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2017年7月

2017年7月31日 (月)

新・空気の研究65

2010年バンクーバー冬季五輪代表だった国母和宏選手は、
ユニフォームを「腰パン」に着崩し「有名」になった。
このことについて、ビートたけしがおもしろいことを言っている。
「パンクロッカーがクールファイブのかっこうをして歌っているようなものだ」

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腰パンはお行儀が悪いが、お行儀よくすればいいというものではない。
お行儀よくして、その裏では法外な放送権利料をとって商業五輪にしている。
オリンピックとは何か、本質をもう一度考えたほうがいいと思う。
一流のアスリートたちが鍛え上げた肉体で、最高のパフォーマンスをすること。
武力の闘いを放棄し、スポーツマンシップのなかで、それぞれ最高の闘いをすること。
そして、選手を大事にすること。
ここにオリンピックの大事な原点があるはず。
1936年ベルリン五輪は国威発揚の場になった。
そんな五輪であってはいけないのだ。
「腰パンはダメ」というのは忖度過剰症候群の一つだと思う。

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2017年7月30日 (日)

新・空気の研究64

宮城観光PR動画が物議をかもしている。
「あっという間にイケちゃう」とか、亀に「乗ってもいいですか」と壇蜜がささやくというもの。
くだらないPR動画だと思う。
東京から90分、竜宮城ならぬ「涼宮城」の涼しい宮城へどうぞ、と言っているだけなのだが、
「肉汁トロトロ」とか「鼻血ブー」とか、全編ぐちゃぐちゃしている印象だ。
メリハリがなくだらだらしていて、失敗作だと思う。
「気持ちが悪い」という人がいてもしかたない。
でも、村井知事の言葉はけっこういけている。
「賛否両論あることは逆に成功」
自治体の広報は失敗や批判を恐れて、角のない先品をつくりがち。
フックのないものになってしまうことが多い。
そういう意味では、この壇蜜のPR動画は失敗だけれど成功といってもいいだろう。
みんなが批判を恐れてまあまあでいいと思いだすと、地域はますます活力をなくしていく。
ときには跳ねることも大切なのだ。

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BSで壇蜜と対談したことがあるが、実に頭のいい人だった。
本をよく読んでいる。
ぼくの本にも付箋をいっぱいつけて読んでいた。
壇蜜を起用して全編ねっちりした作品にするのではなく、みんなが意外に思うようなさわやかさを出しながら、
一か所だけ壇蜜らしいところをつくれば、もっといい作品になったと思う。
所詮、失敗作。
止めるほどの過激さも、時代をかきまわすような力もないように思う。
ネットで炎上しても、止めないほうがいい。
この程度の空気の圧力に負けないほうがいいと思う。
賛成、反対という意見がいっぱい出ていていいのだ。
宮城に行かない人は、この動画を見ても見なくても行かない。
割り切ることが大事だ。

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2017年7月29日 (土)

お知らせ

「空気」や「忖度」について気になり、週刊ポストなど各メディアで発信してしたきた。
そんな鎌田の主張が、ネットニュースになった。


  「忖度バカのディストピア」はゴメンこうむる
いま、「忖度」がキーワードになっている。
もともと他人の心を推し量るのは悪いことではないはずだが、現代ニッポンでは、「忖度バカ」とも言えるような人たちが増えている。
そんな奇妙な空気を一掃するにはどうすればいいのか。
諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が指摘する・・・・・・。

8/23、小学館カルチャーライブ「忖度バカはいらない!」では、
日本に広がる「忖度」という病魔について、たっぷりと語る。
ぜひ、ご参加ください。

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新・空気の研究63

日野原重明先生に、「何年先の講演を受けているのですか」と聞くと、
「手帳が3年先までしか書けないので、3年先までしか受けていない」
「でも、本当はもっと先まで受けてもいいと思っているんだけどね」と笑った。
すぐにぼくは通販生活で買った10年日記を贈った。
その後、テレビで、日野原先生が女優の森光子さんの誕生日に、
「10年先まで芝居の予定を入れなさい。そうすれば生きていくことができから」と、10年日記をプレゼントしたと話していた。
笑ってしまった。
「高齢になったらもう先がない」なんていう空気にだまされないことだ。
何歳になっても、自分は自分。
ぼくが10年日記をプレゼントしたのは2005年だった。
たぶん、あの日記は全部使い切ったのだと思う。
昨年4月に、佐賀で一緒に講演した。
日野原先生が30分、鎌田が1時間半。
2000人のホールが満員になった。
日野原先生は30分立って、講演した。
その後、「鎌田先生の話は久しぶりだから、聞いていくよ」と言い、
会場からは見えないところにベッドを置いて、そこで「悪いけど、横になって聞かせてもらう」と言った。
日野原先生をネタにたっぷり面白い話をした。
長生きをするコツ、生きがいをもって生きることなど、ところどころで笑わせながら。
講演が終わって、日野原先生のところにあいさつに行くと、
日野原先生はグーグーといびきをかいて寝ていた。
鎌田の話を聞こうという気持ちはあったが、飛行機移動などで疲れていたのかな。
思わずほほえんでしまった。
ユーモアのある人だった。
時代の空気をかきまわす先達がまた一人亡くなった。
寂しい。

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2017年7月28日 (金)

新・空気の研究62

日野原重明先生とは20年くらいのおつきあいだった。
雑誌で対談し、その後、2005年NHKのラジオ番組「鎌田實いのちの対話」に2日間、宮崎にご一緒した。
そのとき93歳。
「やることが多すぎて、なかなか死ぬ暇がない」
ぼくについても、「鎌田さんは、体のなかにぐっと芯が通っていて、多くの人々にメッセージを伝えようという使命感があっぱいある珍しいドクターじゃないかと思います」
とも語ってくれた。
このときのもう一人のゲストは、舘野泉さん。
左手のピアニストだ。
領域が開く音楽人生というテーマを話をした。
日野原先生は「オーケストラのコンサートマスターはラの音でチューニングする。
ラの音は人間に非常にいい音なんです」
家族や客人を迎えるときに、ドの音では具合が悪いという。
ラの音で「おかえりなさい」というと、
人間関係がぐっとよくなる、日野原先生は言った。
印象に残った言葉だ。

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当時、医療現場では「エビデンス・ベースド・メディスン」(根拠に基づく医療)が大手を振っていたが、日野原先生は「ナラティブ・ベースド・メディスン」がいいといい、
患者さんの語った言葉を中心に医療を展開するのがいいと話してくれた。
医者と患者の絆は、サイエンスは半分。
あとの半分は、ヒューマニティ(人間性)も含むアートが、医療には大事なのだという言葉も印象に残っている。
その通りだと思う。
その領域を革新的に変えようとするとき、その時代に流れている空気の反対側のものを意識することが大事なのだと思う。
日野原先生は、空気をかきまわす名人だったと思う。
・・・つづく。

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2017年7月27日 (木)

新・空気の研究61

網走の市民大学に講演に行った。
これから4日間、美幌、阿寒、根室と講演を続けていく。
1300年前まで、オホーツク文化というのがあったという。
平安時代前期くらいまで、サハリンから道東の沿岸部で一つの文化が栄えていた。
モヨロ遺跡も見つかっている。
縄文土器のような深い縄のあとはなく、弥生土器にひものようなあとがえがかれている。
交易民族だったために、北は樺太、南は奥尻、東は国後まで、広域に痕跡が残っている。
オホーツク人はその後、擦文文化に継承され、その後アイヌ文化に吸収されていく。

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人間の歴史は、分断ではなく、交流と統合によって続いてきた。
空気は混ざり合うことで「まっとうさ」を維持することができると同じように、
文化も混ざり合うことで、発展してきた。
忖度バカの一つの特徴は、自分たちの仲間をつくり、他を分断する。
仲間のなかだけで生きるようとすることが、過剰な忖度を生む。
忖度バカを生まないためには、村八分や戦い、分断ではなく、融和や統合、連携が大事なのだ。

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2017年7月26日 (水)

新・空気の研究60

日本会議の幹部でもある、森友学園の籠池さん。
稲田さんは、その法律相談を受けたことはないと言っていたのに、実際は裁判に行っている。
忖度バカは「フェイク」をつくり出す。
南スーダンの国連平和維持活動を現地の部隊が日報で「戦闘」と書いているのに、
「武力衝突」だと言い切る。
その理由は、憲法9条上の問題になる言葉を使うべきではないからだという。
これで弁護士とはあきれてしまう。

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「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党としても応援したい」
と応援演説した都議選で、自民党は大敗を喫した。
ずっと失敗続きで、何とか挽回したいと思った焦りが出たのか。
その結果、失敗の上塗りという形になった。

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2017年7月25日 (火)

新・空気の研究59

稲田大臣は一強の安倍さんのご寵愛を受けている。
安倍さんが行きたい靖国神社へ、8月15日に参拝する議員として注目を集めた。
ウルトラライトの競争に勝った。
忖度バカの真骨頂だ。
その忖度バカを、自衛隊の幹部が守って、陸自で見つかった文書をなかったことにした。
彼らからすれば大臣を守ってあげているのに、
当の大臣は「聞いたこともない」とシラを切り通す。
それに怒った防衛省の幹部たちがリークをはじめた。
このままでは、自分たちだけが特別防衛監察の隠ぺいの責任を負わされてしまう。
忖度の関係は、必ずほころびが出てくる。
文科省もそうだ。
信頼関係ではなく、利害関係によって出来上がったイリュージョンだからだ。
こんな忖度バカを一時は日本の首相にと神輿をかついでいた人たちの気が知れない。

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2017年7月24日 (月)

新・空気の研究58

「ヘイルメリーマガジン」という男性向けの月刊誌がある。
男たちの趣味やモノへのこだわり、タフな生き方が紹介されている。
8月号の特集は「あなたはいまどんな誘惑におぼれていますか」。
テリー伊藤や夢枕獏、なかにし礼などが、おぼれていることを書いている。
酒におぼれることもあれば、女におぼれることもある。
養老孟司さんは、ゾウムシにおぼれている。

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おぼれるのは水の中ではなく、ぼくたちは空気におぼれるのだ。
リアルな世界とバーチャルな脳内の世界。
おぼれるというのは、我を忘れて、何かに情熱を傾けることだ。
ぼくは「本づくりにおぼれている」と答えた。
今年に入ってから『遊行を生きる』(清流出版)
『検査なんか嫌いだ』(集英社)
『楽しむマナー』(中央公論新社)
『カマタノコトバ』(悟空出版)
『「わがまま」のつながり方』(中央法規出版)などを出してきた。
この秋、そして来年も、『人間の値打ち』など、何冊も構想している。
いくつものの出版社から声をかけられている。
出版不況という逆風のなか、言葉を形にするのは楽しい作業だ。

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2017年7月23日 (日)

新・空気の研究57

よどんだ空気をかきまわすためにはどうしたらいいのか。
9月に二つの日本映画が封切られる。
「二度目の夏、二度と会えない君」
ライトノベルの原作を映画化したもの。
「好きだよ・・・」と告白した後、「なんでそんなことを言うの」と言葉を残し、彼女はて死んでいく。
突然、半年前にタイムスリップし、二度目の夏のチャンスがやってきた。
「今度こそ君を好きにならない」と思いながら、もう一回人生をやり直す。

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もう一つは「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
東野圭吾の作品。
西田敏行、山田涼介出演。
ナミヤ雑貨店のオヤジさんは、悩み事にこたえていた。
その32年後、廃屋となったナミヤ雑貨店に、3人の若者が入り込む。
悩み事の手紙が届き、若者たちが返事を書いていく。
32年前の手紙に、現代の若者がこたえるのだ。
いくつもの奇跡が重なり合う。

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空気をかき回すには時代をさかのぼってみたり、未来を想像してみたりすることがとても大切なことなのではないかと思う。

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2017年7月22日 (土)

新・空気の研究56

官邸に内閣人事局を設置したことで、各省の人事権は官邸に掌握された。
これによって「忖度バカ」が大量発生した。
下の人が上の人の意向を推し量るということをしはじめたのだ。
本来、官僚は国民に忖度しないといけないのに、一強の体制に自分の人生をかけて忖度しはじめたのだ。
しかも、それが「先回りする服従」を生み出した。

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特定秘密保護法の施行も大きかかったと思う。
特定秘密を扱う幹部は、適正評価として、ときに身辺調査される。
和泉首相補佐官が「総理は自分の口で言えないから、私がかわって言う」と述べたと、
前川・前次官に言っている。
本人は発言を否定しているが、萩生田官房副長官は「総理は30年4月開学とおしりを切っていた」と高等教育局長に言ったという。
やはり、本人は否定しているが、内閣府の藤原審議官は「総理のご意向」と述べたという。
「先回りした服従」がある。
国民のことをみんな忘れている。
自分が偉くなるため、こうやって「忖度バカ」が生み出されていく。
悲しいことだ。

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2017年7月21日 (金)

新・空気の研究55

国連で核禁止条約が採択された。
しかし、米露などの核保有国、日本、韓国、オランダをのぞくNATO加盟国など核の傘に入っている国は参加しなかった。
世界は、核をもつ国ともたない国で、分断が深まっている。
時間をかけて、空気を変えていくのが日本の役割のように思う。
それには、唯一の被爆国である日本が、「核のない世界をつくる」という強い意思をもつことが大事である。

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G20サミットが開かれたが、ここでも分断の空気が支配していた。
アメリカ対19か国の対立が徐々に鮮明になってきている。
保護主義に対する強い対立。
地球温暖化対策のパリ協定に対しても、トランプは離脱を表明。
地球温暖化という「リアル」な現実を、「フェイク」と思っているようだ。
日本は、「地球の環境を守る」という空気をもっと積極的に世界に広める必要があると思う。

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2017年7月20日 (木)

台湾で講演

来月2、3日、台湾で「不老学」の国際シンポジウムが開かれる。
「遠見」雑誌創刊31周年記念イベントだ。
大きなテーマは、「エイジレス社会を迎えて」。
台湾は高齢化が急速に進み、日本と同じように突破しなければならない大きな壁がある。
この国際シンポジウムに、カマタも参加。
「老いの尊厳」「日本の域包括ケアシステム」「理想的な定年後と介護に向けて」というテーマで講演する予定。
また、台湾大学でのエイジレス健康シンポジウムにも参加する。

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2017年7月19日 (水)

新・空気の研究54

前川・前事務次官が、閉会中審査で、「規制改革のプロセスが不公平で不透明だ、
背景に官邸の動きがあったと思っている」と発言した。
だが、直接、指示を受けたという和泉首相補佐官を、与党は呼ぶことを拒否している。
さらに、前川前次官は、官邸と新聞記事は連動していると感じたという。
「私以外でもおこなわれているとしたら、国家権力とメディアの関係は非常に問題がある」
本当に、こわいことだ。。
監視されているということ。
そして、権力者にとって「いい子」でないと、暴露される。
共謀罪成立でさらに監視社会は強まっていくだろう。

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森友学園の籠池さんは、権力にとって「いい子」だった。
教育勅語を子どもに暗唱させ、権力におもねった。
だから、格安で国有地の払い下げというご褒美を得た。
しかし、弓をひいた瞬間、籠池さんはすべてを失う。
タテ社会では、つねに忖度バカが発生する。
忖度することで、一時期ごほうびがもらえるが、一度、つまずくととんでもないしっぺ返しがやってくる。
そういう構造は、実はとてもこわい構造だ。

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2017年7月18日 (火)

新・空気の研究53

19世紀なかば、アメリカにエミリー・ディキンソンという詩人がいた。
いい詩をかく。
生前に発表したのは、小さな地元紙に10編ほど。
死後に、1700編が発見された。
女学校に通っていたときも、がちがちの福音主義に嫌気をさし、
ひとり抵抗を続け、学校からレッテルを貼られる。
その後も歯に衣着せず、気に入らないことがあるとぶつかっていく。
一生の間、父親の家の敷地から出ることは行くなかったが、
それでいて多感な詩をかいた。
「忖度バカ」にならないことで、彼女は自分の感性を磨いていた。
親ともぶつかり、教師ともぶつかり、いいよる男ともぶつかる。
兄ともぶつかった。
「私は無名
あなたはだれ
あなたも 無名
じゃあ似た者同士、ばれないようにね」
そんな詩がある。
無名でいいのだと思い続けて、世界的な詩人になった。

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彼女の言葉に
「水は渇きが教える
陸は越えた海が教える
歓喜は苦痛が教える
平和は戦記が教える」というのがある。
反対のものが大事なことを教えてくれる。
一つに空気にならないこと。
ディキンソンは詩でこれを表現していた。
そのディキンソンの映画が、今月下旬「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」というタイトルでロードショーされる。
ぜひ、みてほしい映画だ。

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2017年7月17日 (月)

新・空気の研究52

イラクのモスルがISから解放された。
モスルはイラク第二の都市で、紀元前、アッシリア帝国の首都だった。
貴重な文化遺産があり、モスル大学があり、大きな図書館や病院があった。
それらが今どれだけ残っているか。
命がけで、テロリストの破壊から守った人がいるはずだが、これから徐々にそのことがわかってくれるだろう。

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モスルはスンニ派の人たちが多かった。
ISもスンニ派だから、自分たちを守ってくれると思ったのだろうが、
残虐な行為が行われていた。
今後、この国の空気が安定するためには、スンニ派とシーア派の和解が必要。
さらにクルドも含め、民族と宗派の違いをとう乗り越えていくか。
今後、地下にもぐったISが、二度と力をもたないようにし続けていくことも重要な課題だ。
問題は山積している。
よどんだ空気を、希望に満ちた空気に変えることは、難しいができないことではない。

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2017年7月16日 (日)

新・空気の研究51

フェイクニュースが広がっている。
「俳優の西田敏行さんが違法薬物使用」とか、根も葉もないことを書いて、
アクセス数が多くなることで広告収入を得ようとしている。
西田さんの事務所は、刑事民事の責任追及をすすめると発表。
男女3人が書類送検された。
西田さんは、TBSの二時間ドラマ「がんばらい」と「あきらめない」で、カマタの役をしていただいた。
苦労人で、人格者である。
裏方さんに声をかけたり、仕事のあと食事に連れ出したり。
苦労したからこそ、人の痛みがわかるのだろう。

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諏訪中央病院の庭でロケをしていたとき、ホールではホスピタルコンサートが開かれていた。
突然、ぼくが「もしもピアノが弾けたなら」はどうでしょうか、と無茶ぶりすると、
いいよと快諾してくれた。
「少しでも患者さんが聞いてくれたらうれしいな」
西田さんらしい一言だった。

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2017年7月15日 (土)

ホッキご飯とケーキ

先月、ぼくは69歳になった。
南相馬の絆診療所を訪ねると、職員の人たちが手作りのケーキと大好きなホッキご飯でお祝いをしてくれた。

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震災の前年、相馬野馬追に誘われ、この南相馬で1500人ほどの人を対象に講演をした。
そのとき、この絆診療所の遠藤先生と一緒にホッキご飯を食べた。
おいしさに驚き感動した。
それ以来「カマタ先生はホッキご飯が好き」といううわさが広がり、
南相馬に来ると、あちこちでホッキご飯が出てくる。
実は、このあとの夕食もホッキご飯だった。
南相馬は「情」が深い。
人があたたかい。

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絆診療所の給与体系はユニーク。
診療所長も、看護師も、事務長も、管理栄養士も、事務もみんな一律だという。
あたたかく、やさしさのあふれる診療所だ。

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2017年7月14日 (金)

日本一売れない本屋さん?

芥川賞作家の柳美里さんは、南相馬の駅前通りに居を構えている。
彼女の作品に「ねこのおうち」というのがある。

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小高区にできた県立小高産業技術高校の校歌の作詞をした。
作曲は長渕剛。
柳美里さんは、11月ごろを目指して本屋さんを開店するという。
中高生に読んでもらいたい本を置いたりしたい、知人の作家たちにもコーナーをつくってもらう、と夢が広がる。
カタマが読んでもらいたいコーナーも設けてくれるとか。
人口2000人のまちで、「日本一本が売れない本屋さん」になるのでは?と言うと、
「いや、けっこう自信があるんです」と柳美里さん。

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2017年7月13日 (木)

南相馬へ

福島の南相馬へ行ってきた。
この日も暑さが厳しかったが、きれいな夕日にほっとする。
右側に見える建物は、すてきな図書館だ。
2011年の震災後、柳田邦男さんと絵本作家のいせひでこさんと、
子どもたちに絵本の読み聞かせをしたことがある。

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駅前はだいぶきれいになっている。
以前よりも、町全体が元気そうにみえる。
小高区の小学、中学、高校も再開された。
小高中学を訪ねると、子どもたちが元気に迎えてくれた。
これまでほかの学校に間借りしていて、体育館もグラウンドも自由に使えなかったが、
それができるようになって、うれしいと笑顔をみせる。

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小高中学校では、何か所か放射線量が表示されていたが、グラウンドで0.06マイクロシーベルト/アワー。
避難解除から一年、除染もかなり進んでいる。

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2017年7月12日 (水)

新・空気の研究50

台湾の「遠見」という雑誌の編集長、ライター、カメラマン、通訳が長野県の取材にやってきた。
諏訪中央病院を視察した後、地域の健康づくり運動などをみてもらった。
お昼ごはんは、カナディアンファームで。

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アジアの国々も高齢化の問題があらわれているが、台湾も近年、高齢化のスピードが速まっている。
高齢化をマイナスと考えないことが大事だ。
高齢者だけでなく、障害者や子どもにやさしい町をつくると、みんなが住みやすくなる。
台湾では、フィリピンやインドネシアから来た介護人材で、高齢化に対応しようとしている。
8月1日から台湾に行き、講演することになった。
台湾の空気を吸って、日本での新しい地域包括ケアのあり方を考えてみたいと思っている。
よその空気を吸うのはとても大事なことだと思う。

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2017年7月11日 (火)

新・空気の研究49

茅野市の玉川のコミュニティセンターから頼まれ、
「これからの生き方」という講演をした。
奥先生の発案で、一方的な講演ではなく、話し合いの形をとった。
主人公は、聞きに来る人たち。
健康を土台に、これからどんな生き方をしていったら、人生をいいものにできるか、みんなで考えた。

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笑うことの大切さ。
目標や人に役に立っていることの大切さ。
かつて盛んだった「歩け歩け運動」はいま下火だが、
玉川地区ではまだがんばっている人たちもいる。
フレイル(虚弱)にならないため、自分で目標をもったり、スポーツや歩け歩け運動などに参加することが大切だとあらために確認しあった。
43年前、この地域に来たばかりのとき、この地域は不健康で早死が多かった。
公民館に集まって、どうしたら健康になれるか、住民たちと医師たちとで、話し合いをしていった。
地域を覆っている空気が変わっていった。
健康に生きることと、幸せに生きることは同じ根っこにあることに気づいた。
地域おこし協力隊も参加してくれて、奥先生との掛け合いも。
それぞれの人生づくり、町づくり、地域おこしが連携すれば、新しいスタイルの活気ある町になっていくように思う。

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2017年7月10日 (月)

お知らせ

小学館カルチャーライブ
「忖度バカはいらない」開講(全一回)
日時 2017年8月23日 19.0~20.30
会場 小学館
受講料 1800円(税別)


「他人の心をおしはかること」ーー大辞泉によれば、忖度の本来の意味はそう記されている。
この日本人の美徳でもあるはずの精神に、いまわれわれは操られ支配されてはいないか。
そして安倍政権で露呈した官邸ならではの曖昧な習慣こそが、現代ニッポンに巣食う恐ろしい病魔といえるのではないかーー。
政治家や官僚の利益誘導の話だけでない。
延命治療の現場で、職場で、ママ友などの人間関係で、
そして、スクールカーストのなかで、
ぼくたちは「忖度バカ」になっていないだろうか。

この国を変えたい。
自分らしく生き、死にたい。
忖度という病の正体に迫りながら、自分を大切にした生き方とは何か考えたい。

ぜひ、ご参加ください。
詳しくはこちら↓

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2017年7月 9日 (日)

一押しのトイレ本?

宮崎県都城市のホールで講演した。
たくさん用意していた本も、ぼくがプロデュースしたCD「ふるさと プラハの春」「ひまわり」も
完売した。
地元の書店がお礼のメールをくれた。
本が売れない時代、完売はすごいと感じたようだ。
コミュニティエフエムで、『カマタノコトバ』(悟空出版)をいま一押しのトイレ本と紹介してくれたという。
たしかに、長いものから短いものまであり、どこからでも読める。

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トイレだけでなく、いつでも、どこからでも読んでほしい。

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2017年7月 8日 (土)

新・空気の研究48

言葉を探っていくと、日本人の深層心理が見えてくる。
この「新・空気の研究」では、人を何となく動かし、染めてしまう「空気」について思いつくまま書いてきた。
「空気」だけでなく、「水に流す」「水を差す」「水を入れる」「風に立ち向かう」「風を吹かす」など、空気、水、風になどに似たような性質で行動する日本人。
また、「腹を決める」などの身体感覚も忘れていない。
そういう日本人を書きたいと思ってきた。
アメリカのスタンフォード大学の図書館から連絡が入った。
日本社会において影響のある人物をインターネット・アーカイブコレクションに加えることになり、この鎌田實のウェブサイトが選ばれたというのだ。
一般の人でも、ジャーナリストでも、研究者でもアクセスできるという。

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2017年7月 7日 (金)

新・空気の研究47

都議選の終盤、自民党の幹事長が国分寺市で応援演説を行った。
「マスコミはえらいんです。えらいといっても限度がある。
あんたらどういうつもりで書いているのか知らんが、買ってもらっていることをやっぱり忘れちゃだめじゃないかなあ」
候補の応援をそっちのけで、たくさん取材に来ているマスコミに向かって言った言葉だ。
新聞を買ってあげているんだから、もっと忖度しろよといっているようにも聞こえる。

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2017年7月 6日 (木)

星空キャンプ 参加者募集

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十勝で地域医療を堪能する「星空キャンプ」
2017年8月5日(土)~7日(月) 参加者募集
「過疎地で地域医療を学ぶ体験プログラム」を北海道十勝にて、2泊3日で開催します(土日の1泊2日の参加も可)。

全国から地域医療に熱い医療従事者が集まり、現地の方々と交流しながら地域医療の醍醐味を体験できるプログラムです。

ゲストは諏訪中央病院より鎌田實、総合診療で著名な山中克郎医師、新進気鋭の奥知久医師、地域医療に魅せられた東北医科薬科大学准教授 住友和弘医師らが集結します。

北海道の医師、医学生、看護学生が既に参加予定。北海道内外から参加してくださる医師、看護師、その他地域医療に関心のある医療・介護従事者の方を募集します!

お申込みはこちらから。お早めにどうぞ!

 

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2017年7月 5日 (水)

新刊のお知らせ

『「わがまま」のつながり方』(中央法規)

「日本の生命線」といわれる地域包括ケアとは何か。
今なぜ、地域包括ケアなのか。
どうつくっていったらいいのか。
30年ほど前、「地域包括ケア」という言葉を使って、地域医療に取り組んできた経験から
地域包括ケアの可能性について書いた。
自分らしさである「わがまま」を、どうしたら支えられるのか。
「我のまま」に生き、「我のまま」に死ぬために、地域にできることは何か。

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長野県の岡谷市にある「和が家」という小規模多機能では、利用者がカフェで働いている。
注文をとったり、コーヒーをいれたり、ごはんをつくったり。
認知症の人がかっこいいユニフォームをきて、いきいきと働いている。
認知症、障害者、要介護者を「守られる人」と考えるのではなく、もとに地域を支える人と考えることで、
地域の可能性は広がる。
楽しい町づくりを目指す人、地域や生活に根差して生きる人、
ケアの世界の人だけでなく、超高齢社会を生きるすべての人に読んでもらいたい。

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2017年7月 4日 (火)

新・空気の研究46

忖度しすぎない症候群がまん延している。
神奈川県の中学校の部活動を指導している32歳の男性外部講師が、
卒業記念として男子生徒にアダルトグッズを贈ったという。
吹奏楽部を教えていた。
教育の現場であることを想像してほしかった。

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人間は頭のなかではどんな妄想してもかまわない。
その妄想に手をつっこむことはできないが、
教育の現場で行っていいことかどうか。
もっと空気を読め。

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2017年7月 3日 (月)

新・空気の研究45

ジョン・レノンの「イマジン」は、大好きな曲。
この曲ができたとき、ポールの「イエスタデイ」に負けない曲ができたと思ったようだ。
「想像してごらん
天国なんてないんだ、と」
何ももっていないということが、どんなにステキなことか。
そんなことを訴える曲だ。

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忖度過剰症候群が目立っているが、忖度しすぎない症候群というのもある。
埼玉県の小学校の男性教諭が、LGBTの児童が在籍するクラスのなかで、
授業中に「ここにオカマがいるのか、だれだオカマは」と発言したという。
LGBTの子どもを指して言ったわけではないようだが、
そういう子どもがいるのに「オカマ」という言葉が出てしまうこと自体が問題である。
言葉狩りは嫌いだが、教師としてセンスが悪すぎる。
想像してごらん。
言われた子どもの心を。
きっと傷ついていると思う。
教育にも、想像力は大事だ。

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2017年7月 2日 (日)

地域おこし協力隊

「おらほの勉強会」で、地域おこし協力隊の隊員10人と摘み草料理を出してくれるところで、勉強会をした。
地域おこし協力隊とは、町をどうしたら活性化できるかということで、全国から優秀な人材が集まってきている。
10人の定員に、400人の応募があったという。

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今までの経験も多種多様でおもしろい。
ラジオのパーソナリティーをしていた人や製薬会社で働いていた人、IT業界でスポットライトを浴びていた人。
こうした優秀な人材が、農業と観光を一体化させる事業や空き家問題をどうするか、
若い人の視点で地域の魅力を見直そうとしている。
なんともすごい助っ人が入ってきた。
観光のリピーターを増やし、表面的な観光ではなく、短期定着型の観光や農業経験、山歩きなど新しいメニューを掘り起こしながら、
移住してもいいと思える人たちを増やしていくという。
この人たちが本格的に動き出したら、おもしろい町になるような気がする。

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2017年7月 1日 (土)

「目指せピンコロ」

茅野市の山田地区で健康講演会。
総合診療医の奥先生とともに健康づくりの話をしてきた。
もともと介護予防事業のいきいきサロンが行われていたが、
いま以上に茅野市を長寿地域にしようということで、この講演会が企画された。

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おぜん立ては、すべて地元の人たちがした。
タイトルの「目指せピンコロ」も、地域住民自身が決めた。
自治が行き届いている。
ピンコロとは、ピンピンコロリのこと。
ぼくたちは「コロリ」の部分が強調されるのはちょっと・・・と戸惑ったが、
地元の高齢者は「ピンピン生きること」を望んでおり、自分たちで決めたのだと説明を受け、納得した。
このタイトルが、朝6時、有線放送で流れる。
山田地区は女性の高齢者がとても多いが、男性もがんばれ、ということだ。
いつもより2倍近い人数が集まった。
が、やはり女性が多い。
第2回も予定しているが、男性の参加を楽しみにしている。

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