉強会をしているが、患者さんのモチベーションをどうしたら維持できるか、どう行動変容をおこさせるか、議論したという。
ちょうど大きな脳梗塞で一時要介護5だった人が、在宅リハとボトックス療法で痙縮が改善した。
進歩がみられないと、モチベーションが下がりがちだが、これらの療法で効果がみられたことは、モチベーションの継続につながったようだ。
諏訪中央病院の研修医や看護師、リハビリスタッフは諏訪湖マラソンに出る人が多い。
特にリハビリの人は積極的だ。
ご主人と、おにぎりとポテトサラダをもって応援に行きたい、というのがかつて要介護5だった人の要望である。
彼女のいきがいといっていもいい。
そのために、痛いボトックスの注射にも耐えた。
前向きで、楽しそうだ。
彼女のなかで、行動変容が起きたようだ。

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2016年10月 2日 (日)

地域包括ケアシステムとは何か57

地域にはいろんな理由で生きづらい思いをしている。
その人たちが当たり前に暮らせるようにすることが地域包括ケアである。
かつて諏訪中央病院の老健の施設長だった宮坂先生は、現在、120人を往診する地域包括ケアの担い手である。
訪問看護や往診をしながら、一人ひとりが生きてけるように考えている。
その宮坂先生がしばらく理事長を務めていたこのまち福祉会が、
諏訪市の障害児の通園施設である清水学園を民営化した。
下諏訪から諏訪市、茅野市、原村、富士見一帯に障害のある子どもからお年よりまでのために、13の事業所をつくった。
就労支援や生活介護など、精神障害、知的障害、身体障害がある人たちが利用する就労支援や生活介護の施設である。
古い民家を買ったり借りたりしながら、地域のなかにとけこめるように工夫している。
地域にとけこむ、これがとても大事だと思う。
このまちキッズ学園の児童発達支援センターやその近くの障害者のグループホームでは、
諏訪市の地域の共同浴場を利用している。
諏訪市では温泉を住民に配湯されているが、それを利用して、障害者と一般の人がふれあい理解を深めていく。
そういうことが大事なのだろう。
地域包括ケアは高齢者だけでなく、いろんな人が生きやすくなるシステムである。
「福祉文化をつくることが大切」と宮坂先生は言うが、まさに地域包括ケアは新しい文化をつくることだと思う。

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2016年10月 1日 (土)

地域包括ケアシステムとは何か56

リハビリの懇話会で講演したら、車いすのHさんが奥さんとやってきた。
進行性の難病であるHさん。
ぼくは以前、同じ病気である彼のおばあちゃんを診ていた。
その彼が、こうやって積極的に、奥さんと車いすで出歩いている。
ぼくに、自作の俳句集の4集を手渡してくれた。
「神の木と 人人人と御柱祭」
御柱は神の木といわれている。
今年の御柱祭も、多くの人が渦となって御柱のもとに集まった。
「十三夜 湯船にゆらぐ山の宿」
山の宿へ行き、奥さんと温泉に入ったときの俳句ならば、素敵な話だ。
進行性難病の人でも、リハビリしながら機能を維持していくことができる。
そして、地域であたりまえに暮らすことができる。
地域包括ケアは、それを多方面から支えていくことである。

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