鎌田實の一日一冊(307)
「さすらいの皇帝ペンギン」(高橋三千綱著、集英社)
3/24発売。
コドクと孤独の物語。感動長編だ。
小説家、楠三十郎は、チリである少女から皇帝ペンギンのひなを預かる。
南極に返してほしいということだった。
とんでもなくたいへんな旅を、とんでもなくフットワークのいい筆致で、
芥川賞作家三千綱さんらしい文体で、あっとう間に読ませていく。
主人公の小説家はおそらく著者自身ではないかと思われる。
ならば、重い糖尿病と肝硬変があって、胃がんもあって、ぎりぎりを生きている。
本人が主人公になりすましながら、「生き抜けよ、お前は生きているだけで価値があるんだ」
と、皇帝ペンギンに言うのは、自分自身に向けた言葉のように思えてならなかった。
すてきな小説。
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