臨時便の船長(下)
東日本大震災の混乱のなかで、大島へ渡る船便を出していた菅原さんと、被災地に救援に入ったぼくは偶然、出会った。
それから5年8か月。
午後8時ごろ気仙沼の港に行き、「鎌田です」と声をかけた。
すると、今も臨時便を出している菅原さんが声をあげた。
「うれしいなあ」
おじさん二人でハグをして、再会を喜んだ。
後で聞くと、菅原さんはこのとき泣きそうになったという。
菅原さんの家まで行った。
震災のとき、菅原さんの家は全壊した。
多くを失ったが、命と船は助かった。
だから、いま生きている人を何とか助けたいと思って、当時、すぐに大島への臨時便を出すことにしたのだという。
全壊した家の材木や、釘、金具、雨どいなど愛着があり、どれも捨てたくはなかった。
潮をかぶっているので、木材は潮だしし、曲がった釘はまっすぐに伸ばした。
その手間暇に1年半かけ、
さらに、それらの材料を活かして新しい家を建てるのに1年半かけた。
すごい男だ。
菅原さんの復興度は、と聞くと、
「100%」と即座に返ってきた。
一生懸命、毎日を生きているという。
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