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2017年7月28日 (金)

新・空気の研究62

日野原重明先生とは20年くらいのおつきあいだった。
雑誌で対談し、その後、2005年NHKのラジオ番組「鎌田實いのちの対話」に2日間、宮崎にご一緒した。
そのとき93歳。
「やることが多すぎて、なかなか死ぬ暇がない」
ぼくについても、「鎌田さんは、体のなかにぐっと芯が通っていて、多くの人々にメッセージを伝えようという使命感があっぱいある珍しいドクターじゃないかと思います」
とも語ってくれた。
このときのもう一人のゲストは、舘野泉さん。
左手のピアニストだ。
領域が開く音楽人生というテーマを話をした。
日野原先生は「オーケストラのコンサートマスターはラの音でチューニングする。
ラの音は人間に非常にいい音なんです」
家族や客人を迎えるときに、ドの音では具合が悪いという。
ラの音で「おかえりなさい」というと、
人間関係がぐっとよくなる、日野原先生は言った。
印象に残った言葉だ。

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当時、医療現場では「エビデンス・ベースド・メディスン」(根拠に基づく医療)が大手を振っていたが、日野原先生は「ナラティブ・ベースド・メディスン」がいいといい、
患者さんの語った言葉を中心に医療を展開するのがいいと話してくれた。
医者と患者の絆は、サイエンスは半分。
あとの半分は、ヒューマニティ(人間性)も含むアートが、医療には大事なのだという言葉も印象に残っている。
その通りだと思う。
その領域を革新的に変えようとするとき、その時代に流れている空気の反対側のものを意識することが大事なのだと思う。
日野原先生は、空気をかきまわす名人だったと思う。
・・・つづく。

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