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2017年1月

2017年1月31日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(323)

「たかが世界の終わり」
監督は、グザビエ・ドラン。
これほど不器用な人はいないのではないか思えるほど、生きるのが不器用な人たち。
崩壊しかけた家族の物語だ。
主人公の男は、ホモセクシュアル。
12年ぶりに家に帰る。
自分に迫った死を告げるために。
何の病気か語られてないが、HIVかもしれない。
だが、そんなことはどうでもよく、「命が迫っていること」そして「家族を愛している」と告げたいのに、両方とも語れない。
そのうち家族は怒鳴り合い、家がどんどん壊れていく。

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映画の冒頭に音楽が流れる。
「この家には屋根がない。
この家にはドアがない。
この家にはドアノブがない」
なんにもない家。
だけどそこには真剣に生きようとする人たちの葛藤があった。
その葛藤は、すがすがしくなるくらいだ。
さすが鬼才ドラン。
愛を求めて葛藤する人々の微笑ましい姿が見えてくる映画だ。
映画はやっばりいいな、ときっと思うと思う。

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2017年1月30日 (月)

5分100円の家事代行サービス

電球の交換やびんのふた開け、家具の移動や大掃除。
一人暮らしの高齢者など、ちょっと人の手を借りたいときがある。
介護保険のサービスではできない、暮らしのお手伝いサービスを展開し、注目されているのが株式会社御用聞きだ。

170119img_6111 株式会社御用聞きの古市社長と

5分100円から利用できる。
一件当たりの平均は3000円。
年間1000件の利用があるという。
こうした家事代行サービスも注目され、講演に呼ばれたりもしている。
今後もサ高住にかかわっている組織からも要望がでてくるだろう。
フランチャイズも考えいるようだ。
地域包括ケアシステムで考えている医療・看護・介護系の人のリゾートバイトのマッチングサービスとネットワークができるかもしれない。

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2017年1月29日 (日)

グリーンボランティア

病院の会議室でグリーンボランティアの人たちに日ごろの感謝を込めて、レクチャーをした。
「地域包括ケアとは何か」というテーマだ。
地域にとって、ボランティアはとても大切な存在。

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看護や介護だけでなく、子どもにかかわるボランティア、買い物、花づくりなど生活を潤すボランティア・・・。
いろいろな活動が、地域包括ケアには必要だ。
グリーンボランティアは地域の宝物だ。

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2017年1月28日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(322)

「王様のためのホログラム」
デイプ・エガース原作のベストセラー小説を、トム・ハンクスが映画にした。
アメリカで失敗した男が、サウジアラビアの王様に3Dホログラムを売りに行く。
ビジネスは失敗するのだが、何か大切なものを得るのである。

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監督は鬼才といわれているトム・ティクヴァ。
おとぎ話のような話をシュールに、美しく描いている。
人生なんとかなるな、と思わてくれる映画だ。

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2017年1月27日 (金)

種子島

講演に招かれ、種子島医療センターへ行ってきた。
204床の病院に、23人の医師で、離島医療が行われている。
実にいい医療が展開されていた。
この島は、いい波が来て、サーフィンのメッカ。
離島人気度も全国2位。
ドクターやPT、ナースなども、サーフィン目当てで集まってくるという。

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ぼくたちは近々、医療・介護系の仕事をもつ人たちのリゾートバイトの紹介をやろとしている。
地方の自然に囲まれ、山登りやサーフィンなど楽しんだりしながら、地域医療に貢献し、
元気になったら、また都会に戻っていく。
医療・介護の専門家がそんなふうに各地を流動したら面白い。
人と情報がシャッフルされていくといいなと思う。
鉄砲伝来の地、種子島。
もともと腕のいい鍛冶屋がいたため、ポルトガルから伝わった鉄砲をまねて作ることができた。
日本人のすごさである。
その血を引いている種子島の人たちは穏やかだが、熱い志をもっているように思えた。

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きびなこ、おいしかった。

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2017年1月26日 (木)

聴診器でテロと闘う(68)

イラク政府軍を中心にしたモスル奪還攻撃により、ISは西側に撤退している。
東部の住民は自由になり、デバガのキャンプに逃げてきた。
そこには診療所がないため、ぼくたちは資金を出してモバイルクリニックをつくる支援している。
デバガがすでにいっぱいになったため、ハーゼルキャンプにテントを建て、モスルから来てきた避難民を受け入れている。
ハーゼルキャンプは、アルビルとモスルのちょうど中間にある。
避難民のなかにISの兵士が紛れているといけないため、スクリーニングが行われている。
周囲も金網で囲われ、自由がない。
「まるで収容所だ」と、避難民からは不平が出ている。
金網越しに、野菜や果物、肉、子どものおもちゃなどを売り買いする姿もみられる。

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100人ほどの避難民に、「このなかでISに家族を殺された人はいますか」と聞くと、
ばらばらと手が挙がった。
さらに「話をしてもいい人はいますか」と聞くと、男性が一人手を挙げた。
ただし、ここではなく、自分のテントの中ならいいと。
その男性は弟を殺されたという。
携帯電話にイラクの兵隊になった友だちの電話番号があっただけで、
頭に一発、胸に4発銃弾を撃ち込まれて殺された。
まだモスルには知人や友人が100人ほど残っている。
彼らが殺されなければいいが、と彼は心配していた。

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ハーゼルキャンプでは、ひっきりなしにモスルから負傷者を乗せた救急車が到着する。
モスル奪還は、今後、泥沼の戦いになる可能性が予想されている。
あと3か月で奪還できるとは思えない。
大変な戦いになりそうだ。

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2017年1月25日 (水)

お知らせ

今夜、日付が変わって26日の深夜1時から3時10分まで、NHK BSプレミアムで、
「定年・夫婦で走った40日~中米縦断トレーラーの旅」が再放送される。

鎌田も、ゲスト出演。
定年を迎えた25組の夫婦がトレーラーで旅をするドキュメンタリーだ。
ぼくは最近「遊行を生きる」という本を出したばかり。
いくつになっても、自由を求めて、遊ぶ心をもつ生き方は魅力的だ。
深夜の長い番組だが、録画してゆっくりご覧ください。

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地域包括ケアシステムとは何か75

20年以上つきあいのある認知症の女性が、施設で生活することになった。
山荘で一人暮らしで、いつまでも自由度の高い生活を望んでおり、
ぼくの外来で、「最期は面倒みて」と、ぼくの手を握ってくる。

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信州の冬は厳しい。暖房のための燃料費がかかる。
認知症もすすんできている。
なんとか納得して施設に入った。
書道のボランティアと一緒に筆をもつと、すばらしい字を書いた。
いま自分が書いたことも忘れているが、彼女の文字から彼女の人生を感じ取った。

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2017年1月24日 (火)

医療と芸術

日ごろお世話になっており、芸術が好きそうな先生に声をかけ、
諏訪市にある原田泰治美術館を訪ねた。
藤田保健衛生大学の総合診療の教授をしていた山中先生や緩和ケア病棟部長の片岡先生、産婦人科部長の青山先生、ぼくの“指導医”である総合診療の奥先生が参加した。
原田泰治さんを囲んで、作品を堪能したり、泰治さんの人生のことを聞く会を開いた。
それだけでも有意義な時間だったが、
なんとその後、泰治さんに招待していただき、おいしいお酒、おいしい食事をごちそうになった。

1701img_6071 原田泰治さん

山中先生は、若い研修医向けの著書のなかで、「ときには美術館に行くのも大事だ」と書いていたが、その通りだと思う。
楽しいとか、美しいとか、感動することは、どの仕事でも大切。
特に、人間を相手にしている医療のような仕事には必要なもののように思う。
原田泰治さんのお陰で、一日いい時間を過ごさせてもらった。
こういう時間があることで、患者さんに対しても、よりやさしくなれるような気がする。

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2017年1月23日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か74

自治医科大学の地域医療学センターの梶井教授の呼びかけで、
「地域包括ケアって何だ」というセミナーをさせていただいた。
同窓会が協力してくれ、休み明け間近で連絡も行き届かなったが、あっという間に教室がいっぱいになった。
あたたかな医療があること、おもしろい医療があることを学生にわかってもらいたかった。
反応もとてもよかった。
質問も出た。
地域包括ケアをするためには、想像力が大事なんですね、と医学部6年生もたくさん参加してくれた。

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患者さんとのかかわりは、正解は一つではない。
別解がある。
年齢やその人の生き方によって、ベストな治療法は違ってくる。
そういう意味で、想像力を豊かにして、別解を見つける力が必要なように思う。

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2017年1月22日 (日)

お知らせ

NHKBSプレミアムの、過去に好評だった番組をもう一度楽しむ「プレミアムカフェ」(月~金、午前9時)。
24~26日の3日間は、鎌田がゲスト出演する。
24日は、「世界一番紀行 世界で一番長生きが多い里~中国・広西巴馬」
100歳以上の数が世界一だというチワン族を女優の吉本多香美さんが訪ねる番組だ。
豊富な野菜があり、高齢者が生き生きと働いている。
健康で長生きのヒントがたくさんある。

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25日は「定年・夫婦で走った40日~中米縦断・トレーラーの旅」。
定年後の25組の夫婦が、トレーラーハウスで40日間の旅をする。
まるで遊行だ。
遊行は、人間が自由になる大切な時間。
「エデンの東」を書いたスタインベックも、チャーリーとの旅と題して、トレーラーハウスでアメリカ大陸16000キロを旅した。
これにより、彼は新しい境地の作品をつくる。
26日は、「秩父の山中 花のあとさき~ムツばあさんのいない春」。
150年、何代にもわたって開墾してきた秩父の田畑を自然に戻すため、1万本の花を植え続けたムツさん夫妻の姿を描く。
ぜひ、「プレミアムカフェ」をご覧ください。

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2017年1月21日 (土)

虹の園

宮城県の障害者施設「虹の園」では、ぼくの本をそろえて販売してくれている。
先日、発売されたばかりの新刊『遊行を生きる』(清流出版)も置いてくれている。
ぼくがこの施設グループの応援団長だからだ。

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このグループは障害者の雇用を広げるために、おもしろいことをいっぱいやっている。
がぎゅうべーカリーのパンはとてもおいしく、出張販売するとすぐ売り切れる。
にじいろカフェ、美山の里、バカ美味ぎょうざ、ぱぴハウスなど、
宮城県内に7つの店舗、川崎市に2店舗、展開している。
ぼくは東北に講演に行くと、帰りに立ち寄って講演会などをして応援している。
虹の園のグループのお店に、おいしいピサやおだんご、パンなどを食べに行って見てください。

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2017年1月20日 (金)

新刊『遊行を生きる』発売

本日、清流出版から鎌田の新刊『遊行を生きる』が発売される。
遊行とは、人生の4つの時期の一つといわれる。
「学生期」(がくしょうき)は、生まれてきた命が学び、成長する時期のことを言う。
「家住期」(かじゅうき)は人間として成熟していく時期。家族をつくったり、家をつくったり、人によっては会社を起業したりして、いちばん汗をかくときでもある。
「林住期」(りんじゅうき)は、定年後、林に隠棲しながら、生きるとは何か、人間とは何か、人生を顧みる。
そして、「遊行期」(ゆぎょうき)は死の準備、人生のしめくくりの時期といわれている。人によっては解脱(げだつ)、煩悩から自由になることを目標にする時期だという。
でも、ぼくは文字通り「遊び、行く」時期だと捉えた。
高齢者だけでなく、若い人、働き盛りの人にも読んでもらいたい。

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今、世界は内向きになりがちである。
林住期のように閉じこもって考えてばかりいてはいけない。
こんな時代だからこそ、外向きになって、自由に、野垂れ死にしてもいいくらいにはじけて生きることが必要なのではないか。
尾崎豊が今も聞かれ続けるのは、遊行のテイストがあるではないか。
スティーブ・ジョブスが成功したのは、禅に興味をもったり、遊行の意識があったからではないか。
今こそ遊行の時代、そんな思いを込めて書いた。
ぜひ、お読みください。
                       ◇
1/22の「日曜はがんばらない」(文化放送、午前10時~)でも、村上信夫さんとたっぷりと遊行談義。
こちらもお聞きください。

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2017年1月19日 (木)

「遊行を生きる」 明日発売

Yugyo「遊行を生きる」
悩み、迷う自分を劇的に変える
124の言葉

清流出版より、明日出版です。

とても面白い本ができました。
ぜひお読みください。

遊行」とは、
先入観やこだわりを捨て、
自由な感性で生きること。

「遊行」の精神で、
生きるのが楽になる。

いい言葉は、いい人生を生みだし、
いい人生は、いい言葉を生みだす。
「遊行」は、何気ない毎日を特別にする。
生きるのが、楽になる。

発売を前に、ダイヤモンドオンラインが取り上げてくれました↓↓↓

DOL特別レポート
鎌田實医師が感じた生き方への疑問を「言葉の力」が救った


http://diamond.jp/articles/-/114703?page=6

続きを読む "「遊行を生きる」 明日発売"

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2/10 日比谷で「がんばらない」トークショー

【JIM-NETイベントのお知らせ 】

イラク・シリアの子どもたちへのバレンタイン展 
~物語のあるチョコレート ヨーロッパ編~

Hibiya

今年もギャラリー日比谷で、イラク・シリアの子どもたちの絵画・写真展を開催します。 画廊はボランティアで無料で貸して頂いています。2月10日には、ぼくのトークショーもあります。ぜひお越しください。 

会期:2017年2月10日(金)~15日(水) 11時から19時まで(最終日は17時まで)

会場:ギャラリー日比谷 http://www.g-hibiya.com/
    〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-5 
            TEL:03-3591-8948(会場直通) ※会期中のみ 

【会期中のイベント情報】

『鎌田實の「がんばらない」トーク』

2月10日(金)14時~15時 

定員50名・要予約 (※会場の大きさの関係で、桟敷席にお座り頂く場合もあります。)

予約電話:03-6228-0746/080-5544-5937

申込フォーム

【イベントに関するお問い合わせ】

特定非営利活動法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)  
TEL:03-6228-0746 e-mail:info-jim@jim-net.net

詳細はJIM-NETのHPへ

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2017年1月18日 (水)

お知らせ

明日19日の「ニュースエブリー」(日本テレビ系)は、イラク難民キャンプ第3報。
アルビル市内でカマタたちが、白血病の女の子たちと募金活動をした様子をお送りする。
イスラムの人たちは美時から望んで善行を行う。
そのため、たくさんの寄付をしてくれた。
放送時間は、4時20分くらいから。

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1/20は「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)にも、久々にゲスト出演する。
昨年は、大竹さんの番組に出てチョコ募金のことを語ったところ、最大の反響をいただいた。
大竹さんの番組ではイラクの話のほか、最新刊『遊行を生きる』(清流出版)を取り上げてもらう。
ぼくの出演は2時25分くらいから。
お話を聞いて興味がわいたら、ぜひ、チョコ募金に協力してください。

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2017年1月17日 (火)

食育の会で

茅野市で食育の会があり、鎌田はボランティアで講演をした。
市長もあいさつ。
市長さんは、朝、自宅から市役所まで、半分は歩き、半分は市の車を使うという。
毎朝2キロは歩いている。
お昼の食事は野菜だけ。
自ら健康に気をつけている。
長年続けてきた健康づくり運動が、住民に深く根ざしているような感じがした。
長野県は野菜摂取量が日本一になったことで、
長寿県になり、がんの死亡率もダントツに少ない。
野菜摂取量2位は島根県で、心筋梗塞が日本一少ない。
短命県は青森で、がんも多い。
秋田は脳卒中が日本一多い。
岩手は数年前まで脳卒中が多かった。
長野県と同じような気候で、冬は雪におおわれるが、生活習慣が変わることで改善できる可能性がある。

Img_6085 えごまみその田楽、えごまクッキー

Img_6084 えごまも会場で売られていた

食育の会では、うれしいニュースも。
食生活の啓蒙を担っている食改さんたちはベテランの人たちが多く、若い人たちがいないのが悩みの種だったが、
最近、若い人たちが増えて80人になったという。
食改さんたちに「鎌田先生が新聞やテレビで、食改の活動の大切さを伝えてくれたおかげ」と言われた。
この組織は、各地区から必ず人数を出すような、強制ではないのがいい。
自由参加が基本だ。
それでも、活動に参加したいという人が増えるのは地域の宝だと思った。

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2017年1月16日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か73

認知症の保険がいろいろな形で始まりだした。
器物損壊がなくても、列車を止めるなどの被害を出したときとか、
本人に責任能力がないと判定され、家族にその責任がまわってきたときなどに、補償する保険だ。
大切なことではあるが、もっと大切なことは人間と人間の関係の保障だ。
認知症でも、人間と人間の関係かうまく保たれれば楽しく生きることができる。
目黒には、Dカフェという認知症カフェが10か所ある。
その一つに、「養老乃滝」の閉店時間に、認知症カフェとしてオーブンしているところがある。
認知症カフェのときはお酒は飲めないが、4時くらいに終わると、飲みたい人は飲んでもいいことになっている。
こういうのはステキだ。

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理学療法士やと作業療法士が中心になって行っている「Dカフェせらびあ」に行った。
とにかく楽しそう。
はじめて参加したという学校の元教師だという認知症の人は、あっという間に空気になじんでいく。
認知症の女性が隣に座って、甲斐甲斐しく世話を焼く。
話も楽しく弾む。
そこに保健師や理学療法士などが、邪魔しない程度に参加している。
家族だけの参加というのもある。
みんなに話を聞いてもらって、元気になって帰っていく。
参加費は、認知症の人も家族も介護士も、お茶代の300円。
おいしいコーヒーが飲める。
もちろん、ぼくも300円を払って、参加した。

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2017年1月15日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(321)

「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」
アイヒマンはユダヤ人ホロコーストの中心的人物。
指名手配され南米で見つかり、イスラエルで裁判をうけた。
世界中でテレビ放送されたが、アイヒマンの姿はみんなを驚かせた。
極悪人というよりも、上からの命令はイエスマンで聞く男だったのだ。
ハンナ・アーレントは「凡庸」と言った。
自分では意思決定せず、命令に従い、かってにヒトラーの思いを忖度しながら、非人道的な大量虐殺を実行した。

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社会学者スタンレー・ミルグラムは、ある実験をする。
アイヒマン実験である。
ふつうの市民が被検者。
生徒役の人が問題を間違えると、教師役は電気ショックを与える。
間違えば間違うほど強い電気ショックになり、生徒役は苦痛に身をよじる。
教師役はそれを知りながら、実験を続ける。
生徒役の声が聞こえなくなっても、命の確認をしにいく者はだれもいなかった。
ふつうの人のだれもが、アイヒマンになる可能性をもつことを示した実験である。
人間は思い込みや勝手な忖度により、簡単に盲従してしまう。
ある人の行動をまねをする同調行動も起こりやすい。
人間はそういう生きものなのだ。
人間は見たいものしか見ない。
「部屋の中の象」現象だ。
部屋のなかに象がいると大騒ぎするより、見て見ぬふりをすることがある。
この映画は心理学の実験がたくさん出てきて、ちょっとしんどいが、
この時代にみておく必要があるように思う。
ぼくたちが盲従しないためにも。

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2017年1月14日 (土)

チョコ募金

たくさんの方に協力いただいているチョコ募金。
うれしい声も添えられています。
「はじめは自分たちで、おいしいねと食べていているだけでした」という人は、
友人がフェイスブックで紹介していることを知り、仲よしの人に説明つきで配ることにした、といいます。
「日本のアメリカも不穏な空気が流れています。若い人たちが希望のもてる世界にしていかないと、と思っています。応援しています」
こんな声を聞くとうれしくなります。

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ぼくの講演でチョコ募金のことを知り、口コミで広めてくれているという人もいました。
チョコを簡単なお返しやお礼として重宝しているという人からは「六花亭さんの協力にも頭がさがります」とのこと。
そう、六花亭の会長以下、社長、社員の一人一人があたたかい心で協力してくれています。
チョコ募金に、ぜひ、ご協力ください。

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2017年1月13日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(320)

「ラビング 愛という名前のふたり」
プロデューサーは「英国王のスピーチ」のコリン・ファース、監督はジェフ・ニコルズ。
1950年代、白人と黒人の結婚を認めないバージニア州を舞台に、ラビング夫妻の本当の話を映画にした。
ワシントンまで行って結婚し証明書を出してもらったにもかかわらず、婚姻が認められなかった。

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彼らは、長い年数をかけて、アメリカの州法を動かしていく。
決して裁判の映画ではない。
愛の物語、感動の話である。
昨年のアメリカ大統領戦以降、白人至上主義者のKKKが力を増大させていると聞いた。
何十年もかけてやっと獲得したはずなのに、歴史を退行させてはいけないと思う。
たくさんの人に、この愛の物語をみてもらいたいと思う。

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2017年1月12日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(319)

「こころに剣士を」
タイトルがよくないが、映画はすばらしい。
「よかったらコメントを」と言われていたが、忙しくもあり、断った。
その後、劇場でみたらとてもすばらしい。
映像がきれいだ。
監督は、クラウス・ハロ。フィンランドの名監督である。
2004年にイングマール・ベルイマン賞を受賞し、ベルイマン直々に賞をもらったという。
ハロ監督は「ヤコブへの手紙」という映画をつくっているが、これもいい映画だった。
目の見えない神父と、元囚人で行き場のない女性が森のなかで生活する物語だ。

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この「こころに剣士を」は、バルト三国の一つエストニアを舞台にした話。
エストニアはかつてナチスに制圧され、若者はナチスドイツの軍人として戦争に行った。
その後、大戦末期にはソ連が占領。
スターリンの時代を迎えると、残酷な粛清が繰り返されるようになる。
そのなかで、レニングラードでフェンシングの有名選手だった男が、秘密警察に追われた。
隠れるようにして、エストニアの体育の教師をしていた。
子どもたちにフェンシングを教えはじめる。
子どもたちは、レニングラードで中学校のフェンシングの大会があることを知り、行きたいと願う。
主人公は、レニングラードに行けばつかまるのをわかっていながら、レニングラードに行く決意をする。
子どもと主人公との誠実なやりとりが、美しい映像で綴られる。
映画はいいなあ、としみじみと思った。
ハロ監督の面目躍如の作品である。

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2017年1月11日 (水)

聴診器でテロと闘う(67)

年末、イラクのアルビルを訪ねた。
そのときのまちの様子。
ISからの奪還攻撃が繰り広げられているモスルから、アルビルに避難してくる人も多く、
病院も難民キャンプも混乱しているが、
商店の様子だけみると、いつもの日常がある。

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2017年1月10日 (火)

聴診器でテロと闘う(66)

エイマン君9歳は、モスルの子だ。
以前は、リカア先生が部長をしていた、白血病のセンター病院であるイブンアシード病院で治療していた。
診断、治療したリカア先生について、カラクーシュまで行っていた。
一時期、完全寛解。
骨髄穿刺をすると白血病細胞はゼロであったが、脾臓のはれがとれなかった。
そして再発。
白血病は再発すると厳しい。
骨髄移植をするか、CAR-T細胞療法など特殊な治療をするしかない。
アルビルのナナカリ病院では、CAR-T細胞治療センターをつくろうとしている。

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IS支配下のモスルの病院でも、世界の標準治療のプロトコオルは守られていたようだ。
ただし、一つくらい薬が足りないものがあった。一つ薬が足りないと治療成績はくんと落ちてしまう。
血友病の患者も多くなっている。
サラセニアという地方病も多い。
血液疾患が多い地域なのだ。
モスルの病院では血友病の患者に、ファクターエイトを手にいれて注射している人がいたという。
トルコかシリアからのルートか。
モスルは、ISが支配しはじめたぱかりのころは物価は安かったが、
いまイラクから物流が途絶え、食べ物も水も足りず、とても値段が高くなっている。
一般市民は生活が苦しくなっているようである。

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2017年1月 9日 (月)

お知らせ

チョコ募金はたくさんの方に申し込みをいただき、あと4万5000個という状況になりました。
毎年のことですが、パルシステムが会員さんたちに呼びかけてくれています。
アルソア化粧品も全国の方々に、チョコ募金の意味や意義を広めてくれているようです。
ありがたいことです。

161226img_5840 カラフルなキャンディなどが並ぶイラク・アルビルの店先

1/5の「ニュースエブリ」(日本テレビ系)では、年末、鎌田がイラクの難民キャンプを訪ねたときの様子を放送しました。
鎌田は、毎週木曜日にコーナーをもっています。
1/19は、予定がずれなければ、イラクで呼びかけたチョコ募金のことを放送する予定です。
テレビを見逃した方、視聴エリアではない方は、日本テレビ「ニュースエブリ」のサイト(http://www.ntv.co.jp/every/  )から「鎌田」で検索すると動画で見ることができます。
1/20は「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)に出演します。
鎌田の出番は、2.25から。
昨年も大竹さんのラジオを聞いた人からたくさんチョコ募金の申し込みをいただいています。
ぜひ、ご視聴ください。

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2017年1月 8日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(318)

「エゴン・シーレ 死と乙女」
すごい映画。
ぼくはエゴン・シーレの絵が好きで、ウイーンのレオポルド美術館にまで見に行ったことがある。
映画のそこかしこに、スケッチや油絵の大作が出てくる。
この映画のテーマとなっている「死と乙女」は、死の匂いをぷんぷんさせるような作品。
「男と女」というタイトルだったが、28歳で死ぬ直前、シーレ自身が「死と乙女」というタイトルに変えている。
シーレは、妹をはじめ、次々とモデルを選び、かきたいものを描いていく。
やがて、クリムトのモデルだった17歳のヴァリと出会う。
美とエロスを追求し、描き続けるエゴン・シーレだが、社会からはゴシップ的に、スキャンダラスにとらえられてしまう。

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シーレは上流階級のエディットと結婚。
ヴァリは失意のまま、従軍看護師にな戦死する。
シーレは、妻エディットの姉アデーレをモデルに傑作をかいているが、映画ではこのへんは描かれていない。
ただ、エディットを描いた最高傑作「家族」が壁にもたせかけてあり、ちらっと登場する。
その後、シーレ夫婦はスペイン風邪に冒され、亡くなっていく。
第一次世界大戦前後のヨーロッパの退廃した空気がえがかれている。
そんななかで必死に人間性の復活を描こうとしたエゴン・シーレのもがきが感じられる。

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2017年1月 7日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(317)

「エリザのために」
監督はクリスティアン・ムンジウのルーマニア映画。
英国留学を目前にしたエリザが、暴漢に襲われた。
娘のためにあらゆる手段を使って、娘を送り出そうとする父親の姿を描いている。
東欧のルーマニアは、1989年に民主化運動がおこり、
チャウシェスクの独裁政権が打倒される。
新しい体制になっても、民主主義はうまく作動せず、コネ社会のようなものが広がった。
そのなかで、なんとか生きようとする人の物語だ。

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サスペンスとしてみると、犯人がだれかなかなかわからない。
が、サスペンスではなく、人間の心を描いた映画ということがわかってくる。
筋書がときどき飛んでいく。
これもムンジウ監督のスタイルのようだ。
核心に迫った、緊迫した映画。

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2017年1月 6日 (金)

おいしいパン屋さん

長野県の高遠町にある石窯焼き天然酵母のパン屋さん「野良屋」は、
毎年、カレンダーをつくり、売り上げの10%をJIM-NETとアラブの子どもと仲良くする会に寄付していただいている。
アラブの子どもと仲良くする会は、JIM-NETの参加団体の一つ。
ヨルダンやイラクで難民になった女性たちに刺繍づくりなど教え、少しでも雇用に近い形をつくりだそうとている。

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カレンダーは豊かな自然のなかで、犬や猫がのびのびした表情のカレンダーは、
みているだけで和む。
ご家族は多才で、娘さんが「いっちゃだめ」という絵本を出した。
野良屋のパンはとにかくおいしい。
ぼくもここのパンのファン。
機会があれば、ぜひ、食べてほしい。
野良屋のHP↓

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2017年1月 5日 (木)

チョコ募金

たくさんの人たちに協力をいただいています。
鮮魚市場やおいしい魚を食べられる食堂などがある知多半島の「魚太郎」。
大阪市本町にあるライブを楽しめるカフェHOPKEN(ホープケン)。
大王製紙からも、たくさんを申し込みをいただいています。
ありがたいことです。

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チョコ募金は、イラクの病気の子どもたちを救う活動などに充てます。
おいしくて、かわいいチョコ募金。
ぜひ、ご協力をお願いします。
申し込みはこちら↓

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2017年1月 4日 (水)

聴診器でテロと闘う(65)

シリアのカミシルから出てきた女性とは、9カ月ぶりに再会した。
その女性には、心室中隔欠損の子どもがいる。
子どもの心臓の音と成長の度合いを確認すると、以前に比べ、ずいぶんしっかりしてきた。
難民キャンプなどで乳幼児の健康をみていると、ジレンマを感じることがある。
ユニセフが「赤ちゃんにやさしいケア」を訴えているため、
人工栄養のミルクを配ることが難しい。
諏訪中央病院も、日本ではまだ少ない「赤ちゃんにやさしい病院」であるから、
母乳の大切さはわかっている。
が、原理主義に陥ってはいけない。
母乳だけでは足りない子どもがいる。
その子には、母乳とミルクの両方が必要になる。
いまも10人ほどの、問題を抱えている子どもにはミルクを配っている。

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この子にも少し前までミルクを配っていた。
心臓の音もあいかわらず、心室中隔欠損の音が聞こえているが、
循環器の専門病院にも連れていき、いまのところ手術は必要なし、経過観察ということになっている。
成長も少しずつ追いついてきているようで、安心した。
母親にも笑顔が出てきているようだ。
難民生活は長期化している。
どうしたら精神的な安定を得られるか。
難民キャンプで、ストレス解消の場をどうつくるか、課題になっている。

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2017年1月 3日 (火)

カマタの心配

トランプ次期大統領の人事が明らかになってきた。
国務長官に、石油大手エクソンモービルの最高責任者ティラーソンを指名する意向だという。
財界と金融界、大手証券からも3人の名が挙がっている。
国防長官には狂犬と呼ばれるジェームズ・マティス。
エスタプリッシュによる政治に反対し、トランプが大統領戦に勝利したが、
人事候補をみるかぎり、一部の資本家が規制をとっぱらってますます儲けられるようになるだけでは、という懸念をぬぐえない。

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さらに、軍部の強硬派がさらに軍を大きくし、軍需産業とからまりながら、ときにはガス抜きようにどこかで戦争を起こし、お金儲けをする場をつくる可能性もある。
かつて、ブッシュ政権下でチェイニーが国防長官が就き、石油業界との密接なつながりのなかで戦争が開始された。
鎌田の心配は尽きない。
戦争を起こしていいことなんて何もない。
今年こそは、平和に向かいたいものだ。

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2017年1月 2日 (月)

若者の夢を応援したい

いま金融の量的緩和が続いている。
だが、マイナス金利にしても、経済はいっこうに動き出さない。
お金はじゃぶじゃぶとあふれ、平時の3倍といわれている。
415兆円、そのうえに年間80兆円のペースで増え続けている。
2017年は、再び経済危機が来る可能性がある。

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どうしたら生きやすい社会をつくることができるか。
もっと自由な発想の地域福祉を実現していくために、夢や知恵のある若者を応援したい。
たとえば、空き家を利用して、認知症の人や高齢者、子ども、シングルマザー、一人暮らしの若者などが自然と集える仕組みをつくる。
朝は、バランスのとれた朝食を安く食べられるモーニングカフェ、昼は認知症の人や家族が集える認知症カフェ、夕方は子ども食堂、夜は居酒屋・・・。
そんなおもしろい仕掛けをつくるアイデアが実現すれば、その地域がおもしろくなる。
そういう志をもった若者に、小額投資するシステムをつくりたい。
それがうまくいけば、地域の資源になる。
今年は、おもしろい年にしようと思う。

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2017年1月 1日 (日)

明けましておめでとうございます

実現したい夢がいくつかあります。
昨年秋、「地域包括ケア研究所」を立ち上げましたが、
今年はおもしろい地域包括ケアを展開したいと思います。
資本主義は壁にぶつかっています。
そのため、保護主義など、世界は内向きになろうとしているようです。
しかし、こんなときだからこそ、オープンマインドで外向きに、一人ひとりが生きていくことが大事だと思います。

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『遊行を生きる』(清流出版)という本を書きました。
2017年は、さまに「遊行」が求められているような気がします。
人生は、「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」に分けられるといいます。
人から離れて林に住み、思索にふけるのではなく、
はじけるように、元気に動き回りたい。
今年はジョイントベンチャーを立ち上げます。
医療、看護、介護の専門家のリゾートバイトのマッチングをし、厳しい状況のなかで燃え尽きないようにする、働き方の提案でもあります。
たとえば、温泉地などで、1年ほど働きながらゆっくりリフレッシュする。
そして、元気になったら最前線に戻っていく。
その土地が気に入ったら、その土地にとどまるという選択もできます。
2017年は動的な年にしたいと思います。
考えているばかりではなく、野垂れ死にすることも恐れずに、思い切って動き回ることが大事だと思っいてます。
今年もよろしくお願いいたします。

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