新・空気の研究53
19世紀なかば、アメリカにエミリー・ディキンソンという詩人がいた。
いい詩をかく。
生前に発表したのは、小さな地元紙に10編ほど。
死後に、1700編が発見された。
女学校に通っていたときも、がちがちの福音主義に嫌気をさし、
ひとり抵抗を続け、学校からレッテルを貼られる。
その後も歯に衣着せず、気に入らないことがあるとぶつかっていく。
一生の間、父親の家の敷地から出ることは行くなかったが、
それでいて多感な詩をかいた。
「忖度バカ」にならないことで、彼女は自分の感性を磨いていた。
親ともぶつかり、教師ともぶつかり、いいよる男ともぶつかる。
兄ともぶつかった。
「私は無名
あなたはだれ
あなたも 無名
じゃあ似た者同士、ばれないようにね」
そんな詩がある。
無名でいいのだと思い続けて、世界的な詩人になった。
彼女の言葉に
「水は渇きが教える
陸は越えた海が教える
歓喜は苦痛が教える
平和は戦記が教える」というのがある。
反対のものが大事なことを教えてくれる。
一つに空気にならないこと。
ディキンソンは詩でこれを表現していた。
そのディキンソンの映画が、今月下旬「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」というタイトルでロードショーされる。
ぜひ、みてほしい映画だ。
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