« IS拉致の少女が無事、帰還 | トップページ | 新・空気の研究38 »

2017年6月18日 (日)

新・空気の研究37

映画「甘き人生」(マルコ・ベロッキオ監督)は、イタリアで140万部売れた大ベストセラー「よい夢を」の映画化。
あるジャーナリストの自伝小説だ。
少年のとき、母親が亡くなる。
心の病だったらしいが、自分を残してなぜ死んだのか、わからない。
ずっと心の重りになっていた。
成人してからも、冷めたものをいつももっている。
ジャーナリストになって、戦場にも行った。
命の瀬戸際を見れば見るほど、母親の死に対する少年の時の悲しみが舞い戻ってくる。

Photo

ぼくも、分かるような気がする。
この年になっても、ぼくを産んでくれた母親はなぜぼくを捨てたのか、と思い続けている。
ぼくを手放さないでいてくれたらな、と思う。
映画のなかで、落ちていくものが暗示的に使われている。
引力があるから、ものも、人も落ちていく。
主人公は人を愛する気持ちを失い、からっぽの少年時代を過ごしてしまう。
そのからっぽの心を満たしていくのに、とても時間がかかる。
愛がどこかに行ってしまうと、そのすき間に虚無が満たされる。
その虚無を追い払うには、やはり愛の力なのだということを教えてくれる映画だ。

|

« IS拉致の少女が無事、帰還 | トップページ | 新・空気の研究38 »