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2017年2月14日 (火)

地域包括ケアシステムとは何か78

茅野市の施設にいるFさんを、奥先生と往診に行った。
Fさんは、諏訪中央病院が市内から現在のところに移転するときの功労者の一人である。
「うれしいな」
ぼくの顔を見るなり、そう言った。
骨肉腫と診断されて5年以上になる。
Fさんは手術や抗がん剤治療を望まなかった。
「自分はやりたいことができ、楽しかった。
だから、もう無理な治療はしなくていい」

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奥さんは数年前に突然、脳卒中で他界した。
生きているときには元気な人で、狭心症があり、冠動脈のバイパス手術を受けていたが、「夫婦二人でキノコ採りや旅行に行き、楽しく生きます」と言っていた。
日本中のおいしいお酒がある家だった。
ジゴボウという地元のキノコをよくいただいた。
奥さんが亡くなった後、Fさんはこの施設に入った。
十分、満足しているという。
昔、彼は諏訪中央病院の移転のために1万坪近い土地を取得するのに奔走した。
ぼくはよく覚えていないのだが、Fさんによると、ぼくとFさんは、一本ずつ一升瓶の日本酒を買って、集落の集まりに頭を下げに行ったという。
〈病院の周囲に、特養や老健などの施設をつくり、年をとっても安心して暮らせる地域を作りたい〉
お酒を飲み交わしながら、みんなで夢を語っているうちに、何人かいた反対者も態度を軟化しはじめた。
「楽しかったなあ」とFさん。
「もういつお迎えが来てもいいと思っていたけど、こうして先生が突然、来てくれると、
もう少し生きてもいいな、と思うようになりますよ」
地域包括ケアは思い出とつながっている。

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