鎌田實の一日一冊(312)
「十代に共感する奴はみんな嘘つき」(最果タヒ著、文藝春秋)
「四月は君の嘘」(新川直司著、講談社)
「10代への君へ」という本を理論社から頼まれ、10代になった気持ちで読み始めたのが、二作の「嘘」というタイトルがついている作品だ。
一作は、最果タヒさんの作品。
タヒとは、「死」という文字から来ているそうだ。
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」という詩集は、映画化されている。
彼女の「グッドモーニング」は、中原中也賞を受賞している。
「感受性が強いのは若い人間だけれど、感受性を尊重したがるのはおとなばかり。
悲しいからなに。
昔思ったことをいつまでも大事にしまい込む、それは何。
そんなものは生命維持には無関係だっていうこと、
忘れちゃんうんだろうな長生きしたら。
老人のつまらなさはそこにあると私は思う」
手厳しいが、けっこうすごい。
いま読みふけっているのは、コミック「四月は君の嘘」11巻のうち5巻まで来た。
タイトルがいい。
ピアニストを夢見る天才少年。
母が亡くなり、耳が聞こえなくなる。
コミックがこんなに面白いとは思わなかった。
作品に出てくる音楽もユーチューブで聞けるようになっている。
「音楽は自由だ」ということに少年が気づいたとき、ショパンのエチュードが流れている。
若いバイオリニストとの出会いが、少年を変えていく。
この二つの作品に出てくる「嘘」は、昨今のフェイクニュース、オルタナファクトとは違う。
「想像力」と言い換えてもいい「嘘」には、不思議な感触がある。
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