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2017年8月 2日 (水)

新・空気の研究67

永六輔さんの長女・千絵さんが晩年の10年間を本にした。
『父「永六輔」を看取る』(宝島社)
笑いと介護の日々は、抱腹絶倒だ。
こんなエピソードがある。
永さんが乗っていたタクシーが横転し、救急車で搬送される。
その救急車のなかで、娘に電話した永さん。
「うるさいので、ちょっとサイレンを消してもらえますか」と頼んだとか。
このとき「タクシーが横転」といっていたが、実は「タクシーの横腹に衝突」だった。
永さんの話は、話半分に聞かなくちゃいけないと娘自身が書いている。

Photo

永さんが入院してリハビリをしているとき、
インドネシアから来た青年が担当だった。
「下ばかり見ていると危ないですよ。日本にはいい歌があるじゃないですか。
『上を向いて歩こう』、知っていますか」と青年。
恥ずかしがりやの永さんは「ぼくは知らない」とこたえた。
だが、後日、うそはいけないと思って、青年に話すことにした。
「本当は知っているんだ。ぼくがつくった歌だから」
そう言うと、青年は「またまた永さん、うそばっかり」
事故も病気も入院も笑い話にしてしまう永さん。
実はこのエピソードも、長女から見ると違う側面があったようだ。

永さんが紙パンツを履くのをいやがるときがあった。

「ぼくも履いてますよ」というぼくの言葉が、効いたようだ。
「困ったときのカマちゃん」というのが何度か出てくる。
永さんは空気に染まらなかった。
平和のことも憲法のことも、言うべきことはきちんと言葉として発信した。
昭和の文化をつくってきた天才であり、平成になっても、ぼくたちを叱咤し続けた。
天才・永六輔の隠れた10年を知ることができる一冊。
永さんのラジオを聞けなくなってさびしいと思っている人は、ぜひ読んでください。

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