新・空気の研究34
7月1日から公開される「しあわせな人生の選択」という映画はすてきな映画だ。
スペインで俳優として活躍している男が肺がんになった。
肝臓転移がある、末期である。
離婚し、息子はオランダの大学に行っており、
いまは犬と二人で暮らしている。
そこに昔の親友がカナダからやってくる。
男同士の友情と一匹の犬。
特別な4日間。
抗がん剤治療をすすめられるが、主人公は拒否する。
ターミナルケアの悲しい話になりそうなのに、一度も見る者を悲しませない。
不思議な映画だ。
ほのぼのとしてる。
温かい。
出てくる人間がみんなかっこいいのだ。
別れた妻も、遠くで勉強する息子も、みんな主人公が末期がんであることを知りながら、
特別な会話は何もない。
オランダにいる息子を突然訪ねるが、息子も何も話そうとするわけではない。
でも、しぐさがあたたかいのだ。
「限りある命」からかもしだされる空気に、だれも負けてないのだ。
離婚の原因は、友人の妻と不倫したことだった。
その男友だちと偶然会う。
主人公が「悪かった」と謝る。
本当は、もっと大事なときに謝らなければならなかった、それができなかったおれはだめな男だというと、
相手の男は「おかげで今、おれは幸せだから気にするな」と若い女性を紹介したりする。
メソメソしていない。
みんな明るい。
最期までその人らしく生きることができる、ということを示してくれる映画。
スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞の5部門を総ナメにした。
男同士の友情が圧倒的。
この映画は、空気に負けないことが、人生を幸せに生きる秘訣であることを教えてくれた。
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