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2017年5月

2017年5月31日 (水)

新刊発売

明日6月1日、新刊『カマタノコトバ』(悟空出版)が発売になります。

「思い込みや常識の壁を破ると、考え方が自由になる」
「まず小さく行動バターンを変えてみる。やがて大きなチェンジにつながる」
「愛とはつまるところ、命を伝うことだ」
「迷ったら中道を行く」
「『ハズレ』ながら、『当たり』という不思議なくじもある」
「人間て、自分が存在する理由が欲しいんだ」
「すべて合理的では息が詰まる。『すき間』が新しい世界への突破口だ」
「自らの悲しみや絶望は閉じ込めないで『物語る』ことが大事」

などの鎌田の言葉があふれています。
「元気がほしいとき」「人にやさしくなりたいとき」「自分にやさしくなりたいとき」
そんなとき、心にとめておきたい言葉。
「そう来たか、人生!」と人生を面白がれるといいなと思って書きました。

さだまさしさんが、本を全部読んで、帯に言葉を寄せてくれました。
ありがたいことです。
ぜひ、お読みください。

Kamatanokotoba

文庫版『がんばらない』(集英社)が30刷になりました。
これを書いたのは2000年夏。
ここに登場するケンジ君の話は、道徳の教材に使われています。
『遊行を生きる』(清流出版)『検査なんか嫌いだ』(集英社)も好評です。
それぞれテイストが違う本です。
まだ、お読みでない方はぜひ、手に取ってご覧ください。

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2017年5月30日 (火)

シャープとホンハイの恋

シャープは18年度の3月期連結業績予想2兆5100億円で、最終利益は590億円、最終損益の黒字化は4年ぶり。
危機を脱出した。
そして、19年度の営業利益は、16年度の2.4倍となる1500億円を目指すという。
どんなことをするかは、5/22のJBPRESS「鎌田實のヌーぺルバーグ」で紹介している。

ホンハイとシャープの「恋」は本物になるのか、
ホンハイとはどういう企業か、
ホンハイは東芝のメモリー半導体部門を買収できるかどうか。
そんなことを書いている。
ぜひ、お読みください。

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2017年5月29日 (月)

新・空気の研究25

空気はかきまわしていると、元気になる。
映画や音楽、芝居、旅は空気をかきまわすきっかけをつくってくれる。
河瀨直美監督の『光』がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されている。
河瀨監督は、1997年に『萌の朱雀』でカメラ・ドール(新人監督賞)受賞、2007年には『殯(もがり)の森』でコンペティション部門グランプリを受賞した。
今回の『光』は、最高賞のパルムドールを受賞するのではないかと期待されている。
西洋の合理主義が壁にぶつかっている。
オープンマインドでより自由を獲得してきた民主主義が行き詰まり、グローバリゼーションだけで打開できないことがわかった。
西洋文明そのものが壁にぶつかりだした。
そんななかで、西洋ではないものをカンヌは求め始めるのではないかと予測しての受賞の期待だったが、たった今、「受賞ならず」の一報が入った。
残念だ。

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『光』は、光を失っていくカメラマンの話。
生きるとは何か、風景とは何か、いろんなことを考えさせてくれる。
映画のなかに映画があり、どちらも「光」を扱っている。
現代において「光」とは何か、「希望」とは何か、「生きる」とは何か。
河瀨監督に限らず、日本の映画監督がカンヌ映画祭で最高賞をとるようなことがあれば、日本の映画界は元気になる。
日本全体も元気になるかもしれない。
萎縮しないこと。
空気をかき回し続けていくことが、今の日本には必要なのだと思う。

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2017年5月28日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(349)

「歓びのトスカーナ」
イタリアのトスカーナにある精神科の療養施設が舞台。
いつもそう状態でハイテンションでしゃべりまくる中年女性ベアトリーチェと、シングルマザーで子どもと無理心中をはかった若い女性ドナセッラを中心にした、人生喜劇が明るく映し出されていく。
2人とも底知れぬエネルギーが感じられる。
日本の精神病院では、こんな姿はみられそうもない。

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ベアトリーチェとドナセッラは、自分のエネルギーを持て余し、幸せを求めてひたむきだ。
司法精神施設なので、一歩間違えば刑務所に入ってしまう人たちなのだが、生き生きと生きているのがいい。
反目していた2人だが、お互いがひかれあい、お互いの存在が必要になっていく。
あなたがそばにいてくれるから、と思うわれることで、立ち直っていく。
最後は人間てやさしいなと思ってしまう素敵な映画だ。

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2017年5月27日 (土)

鎌田實の一日一冊(311)

「とても温かでとてもせつないきみの絵本」(ジュヌヴィエーヴ・カスターマン著、さだまさし訳、千倉書房)
有名な作家の絵本を、さだまさしが翻訳した。
カンガルーの話である。
妻が記憶をなくしていく。認知症だ。
それでも二人が丁寧に生きようとしていく姿がまぶしい。

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「よし、きみが忘れたことをぼくが覚えていよう
きみの笑顔とやさしさと温かさと
きみとともに生きることができた奇跡へ
ぼくの一生の感謝をこめて」
いい絵本です。

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2017年5月26日 (金)

鎌田實の一日一冊(310)

「ふたりからひとり~ときをためる暮らし それから~」(つばた英子・つばたしゅういち著、自然食通信社)
建築家の夫と妻は、確かな暮らしを求めて、庭を耕しながら、ほぼ自給自足の生活を続けている。
その丁寧な暮らしぶりを紹介した前作「ききがたり ときをためる暮らし」から4年。
夫が90歳で亡くなった後も、妻は丁寧な暮らしを続けていた。
90歳のおしゃれな自立した生き方がまぶしい。
「津端さんちのルネサンス」といって、かつおぶしやこんぶにこだわり、
塩分を減らし、野菜を7、肉と魚を3。
丁寧に生きる、一つの生き方の指標になるとてもいい本だ。

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この出版社はとてもいい本を出す。
「おしいしいから野菜料理」という本が出ているが、10刷で2万部。
こういう本を地道に出し続けている出版社には頭が下がる。

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2017年5月25日 (木)

クラウドファンディングあと6日

パレスチナアマルの北村記世実さんが挑戦している
クラウドファンディング、残りあと6日。

パレスチナ刺繍の魅力を伝えたい!
ガザ難民女性300人の誇りを

写真提供:UNRWA

社会的に弱い立場にある300人のガザの難民女性たちが作るパレスチナ刺繍をお届けし、雇用と収入源を広げ経済的な自立を後押しするため、パレスチナ刺繍「Sulafa」の商品を日本初のパレスチナ刺繍ブランドとしてお届けします!商品の魅力や作り手の女性たちのストーリーをご紹介するために、冊子やHP、オンラインストアなどの作成にかかる費用をご支援いただけないでしょうか?

ネクストゴール達成まであと一歩!

ネクストゴール達成のリターンとして、JIM-NETとのコラボ、イラクの癌の少女サブリーンのトートバッグも選べます。ぜひ応戦してあげてください。

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新・空気の研究24

「空気の名前」(アルベルト・ルイ・サンチェス、白水社)という小説を繰り返し読んでいる。
イラクの難民キャンプに行くときに、持っていくことが多い。
北アフリカのモガドールという架空の港町で、ファトマという少女が女性になっていく。
それを散文詩のような美しい文章で書いている。
「空気の手のなかで」という章で始まる。
空気にこだわった小説だ。
人々の目や町のたたずまいなど、少女を女性に変えていく空気に、文学が挑戦している。

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巻頭に、ユルスナールの言葉が書かれている。
「気づかなうちに私たちは誰でも、道ですれ違う人、自分の周りにいる人の愛の夢のなかに入っていきます」
もう四回読んでいるいるが、
読むたびに新鮮な感動を得ている。

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2017年5月24日 (水)

新・空気の研究23

来月「ハクソー・リッジ」という映画が公開される。
メル・ギブソン監督の作品で、第二次世界大戦時の実在した「戦わない兵士」を描いている。
1945年、沖縄に上陸し、首里へと向かう最後の難所にハクソー・リッジという崖がある。
その上で繰り広げられる壮絶な戦いで、主人公は戦わない。
「戦争は命を奪うが、ぼくは命を救う」という信念をもっている。
志願兵でありながら、銃をもつ訓練を拒否し、軍法会議にもかけられる。
それでも自分の信念を貫く。
戦場では、味方のアメリカ軍が撤退したにもかかわらず、負傷した兵士たちを一人ひとり助け続ける。
一人助けた後、「もう一人私に助けさせてください」という心の叫びは圧巻である。

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日本にも、トルストイの平和主義の賛同者北御門二郎や、エホバの証人の明石順三が兵役を拒否して非国民と言われた。
軍法会議にかけられ、死刑などの厳罰に処せられた。
家族や地域も巻き込まれて、生きていけないようした。
そうやって空気をつくっていった。
「ハクソー・リッジ」の戦わない兵士は、武器を持たず衛生兵として命がけで働くことを認めてもらうには、
長い時間と苦労が必要であった。
彼は、終戦後すぐに良心的兵役拒否者として米国初の勲章が贈られる。
戦争のさなか、彼は「戦わない」という戦いを続けたが、
そんなふうに空気に負けない人がいることが大事なのだろう。

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2017年5月23日 (火)

JBPRESS鎌田實のヌーベルバーグ


台湾と日本の恋物語、優秀な子供がまもなく誕生

シャープを買ったホンハイ(鴻海)について、日本人はあまり知りません。
ホンハイは、世界に社員が120万人もいる超ビッグな会社です。
どうしてホンハイはシャープを買ったのか。
決算で黒字を出し始めたシャープは、再生できるのか。
ホンハイは、東芝の半導体事業の買収を試みています。
ホンハイは東芝を買うことができるのか。
そして、ホンハイはサムスンを抜くことができるのか--。

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『郭台銘の恋人 シャープ :台湾に買われた百年企業』を台湾で出版したジャーナリストの姚巧梅(ようこうばい)氏へのインタビューを紹介しています。
無料です。
ぜひ、読んでください。

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2017年5月22日 (月)

新・空気の研究22

森友学園で財務省の官僚の国会答弁はほとんどまともに交渉経過を説明しようしない。
メモも償却したという。
経過を思い出そうともしない。
いっさい答えようとしていない。
特定秘密保護法がつくられた。
国家の安全保障にかんする「特定秘密」を、公務員がもらすと最長懲役10年とされる。
公務員は自分を守るために、そして、自分が出世するために、何もしゃべらないほうがいいと考えるようになるだろう。

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もちろん、森友学園の問題は特定秘密ではないが、
官僚が国民のために情報公開することが少なくなっていくのだと心配する。
昨年は、通信傍受法も改正された。
国民の情報をだれかが見ている可能性がある。
そして、今の国会では、共謀罪の提出が盛り込まれた法改正をしようとしている。
ますます言いたいことが「言えない」、あるいは「言わない」社会へと、空気がつくられようとしている。
こうした動きに対しても、国民が忖度して、おとなしくなっていくのを望んでいるのではないか。

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2017年5月21日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(348)

「残像」
2016年秋に亡くなった巨匠アンジェイ・ワイダの遺作。
好きな監督はだれかと問われたら、ぼくは、ゴダール、ヴィスコンティ、そしてワイダと答える。
ワイダの「地下水道」や「灰とダイヤモンド」は、50年以上たった今も色あせない。

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遺作となったこの「残像」もすごい。
第二次大戦後、社会主義政権に支配されていくポーランド。
ソ連の影響が大きく、すべての芸術はプロパガンダとして利用されていく。
そのなかで、前衛作家の第一人者ストゥシェミンスキは独自の芸術の道を曲げなかったため、迫害されていく。
ストゥシェミンスキは実在の画家。
すべてを奪われながらも、不屈の精神で自分の信念を貫く。
全体主義に常に抵抗し続けてきたワイダ監督の、まさに遺言のような作品だと思う。
6月10日から岩波ホールで公開。

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2017年5月20日 (土)

新・空気の研究21

「ヒトラーへの285枚の葉書」(ヴァンサン・ペレーズ監督、2016年)をご存じだろうか。
小説「ベルリンに一人死す」(ハンス・ファラダ著)を映画化したものだ。
1940年のベルリン、ナチスがフランスを占領し、町中が「ハイルヒトラー」の空気に覆われていく。
工場の主任をしている主人公の男は、ヒトラーを信じていた。
しかし、息子が戦死したという知らせが入り、ヒトラーやゲシュタポに疑問をもつ。

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夫婦で小さな抵抗を始める。
「戦争をやめよう」とか「ヒトラーを殺せ」などとメッセージを書いたポストカード280数枚を路上に置く。
それは、警察によってすぐに回収されるが、回収されないものも何枚かあった。
だれかが、「そうだ、そうだ」とシンパサイズしたのだろう。
夫婦の命がけのレジスタンスは微力である。
微力であるが、全体主義という一つの方向に流れていくとき、一人でも反対の声を挙げる人がいることが大事なのだと思う。
そんなことを思わせてくれるいい映画だ。
今、こんな時代だからこそ、見てもらいたい。
必死に、よどんだ空気をかきまわそうとする、夫婦の行動に感動した。

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2017年5月19日 (金)

新・空気の研究20

今年生誕150年の南方熊楠は、「知の巨人」とも、「変人」ともいわれる。
粘菌学者であり、民俗学者であり、博物学者、教養の塊のような男だ。
この市井の学者は、昭和天皇の要望で、粘菌について進講した。
この際、キャラメルの箱に入れた粘菌の標本を献上している。
亡くなった後、昭和天皇は南紀行幸の際、
「雨にけふる神島を見て 紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」と詠んでいる。
植物学者でもあった昭和天皇は、市井の学者を忘れていませんというメッセージを出す。
とても素敵なことだ。

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森友学園に3回も行き、名誉学校長になったり、園児に教育勅語を暗唱させたりすることを評価し、
そして、問題になるとその説明を一切しないで、名誉校長も降りる。
空気をつくるときにも、品格というのが大事だと思う。

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2017年5月18日 (木)

新・空気の研究19

無意識のうちにつくられる空気と、意識的につくられる空気がある。
経済は、目標のインフレターゲット2%にはまったく到達していない。
デフレ脱却は完全にはできていない。
実質個人所得が増えていない。
消費も停滞状態が続いている。
しかし、「何となくいい」という感覚づくりには成功している。

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一億総活躍の介護離職ゼロも、ほとんど改善がみられない。
それでも、北朝鮮の不穏な動きをうまく利用して、何なく「まあいいか」という思いにさせている。
中長期的な空気づくりの最大の目的は、憲法を一字でも改正するということ。
一度、改憲さえすれば、安倍一強が考えている、軍隊をもち戦争ができる「ふつうの国」へと動き出せる。
そのための空気づくりが、着々となされているように思えてならない。

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2017年5月17日 (水)

新・空気の研究18

第二の森友学園問題と言われる加計学園問題。
今治市での「特区」が舞台となっている。
特区とは、本来、特別な地域で実験的に行って、成功したら、それを日本中に広げるかという、チャレンジの場である。
規制緩和などがこれに値するはずだ。

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しかし、現在でも獣医の数は十分に足りているなかで、
獣医学部の増設は、特区の存在理由から外れている。
一強の安倍首相の「お友だち」を大事にしたほうがいいと、まわりが空気を読んでいる。
安倍首相は、「私は忖度を望んでいない」と明言したほうがいい。

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2017年5月16日 (火)

新・空気の研究17

「共謀罪」の構成要件に「テロ等準備罪」を新設するかどうか今の国会で審議されている。
テロに対策という大義名分を持ち出しても、その本質は、戦前にあった治安維持法だ。
かつてのように、マルクスの本を読んでいたり、ロシアの作家の芝居をしたりということで、
憲兵に連行され、激しい拷問の末に有罪にされたりする。
自由な思想運動や言論活動を厳しく制限した先には、政府の代弁者にならざるを得なくなったマスコミと、「一億総火の玉」という発想が生まれた。
とても怖いことだ。
沖縄では普天間基地の反対をしている。
そうした市民運動を、共謀罪が無言の圧力をかけるようなことになったらとんでもないことになる。
いろんな人がいろんな意見を言えることが大切だ。
おかしな空気が日本中にたちこめている。

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2017年5月15日 (月)

新・空気の研究16

65歳以上の働き方などを議論する自民党のプロジェクトチーム(PT)が、先月下旬、公的年金の受給開始年齢を現在の上限70歳より遅らせれば、
年金額が増える仕組みを政府に提言した。
70歳から開始すると、長生きしないと割に合わなくなる。
現行でも、60歳からもらった人の受給額が、65歳からもらった人の受給額が上回るのは82歳程度。
いわゆる損益分岐点だ。
年金開始年齢が70歳ということになれば、損益分岐点はさらに後ろ倒しになり、82歳よりもっと長生きする人しか得をしないことになる。

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今年1月、日本老年医学会が高齢者の定義を「70歳以上」に見直すように提言した。
これに対して、どう考えるか。
アンケートはとり方によって結果が変わってくる。
「65歳で高齢者と言われるのは不愉快だ」とする人はきっと多いだろうが、その人たちが「高齢者は70歳以上」に賛成すると同時に年金開始も70歳以上に賛成するとは限らない。
空気は、無意識のうちにつくられるものもあるが、
だれかが意図的につくりだし、操っているもののある。
注意して、空気を見張らなければらない。

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2017年5月14日 (日)

新・空気の研究15

世界中の空気がおかしい。
フランスの大統領選で台風の目となった極右政党ルペン氏は、
ナチス占領下のパリで、フランス警察がユダヤ人を一斉検挙し、強制収容所に移送したことについて、
「責任は当時の権力者にあり、フランスではない。
子どもたちは自国への批判を学ばされ、歴史の暗部ばかり見させられている。
フランス人としての誇りをとりもどしてほしい」
と言っている。
どこかで聞いたような言葉だ。
不都合な事実を、なし崩しになかったことにしてしまうのはいいことではない。
国難のときには皇国のために働けと国民にいう教育勅語を、授業で使うことを認める閣議決定をしたり、
教科書に関しても「自虐史観」と批判し、歴史をオブラートに包むような指導をしたり。
すでにこの国はルペンと同じようなことをしている。
世界中の空気がよどみだしている。
内向きにならないように、お互いの違いを知り認め合っていく努力をすることが大事だと思う。

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2017年5月13日 (土)

新・空気の研究14

原子力発電の使用済み核燃料から出る高レベル放射能廃棄物。
その最終処分場の候補地は、年内に挙げる予定がまだできなていない。
毎年、「今年度こそ」といいながら、延ばし延ばしにしている。
候補地の呼び方も、「有望地」ではなく、「好ましい特性が確認ができる可能性が相対的に高い地域」という、いかにもあいまいな表現を使っている。
「有望地」という言い方は、批判がでることを、国も恐れているのだ。
核のゴミの最終処分地が見つからないだけではない。
福島第一のメルトダウンしたデブリを取り出せるかも問題である。
2051年までに廃炉工程を終えるといっているが、本当にできるとは多くの人が思っていない。
原発事故から31年経つチェルノブイリでも、燃料デブリは取り出すことはもできていなければ、取り出す見込みもまったくない。

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高速増殖炉もんじゅは廃炉にすることにしたが、核燃料サイクル事業は廃止しない。
新しい高速増殖原型炉をつくるという。
そのためにまた何兆円もお金がつぎ込まれる。
日本のエネルギー政策は、できもしない呪文を唱えるだけ。
空気のようにとらえどころがない。
実に不思議な国だなと思う。

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2017年5月12日 (金)

新・空気の研究13

空気は自然発生的に生まれることが多いが、ときには意図的につくられることもある。
「ロシアスキャンダル」だ。
ロシアのハッカー集団が、民主党のコンピューターシステムを攻撃し、
クリントン陣営の多くの情報が告発サイトに暴露された。
トランプの元選対本部長マナフォートは2007から2012年にかけて約13億円のお金をロシアからもらい、プーチン政権に有利になるように欧米の政財界に働きかける提案をしていた。
プーチンにとってみれば、トランプが勝つほうがいい。
クリントン側の情報を流出させた可能性がある。

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フリン前大統領補佐官は、2016年、ロシアから講演料の名目で約634万円をもらっている。
そして、トランプが大統領になる前に、フリンは民間人でありながら、ロシアの駐米大使と協議したりしている。
このころトランプは盛んにロシアとの仲直りを言い出している。
のしあがるために空気をつくり、権力を利用した甘い汁を吸う。
FBIがロシアスキャンダルについて調べているのは、いいことだ。
だが、そのFBIのコミー長官が解任された。
今後、どれだけロシアスキャンダルに踏み込むことができるか、
アメリカの民主主義が問われているように思う。

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2017年5月11日 (木)

新・空気の研究12

テロがあとをたたない。
ロンドン中心部にあるイギリス国会議事堂とその周辺でテロがあった。
4人が死亡、50人が負傷している。
射殺された犯人は、イスラム過激派が呼びかける「ジハード」(聖戦)に関心をもっていたという。
聖戦といえば、日本も戦争中、「遂げよ聖戦」などとポスターで呼びかけていた。

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「笑う101歳×2」という映画で、むのたけじさんがこんなことを語っている。
皇国の兵士として出陣し、戦死した連絡が故郷の家族に入る。
子ども2人と妻が、隣の部屋で泣いていると、在郷軍人会の人が「立派に戦った」と周りの人に伝えろと言いに来る。
夫が死んでも、泣くこともできない。
みんな空気に負けていた。
オレたち日本人にもそういう血が流れていることを忘れてはいけない。

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2017年5月10日 (水)

新・空気の研究11

東芝がアメリカの原発子会社ウエチングハウスの負債を手放そうとしている。
破産申請ができるかどうか、そう簡単ではないのではないかと思う。
電機メーカーが苦労しているとき、東芝は原発推進で苦境を乗り越えようとした。
原発は、国の政策だから守られると考えていたことが甘い。
日本では、どんなにコストがかかっても、電力値上げで乗り切ることができるので、
原発ビジネスは損をしないと思い込んでいたのだろう。

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でも、アメリカは違う。
完全に競争原理が働くビジネスの世界だ。
原発開発の安全性が強く求められるようになれば、コストがかさむのははっきりしている。
シェールガスが簡単に大量にとれるようになると、明らかに原発よりも安い電力ができる。
しかも、海外の原発開発を受注できても、その原発が事故をおこせば、膨大な負債を抱え込む契約にならざるを得ない。
原発ビジネスはもううまいビジネスではなくなっているのである。
東芝のリーダーは、原発は国策だから失敗はないという空気に流されてしまった。
組織のリーダーは空気を読みながら、次の時代の空気を読まなければならない。
そういう意味で、東芝のリーダーはリーダー失格だったのだと思う。

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2017年5月 9日 (火)

新・空気の研究10

イスラム系7か国の一時入国禁止を命じた大統領令は、司法省のトップが異を唱えた。
憲法違反として無効と判断した。
その後、イラクを除いたイスラム系6か国を一時入国禁止とする新大統領令が出たが、
再び、ハワイ州のホノルル連邦地裁は発効の一時差し止めを命じる仮処分を出している。
こうした動きを見ると、アメリカの民主主義は健全だ。
空気に負けないように、土俵際でふんばっている。

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FBIが、トランプ大統領の選挙にかかわった人たちとロシアとの関係を調べたり、
トランプの別荘を調べたりするのはすごいことだと思う。
正義を守るために、権力に対して毅然とした姿勢で臨むことができる人たちがいるアメリカは、懐が深いなと思う。

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2017年5月 8日 (月)

新・空気の研究9

「東北でよかった」という発言も、福島の自主避難している人に対する「自己責任」という表現も、質問する記者に「出て行きなさい」と怒鳴るのも、単なる失言ではなく、本音なのだと思う。
「最後は金目でしょ」
「長靴が売れてよかった」
これらも、本音が見え隠れする。

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より激しいことを言ったほうが、目立つし、組織のなかで大きい顔ができると誤解しているのだ。
「もっと強く」「より保守的に」、みんなが強がりのポーズの競争を許している空気があるのだと思う。
自分は何のために政治家になったのか、もう一度考えてほしいと思う。

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2017年5月 7日 (日)

彼女の使命

『1%の力』(河出書房新社)のなかに、「さらにもう1%愛する人のために」というエッセイを書いた。
ある夫婦の間に男の子が生まれた。
2か月後、夫に胃がんと肺がんが見つかった。
愚痴を言わない夫で、競艇やパチンコなどやりたいことは何でもやりたいという夫。
妻も、子どもを育てながら、彼のやりたいことはすべてさせてあげようと腹を決めていた。
闘病が深刻になるなかで、彼女から手紙をもらった。
ぼくの本に救われた、という。
中国地方に講演に行くと、彼女は幼い子どもをつれ、夫の訪問看護師を伴って講演会場に来た。
闘病期間は4年。
37歳で夫は亡くなった。
その後、彼女との交流は続き、子どもにウルトラマンのおもちゃや絵本をプレゼントした。
小学校入学のときには、「小学一年生」を贈ったりした。
昨年、彼女は実家のある香川県の財田町に引っ越した。
そこで、子どもの名前をつけた「れいくんち」というケーキ屋さんを始めた。

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先日、観音寺市に講演に行くとき、ふと彼女のことを思い出した。
ぼくは、だいたい「その日暮らし」。
前の日に「明日はどこへ行き、何をするのか」予定を確認して行動する。
観音寺市から20分ほどのところに財田町があることに気づき、
彼女に電話して、「明日、行くよ」と話した。
家中、大騒ぎになったという。
彼女のお母さんとも、闘病中、電話で何度か話したことがある。
訪ねていくと、れい君の小学校の校長先生や、彼女の高校時代の恩師までやってきた。
昔の仲間に囲まれている。

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この人の特徴なんだと思う。
一生懸命生きているので、みんなが彼女を応援したくなるのだ。
彼女の言葉を思い出した。
「人は使命、課題、役割をもって生まれてくる。
父親がいなくても、息子をしっかり育てるというのが、私に与えられた課題」
香川に講演に行く機会があったら、れい君の通う財田小学校で、子どもたちに命の話をしたいなと思った。

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2017年5月 6日 (土)

カフェほっと悠あゆみ

先月、南相馬市の小高地区に「カフェほっと悠あゆみ」がオープンした。
小高地区は20キロゾーンのなかにある避難指示が出ていたが、
ようやく解除され、帰還がはじまった。
帰還した住民はまだ1割程度だが、行ったり来たりという負担は少なくなった。
学校も始まった。
そんななか、カフェほっと悠あゆみは、みんなが集まったり、お茶を飲んだりできる場所である。
NPO法人ほっと悠は、障害者の就労を支援する活動をしており、
就労支援センターほっと悠Ms(エムズ)などでは、弁当づくりと配送などの仕事をしている。
ほっと悠あゆみは、Msの出張所であり、障害のある人らがコーヒーをいれてくれる。

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ぼくが南相馬に通うようになったのは、ほっと悠の理事長、村田純子さんがきっかけだ。
以前から村田さんから講演をしてほしいといわれていたが、
二の足を踏んでいた。
ぼくは信州の山の中に住んでいて新宿まで2時間半かかる。
南相馬も、福島駅から1時間半。
とにかく遠い。
それでも、ほっと悠記念講演会の数百人のホールをいっぱいしたいという村田さんの熱意に負け、
再三の依頼で重い腰を上げた。
その半年後、東日本大震災が起きた。
すぐに村田さんに電話した。
市長に連絡してほしい、小高病院の院長の遠藤先生に連絡してほしいといわれ、
なかなか回線がつながらないなかで、何日もかけて、南相馬の人たちと連絡をとるようになった。
混乱のなか、みんなに助けてほしいといわれ、それからずっと長いつきあいが始まった。
きっかけは村田さんだったのだ。

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南相馬に行くたびに、ぼくは双葉食堂に行きラーメンを食べ、
ほっと悠でコーヒーを飲む。
双葉食堂のラーメンも福島一美味しい、と勝手に思っている。
ほっと悠のコーヒーも、愛情いっぱい。
機会があれば、ぜひ訪ねてほしい。

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2017年5月 5日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(347)

「ゴースト・イン・ザ・シェル」
日本のSFアニメ攻殻機動隊の実写版を、ハリウッドがつくった。
脳だけが本物で、あとは人工物の義体で生きている機動隊員。
そのまとめ役を演じるのがビートたけし。
主役はスカーレット・ヨハンソン、美しい女優だ。
記憶は半分くらいしかない。
自分がなぜ生きているのか、自分のアイデンティティは何なのか、主人公は悩み続ける。
母親役を桃井かおりが演じている。
その母親を訪ねていくことで、少しずつ自分のアイデンティティを取り戻していく。
すべてをロボット化し、臓器を人工物に変えていく会社をつくり、世界を牛耳ろうとする男との闘いが繰り広げられる。
映像が

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とても美しい。
ビートたけしがいい味を出している。

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2017年5月 4日 (木)

鎌田劇場へようそこ!(346)

「僕とカミンスキーの旅」
さすが、ボルフガング・ベッカー監督。
全世界で600万人が見た「グッバイ、レーニン!」の監督だ。
マティスにかわいがられ、ピカソにも評価され、一時期、脚光を浴びた盲目の画家カミンスキー。
スイスで隠遁生活を送る老画家の伝記を書こうと、ジャーナリストが野望をもつ。
82歳と32歳の旅が始まる。
カミンスキーがかつて愛した女性が生きている、その女性を探す旅である。

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若いジャーナリストを演じるダニエル・ブリュールは、一発かましてやろうという、迫力のある演技。
とげとげしく、嫌味な男で、なんか笑ってしまう。
この映画には、共感できるような人物がひとりも出てこない。
みんな問題をもっている。
好きになれそうもない人ばかりが出てくるが、一本の映画としては、この映画が好きといってしまうほど、楽しくさせてくれる。

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2017年5月 3日 (水)

鎌田のYahoo!ニュース

Yahoo!ニュース

Yahoo!ニュースで、最近取り上げられたものをご紹介します。

●ニッカンスポーツ連載中の「鎌田實の健康で幸せに生きるための技術」。毎日更新されています。

●週刊ポスト連載中の「ジタバタしない」最近の記事
「籠池泰典氏は首相周辺の空気をうまく利用した「魔術師」か」

Np7

●JBPressmの記事
「福島県で急速に増え始めた小児甲状腺がん
~「臭い物に蓋」をしては後で大問題に、チェルノブイリの経験生かせ~
(2017.4.19(水)配信)は、「いいね」が4000件を超え、今も人気ランキングのトップ10に入っています。福島の小児甲状腺がんの問題について、できるだけニュートラルな立場で書きました。

JBPress

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●日テレ「news every.」の16時台で放送中の「ナゼナニっ?」のコーナーでご紹介したおすすめの映画。「人と人の関係」を描いた作品3本です。

http://www.news24.jp/articles/2017/04/27/07360043.html

Nn0427

●日テレ4月20日放送の
超高齢化で注目されている「総合診療医」
も大変好評です。

http://www.news24.jp/articles/2017/04/20/07359502.html

●日テレnews.every は放送内容を模様替えしました。

「キーワード」のコーナーがなくなり、「ナゼナニっ?」のコーナーが始まりました。
鎌田は、木曜日16:20頃登場します。 その日の夜にはインターネット「日テレニュース」にアップされます。 ぼくが興味を持っている健康、平和、映画のことなど幅広く取り上げています。困難の中で生きている人たちのところへエンパワーしながら取材しています。
ぜひご覧下さい。

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鎌田劇場へようこそ!(345)

「パーソナル・ショッパー」
パーソナル・ショッパーとは、忙しいセレブに代わって、洋服やアクセサリーを買い付ける仕事。
カギを預かって自宅に出入りする。
そんな仕事をしている一人の女性が主人公だ。
双子の兄を、先天性の心臓病で亡くし、自分も心臓の病気を抱えている。
生前の兄と、どちらか先に死んだらあの世から連絡する、と約束していた。
兄は霊感が鋭かった。
部屋のなかでざわついたり、お茶を飲んでいると窓ガラスに人影がよぎったり、
落ちるはずのないものが落ちたり。
亡き兄の存在を感じる。
オカルト映画のようにつくられていないのがいい。
心理ミステリーだ。

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監督はフランスのオリヴィエ・アサイアス。
カンヌ国際映画祭で、この作品で監督賞を受賞している。
主演女優はクリステン・スチュワート。
とにかく美しい。
映画にはいろんな見方がある。
風景がきれいだったり、ストーリーがおもしろかったり。
だが、ずっと忘れない作品は、俳優の存在感が大きい。
クリステン・スチュワートの美しさは、エンドロールまでずっとひきつけられる。
結末は、「お、そうくるか」というもの。
いい映画をみることは、幸せです。

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2017年5月 2日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(344)

「食べられる男」
笑った。
とにかく笑った。
孤独な男が宇宙人に食べられるまでの1週間が描かれている。
地球平和のために、宇宙人に食べられる人間を選ぶ。
食べられる人がいないと、宇宙人に攻撃されるのだろう。
食べられる男は、地球を救うヒーローとなる。
「僕なんて、美味しいのかな」と疑問をもちながら、
おいしく食べられるための「下ごしらえ」をされていく。

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だれとも話さなかった男の周りに、いろんな人が集まってくる。
被食保険が下りるはずだとお金目当ての人もいるし、同情してくれる人もいる。
万歳をしたり、花束を送ったりする人もいる。
まるで、戦争中、赤紙が来た出征兵士に、腹いっぱい食べさせて戦地に送ったことを思い出す。
風刺が効いている。
ドイツニッポンコネクション2016の審査員特別賞を受賞した。
映画好きにはたまらない映画だ。

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2017年5月 1日 (月)

お知らせ

「日経おとなのOFF」5月号に、『遊行を生きる』(清流出版)が紹介されています。
ホモ・ルーデンス(遊ぶヒト)という人間の本質をあらためて大切にしたいと思い、この本を書きました。

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「心明るければ、出合うものすべてが宝物」
「脱皮できない蛇は滅びる」
「一度切りの人生、夢に向かって全力投球」
「いい言葉はいい人生をつくる」
・・・そんな言葉がちりばめられた一冊、ぜひ読んでください。

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