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2017年6月27日 (火)

新・空気の研究42

小学校のポンユウ菊池良生が『ドイツ三〇〇諸侯 千年の興亡』(河出書房新社)を上梓した。
なかなかの力作。
このなかに、ベルテンベルク公国の話がある。
1800年に啓蒙専制主義をおこなった。
この主義は、「朕は国家はなり」という絶対主義が行き詰ったのをうけて、「朕は国家第一の下僕である」と、従来からの専制支配体制を少しだけソフィスティケートしたものであった。
王権は蒙昧と迷信の世界にどっぷりとつかった臣民たちを教化すべく、何事につけても口うるさく彼らの日常生活に干渉しなければならなかった。
それが啓蒙専制君主に課せられた崇高な使命であった。
1808年、検閲条例を課した。
その冒頭は、「国家全体と君主への誹謗中傷の禁止」である。
条例は「正しい真理への愛」を高々と掲げている。
「美しい日本」とかいうのと、どこか似ているような気がする。

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国王はさらに「啓蒙警察」をつくる。
日本の政治家と官僚の間で行われている忖度を、システムにしたようなものだ。
菊池はこう書いている。
「啓蒙主義は、人間形成、教育、モラル政策の遂行のために、検閲を不可欠なものとみていたのである」
日本政府の「教育再生会議」を連想してしまう。
共謀罪が成立した。
密告、監視社会の空気がつくられている。

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