人生を肯定する力
緩和ケア病棟を回診した。
卵巣がんの50代の女性だ。
手術したが、縦郭のリンパ腺に転移し、胸膜炎も起きている。
ぼくが病室に入っていくと、えっと大きな声を出して起き上がろうして、
少しせき込んだ。
ぼくの本を読んでいるという。
まさか、ぼくが来るとは思わなかったようだ。
呼吸が苦しくなると、うつむいて上半身が前屈してしまいがちになるが、少しだけでも胸をひろげるようにすると、呼吸も大きくなるとアドバイスした。
にこにこしている。
笑顔のいい人は、ここからよくなることが多い、とぼくが言うと、
さらに、にこにこした。
常勤ではないが、長く教師を務めてきたという。
小学校1年の時、親に買ってもらった絵本を、ぼろぼろになった今も大切に持っている。
絵本には分校のような学校が出てくる。
「それが私の夢でした」という彼女は、小学校の先生になった。
結婚したのち、子宮内膜症になり、子どもはできないのかと思っていたら、
2人も子どもを授かった。
その子どももすでに成人した。
代用教員だったが、夢の教師になれて、とても満足しているという。
自分の人生を肯定的にとらえている。
語りながらときどき涙があふれてくるが、タオルでぬぐうとまたいい笑顔になった。
よその病院で治療をうけてきた。
つらいこともあったが、諏訪中央病院にきてほっとしているという。
すべてを納得しているという。
このところ人生の晩年に訪れる「遊行期」ついて考えている。
自分らしくきちんと生きるには、学生期や家住期、林住期のときから遊行の精神をもち、自分の生きたい生き方をしていくことが大切なのかなと思った。
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