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2017年4月

2017年4月28日 (金)

山崎ハコの世界

山崎ハコさんの歌が好きだ。
信州に来て地域医療をしながら、これでいいのか、と悩んだとき、
「飛・び・ま・す」という歌に救われた。
もっと激しく飛んでいいんだと思った。
そして、「望郷」。
山崎ハコさんは「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜午前10時から)のゲストにも来てくれ、ぶしつけなぼくのムチャブリにも応えて歌ってくれた。
彼女の人生はとても大変だった。
突然、会社も、住むところもなくなり、路頭に迷った。
それでも歌があるから救われたという。
そんな山崎ハコさんのライブがある。

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山崎ハコ カ・ン・レ・キ バースデーライブ!
5月13日(土)18時開演
5月14日(日)17時開演
会場はどちらも渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

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2017年4月27日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(251)

「八重子のハミング」 

元教師の夫婦。妻が認知症になっていく。
介護生活12年。 若年性アルツハイマー病。進行が速かった。

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ぼくは、ずっと地域包括ケアをやってきた。しかも映画が大好き。

認知症の方ともたくさん関わってきた。だから、こういう映画をできるだけ応援してあげたくなるのだが、実際は、ブログや映画評であまり取り上げてこなかった。

ぼくは自分の感性をゆさぶってくれるような映画が好き。こういう社会に呼びかけるような映画は、「いい映画だね」の一言で終わってしまうことが多い。

この映画のように、重度の認知症の大変さがよく現れている映画を見てしまうと、「認知症は大変だから、認知症になったら安楽死がいい」という意見も出てきてしまうのだ。

主人公の八重子のような重度の認知症は、パーセンテージでいうと実はそう多くはない。もっと、まだらな状態で生活ができる。軽度化中等度の人が多いのだ。それを誤解されるのは残念だなと、こうした類の映画をみると思ってきた。

でもこの映画は、実によくできている。

大切な人がゆっくりと記憶を無くしていくことに、ゆっくりと付き合うことを、夫は覚悟する。温泉宿の女将の優しさ、喫茶店のお茶のみ仲間たち、夫の息抜きに一緒にパチンコに行ってくれる同級生の内科医など、いい人間関係がうまく映されている。

「地域包括ケア」なんて言葉はもちろん一度も出てこないが、「地域包括ケア」が見事に息づいている、地方の町の生活の匂いがとてもいい、あたたかな映画だ。
有楽町スバル座で5月よりロードショー。

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2017年4月26日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(250)

「怪物はささやく」

これぞ映画!ファンタジーだ。
でもリアルな世界と遊離しないファンタジーになっていることころがすごい。ダークファンタジーだ。

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児童文学の最高傑作。いくつもの賞をとったイギリスの作家パトリック・ネスの作品を映像化した。癒しの映画だ。

シングルマザーの、たった一人のお母さんが、難病で死んでいく。13歳の少年コナーは、は納得できない。

そんなコナーの前に木のモンスターが現れ、
「これから3つの真実の物語を語るから、4つ目は、あなたの真実の物語を語らなければいけない」
と告げる。

モンスターの語る3つの物語には、色々な仕掛がされている。

自分の愛する人を自らの手で殺しておきながら、王になり、良い国を作った男の話。

同級生にいじめられ続けた主人公が、「透明人間」と言われてから、自分が存在していることを明確にするために、初めて命がけで戦いに挑む話…。

何がよくて何が悪いかは、実はそう簡単ではないのだということがわかってくる。

時には破壊することの大切さも語られていく。 優しくて愛にあふれていればいいだけではない。それが人生なのだということを、わからせてくれる。

おばあちゃんと、なかなかうまくいかなかった。お互いが、相性が悪いと思っている。しかし、怪物のお蔭で理解しあえるようになる。

少年が大切な人を手放し、親から自立していく物語でもある。愛の物語でもある。
人を大切にするということはどういうことなのか、を考えさせてくれる映画でもある。
時には壁をぶち壊すことの大切さをこの映画が教えてくれる。

今年一番の僕好みの映画だ。
「ラ・ラ・ランド」も、アカデミー賞をとった「ムーンライト」もすごいが、ぼくにはこの「怪物はささやく」が、何倍もいい。怪物が、大きくて、かっこよくて、かわいいのだ。

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東大の学園祭で講演をします

2017年東大五月祭医学部企画「プロジェクトH」基調講演 

「『命を支えるということ』 地域包括ケア・国際医療・災害医療を考える」

平成29年5月21日(日)10:30-12:00(開場10:00)
東京大学医学部 鉄門記念講堂にて 

こちらからお申込みください(参加無料)

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【東大のHPより・・・】

今年度の五月祭医学部企画「プロジェクトH」は、「病気を治すだけが医療ではない」というコンセプトのもと、医療の根本に立ち返って、地域のケアも含めた全人的な医療の可能性を提示することに焦点を当てています。そのコンセプトと大きく合致したキャリアを歩まれておられる、鎌田實氏による基調講演を催します。地域医療のみならず、海外医療支援にも携わっていらっしゃる鎌田先生のお話を通じて、全人的な医療の在り方を感じ取って頂ければ幸いです。

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2017年4月25日 (火)

買い物ついでに健康診断

佐賀へ、4年連続で健康の講演会に行った。
北九州一帯に展開しているミズという薬局グループが主催するもので、毎年1800人の会場が超満員になる。
ミズは、大きなドッラグストアもあるが、処方箋薬局も展開。
東洋医学に力を入れたり、住民の健康相談ができるようにしてきた。
コンビニとドラッグストアが同じ建物にあるという面白い作り方をしている。
店内には多種の健康測定器があり、買い物客が健康チェックできる。
県とタイアップ、年3回、健診車も駐車場にやってくる。
日曜日、買い物に来たついでに健診を受けることができるので、市民にとってはとても受けやすい。
受診率は佐賀県のなかで一位になった。

Img_6571 佐賀ちゃんぽん

クリニックモールも作った。
介護付き住宅型有料老人ホームがあり、産婦人科、歯科、内科、脳神経外科の4つのクリニックがある。
この地域は、肝臓がんに多い。
海岸に近い地域では、塩分の摂取量が多いためか脳梗塞も多い。
4年間、講演をして種まきをしてきたので、これからきめ細かな目標設定しながら、地域をどう健康にできるか考えていきたい。

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2017年4月24日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(249)

「マスタード・チョコレート」
携帯コミックとして週刊連載され、第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した。
その実写版。
主人公の津組倫子役を、NMB48の中心的メンバーだった山田菜々が演じている。
不思議な存在感。
「ポンコツな少女」と書かれているが、この存在感が何ともいえない。
これだけでこの映画が出来上がっているような気がする。

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やる気があるのかないのかわからない。
不愛想で、自分自身がどう生きていいのかわからない。
その空気感が伝わってくる。
実にくだらない映画だが、この山田菜々を見るだけでも映画館に足を運ぶ価値はあるのではないか。

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鎌田劇場へようこそ!(248)

「ノー・エスケープ 自由への国境」
アメリカとメキシコ国境でいま何が起きているのか。
極限のサバイバル・エンターテイメントだ。
アメリカは銃社会。
銃をもつと、試したくなる。
何のために殺し、襲撃するのかわからない。
次々に国境を越える人たちが殺されていく。

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トランプ大統領は「メキシコ国境の安全を確保すべく、物理的な壁を直ちに建設、
十分な人員による監視を行い、不法移民、違法薬物、人心の売買、テロ行為を未然に防ぐ」
と大統領令を出した。
世界は内向きになっている。
自分さえよければ、という社会が拡がっていく。
それを侵害するものは殺してもいい、という極端な考えがはびこりだしている。
そんな不穏な空気を感じる映画だ。

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2017年4月23日 (日)

読む喜び、歌う喜び

神野美伽さんは、ご自分のファンクラブの冊子にこんなエッセイを書いている。
「言葉」というタイトルだ。

「久しぶりに夢中になった。本を読む喜びと充実感を忘れていた体のなかに、また血が通いだしたことを読みながら感じていた。
鎌田さんの生き方や人生を吐露した随筆で、眠りかけていた私の心が鼓舞されたことは言うまでもない。
一冊の本で私は生気を取り戻した」

一緒に大船渡へ被災者支援に行くとき、新幹線のなかで、『遊行を生きる』(清流出版)を渡した。
その本を読んで、こんなふうに書いてくれたのだ。

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大船渡のホールでは、神野美伽さんは、迫力満点のパフォーマンスを披露してくれた。
元気をなくしていた漁師のおじさんたちも、声を出し、踊りだした。
その様子は「ニュースエブリィー」のキーワードのコーナーでも放送された。
こちらから見ることができるので、ぜひご覧ください。

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2017年4月22日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(247)

「カフェ・ソサエティ」
監督・脚本はあのウディ・アレン。
「ミッドナイト・イン・パリ」では、1920年代のパリを舞台に、新しい時代の風をノスタルジックに描いた。
そのテイストを、今度は1930年代のハリウッドを舞台に変えて描いている。
都会のしゃれたレストランやナイトクラブに繰り出す、スウィートでゴージャスな時代。
「アニー・ホール」で監督賞をとった名監督は、今だからこそ、この映画が必要だと思ったのだろう。

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AIやロボットがのさばりだしているなかで、人間にとっていちばん大切なものは何か。
人は愛の海に生まれて、愛の海にかえっていく。
その大切なことをぼくたちは面倒くさがり出している。
人を恋すること、人を愛することは、とても面倒なことだ。
その面倒なことが、心をもった人間にとって、生きていくうえでどんなに大切かということを思わせてくれる。
エンディングはどうなるのかわからない。
見た人が勝手に想像するしかない終わり方だが、
人を好きになることはすてきなことだと思わせてくれる映画だ。

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2017年4月21日 (金)

JBPress鎌田實のヌーベルバーグ

福島県で急速に増え始めた小児甲状腺がん
「臭い物に蓋」をしては後で大問題に、チェルノブイリの経験生かせ

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4月19日(水)ぼくの文章がJBPressに掲載されました。
 
福島の子どもの甲状腺がんが145人になったことをどう考えればいいかを、チェルノブイリ原発事故に102回医師団を送って見てきた経験から、できるだけニュートラルに鎌田流に分析しながら、考えました。
 
ぜひ見て「いいね」などの感想をお願いします。
 
同じ日、地域包括ケア研究所の理事の大曾根さんも、本別の活動についての報告を掲載しています。
 
今後も地道に本別での地域活動を進めていきます。地域包括ケア研究所の活動にご注目ください。

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毎週水曜日、鎌田の仲間がアップします。
ぼくも毎月1回は必ず登場します。お楽しみに。
 

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2017年4月20日 (木)

山崎ハコの風が吹いてきている

ぼくは山崎ハコの大ファン。
その山崎ハコさんからメールが来た。
ネットの書き込みに、うれしくなったという。

書き込みによると、ハコがヨーロッパですごいことになっているという・・・

【1】先月3月12日にドイツで行われた「WORLD OF DANCE 2017 Germany 」で、優勝チームが使った音楽が、なんとハコが18歳ときに作った「ヘルプミー」だったという。

https://www.youtube.com/watch?v=0pHZMZB7sNs

【2】さらに、ジョージア(旧グルジア)のコーカサス地方のラッパーが、「ヘルプミー」と「かざぐるま」をサンプリングに使っているそうだ。
↓↓↓
http://rocketnews24.com/2017/03/26/878638/

「かざぐるま」は'75年のデビューアルバム『飛・び・ま・す』に収録されている。ぼくもこのアルバムが大好き。

【3】同じく3月中旬には、パンクのGodfatherイギー・ポップが、BBC UKの自分のラジオ番組で、やはり「ヘルプミー」を選曲してオンエアしたという。 

時代・国境を超えて、 山崎ハコの風が吹いてきている!

※オリジナルはこちら

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2017年4月19日 (水)

新・空気の研究8

日本はアメリカの考え方に感染しやすい。
核兵器禁止条約の交渉会議が国連本部で始まったが、唯一の被爆国の日本が不参加を表明した。
アメリカを「慮っている」。
アメリカを「忖度」しているのだ。
アメリカとパートナーシップを築くのはいいが、世界に対して果たすべき被爆国の責任というものがある。

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ときにはアメリカの考え方に「水を差すこと」が大事なような思う。
それが日本の大事な役割となるはずだ。

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2017年4月18日 (火)

新・空気の研究7

3月下旬、トランプ米大統領は石炭産業を保護する大統領令に署名した。
風とか、空気に、ポピュリズムは敏感だ。
大統領令にサインするとき、炭鉱労働者を自分の周りに取り囲ませて、まるで「弱い者の味方」のように演出している。
ポピュリズムを支える空気に対抗するには、事実が大事だ。
アメリカの石炭産業の雇用は7万人。
再生可能性エネルギー分野で働く人は65万人。
トランプ大統領はアメリカファーストというが、この数字だけみても、65万人の人たちに大きな打撃を与えることになる。

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もう一つは、なぜ石炭産業が追い込まれたか。
再生可能性エネルギーが注目される前に、天然ガスの開発が進んだことが大きい。
経済の自由競争のなかで、天然ガスは、石炭よりも安くて扱いやすいということで広がったのである。
空気に染まってしまうと、こういう事実を見過ごしてしまう。
アメリカは、ポピュリズムの空気に負けないことが大事だ。

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2017年4月17日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(246)

「息の跡」
とてもいい映画だ。
陸前高田の種屋さんの物語。
出てくるのは、ほとんど種屋の主、佐藤貞一さんだけ。
まるで哲学者。
一人でしゃべりまくるのだが、実はもう一人、見えない大事な主演がいる。
監督、小森はるかだ。
主演の佐藤貞一を助演している
ドキュメンタリーに助演女優賞なんてないが、助演女優賞をあげたくなるくらい、
小森はるかが佐藤貞一の一人芝居を見事に受けている。
佐藤は、悠々と1611年の津波の歴史を語り、英語で語りだしたり、好き放題。
津波に負けてないのがいい。
実に生活力がある。
壁をやぶる力もある。

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いま「人間の値打ち」という本を書いているが、人間の値打ちの一つの目安は、
品位があるか、役割を担っているか、空気に負けない強い意思があるか。
そう、陸前高田はたくさんの人が亡くなった。
すべてが津波に流された。
絶望的な空気のなかで、彼は空気に負けていなかった。
ファンキーで、ユニーク、自由だ。
楽しむ力がいっぱいある。
生活力がある。
遊び心にあふれている。
決断力や持続力が十分あり、孤独をこわがっていないのがいい。
彼の心の内部に鬼が棲んでいる。
ここがいいのだ。
ヤワではない。
稼ぐ力もある。
どれも現代を生きるうえで大切なものだ。
ステキな映画をみた。
たくさんの人に見てもらいたいと思う。

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2017年4月16日 (日)

モスルの病院再建にご支援を

イラクのモスルのイブンアシール病院は、ISに放火され破壊された。
薬もない、医療機器も使えないという状況のなか、
破損がひどくない階段下などのスペースで、100人近い職員が、子どもたちの治療にあたっている。
イブンアシール病院は、かつて150万都市の最先端の小児がんセンターの役割を担ってきた。
この病院の再開を応援してほしいと、新院長やモスルから逃げて来たモハメド・アリ医師、モスルのチグリス川西岸で放射線の専門病院の医師らから訴えられた。
3/19の毎日新聞「さあこれからだ」やニュースエブリの「キーワード」のコーナーで、緊急支援の呼びかけをお願いした。

1 ISに放火されたイブンアシール病院

これを見てくださった方たちから、400万円を超す募金が集まった。
イラクの医師たちが命がけで子どもの命を守っていることに、多くの人が感動してくれたようだ。
しかし、まだまだ応援が必要です。
熱い応援をよろしくお願いいたします。
郵便振替口座00540-2-94945 口座名 日本イラク医療ネット
「イラク小児がん支援」

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2017年4月15日 (土)

新・空気の研究6

東芝は、スティーブ・ジョブスにiphoneやiPadなどで抜かれ、土俵際に追い込まれた。
生き残るために、原発に活路を見出す。
ウェスティングハウスを買収したのだ。
福島の原発事故後、ウェスティングハウスは原発の安全性の追求のためコストが3倍になり、あっという間に大きな負債を抱えた。
西側に原発メーカーを残しておかないと、再び、東西対立が起きたとき、
核戦力がの確保できない。
そのためにも、原発をつくり続ける必要がある。
そんな空気が、今も亡霊として徘徊している。

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恐ろしいことに、三菱重工と日本原燃はフランスのアレバ救済のために約300億ずつ出資するという。
中国やロシア、北朝鮮などの核と対抗するため、その核をつくり出す原発メーカーが西側にどうしても必要と思い込んでいるのだ。
原発も、新型炉をつくるコストは急激に上昇している。
経済としてうまい話はない。
山本七平は「水を差す」ということを大切にしていた。
空気に流される前に、水を差して考え直したほうがいい。
空気や水のことを、もう一度考えるといいと思う。

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2017年4月14日 (金)

新・空気の研究5

天皇陛下の退位を巡る有識者会議も、早い時期から空気に支配されていたように思う。
昨年夏、陛下の意向を受けて有識会議が設置されたが、
早い時期から座長代理が、「一代限りの特例法」の方向を示した。
首相官邸とまったく同じことを言ったのだ。
国会は有識会議の下請け機関ではない、きちんと検討しようとしたようにみえるのは、大島衆院議長のみだった。

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政府の大事な委員会の委員長や委員長代理などを務める人たちは、「空気読み」の名人がそろいがちだ。
空気を読めない人はそもそも指名されないし、間違って指名されてもすぐに更迭される。
首相が利権を振りかざしたり、何か悪いことをしたわけでない。
しかし、いちばん強い人が喜ぶ方針は何か、みんな空気を読んでいる。
一強の本人のみが、「忖度はない」と一人でいい続けているが、
忖度しているのではなく、忖度されているから、自分ではわからない。
「裸の王様」なのだ。
一人ひとりが自分の意見を持ち、責任をもってそれを発信する必要がある。
空気をよどまさないようにしていくことが、まっとうな国をつくるうえで大事だと思う。

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2017年4月13日 (木)

新・空気の研究4

首相夫人つきの政府職員が出したファクスは、ゼロ回答では決してない。
「現状ではご希望に沿えないようですが、引き続き当方としては見守ってまいりたい」
とはっきり書いている。
そして半年後には、8億円も安く国有地が売られるのである。
これは空気以外の何物でもない。
空気が支配しているのだ。

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森友学園の籠池さんは、日本会議の大阪の幹部。

日本会議というある種の思想を明確にすることで仲間意識をつくり、
その人たちが権利を独占したり、特別な利得を得たりする。
幼稚園の園児に教育勅語を暗記させるような教育をしていることにも、
はじめはおそらく、「勇気があってえらい」と思っていたのではないか。
そういう人たちが、籠池さんを応援し、十分な教育者の確保も出来ていない組織に、小学校の開校の認可を与えようとした。
結局、ぜんぶ空気だったように思う。
空気だから、どこにも証拠はない。
こんなことをやっていては、日本はとんでもない国になってしまう。
こういう時代になることを恐れ、2010年に『空気を読まない』(集英社)という本を書いた。
予想していたとおり、よどんだ空気はいっこうに晴れない。
そろそろ毅然と、「空気は、読まない」という意識をもつことが大事だと思う。

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2017年4月12日 (水)

新・空気の研究3

フェイクニュースが世界を闊歩している。
アメリカ大統領戦では「ローマ法王がトランプ氏を支持」という偽のニュースが流された。
「クリントン氏の流出メール問題担当のFBI捜査官が無理心中」
こういったフェイクニュースがフェイスブックなどで拡散されていく。
第二次大戦中、イギリスのチャーチルは「真実がズボンをはく前に、嘘が世界を半周してしまう」といったが、
現在はさらに速く、あっという間に嘘のニュースが広がってしまうのだ。
ハーバード大学の研究では、トランプ政権の首席戦略官バノン氏がトップを務めていたブライトバート・ニュース・ネッワークが圧倒的な影響力をもっていたという。
無名なブライトバートの記事は、共和党系の人々の間で、大手メディアをしのぐ勢いで拡散されていった。
ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNなどは、ブライトバートにパワー負けしていたという。
自分の好みのニュースを聞く傾向がある、というのを上手に利用しているのだ。

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事実かどうかより、ある種の人たちにとっての聞きたいニュースを流すことで、スピードをもって拡散していく。
そして、はじめはある種の人々だけに拡散していたものが、広がってくいくうちに、思想的に真ん中あたりにいる人たちにも伝染していくのだ。
そのうちに何が事実かわからなくなり、嘘が事実化していく。
空気は、こうやってつくられていくのだろう。
山本七平はユダヤ教の研究者でもあった。
多神教の日本人と、一神教のユダヤ人とを比較しながら、多神教の日本人のほうがあいまいな空気をつくりだしていく可能性が強いと述べた。
でも、実際は一神教でも、空気がつくられいくことがわかる。
このへんは山本の考えを、時代が超えていったように思う。

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2017年4月11日 (火)

新・空気の研究2

『「空気」の研究』は、山本七平さんの有名な本だ。
日本人の抗えうことができない「空気」が醸成される理由を究明している。
太平洋戦争に突入したとき、だれもがアメリカには勝てないと思っていながら、
優秀な軍部のエリートたちがその場の「空気」に拘束され、よくわからないまま戦争をはじめてしまった。
日本人は感情移入を絶対化して、それを感情移入とは考えないまま、感情移入した対象に支配された状態になる。
「進め一億火の玉」のスローガンは、象徴的である。
一億火の玉になれば戦争に勝てると感情移入し、
それに従わない人間は、共謀罪なんかをでっちあげられ、非国民とされた。

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ナチスドイツのアイヒマン現象も「忖度」の一つだ。
アイヒマンは、何百万人ものユダヤ人を収容所に入れ、虐殺した。
こうすればヒトラーが喜ぶだろうと思い、ヒトラーの思いを実行に移しただけだという。
まさに「代理人」という意識だ。
一強になった安倍さんの代理人になって、首相が喜ぶことを行政の判断にしだす。
そんな「空気」が生まれているとすれば、とても危険だ。
安倍さんは「忖度なんてない」と言い切っているが、
まさに「忖度」だらけである。

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2017年4月10日 (月)

新・空気の研究1

「忖度」がいろんな疑念を呼んでいる。
大阪の森友学園に、国有地が8億円も安い値段で売却された。
大阪府の私学審議会が先に学校開設の認可をしたのか、
それとも近畿財務局が払い下げを決定したのか。
学校を開設するのには土地があることが前提だから、土地がないのに許可するのはおかしい。
でも、開校が決まっていないのに土地を売却する根拠も乏しくなる。
大阪府も、国も、首相夫人が名誉校長を務めていることにおそらく忖度して、
どっちが先に決めたかをはっきりできないのだ。
松井知事は国からこの土地を売却しますよという説明を口頭で受けていたと発言している。
森友学園の籠池氏だけでなく、松井知事も、財務省の官僚も、証人喚問して事実を追求すべきであるのに、
そうしない。
国会が、空気をきれいにする力をなくしている証拠である。

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加計学園の問題もある。
いまも獣医が十分に多いという現状のなかで、今治市に52年ぶりの獣医学部の新設を認めた国家戦略特区ができた。
今治市は、加計学園に対して、土地の無償譲渡と、建築費の補助を決めている。
獣医学部を新設する加計学園の理事長は、安倍首相と長年の友人だ。
安倍さんは友人の理事長から何も頼まれていないというが、なんともグレーだ。
安倍首相の一強はずっと続いている。
首相自身が何か積極的に働きかけたわけではなくても、みんなが空気を読んで、勝手に行動してしまう。
安倍さんが喜ぶような決定しておくと、政府の役人も、今治市もきっといいことがあるだろうと思わせてしまうのだ。
安倍首相がもうちょっと大人だったら、「李下に冠を正さず」ということわざ通り、
自らを律したはずだ。
でも、そうしなかった。
                       ◇
「空気」が人を支配すると論じたのは、山本七平だった。
あれから時代を経たが、今も日本では、「空気の読み合い」が続き、空気がよどんでいるような気がしてならない。
ぼくはずっと空気のことを考えて来た。
2010年に『空気は読まない』(集英社)という本を出した。
その巻末に、こんなことを書いている。


空気は、人に、街に、時代に伝染する。
じわじわと広がり、ついの間にか、
気分を高揚させたり停滞させたりする。
ときには、景気を左右し、経済を動かす。
ときには、国を間違った方向に動かす。
まわりから浮きたくないと、必死で空気を読む。
空気にとらわれる。
結局、小さな生き方から出られない。
気概を忘れていく。
気が抜けていく。
心が鬱々としてくる。

空気に流されるな。
空気をつくり出せ。
空気をよどますな。
空気をかきまわせ。
それが新しい生き方になる。
それが新しい時代をつくり出す。
信じていい。
空気は・・・・読まない。

このブログでは再び「新・空気の研究」と題して、
ぼくたちを支配する「空気」について書いてみたい。

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2017年4月 9日 (日)

鎌田實の一日一冊(309)

「介護業界の人材獲得戦略」(馬場拓也著、幻冬舎)
著者は、おもしろい人生を歩んでいる。
高校、大学と野球に明け暮れた。
社会に出てからは、ファッション業界で働いた。
アルマーニでトップセールスマンになっている。
彼が経営企画室長をしている介護施設に見に行ったが、
生き生きとした空気があった。
馬場君の発想がおもしろい。
「マイルドヤンキーを戦力化する」
レッテルを貼ってこういう人はダメとかいうのは、ぼくは嫌い。
彼のように、どんな生き方をしてきた人でも、きちんと勉強してやる気のある人たちを応援するのはとても大事なことだ。

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「ダサい職場からかっこいい職場へ」
彼はいつもそんなことを考えているようだ。
「信頼関係はマニュアルからは生まれない」
「おせっかいを徹底すると感動につながる」
彼はこうやって、介護現場を若手が集まる魅力的な現場に変えてきた。
なかなかおもしろい本である。

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2017年4月 8日 (土)

やっぱりスキーはやめられない

スキーが好きで、シーズンになると時間をみつけてスキーをしてきた。
しかし、2年の1度のペースで骨折。
その度に運動ができなくなり、ロコモティブシンドロームになりかけた。
ホテルのジムで1時間ほど体幹トレーニングなどをした。

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また骨折したらバカだなと言われるだろうけれど、
それもしょうがいないと思って、バンバン飛ばして滑っている。
朝3キロのダウンヒルを3本、ノンストップ。
2度、激しい転倒をした。
板がリリースされず、また骨折かと思ったが、さいわい打撲のみだ。
春スキーは、雪はよくないが、トレーニングと思って猛烈に滑っている。

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2017年4月 7日 (金)

甲状腺がんになった子どもたちへ

毎日新聞が3/24の夕刊で、福島の2人の若者の状況を報じた。
一人は、高校生のとき診断がつき、手術をした。
その後、再発して再手術。
一生、甲状腺ホルモン剤を飲まなくてはいけなくなってしまった。
家の中に引きこもるようになり、夏でも首の手術の痕が見えないようにハイネックの服を着ていた。
「娘は結婚をはじめ人生を半ばあきらめています」と親は語っている。
十代半ばの男性は、「ぼくはもう死ぬ」「なぜ自分だけこんなつらい思いをしなければいけないのか」と親に暴力を振るう。
子どもたちは何も悪くないのに、責められている両親も何も悪くないのに、
みんなが傷つけあっている。
チェルノブイリの甲状腺がんの子どもたちは、多臓器に転移しても、ほとんど助かっている。
子どもたちは成人して結婚し、子どもも生んでいる。
甲状腺がんになった日本の若者に、そのことを丁寧に伝えてあげなければと思っている。
「首に残る手術の痕はつらいよね、でも、君たちは悪くないんだよ。
がんを早期発見し治療できたことが今につながっていると前向きに考えられないかなあ。
今はつらいかもしれないしれないけど、病気にうちかつ姿を見せてほしい。
ほかの病気や障害に苦しんでいる子どもたちに勇気を与えることができるから。
そして、あきらめかけた夢を実現してほしい」
そんなふうに言ってあげたいと、紙面で話した。

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2017年4月 6日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(245)

笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ

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むのたけじ

敗戦の時、ジャーナリストとして 戦争をやめられなかった自分の生き方を省みて新聞社を辞め、 故郷秋田へ戻り、週刊新聞「たいまつ」を発行し続けた、信念の人。101歳。

笹本恒子

同じく101歳。 女性初の報道写真家。

男と女の違い、そして発表の仕方の違い。むのたけじは 自分の意見を徹底的に語りかける。笹本恒子は、カメラの被写体を通して、時代や社会へメッセージを届ける。

おなじ101歳だが、笹本恒子は若い。むのたけじが、よぼよぼのおじいさんに見える。しかしむのたけじが話し始めると、圧倒的な迫力がある。

「いくつになっても現在進行形」と言う笹本恒子。
「死ぬとき そこが 生涯のテッペン」と言うむのたけじ。
とにかく笑い続ける。

どうしたら健康で長生きできるのか、どうしたら日本を良い国にすることができるのか、ヒントはこの映画の中にある。健康で長生きすることと、良い国にすることは、実はつながっているのだ。
・よく笑うこと
・自由に生きること
・言うべきことをいいタイミングで語ること

この映画、すごい。
6/3より全国順次ロードショー。

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2017年4月 5日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(244)

「ムーンライト」
本年度アカデミー賞作品賞・脚色賞・助演男優賞(マハーシャラ・アリ)の3部門受賞。

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「ラ・ラ・ランド」を観て、あまりにもうまくできていたので、 きっとアカデミー賞はこの「ラ・ラ・ランド」で決定だろうと思っていた。

ところが、アカデミー賞の受賞式でとんでもないことが起きた。
作品賞の受賞が「ラ・ラ・ランド」と誤って発表されたのだ。

「ラ・ラ・ランド」のチームがステージ上に上がり、 受賞の喜びを語っている最中に、 実は「ムーンライト」の間違いだったとわかる。
どっきり番組のようなことが起こってしまった。

この「ムーンライト」がいいのだ。

「自分の道は自分で決めろ。他の奴に決めさせるな」

学校ではリトルと馬鹿にされている主人公シャロンに、麻薬ディーラーのフアンが言った言葉だ。

自分がなにものかを探し、そして自分を愛する事ができたとき、 初めて誰かを愛する事が出来る。
自分探しの映画だ。

高校生になった主人公シャロンは、 ある夜、月明かりが輝く浜辺で、親友のケヴィンと出会う。 その時のセリフがたまらない。

「風が吹いてくる。  
気持ちがいいから立ち止まる。
聞こえてくるのは心臓の音だけだ」

「泣きすぎて、自分が水滴になりそうだ」

弱い自分を必死に見つめようとしている主人公がいじらしい。

シャロンは弱い自分から脱却する。
再びケヴィンから連絡が来る。 シャロンはたくましい男になっていた。

「強くなったか」
「オレは、オレだ」

ケヴィンが告白する。
「やりたいことは何もせず、流されていた」

答えがあるわけではない。
若者たちが必死に生きようとしている姿が見えてくる。

キャストは全て黒人。
映画は、新しい武器を持った。
こんなスタイルがあるのだと気が付かされる、革命的な映画だ。

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2017年4月 4日 (火)

日刊スポーツ連載スタート

日刊スポーツ

日刊スポーツ
鎌田實の「健康で幸せになるための技術」

4月3日より30日間 連載スタート!

ビジネスマン必読!おもしろ&ためになる、鎌田流 健康の秘訣。

4月3日より、日刊スポーツの紙面で、30日間の新連載が始まりました。
  • おっさん病にならないためにはどうすればいいか
  • 「検査なんか嫌いだ」なんて言いながら、最小限度必要な検査は何か
  • 健康になるための行動変容をどう起こせばいいか
など、できるだけわかりやすく、「健康で幸せに生きるための技術」を語ります。
ぜひお読みください。

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2017年4月 3日 (月)

ベラルーシの甲状腺外科医

原発事故後に甲状腺がんになった福島の子どもは145人(2017年3月現在)。
まだ三巡目の検査が行われている最中だ。
甲状腺検診を行う前の予想に比べ、数十倍多い子どもががんの診断を受けている。
ミンスク甲状腺がんセンターのユーリ・ジェミチェク所長が突然、亡くなったという知らせを受けた。
昨年も、ミンスクの彼に会いにいった。

Dsc06006001 昨年ミンスクで会った甲状腺がんの専門医ジェミチェク医師。ご冥福をお祈りします

チェルノブイリ原発事故後、6000人の子どもの甲状腺がんが発生し、
ユーリはベラルーシ共和国でナンバーワンの甲状腺外科医として働いた。
過労死だった可能性が高い。
ユーリは、日本の甲状腺がんの検診で、二巡目の検診でも44人のがんが確定したことに対して、検診による過剰診断という声もあるが、スクリーニング効果では説明がつきづらいと言っていた。
甲状腺がんはリンパ腺転移や肺転位が多い。
だから、検診をしなくていいなんていわず、早期発見したものは、早期治療をしたほうがいいというのが、彼の持論だった。

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2017年4月 2日 (日)

鎌田實の一日一冊(308)

「世界の貧困・日本の貧困」(池上彰監修、稲葉茂勝著、ミネルヴァ書房)
「昔の貧困・今の貧困」(  〃  )
「子どもの貧困・大人の貧困」(  〃  )
「貧困を考える」シリーズの3冊。
世界の格差は拡がっている。
上位数人の富豪が、世界の富の半分を握っている。
とんでもないことだ。
日本はGDP世界三位だが、その豊かさを実感することができない。

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国連が豊かさを指標にしているのは、人間開発指数(HDI)。
指数に影響を与えているのは3つある。
①どのくらい健康で長生きできるか。
世界の最長寿国の日本は得点が大きいはずだ。
②よい教育を受けているか。
格差が生じていることで、指数を下げていると思う。
公的な大学に行くのに、公的な援助が少ない。
③人間らしい生活ができる収入を得ているか。
かつての日本はポイントが高かった。
総中流といわれて、みんながまあまあの中流の生活をすることができていた。
しかし、非正規の働き方が増え、格差やブラック化が起きてしまったように思う。
以上のことから、日本の人間開発指数は、20位。
人間開発指数が低いということは、人間の可能性を制限していることだ。
もっとチャンスが与えられれば、豊かになれる人たちの芽を摘んでいる構造が日本にある。
問題である。

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2017年4月 1日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(243)

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」
映画のタイトルとは思えない。
しゃれた映画だ。
突然の事故で、妻が死ぬ。
その妻が残したメモが「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」。
みんなが喪失している。
喪失の物語だ。
何をどうしていいのか、主人公のデイヴィスはわからない。
悲しいのか悲しくないのかもわからなくなっている。
義理の父親の仕事に就き、まわりの期待通りになっていく。

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ある日、義父の言葉をきっかけに、冷蔵庫やコンピュータなど周りのものをばらばらにして、ものごとの仕組みや自分の心のありかを探し始めたデイヴィス。
そして、ものを壊しながら、本当の自分にたどり着いていく。
人生を受け入れようという美しい物語がここから始まりそうな予感がしながら、映画は終わる。
詩的な、素敵な映画だ。

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