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2017年9月 7日 (木)

鎌田實の一日一冊(315)

「軟骨的抵抗者 演歌の祖・添田唖蝉坊を語る」(鎌田慧、土取利行著、金曜日)
明治、大正のすごい演歌師、唖蝉坊。
自由民権運動が盛り上がるなか、
「まっくろけのけ、おや、まっくろけ」というまっくろ節だとか、
ノンキ節、げんこつ節、ラッパ節など、風刺とユーモアのきいた歌をつくっていく。

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えんかの「えん」は、演説の「演」であり、色恋の「艶」であり、怨恨の「怨」でもある。
テレビ、ラジオというマスメディアのない時代、
庶民のレジスタンスが歌だったというのはおもしろい。
そのなかで、硬骨でも、恍惚でもなく、軟骨というぐにゃぐにゃのクラゲのようなつかみどころのなさで、権力に抵抗する姿は魅力的だ。
晩年、遊行期になった彼はほとんど歌わなくなる。
「ああ、わからない、わからない。
賢い人はナンボでもある世の中に、バカ者が議員になるのがわからない」
1906年の作品だが、今聞いても笑ってしまう。

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