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2016年12月

2016年12月31日 (土)

あたたかな連鎖を

2016年ももうすぐ終わります。
このブログ「八ヶ岳山麓日記」も、1000万PVを超えました。
たくさんの人に見ていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
              ◇
今年も、熊本・大分など震災がありました。
諏訪中央病院からも医師が応援に行っています。
シリアやイラクでも、まだ混乱が続いています。
イラクの病気の子どもたちを救うために、たくさんの方からチョコ募金の協力をいただいています。
こうして支援を続けていて感じるのは、支援ははじまり、ということです。
かつて新潟の中越沖地震のとき、諏訪中央病院は支援に行きました。
それから毎年、新潟の方から丹精込めてつくったコシヒカリが送られてきます。
「新潟の方からの心からのプレゼントです。かみしめて食べてください」
ぼくはメッセージを添えて、入院中の患者さんに食べていただいています。
「心にも栄養が届く」と、感謝していただいています。

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あたたかな支援をはじまりとして、次のあたたかな支援につながっています。
今年も、身近なところで、あたたかな連鎖が起こりました。
来年も、このあたたかな連鎖が起こりように、努力してまいります。
応援をよろしくお願いいたします。

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2016年12月30日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(316)

「ミルピエ パリ・オベラ座に挑んだ男」
300年の伝統あるパリ・オペラ座の芸術監督に史上最年少で抜擢された振付師ミルピエ。
新作の上演までの40日間、密着したドキュメンタリー。
ダンサー、演奏者、衣装、舞台装置などが激しく刺激し合いながら、圧巻の舞台をつくっていく。

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ミルピエは、伝統のパリ・オペラ座で、従来の“階級制度”を廃し、
エトワールではなく選抜メンバーからダンサーを抜擢する。
伝統と革新がぶつかり合う迫力あるダンスをつくりだす。
躍動的で美しい映像は見ものだ。

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2016年12月29日 (木)

聴診器でテロと闘う(64)

アルビルの郊外ダラシャクランのキャンプに行った。
ここにはJIM-NETスタッフのリーム看護師が中心になってつくった手芸クラブがある。
先生は、シリアから逃げてきた女性。
以前、手芸の先生をしており、キャンプの女性たち20人ほどに編み物を教えている。

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つくっているのは、帽子。
この帽子はJIM-NETが買い、ナナカリ病院の小児白血病の子どもたちにプレゼントしようと思っている。
ぼくも、お母さんたちにかぶらされ、「とても似合っている」とみんなに言われた。
ここには、アサド政権の弾圧やISから逃げてきた人たちなど、さまざまな事情の人がいる。
みんな帰りたいと言いながらも、帰れる可能性は少ない、ともいう。

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2016年12月28日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(315)

「ヒッチコック/トリュフォー」
ケント・ジョーンズ監督によるドキュメンタリー。
まるでトリュフォーが生き返って、この映画をつくっているようだ。
トリュフォーはヌーベルバーグの一時代を築いた。
「大人は判ってくれない」「柔らかい肌」「華氏451度」「アメリカの夜」など。
特に「大人は判ってくれない」は、トリュフォーの子ども時代を髣髴させるような、
みずみずしい感受性にあふれている。
その男がヒッチコックにインタビューを申し込む。
「あなたはフイルムそのものを愛しています。そのことをあなたと話したいと思いました」
それに対して、ヒッチコックもこう答える。
「あなたの手紙を読んで、涙が出ました」
そのインタビューは「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」という本になり、
これは、世界の映画監督の教科書になった。

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ヒッチコックは多作。
「レベッカ」はアカデミー作品賞をとった。
「汚名」はイングリッド・バーグマンとケーリー・グラントの長い抱擁が話題になった。
2人の俳優ともこのシーンを嫌ったという。
「北北西に進路を取れ」「鳥」「引き裂かれたカーテン」「サイコ」など傑作が多い。
その作品の魂のようなものをトリュフォーが聞いていく。
通俗的と考えられていたヒッチコックの作品は、
この本を出したことによって、評価されていく。
映画好きの人にはたまらない映画だと思う。

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2016年12月27日 (火)

聴診器でテロと闘う(63)

アルビルの建設中のビルで、避難生活をしているサマーフ一家に夕食に誘われた。
アルビルとモスルの間にある、人口3万人のバシーカというまちにいたが、
ISに制圧されたため、2年前脱出してきた。
それ以来、ずっと避難生活だ。
サマーフはモスル医科大学の学生だったが、学業の継続はあきらめていた。
JCFが応援して、スレイマニアの大学に転入。
無事、卒業できた。
そのお礼を兼ねて、難民キャンプで夕食になった。
いつものことだが、食べ始めようとしたところで停電。
懐中電灯でご飯を食べることになった。
ぶどうの葉に巻いたバターごはん、トマトや玉ねぎをくりぬいてごはんを詰めたイラクの家庭料理、豆とチキン。
どれもおいしかった。

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この家族はヤジディ教徒。
ヤジディ教徒は、オスマントルコの時代から何度も迫害を受けてきた。
イラクではヤジディ教徒やキリスト教徒などのマイノリティが受け入れられてきたが、
ISが来て、またたいへんな迫害を受けた。
シンジャール山では5000人が殺されたといわれている。
今もヤジディの若い女性が2000人ほど拉致されている。
サマーフの同級生には、ISにつかまり、自殺を選んだ女性もいるという。
このままではヤジディが消滅してしまう可能性もある。
「ヤジディの教えにも、善行すると天国へ行けるという考えがあるのか」
と、ぼくはサマーフのおじさんに聞いた。
「その通りだが・・・」とおじさん。
自爆テロで異教徒を殺すと天国へ行けると、ISの指導者は若者たちをけしかけている。
「そんな(ISの兵士がいる)天国にはいきたくないから、ぼくはもう地獄でもいい」
おじさんはつらそうに言った。
不思議な空気だ。
明るくてにこにこしているが、必死に悲しみや苦しさ、寂しさ、不安を押しこめている。
この家の希望はサマーフだ。
これから小児科で、小児がんのスペシャリストを目指すという。
地方の医療をする年限があるが、そのときは自分のふるさとであるバシーカであたりたい。
バシーカの人たちが帰れるように祈っているという。

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2016年12月26日 (月)

チョコ募金10万個突破

たくさんの方にチョコ募金の申し込みをいただいている。
絆診療所や千葉西病院、郡山の馬場先生の高齢者施設、歌手の神野美伽さん、それぞれたくさんのチョコを買っていただいている。

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NHKのBS国際報道は感動的だったということで、放送から日が経っても、
「テレビの映像が忘れられない」と、申し込みをしていただく方がいる。
ラジオ「日曜はがんばらない」を聞いたといって、買っていただける方たちもとても多い。
早くも10万個を突破した。
いつもより早いペースなので、早めにお申込みください。

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2016年12月25日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(314)

「この世界の片隅に」
こうの史代原作、片淵須直監督。
広島の呉を舞台に、一人の女性を通して戦争の季節に向かう風景を淡々と描いていく。
1941年の真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まるが、
野草を代用食にするなどして、丁寧に生活を守ろうとする。
主人公すずの一生懸命さがいい。
のんの声が、ピュアな感じで、さらにいい。

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絵をかくことが好きなすずが描くものは、日常のこまごました、しかし、かけがえのない日常。
この世界の片隅に、戦争があっても戦争に負けない人たちがいる。
「戦争反対」なんて言葉はないのに、見終わると戦争は絶対にしてはいけないと強く思わせてくれるすがすがしい映画だ。
クラウドファンディングでお金を集め始めて8日目に目標の2000万円を超し、約2か月後の終了時には3900万円を超した。
すてきな映画だ。

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2016年12月24日 (土)

暴力には愛を

ドイツのベルリンで、トラック突入のテロが起こり、たくさんの死者が出た。
スイスのイスラムの施設でも銃撃があった。
イスラムを締め出そうとするテロだ。
トルコで、ロシア大使が射殺された。
暴力に暴力で報復している。
シリアのアレッポの住民は、ロシアとアサド政権の恐ろしい空爆を繰り返し受けた。
残虐な行為が方々で行われている。
暴力に対して、暴力を用いるのではなく、暴力には愛をもって、暴力を止めることが大事なのではないか。

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いま南回りで、イラクのアルビルに向かっている。
「聴診器でテロと戦う」と言い聞かせている。
クリスマスの今日、世界がもっと平和になることを祈っている。

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2016年12月23日 (金)

風に吹かれて

ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。
「風に吹かれて」は何百回も聞いてきた。

どれくらい砲弾が飛び交えば
二度と撃たれないようになるのか
友よ その答えは風に吹かれている
その答えは、風のなかに舞っている


これからイラクの難民キャンプへ行く。
そこで、この歌詞がぼくの頭の中で何度も繰り返されるだろう。
たくさんの子どもたちが傷ついた。
たくさんの女性が傷ついた。
どれほど多くの人たちが傷ついたら、戦争は終わるのだろう。
イラクの砂漠もこれから冬。
イラクに吹く風のなかに、ボブ・ディランの歌を聞いてきたいと思う。

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来年1月、新刊『遊行を生きる』(清流出版)が発売される。
そのなかに、ボブ・ディランが尊敬していた詩人のことを書いた。
ぼくは、ボブ・ディランは2人の詩人に影響を受けたと勝手に思っている。
一人はディラン・トーマス。
もう一人は「吠える」の詩人アレン・ギンズバーグ。
ギンズバーグはの詩は難解だが、繰り返し読んでいると、歌のようになっていく。
ギンズバーグ自身も朗読パフォーマンスを意識したことがあった。
アメリカを否定しながら、自由と解放の道をつっ走った2人の詩人。
詩が反抗の代名詞だった。
ボブ・ディランはその血、怒れる若者の血を受け継いでいるように思う。
イラクの難民キャンプで、難民たちの怒りや絶望、悲しみを聞いて来ようと思っている。

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2016年12月22日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(313)

新転位・21『骨風』
原作は篠原勝之、クマさん。
泉鏡花賞受賞作品だ。
作構成演出は山崎哲。

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なかなか予約がとれなかったが、何とか頭を下げて、1枚チケットを工面してもらった。
受付に行くと、
「お、鎌田さん」
十貫寺梅軒さんに呼び止められた。
大久保鷹、四谷シモンら、すごい人たちが出演している。
状況劇場が元気だったころ、
この異形の役者たちが、みたことのない芝居をみせてくれた。
その後、四谷シモンは人形師になって、突然、舞台から消えた。
佐野史郎も、小さな舞台に立つと、異質な役者のように見えて、魅力的だ。
1970年代のアンダーグラウンドが元気だったころの空気がよみがえった。
内容は、原作のほうがおもしろかった。
芝居は長かった。
もっと短くできると思った。

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2016年12月21日 (水)

ふるさと納税の可能性

ふるさと納税について、意識が変わった。
応援の気持ちを込めて、被災地にふるさと納税はしたが、豪華な返礼品合戦はいかがなものか、とややに距離は置いてみていた。
しかし、北海道の上士幌町長と話をして、少し意識が変わった。
上士幌町は、年間10億円と、北海道でいちばんふるさと納税がある。
豪華な和牛の返礼品は話題を呼んだ。
が、その後、さらに急激に多くなったのは、ふるさと納税の使い方に共感を呼んだためだろう。

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上士幌では、子どもを育てやすい環境づくりに力を入れた。
認定こども園は100人から140人に増え、給食費もふくめてすべて無料にした。
小学校は15人クラス、学力も上がった。
こども園では外国人の先生がついて、外国の文化や簡単な英語教育が行われる。
人口増加も起きた。
ぼくが住んでいる茅野市も、ふるさと納税額は昨年まではマイナスだったが、返礼品の見直しをしたことで、一気に8倍になった。
今年度は、1億5000万円に達するのではないかといわれている。
だが、ここからが大事。
そのお金をどう生かすかが勝負になる。
茅野市では、子どもから高齢者まですべての人が住みやすいまちづくりに取り組んできた経緯があるが、それをさらに充実させ、応援したくなるような町、移住したくなるような町をつくっていけば、ふるさと納税の意味が見えてくるように思う。

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2016年12月20日 (火)

ひげのがんばらない捕手

このところ、東京医科歯科大学の先輩や後輩と会うことが多い。
埼玉県の蓮田市へ講演に行ったときには、先輩が3人、後輩が1人、楽屋を訪ねてくれた。
江戸川区の小岩に行ったときには、一年の上の先輩がとんでもなく面白い文章を置いていった。
2008年の同窓会会報に「ラグビーと私」というタイトルの寄稿。
そのなかに、「ひげのがんばらない捕手」と、ぼくのことを書いている。
当時から、ぼくはがんばらなかったのだ。

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バッテリーを組んでいた先輩の五関先生と、この一週間後、お会いし、この話で盛り上がった。
野球部の同級生、名越君とも久しぶりに再会。
勉強を教えてもらったり、ごはんを食べさせてもらったり、一緒に麻雀したりした仲間。
とても懐かしい。

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2016年12月19日 (月)

鎌田實の一日一冊(306)

「とうだい」(文・斉藤倫 絵・小池アミイゴ、福音館書店)
灯台と渡り鳥の物語。
灯台は旅をし続ける渡り鳥をうらやましく思う。
でも、嵐の日に、動かない自分が光を発し続けることで、助かる命があることを知る。
絵と文がとてもいい。
4歳くらいから読めると思う。
クリスマスのプレゼントにいいのではないか。

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「えんとつ町のプペル」(にしのあきひろ、幻冬舎)
とにかく絵がすごい。
ごみ人間と少年の物語。
ほんのちょっとの勇気で、真実に近づく。
ぐっとくる話だ。
8歳くらいから80歳くらいまでの人に。

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2016年12月18日 (日)

コシヒカリ

今年も、新潟県柏崎の方から、無農薬のコシヒカリをいただきました。
中越沖地震のとき、救援に行ったのがご縁となり、
毎年、おいしいお米を送ってくれています。

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諏訪中央病院の入院患者さんとともに、おいしくいただきました。

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2016年12月17日 (土)

地域包括ケアシステムとは何か72

蓮田市には、国立病院の中に在宅ケアをする医師がおり、
在宅での看取りもできるような体制が出来上がりつつある。

161124img_5688_2 埼玉県の蓮田市で東京医科歯科大学の先輩たちに会った。そのときに食べた麻婆なすライスは抜群においしかった。

岐阜県の水上市にも、健康づくりと地域包括ケアの話をしにいった。

地域包括ケアづくりに取り組む自治体がだいぶ多くなってきた。
だが、実際には、「自宅で死にたい」と希望しても、それにこたえられるシステムがないところが多い。
かなり、在宅ケアのメニューはできているので、もう一息、熱い志をもった人が出てくれば、一気に進むのではないか。
どの町も地域包括ケアづくりをしており、この1、2年中にはかなりいい方向に進むのではないかと思った。

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2016年12月16日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(312)

「TOMORROW パーマネントライフを探して」
2016年セザール賞ベストドキュメンタリー賞受賞。
ドキュメンタリーにもかかわらず、フランスで110万人を動員する大ヒットとなった。
監督は女優メラニー・ロランとシリル・ディオン。
100%近く、自然エネルギーを利用しているアイスランドへ取材にいったり、
自動車産業が衰退したデトロイトで、残された市民が自然ファームをつくり自給自足をする動きなどを見に行く。
フランスのある地域では、除草剤も機械の動力も使わない農業を行っている。
こういう農業は手間がかかり、収穫も少ないと思われがちだが、ここでは多くの収穫を得ていた。
デンマークでは市民の50パーセントが自転車で移動。
300m以内で生活する都市型の生活計画をつくりあげた。
石炭から、バイオマスエネルギーへと方向転換に成功した大手企業にも取材に行く。
食品や建材をできるだけ地元で手に入れることで輸送費を抑え、それにより、二酸化炭素の排出量を減らすことにつなける。

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パリ協定が結ばれ、日本も再度、環境問題に対してねじのまき直しをする時期に来ている。
トランプがパリ協定に対して厳しい判断をしても、みんながアメリカに足並みをそろえる必要はない。
トランプが大統領選で勝ったとき、多くの国が儀礼的なコメントをしていたが、
フランスの大統領だけが釘を刺すようなコメントをしていた。
この映画をみると、身近なところで、持続可能な社会のための工夫ができることがわかる。
いい映画だ。

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2016年12月15日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(311)

「ヒトラーの忘れもの」
デンマークは5年間、ナチスに占領されていた。
ナチスは、連合軍のヨーロッパ上陸を防ぐために200万個の地雷を埋めた。
ドイツが降伏した後、その地雷撤去を命じられたのは、ドイツの少年兵だった。
多くのデンマークの人たちのドイツへの憎しみは、少年兵だからといって緩まなかった。
食べ物も満足に与えず、地雷撤去という危険な仕事をさせる。
半数近くの少年兵が死亡、もしくは負傷した。
精神的にもまいっていく。
少年兵たちを管理するデンマークの軍曹をみると、これではまるでナチスと一緒だと思ってしまう。
戦争はすべての人間を狂わせる。
その憎しみの連鎖が、美しい海岸を舞台に展開するのが痛々しい。

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やがて軍曹の気持ちが揺れていく。
地雷を撤去した狭い範囲の海岸で、サッカーをして飛び回る光景はとても美しい。
デンマーク人軍曹と少年兵が自由に歩いている姿は、人間の自由の大切さを示している。
しかし、事態は一変。
軍曹の飼い犬が、撤去済みの安全なはずの地帯で爆死する。
軍曹は怒り、少年兵たちに地雷の取り残しがないか確認させる。
少年兵たちに、一糸乱れぬ整列で歩かせて。
整然と隊列を組むことが、どんなに不自然か、北朝鮮をみればわかる。
自由に、ゆるやかな列をつくって歩くことが、どんなに人間らしいか。
最後は感動のフィナーレ。
いい映画、ぜひ、たくさんの人にみてもらいたい。

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2016年12月14日 (水)

チョコ募金

バラとジャスミンの絵をかいてくれたのは、タハニさん。
16歳の少女は、過酷な体験をしていた。
2012年6月、シリアのアルハラにあるタハニさんの自宅に、いきなりアサド軍の民兵とヒズボッラーの兵士らが入ってきた。
家の周りには戦車も来ていて、総勢25名ほどの兵士が襲ってきたのだ。
父親を捕まえて連行しようとしたので、当時13歳のタハニさんは果敢にも「お父さんを連れて行かないで!」と兵士にすがった。
兵士は銃底で彼女の両手を振りほどいた。
両腕は折れてしまい、お腹も一発殴られた。
父親は刑務所に入れられた。
4か所の刑務所を転々として、4か月後、裁判所は無罪を言い渡し、父親は釈放された。

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しかし、タハニさんの骨折した腕は治らず、殴られたお腹も痛み続けた。
ヨルダンの病院で折れた腕の手術を受けた。
お腹のほうはがんの疑いがあったため、JIM-NETが費用を出して専門病院で検査を受けた。
検査結果は、悪性リンパ肉腫の末期で「Hopeless(見込みなし)」と言われ、追い返されてしまった。
家族は国際移住機関(IOM)に、イギリスへの移住を申し出た。
通常では、がんの患者とその家族を受け入れる国は少ない。
ところが幸運なことに、タハニさんは難民としての移住が決まり、今年9月20日、ヨルダンを去ってイギリスに移った。
JIM-NETは痛み止めの薬などを支援してきたが、後はイギリスが面倒を見てくれる。
ぜひ、イラクやシリアの病気の子どもたちを救う、チョコ募金にご協力ください。
詳しくはこちら↓

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2016年12月13日 (火)

イラクの白血病の遺伝子解析

JCFでは、信州大学医学部、名古屋大病院とともに、イラクで増えている白血病と、劣化ウラン弾との関係を調べてきた。
劣化ウラン弾は、1991年の湾岸戦争や、2003年のイラク戦争で使われた。
リカア先生がイラクの子どもの白血病の遺伝子を解析してきたが、解析機器の性能に限界があった。
そこで、信州大学は、大量の遺伝情報を高速で解析できる「次世代シーケンサー」をもつ名古屋大病院と連携し、本格的に遺伝子の究明がはじまった。

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今のところ、血液のいい標本が6人ほど。
もう1、2回、イラクの難民キャンプにいったとき、小児がんの治療をしている4つの病院に協力してもらい、
標本を増やし、遺伝子変異に特徴的なものがみられるか調べていく予定だ。
遺伝子の変異の解析は、治療法の解明にもつながる。
また、劣化ウラン弾の使用を考え直すことにもなるだろう。

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2016年12月12日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か71

川崎市へ地域包括ケアの話をしにいった。
ここでは一生懸命、取り組みをしているようだ。
介護いきいきフェアが開かれ、健康チェックや健康相談、認知症相談などのほか、
地域包括支援センターの紹介、24時間体制の訪問介護などの紹介のコーナーが設けられていた。

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川崎市は140万都市だが、きめの細かい対応をしていて、評価ができると思った。
地域包括ケアシステムづくりに成功しているのは、多くは地方だが、
いちばん必要とされているのは大都市といわれている。
川崎で、都市型の地域包括ケアシステムづくりが行われているのは評価していいと思う。

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2016年12月11日 (日)

つけめん

つけめんを食べた。
今まで、「つけめん」といえば、3人の若いイケメンによる音楽ユニットTSUKEMENだったが、食べるつけめんはどうも苦手だった。

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本道はやはり熱々のラーメンだと思ってきた。
しかし、斑鳩というラーメン屋のつけめんは、すごくおいしかった。
やっと、聴くツケメン同様、食べるツケメンもわかってきた。

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2016年12月10日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(310)

「ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿」
18世紀に生まれたスカラ座のドキュメンタリー。
ここで、伝説の歌姫マリア・カラスが誕生した。
カラヤンをはじめ、パヴァロッティ、カレーラスなどの有名な音楽家、バレエダンサーらが、スカラ座を「魅惑の神殿」につくりあげていく。
貴重な証言とともに、アーカイブ映像も見もの。
ヴェルディの葬儀に参例した、おびただしい数のミラノ市民など、見たこともないフイルムもある。

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スカラ座は市民に愛されてきた。
第二次世界大戦でスカラ座は空爆で壊れたが、
戦争が終わって間もない1946年、ミラノ市民によって再建される。
スカラ座は、ミラノのシンボルなのだ。

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2016年12月 9日 (金)

お蕎麦の会

緩和ケア病棟でお蕎麦の会。
入院患者さんや家族が、おいしいだしの匂いにつられてか、たくさんやってきた。
「おいしい、おいしい」
満足げに、蕎麦をすする女性もいた。

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40代の料理人の男性が、消化器のがんになった。
奥さんと小さな子どもがいる。
病気は非常に厳しい状況ではあるが、少しでも前を向いて生きようとしている。
子どもに、自分の考えていることを伝えてあげたいと思っているという。

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肉蕎麦ととろろ蕎麦を食べながら、
「ぼくはパンを焼くのが得意」というその男性。
オーブンがあるから、今度、おいしいパンを焼く会をしよう、という話になった。

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2016年12月 8日 (木)

新宿BERGで絵画・写真展

チョコ募金の新しい協力者が増えている。
新宿にあるBERGは、新宿東口中央改札を出て、左に進んだところにある、いつもにぎわっているカフェ。
12/31まで、イラクの白血病の子どもたちがかいた絵や、シリア、イラクの子どもたちの写真を展示させてもらっている。
そこでは、チョコ募金のチョコレートも置いてもらっているので、
コーヒーを飲んだついでにチョコ募金をしていただくこともできる。
チョコ1缶500円の収益約300円は、イラクの病気の子どもたちを助ける活動に充てる。

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先日、ぼくもお礼のごあいさつにと思って、お店を訪ね、並んでコーヒーを注文した。
すると、ぼくの前の女性が、チョコレートを10缶買ってくれていた。
お急ぎのようで、コーヒーは飲まず、チョコレートだけ求めて、足早に帰っていった。
ネットでいろんな人たちが情報を拡散してくれているようだ。
ありがたいことだ
BERGのホットドッグやコーヒーはとてもおいしい。
お近くの方は、ぜひ、絵画・写真展を見に行ってほしいと思う。

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12/5はNHKBSの国際報道で、イラクの子どもたちがどんな状況で病気と闘い、絵をかいたのか、中身の濃い報道をしてくれた。
珍しいことだと思うが、JIM-NETのメールアドレスも放送してくれた。
たくさんの人が応援してくれている。
感謝である。
チョコ募金の申し込みはこちら↓

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2016年12月 7日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(309)

「ブルーに生まれついて」
とにかくすごい映画だ。
マイルス・デイビスなど、ビパップが全盛の時代の伝説のジャズ・トランぺッター、チェット・ベイカー。
彼は、人生をうまく渡れない。
薬物で何度も失敗している。
麻薬の売人に暴行され、あごと前歯を負傷する。

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チェット・ベイカーを演じるのは、イーサン・ホーク。
いい役者だ。
「ビフォアー・サンセット」などでもいい味を出していたが、
なかでも今回の役ははまり役だ。
チェット・ベイカーは、ジャズ界のジャームス・ディーンと呼ばれたらしいが、
悲しげな目つきはまさにジェームス・ディーンを髣髴させる。
マイルス・デイビスやチャーリー・パーカーも出てくる。
チェット・ベイカーは、人生そのものがジャズ。
アメリカではうまくいかず、ヨーロッパで音楽活動をする。
58歳でオランダのホテルから転落死した。
天才のトランペット吹きの悲しい人生の物語。
美しい映画。傑作だと思う。

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2016年12月 6日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(308)

「湾生回家」
監督は、ホァン・ミンチェン。
台湾の映画だ。
日本の負の歴史、東アジアへの進出。
台湾へも、たくさんの日本人が移民として渡った。
そこで生まれた日本人は「湾生」と呼ばれ、20万人にもなる。
彼らにとって、台湾はふるさとだ。
しかし、戦争が終わり、見知らぬ祖国・日本に帰ることになる。
日本に帰った湾生たちは台湾を思い、同じ学校に行った仲間の友情を忘れていない。
台湾に生まれて、故郷は台湾。
だから、日本に住んでいる自分は、「異邦人だ」という日本人がいる。
台湾の人たちは、残された日本人の母親を介護する。
さらに、その人のふるさとである日本を訪ねて、母親の母親のお墓参りをし、家族の絆を作り直していく。

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荒地を耕して田んぼにした。
それは日本人だからできた、と台湾の人は思ってくれている。
映画のなかでも、「アジアのなかで嫌われていない国があるんだ」というセリフがある。
うれしくなる。
台湾全土16万人がみたという。
台湾の人が、こんなすてきな映画をつくってくれた。
岩波ホールで上映中。

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2016年12月 5日 (月)

寂しいな、今井君

障がいのある人たちといっしょに10年間、旅をしたきた。
今井幸彦君という詩人と出会った。
彼は詩集「みんな生きていたい」を出した。
わずかに動く指で、詩を書いた。
どれほど激しく、生きたいと思っているか、表現した。
とてもピュアな詩だ。
彼は、映画が好き。
お母さんと映画を見にいき、帰りにファミレスで食事した。
好きな女の子もできた。
失恋もした。
きょうだいが優しい。
みんな「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と慕い、彼を支えた。
お母さんから電話が来た。
「息子が亡くなりました」
悲しい知らせだ。

2011040061s 元気なころの詩人・今井幸彦君

何度も彼と旅をした。
内面におもしろいものを持っている人だと分かった。
どてっと動けない大きな体をからかって、ぼくは思い切って「冷凍マグロ」などと呼んだ。
そう言える関係性ができていたと思う。
今井君はみんなから愛されていた。
寂しいな、今井君。

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2016年12月 4日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(307)

新転位・21第23回安保由夫追悼公演
「骨風(こっぷう)」

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信じられないようなメンバーが舞台に立つ。
四谷シモン、大久保鷹、十貫寺梅軒、佐野史郎、篠原勝之。
ある時代を飾った演劇人たちが、再び舞台に立つ。
もうこんな芝居は見れないかもしれないなと思って、すぐに予約の電話をしたのだが、
すでに完売していた。
残念。

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2016年12月 3日 (土)

永六輔さん最後の詩

明日12/4の「日曜はがんばらない」(文化放送、10時~)は、加藤登紀子さんがゲスト。
永六輔さんが最後に遺した詩「友だち あなた たたかう心」に曲をつけた。
おトキさんが、その歌をギターで披露してくれる。

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関東圏以外の方、聞き逃した方は、番組HPやラジコから聞けます。
ぜひ、お聞きください。

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2016年12月 2日 (金)

チョコ募金本格スタート

チョコ募金が本格的にはじまった。
うれしいフライングで、すでに多くの人たちに予約申し込みをいただいている。
ぼくが講演に行った千葉西病院の院長は、ぼくの大学の後輩で、心臓のカテーテル治療では日本でも屈指のドクターといわれている。
その病院では2百数十セットの予約をいただいた。
ありがたいことだ。

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今回のチョコレートは、物語のあるチョコレート、ヨーロッパ編。
悪性リンパ肉腫ステージ4で、イラクからヨルダン、イギリスへと渡った子どもや、
インドで骨髄移植をした白血病の女の子たちが、花の絵をかいてくれている。
チョコレートは、北海道の六花亭のもの。
原価で協力してくれている。
すでに申し込みは3万7000個。
あと12万個。
平和な世界にしていくためにお力添えをいただきたいと思います。

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2016年12月 1日 (木)

モスルの避難民を助けたい

ISが制圧しているモスルを奪還するための攻撃が激しくなっている。
北側にあるタルアファールの幹線道路は、シリアに通じる。
物資の補給にとって大事だ。
モスルでも混乱のなか、小児がんの治療が行われてきたようだが、その薬を補給する道でもあったようだ。

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12月23日からアルビルに行く。
アルビルにも最近、モスルから逃げてきたがん治療中の子どもたちがいる。
その子たちがモスルでどんな治療を受けてきたか聞き取りをする。
イラクでは厳しい状態になっている。
子どもたちを助けるために、JCFが行っているハムダニアチェックポイントで行っている物資の支援にご協力をお願いします。
JCFの活動とご支援はこちら↓

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