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2017年9月

2017年9月30日 (土)

新・空気の研究91

一強の首相は、モリカケ問題の追求から逃げるために衆議院を解散した。
その理由を無理やり、消費税の使用目的を変えることに対して、国民に信を問いたいという。
そんなのは選挙でやる必要があるのか。
借金返しの分を、教育費に充てると公約したことによって、
日本の基礎的財政収支の均衡も先送りになり、いよいよ日本経済は厳しい状態を迎えようとしている。
さらに50年先のエネルギー問題の「絵」がまったく描かれていない。
化石燃料の限界は見えている。

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しかも、原発は「安くて安全」ではなく、それで儲けようとするのは無理。
フランスのアルバは、経営が簡単ではなくなりだしている
それに安倍さんは気が付いていない。
希望の党は、原発ゼロをどう具体的にすすめていこうとしているのか、
エネルギー政策をどう考えているのかによって、大きく政局が動いていく可能性がある。
現実を直視せず、その場しのぎで空気を読みあっていても、時代は待っていてくれない。

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2017年9月29日 (金)

お知らせ

今年6月に亡くなった野際陽子さん。
野際さんを偲び、「ザ・インタビュー 野際陽子さん3時間スペシャル」(BS朝日)が放送される。
この番組は、時代の「トップランナー」と人間洞察のプロである「インタビュアー」が真剣勝負をするドキュメンタリー番組。
野際陽子さんがインタビュアーを務めた回が3時間にまとめられる。
昨年3月には、鎌田がゲストの回があった。
野際さんががんを患らいながら、JIM-NETの事務所まで来てくれ、ぼくたちの活動を見てくれた。
丁寧で、誠実な方だった。
雑誌の対談をしたとき、野際さんはスキーが好きで、数年前までやっていたと話していた。
ぼくもスキーをやるので、「いつか一緒に滑りたいですね」と話した。
しかし、「ザ・インタビュー」のときには、それを言い出せないムードがあった。
彼女は自分の人生の残された時間を予測しなから、やりがいのある仕事に挑戦していたように思う。
10月1日午後6時~
「ザ・インタビュー ~トップランナーの肖像~」
 野際陽子さん3時間スペシャル
番組のHP
 
ぜひ、ご覧ください。

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2017年9月28日 (木)

新・空気の研究90

11月に公開される「ザ・サークル」をみた。
トム・ハンクスとエマ・ワトソンという人気俳優が共演している。
巨大SNS企業「サークル」は、ブラック企業とは正反対。
豊かな自然環境で、束縛せず、働く時間は自由。
働きやすい環境がつくられている。
家族に病人がいると守ってくれる。
しかし、家族についてのプライバシーはない。
とにかく楽しく仕事ができるようにしていて、余暇までみんなで歌ったり踊ったりして一緒に過ごす。

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超高性能ワイヤレスカメラがそこらじゅうに置かれて、
指名手配の犯人を見つけ出したり、恋人がどこにいるか見つけてくれる。
世界中に目があって、なんでもできるようになる。
エマ・ワトソン演じるメイは、24時間、自分の行動を公開し、世界中の1000万人のフォロワーに注目されるようになる。
やがて、病んでいくメイ。
「理想的で完全な企業サークル」は、新しい形のブラック企業であることがわかる。
かつて日本も、会社が一生面倒をみてくれた。
社員は、会社人間になり、情報を共有し、運動会や社員旅行にも行った。
ムラ社会なのだ。
新興宗教もこういう形で勢力を伸ばしてきたのではないか。
その気にさせていく空気がこわい。

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2017年9月27日 (水)

新・空気の研究89

かつて治安維持法の時代は、ある種の本を読んだだけで、憲兵に連行され拷問を受けて、国家転覆などの濡れ衣を着せられた。
そんな時代、「一億総火の玉」とか、「一億総特攻」という言葉が躍ってた。
「国民のため」といいながら、石油を求めて、アジアに進出しようとした。
一部の軍人と政治家と政商が上手に忖度し合いながら、
国民を塗炭の苦しみに追い込んでいった時代のことだ。
さて、現代はどうだろう。
着々と密告社会の地固めをしながら、「一億総活躍」といったり、「働き方改革」などといって、
それも実現できないうちに、「人づくり革命」とか、「生産性革命」などと言葉だけが躍っている。
歴史は、繰り返されているように思える。
空虚な言葉が躍りだしたときほど、時代が悪い方向に行っていると考えたほうがいい。

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2017年9月26日 (火)

新・空気の研究88

共謀罪の趣旨を含む組織犯罪処罰法の改正案が国会を通過した。
外形的な実行行為を罰するという今までの刑法の原則に反して、
犯罪を計画した段階で処罰することができる。
そのためには、犯罪を計画しているかどうか、通信傍受などの内定調査が多くなる。
これが一番の問題かなと思う。
ぼくたちの国は歴史的に弱いところがある。
ぼくの小学校時代の友人、明治大学理工学部教授のオーストリア文学の専門家である菊池良生君は、
「ハプスブルク家の人々」など、この時代を得意にしており、たくさんの本を書いている。

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そのなかに、「警察の誕生」(集英社新書)という名著がある。
徳川の時代は平和だった。
100万都市を、280人ほどの役人で行政、司法、警察の機能を担った。
それでいて、自治組織という名前がついた。
秩序維持のための相互監視システムがあったからだという。
犯罪が起きたときには、その地域全員で責任をとるという自警団組織だった。
5軒の家が一つの塊になり、相互監視と連帯責任をとる。
密告と賄賂が大手を振っていた。
賄賂は忖度バカの究極のスタイルだ。
警察機構の末端である目明しにお金を与えることで、犯罪から逃げれたり、
犯罪者をつかまえたと言われ、犯罪被害者もおしらすに呼ばれる。
その町役人たちにお礼をしたりすることが常態化していた。
町のなかには御用聞き、目明し、岡っ引きなど公務員でない人たちが、賄賂をもらいながら生活をしのいでいた。
やくざのみかじめ料とどこか似ている。
菊池良生君はこんなふうに書いている。
「密告国家とは警察国家の代名詞でもある。さらにいうと警察国家とは絶対主義の産物である。
すなわち江戸時代は18世紀以降、絶対主義の完成期にあったのだ」
絶対主義は治安を国家の問題として初めてとらえた政体であった。

一強になると絶対主義的な空気が作られていく。
テロをなくすためには、内定調査も通信傍受もかまわないなんて思わないこと。
監視社会になると人々の生活が萎縮し、忖度バカが闊歩しだす。
そんなつまらない国にしないようにしたい。

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2017年9月25日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(352)

「ツイン・ピークス劇場版」
ハリウッドの鬼才デビッド・リンチ監督は、「エレファント・マン」でアカデミー賞8部門にノミネートされて脚光を浴びた。
「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」の監督オファーもあったが、
空気に流されないリンチは、そのオファーを断る。
その9年後、TVシリーズ「ツイン・ピークス」が、世界中でブームになった。

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1992年に発表された劇場版は、「世界一美しい死体」といわれた女子高生の最期の1週間の秘密が描かれる。
リンチ、面目躍如たる作品。
深層心理を表す画像がところどころ挿入されていく。
自分の世界をもっているリンチはやっぱりタダモノではないと思った。

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2017年9月24日 (日)

カロリー制限より筋肉をつけよう

カロリー制限で若返りが可能という論文が出た。
2009年のウィスコンシン大学の論文だ。
40%のカロリーをカットした超低カロリー食で飼育されたアカゲザルは寿命が延びたという。
それに対して、2012年アメリカの国立老化研究所が科学雑誌ネイチャーに発表した論文では、ウィスコンシン大学の論文についてこう反論している。
使用された餌は糖分が多く、精白された人工的なものが多かったので病気になりやすかった。
それを減らしたために、少し健康がもどったと考えたほうがいい。
だから、カロリー制限は寿命や見た目に影響はしてない、というのが国立老化研究所の主張である。

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ぼくは、43年間、健康づくりをしてきて、健康づくりのプロフェッショナルだと自負している。
そして、一貫して、一日一食飢餓療法とか、無理なカロリー制限は人生を楽しくしないからダメと言ってきた。
ぼく自身、最近6キロ落としたが、無理なカロリー制限はしていない。
トンカツもよく食べに行くし、焼き肉屋には週1回は行く。
カレーも好きでよく食べる。
ただし、トンカツ屋さんではご飯をなしにして、キャベツのおかわりを2回、カレーはご飯を半分にしてもらっている。
とにかく、皮下脂肪を減らして、筋肉量を増やすことにこだわってきた。
講演会ではこのごろ、会場のみんなに立ち上がってもらって、鎌田式のゆっくりスクワットなどをしてもらって、毎日やろうと呼びかけている。

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2017年9月23日 (土)

蓼科高原映画祭

第20回小津安二郎記念蓼科高原映画祭が24日まで開かれている。
世界的に評価されている小津監督は、脚本家の野田高梧とともに蓼科の山荘・無藝荘で名作を練り上げていた。

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映画祭では、
「東京物語」「小早川家の秋」「秋刀魚の味」「生まれてはみたけれど」「麦秋」
といった小津作品のほか、
蓼科をロケ地とする「バースデーカード」「いま、会いにゆきます」、
市民のリクエスト作品「八重子のハミング」「湯を沸かすほどの熱い愛」「ラ・ラ・ランド」などが上映される。

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2017年9月22日 (金)

新・空気の研究87

忖度という病に陥らないようにするにはどうしたらいいのか。
なぜ自分は勉強してきたのか。
なぜこの職業を選んだのか。
人生において何をしようと思っているのか。
部長になることではなくて、こんな仕事をしてたくさんの人によろこんでもらいたいと思って、
夢中で仕事をしてきたのではないか。

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病的な忖度を防ぐのは、自分のなかにある夢、希望、志をしっかりと見つめることである。
自分の夢は何なのか。
何を希望にしているか、志はどこにあるのか、どこに情熱を傾けたらいいのか。
そう考えていくことが他者に共感しながら、他者とは違う「自分」を確立していくことになる。
そうすることで人間が生きるために大切な忖度や共感を、病的なものにしないですむように思う。

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2017年9月21日 (木)

新・空気の研究86

森山良子さんにお会いした。
「さとうきび畑」の唄について聞いた。
この楽曲は、寺島尚彦さんの作詞作曲。
本土復帰前の沖縄を訪ねたとき、さうときび畑の足元には戦没者の遺骨が埋まったままと聞かされ、衝撃を受けて出来たといわれている。
さとうきび畑を渡る風を、なんと表現していいか。
迷いに迷って、「ざわわ」になった。
「ざわわ」は66回繰り返される。
以前、NHKのラジオ番組「鎌田實 いのちの対話」で、寺島さんの娘さんとご一緒したことがある。
そのとき、フルコーラスで唄ってもらった。
森山良子さんは、寺島さんの三軒隣に住んでいたという。
19歳のとき、寺島さんからこの歌をうたってくれと言われた。
「この広い野原いっぱい」でデビューし、ギターを片手に歌っていた彼女。
「さとうきび畑」は重すぎたという。
何度歌っても、「ざわわ」という風の音が、うまく歌えなかった。
「小手先ではダメ。くせもの。自分の非力さを痛感した」という森山さん。
しかし、寺島さんに言われ、レコード会社に相談すると「歌うべき」といわれ、
69年にレコーディング。
レコードになっても、「長すぎる、重すぎる」と自分勝手に思って、
コンサートでは、セットリストからはずしていた。

Photo 森山良子さん、村上信夫さんと

時が経過して、91年、湾岸戦争がはじまった。
母親からこう言われた。
「こんな時期に、愛だの恋だの歌ってちゃんちゃらおかしいわね。
あなたには歌うべき歌があるんじゃない」
お母さんは、歌手・森山良子の厳しい理解者だった。
この一言で、今まで逃げていたが、歌う時が来たんだと決心した。
歌が友だちになり、恋人のようになっていった。
歌っていこうという決意が生まれたという。
「大丈夫、肩の力を抜いたらいんだよ」と曲がささやいたような気がした。
最近、ギター一本で新しいCDを録音した。
これがいいのだ。
ぼくは聞きほれてしまった。
むだな贅肉を全部そぎ落としている。
「さとうきび畑の骨と筋肉になっている」とぼくが言ったら、すごく喜んでくれた。
2016年の50周年の記念コンサートでは100曲くらい用意して、リクエスト曲も歌う。
それを年間104回行った。
そのなかには「さとうきび畑」は必ず入っていた。
10数分間。
この歌が日本のどこかで歌われているときは、
右の人も左の人も、政治的信条なんて横に置いて、
とにかく戦争はいけないんだ、と思ってほしい。
そういう10数間があることは、とても大事だと思う。
ぼくはずっと「空気」を否定してきたが、
どんなことがあっても戦争はしちゃいけないという「空気」を、
ぼくたちが自覚し、意識的につくっていくことも大切なのだ。
                   ◇
「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜10時~)の9/10放送では、森山良子さんをゲストにお迎えした。
聞き逃した方は、こちらから無料で聞くことができます!
 

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2017年9月20日 (水)

貯筋(ちょきん)しよう!

79.5キロまで増えた体重が毎日、ウォーキングとスクワットで体重が減り始めた。
73キロ台に突入、6キロ減である。
筋肉を動かすことで出てくるマイオカインという物質は、夢の万能薬などといわれている。
マイオカインがたくさん出るようになると、体重は減り、血糖値や血圧が下がる。
実の父は糖尿病で透析を受けながら亡くなったと風の便りで聞いている。
ぼくも遺伝体質をもっている可能性があるため、自分で気を付けている。
10年前から「がんばらないスクワット」をしてきたおかげで、
レッグプレスを110キロ押せるようになった。

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「えんきりさいさいいっぱいたんぱく元気な体」
「えんきり」は「塩切」、塩分を控えるということだ。
「さいさい」は野菜をたんくさんとること。
「いっぱいたんぱく」は、粗食ではなく、良質なタンパク質をとること。
これらに気を付けながら、元気になろうという語呂合わせである。
半年前からは末尾をこんなふうに変えた。
「えんきりさいさいいっぱいたんぱくちょきんしろ」
「ちょきん」は「貯金」ではなくて、筋肉を太くする「貯筋」。
これが目下の、鎌田が考える健康の王道。
健康は、太もも勝負。
自転車の選手などが長生きしているかどうか、今度調べてみようと思っている。

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2017年9月19日 (火)

新・空気の研究85

1万6000トンの使用済み核燃料をどうするのだろうか。
福島第一原発のメルトダウンした核燃料棒を本当に取りだせるのか。
政治家はいい顔をして、必ず取り出すという計画を出している。
が、仮に取り出したとしても、どこが燃料デブリを引き受けてくれるのだろうか。
フィンランドのオンカロは、10万年単位で使用済み核燃料を地中深く閉じ込めているが、
日本では計画だけで、どこが受け入れてくれるのかまったく決まっていない。
にもかかわらず、核燃サイクル事業は生き続けている。

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政治家や御用学者、電力会社などいろんな人たちが忖度という病に陥っているから、まともな議論ができない。
道徳的にも、経済的にも、感情的にも、成り立たないことはわかっているのに、
まっとうな議論もせず、「原発は必要」という路線ありきで思考停止している。
そして、儲かるということだけに注目しているように思えてならない。

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2017年9月18日 (月)

必要なのは対話

北朝鮮がまたミサイルの発射実験を行った。
アメリカのミサイルは10万発、北朝鮮にはノドン300発。
圧倒的な差があることは間違いない。
しかし、数の問題でないのだ。
300発のミサイルを使えば、韓国と日本にはかなりの被害が出る。
1964年に中国が核実験に成功した後、1972年に中国とアメリカは国交を結んだ。
核やミサイルの問題だけで話し合いをするのは難しい。
国交正常化と経済協力をしていくことが大事だ。
そして、北朝鮮の国民が気づき、国民自身が国の在り方を変えていくしかない。
アメリカを中心にした有志連合がフセインを倒したが、それがイラクや世界にとってよかったのか。

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結局は、テロリストを増やすというマイナスのほうが上回ってしまった。
ISが制圧したモスルは解放されたが、テロリストがゼロになったわけではない。
地下に潜って、これから世界中でとんでもないことを起こしていくだろう。
リビアのカダフィも、死後、国が治まらなくなった。
シリアもまったくそうだ。
外国が手をつっこんでいいことなどない。
北朝鮮では20年くらいかかるかもしれないが、その国の国民が政権を変えること。
これが一番被害を小さくすることだと思う。
いま必要なのは対話だ。

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2017年9月17日 (日)

軽やかで熱く

セイジ・オザワ松本フェスティバルに行ってきた。
ピアニストの内田光子と、サイトウ・キネン・オーケストラが共演した。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調では、小澤征爾が指揮。
内田光子のピアノは、情感たっぷり。
軽やかで熱く、これぞベートーヴェンと思わせるようなピアノだった。

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サイトウ・キネン・オーケストラが内田のピアノを包み込むように、ときには火花が散る、演奏家同士の戦いとなり、それを小澤征爾がやさしく美しいコンチェルトにまとめ上げていた。

やはり小澤征爾はすごい。
スタンディングオベーションがずっと続いた。

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2017年9月16日 (土)

負けたほうから見る

宿泊しているホテルに、サッカーW杯予選で日本で対戦したオーストラリア代表チームが泊まっていた。
前夜、日本に負けたせいか、選手の顔は一様に暗かった。
このところ日本に負けていなかったので、せめて同点くらいはと思っていたのだろう。
1、2度チャンスはあったが、圧倒的に日本のほうがチャンスが多く、点数も2対0。
それでもアスリートは負けた翌日から次の戦いが始まる。
W杯最終予選、日本は突破が決まったが、
このとき、まだオーストラリアにも、厳しいがまだチャンスはあった。
早朝からプールやジムで体を動かしていた。

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戦いは負けたほうから見てみるといい。
なぜ負けたのか。
オーストラリアは日本と同じようなまわすサッカーを心がけていたが、
パスサッカーは日本のほうが一枚上手。
ワントップの大迫をはじめ、前側の選手が引かずに前に出ていたから、
ますますオーストラリアはパスが通らなくなっていた。
攻めてくる相手に、後ろで守るといい守りにならない。
得点につながる攻めのサッカーをするには、オフサイドラインをぐっと上げることしかない。
若い選手が出て来たことがいい。
21、22歳の選手が中心になって得点できたことは、日本選手にとって大きい。

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2017年9月15日 (金)

新・空気の研究84

脳は意外にだまされやすい。
だまし絵なんか典型的な例だ。
何かに集中していると、目の前を通った人が見えないこともある。
英語に「エレファント・イン・ザ・ルーム」という言い回しがある。
あるはずのないと思い込んでいると、目の前にあっても見えないということだ。
2005年にアメリカのクリフトン・メドワー博士が興味深い論文を発表した。
末期の肝臓がんと診断され、余命数カ月と診断された患者がいた。
みるみる衰弱して、告知された余命もまっとうできず亡くなった。
死後、解剖してみると、なんと患者はがんではなかった。
誤診だったのだ。
つまり、人間は、思い込みで死ぬということだ。
忖度も、基本的には底流に思い込みがある。
こうすれば自分は出世するだろう。
この人についていったほうがいい。
多くの場合は想像と思い込みである。
イメージトレーニングしていると、脳は思い込みやすくなる。
野球の選手などが、試合前にぶつぶつ自分に言い聞かせている人がいる。
自分が勝つと思い込んでいると、不思議に体が動き出す。
偽薬もそうだ。
うどん粉でも、「いい薬だ」と言われるとよくなったような気がする。
病は気からというが、人生も、スポーツも、ビジネスも、気と関係している。

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自分は「幸せ」と思っている人とそう思っていない人の16年後の人生を調べると、
「幸せ」と思っている人は、思っていない人に比べて、
280万円くらいの収入が高いということがわかった。
ハーバード大学の調査だ。
思い込むということが人間の人間たるところである。
だからこそ、過度な忖度も生じていく。
「思い込み」の力を上手に使うのはいいが、過度な忖度で自分を縛ってしまうと、人生はつまらなってしまう。

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2017年9月14日 (木)

新・空気の研究83

サイコパスのなかには向社会的サイコパスというのがある。
競争心があり、共感能力をオンとオフにすることができるという。
総じて、怖いもの知らずで、みんなが怖がってやらないようなこともやってしまうところがある。
ぼくなんかも少しそういう精神病質の傾向があるように思う。
イラクの難民キャンプに行くときには、ISが制圧している地域から50キロくらいのところで活動するのだが、
「よく活動できますね」と驚かれる。
「なるようにしかならないんですよ。
日本にいても交通事故に遭うかもしれないので同じです」と答えている。
チェルノブイリの放射能の汚染地域に行くときも同じだ。
別に怖いとは思わない。
自分を待っている人がいると勝手に思い込んでしまい、全力投球をしてしまう。

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脳には、ミラーニューロンという神経細胞がある。
子どもは、自分にかかわってくる周囲の人たちの様子をみており、
言葉を真似したり、行動のパターンを覚えていく。
子どものなかには、ぼくが次に何を欲しがっているのかわかって、
それをもってきてくれる子がいる。
「ありがとう。よくわかったね、えらいね」
ほめると、さらにぼくの行動を見て、次は何だろうと考える。
おそらくこれは、他者理解が根っこにあるように思う。
人は模倣学習をしているわけだが、その根っこにあるのは他者理解である。
チンパンジーは他者理解がないわけではないが、あまりうまくない。
ボノボはそれを上回っている。
その根底あるものは共感の力だ。
ぼくたちは、人のあくびが伝染したりするが、ボノボにもそういうことがみられる。

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2017年9月13日 (水)

新・空気の研究82

人は忖度しながら進化してきたのではないか。
他の動物よりも圧倒的に強いのは「共感力」といわれている。
目の奥の皮質のところと、偏桃体という部位が共感に関係している。
自閉症の人は、いくつかの脳の機能の偏りがあるといわれ、
特に、この偏桃体の機能の低下がよくみられる。
しかし、生まれつき脳機能に問題があったとしても、
早期幼少期の育ち方、周囲のかかわり方で脳は発達は変わってくる。
この時期に虐待を受けたり、精神的に強いプレッシャーを与えられたりしていると、
精神病質(サイコパス)になりやすいといわれている。

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45年ほど前、精神病質の人が再犯の危険がある場合、罪を犯す前から「保安処分」にするという改正刑法草案が提示されたが、
精神病質というあいまいな概念で、自由や人権を奪うものということで廃案となった。
このときぼくは学生で、大学の新聞会で保安処分反対のメッセージなどを出した。
共感力がないということは、忖度が下手だということだ。
だから、生きるのが不器用になる。
だからといって「サイコパス」というレッテルを貼って、隔離したり、差別したり、分断したりするのは決していいことではない。

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2017年9月12日 (火)

新・空気の研究81

民族や宗教が違う結婚は、苦難が伴う。
「タレンタイム~優しい歌」というマレーシアの映画を見た。
伝説の映画とも、アジアの宝物ともいれている。
ヤスミン・アフマド監督の最高傑作。
51歳でこの作品をつくり、すぐに脳出血で亡くなった。
その後、日本各地で自主上映され、多くの人がみている。
いつまでも胸にしまっておきたい青春の熱い思い。
いくつもの名曲とともに、感動の物語が繰り広げられる。
マレーシアは、マレー系やインド系、中国系の民族や宗教の違う人たちがいる。
世界の縮図だ。
イスラム教を信仰する家庭の歌の上手な女の子が、
高校の音楽コンクール「タレンタイム」に参加することになった。
インド系ヒンドゥー教徒の青年と恋に落ちる。
つきあいはじめたとき、青年のおじが隣人に殺される。
おじには、宗教の違いが原因で、好きな人と結婚できなかった。
青年の母親はショックで食べれなくなる。
息子と女学生との宗教が違う者同士の恋に反対する。

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分断を乗り越えるにはどうしたらいいか。
民族や宗教や思い込みという壁をどう超えるか。
ぼくたちは「共感」ができる生きものだ。
しかし、その共感は仲間の結束を強め、守り合う一方で、自由を奪ったり、縛ったりする。
民族や宗教が違う者同士の恋愛や結婚は、幸せになれないのではないかと慮ってしまう。
だが、共感は同時に、民族や宗教を超えた人間同士の間にも起こる。
見えない壁を壊すのは、空気であり、共感がその空気を変えていく。

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2017年9月11日 (月)

軍備より外交

防衛省は、陸上型イージス「イージス・アショア」を配備しようとしている。
ロッキードマーチン社から2機、買おうとしているが、値段は1600億円ということだ。

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弾道ミサイルに対する対策を強化したいというのはよくわかるが、
迎撃力に限界があり、置けば置いたで周りの国との軋轢が増してくる。
軍備にお金をかけるのではなく、外交で平和な世界へと歩をすすめる努力をしなければいけない。

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2017年9月10日 (日)

臍帯血の無届移植

臍帯血のなかにある幹細胞はいろいろな細胞になる。
ぼくたちはチェルノブイリの放射能汚染地域ゴメリでかつて、末梢血幹細胞移植を指導した。
それは本人の末梢血から幹細胞を取り出して培養し、
抗がん剤で白血病細胞をたたいた後、この幹細胞を移植する治療だ。
他人の臍帯血を移植する場合は、治療計画を国に届ける必要がある。
その届け出をしないで臍帯血を使ったとして、民間バンクの業者や医師らが逮捕された。
その臍帯血は、白血病の治療ではなく、どうもアンチエイジングや、
科学的根拠のない治らないがんに対しての治療として使われたようだ。
幹細胞の移植は、GVHDという拒絶反応が出で、体に危険なことも起こりうる。
白血病や悪性リンパ腫の治療に大事に使われなくていけない臍帯血が、こんなことに使われるのは許せないことだ。

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2017年9月 9日 (土)

夢があるということ

さだまさしさんから「恵百福 たくさんのしあわせ」が送られてきた。
最新のアルバムだ。
9月6日にリリースされた。

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「詩歌唄」は面白い。
「海賊に憧れたことは無かった
ヒーローにも憧れない子どもだった」
こんなふうに始まる。
歌手になって、あこがれの無人島を買った。
「詩島」と名付けた。
なんと、この島には伊能忠敬も来たこともある。
海を汚したくないから浄化槽をつくるが、島の値段より高くついた。
その後、借金を担っていく話が歌われていく。
再び、ロビンソンクルーソーに戻る。
島で仲間たちと釣りをしたり、暖炉に火を入れたり。
このロックンロールがなかなかいいのである。

Fullsizerender

「喜びは数えない
悲しみも数えない
泣けるだけ泣けたら
それでよいと思う」
という「潮騒」もいい。
「忖度という病」について考えているとき、「詩島唄」を聞いた。
忖度という病にならないためには、自分の夢をもっているかどうか、
自分の世界観がきちんとあるかどうか、
ここが大事なような気がする。
官僚や政治家になったのは、この国をいい国にしたいという思があったはず。
弱い人のために役立つ人間になろうと思っていたはず。
権力におもねる忖度なんてしている暇はないのにな。
弱い人へのまなざしをもってほしいと思いながら聞いた。

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2017年9月 8日 (金)

Jアラート高血圧

北朝鮮による弾道ミサイルが発射され、Jアラートが発信された。
29日早朝のことである。
外来に、80歳の女性が来た。
Jアラートが鳴ってから、不安で血圧が上がり、身の置き所がないという。
北朝鮮は「イスラム国」のようなことはしないから大丈夫。
彼らはちょっと子どもじみていて、何とか対話をしてほしいと、ロケットを飛ばしているだけだ。
そんな話をして、落ち着いてもらった。
北朝鮮は、「キム王朝」が守られればいいと考えているだけだ。
こんなことで日本が大騒ぎすれば、どんどん相手の思う壺にはまってしまう。
世界は北朝鮮に圧をかけ続けたが、うまくいっていない。
経済封鎖も、抜け道が多すぎる。
今以上に厳しくできるならやってもいいが、同時にテーブルの下でコミュニケーションを取り始めるべきだ。
もっと巧妙に、面子なんて忘れて、
どんなことがあっても戦争しなければいいくらいに、大きく構える必要がある。

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アメリカが何とかしてくれるなんて思わないことだ。
かといって、世界の歴史を勉強せずにきた北朝鮮を変えられるとは思えない。
こういうときこそ、北朝鮮側ともっと話ができる人間を仕込んでおくことが大切だ。
忍者外交である。
そして、北朝鮮の若者には、日本を旅させればいい。
彼らが外国を見ることで、自分の国の姿がわかってくる。
スパイ行為もあるかもしれないが、長い目で見れば、彼らに外国を見せることが大事なのだ。
そこから「キム王朝」の瓦解が始まる。
それにしてもJアラートはひどすぎる。
ミサイルが飛んできて、「机の下に隠れろ」とでもいうのか。
もっと精度を上げ、いたずらに高齢者を不安に陥れないようにしてほしい。

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2017年9月 7日 (木)

鎌田實の一日一冊(315)

「軟骨的抵抗者 演歌の祖・添田唖蝉坊を語る」(鎌田慧、土取利行著、金曜日)
明治、大正のすごい演歌師、唖蝉坊。
自由民権運動が盛り上がるなか、
「まっくろけのけ、おや、まっくろけ」というまっくろ節だとか、
ノンキ節、げんこつ節、ラッパ節など、風刺とユーモアのきいた歌をつくっていく。

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えんかの「えん」は、演説の「演」であり、色恋の「艶」であり、怨恨の「怨」でもある。
テレビ、ラジオというマスメディアのない時代、
庶民のレジスタンスが歌だったというのはおもしろい。
そのなかで、硬骨でも、恍惚でもなく、軟骨というぐにゃぐにゃのクラゲのようなつかみどころのなさで、権力に抵抗する姿は魅力的だ。
晩年、遊行期になった彼はほとんど歌わなくなる。
「ああ、わからない、わからない。
賢い人はナンボでもある世の中に、バカ者が議員になるのがわからない」
1906年の作品だが、今聞いても笑ってしまう。

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2017年9月 6日 (水)

JBPRESS鎌田實のヌーベルバーグ

「日本人が好きな台湾人:震災で最大支援をしてくれた理由」
震災のとき、なぜ台湾は世界でもっとも多額の寄付をしてくれたのか。
高齢者が親日的なのは感じていたが、若い人たちにも話を聞くと、
「日本に行ったことがある」という答えが返ってきた。
東京や京都だけでなく、地方にディープな旅をしていた。

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台湾の要人から「日本精神」という話も聞いた。
誠実で、やり始めたらとことんやる日本人の気質のこと「リップンチェンシン」と言っている。
これは自分たち台湾人にとって、勉強になるといった。
この「日本精神」については、いろんな人が口にした。
JBPRESSの記事はこちら↓
 
日本テレビevery.「ナゼナニっ?」というコーナーでも放送された。
ぜひ、ご覧ください。

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2017年9月 5日 (火)

新・空気の研究80

第二次世界大戦に入る直前、日本の軍部が嫌ったのは、
社会主義や民主主義ではなく、自由主義だと聞いた。
自由主義というのが、わかりにくい。
自由とは、負債を負っていない、社会的に制約されていない状態をいう。
自由主義は、いろんな顔をもっている。
左翼といわれたくないために、「私はリベラル(自由主義)」という人がいる。
自由主義は、保守と思われていることも多い。
自由な競争を中心にして、小さな政府で、福祉は小さくしていこうという主義である。
でも、ぼくはこの「自由主義」を、立場にとらわれない主義ととりたい。
左でもなく、右でもなく、というのが大事なのだ。
いつもニュートラルなポジションにいて、
ときには左からものを見、ときには右からものを見る。
より自由になっていくために、一人の人間にレッテルを貼ったり、貼られたりしないようにすることが大事なのだと思う。
右とか左とかレッテルを貼られると、
「あいつは保守なので、言うことを聞いてあげよう」とか、
「所詮、左だから、全部反対しよう」とか、
表面上だけの論争になり、議論が深まらない。

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SNSなどのITで人と人がつながりやすくなったが、同じような思考形態の人たちがつながるだけで、
異なる意見の人たちと議論を深めることはない。
CNNはフェイクと思っている人たちと、CNNはまあまあ正しいと思っている人たちと、
互いに内輪で盛り上がるだけ。
埒が明かないのである。
どちらにも入らないニュートラルな人間が、
一人の人間として、自分はどう考えるか結論を出していくことが大事だと思う。
自民党に入ったら、自民党が決めた考えにならい、自分の意見を曲げるというのではなく、
一人ひとりが自分の考えを持っていることが大事なのではないか。
ぼくは、それを「自由な人間主義」と呼びたい。

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2017年9月 4日 (月)

自分で選択すること

「いつも楽しく先生のブログを読ませていただいています」という女性から手紙をもらった。
4月から諏訪中央病院に入院している。
ドクターも看護師もみな親切で、快適な入院生活という。
「先生のおっしゃる“あたたかい医療”という理念がいきわたっていることを感じました」
近いうちに緩和ケア病棟に移るかもれないとも書かれていた。
この方とお会いすることができた。
たいへん厳しい病状だった。
小さな子どもがいて、やさしい夫と全力で生きている。
がんになったのは福島第一原発が関係しているのではないか、と疑っているようだった。
遠く離れた沖縄へ行きたいとも考えていた。
科学的な根拠がないのは本人もわかっているようだ。
子どものためにも、自然豊かで、安心して暮らせるところがいい、と思い込んでしまっているのだろう。

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本人の人生、後悔が残らないように自己決定していい。
ぼくは、賛成も反対もしなかった。
結局、この方は家族とともに沖縄へ行く選択をした。
もし、この人と何度か、もう少しゆっくり話すことができたら、考え方を変えることができたかもしれない。
でも、この人にはこの人の人生がある。
納得しているのだ。
夫も賛同しているということも大事なところだ。
この3人の沖縄生活が、少しでも長くなることを祈っている。

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2017年9月 3日 (日)

森のレストラン

原村のカナディアンファームに久しぶりに行った。
ちょっと若い、疲れている医師たちと、その後、ぼくの指導医もしてくれている
山中先生と奥先生たちが合流。
ハセヤンがつくってくれた燻製や、窯で焼いたチキンを食べた。

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偶然、バザーが開かれていた。
カナディアンファームは心をほっとさせてくれる。
ドクターたちも、おいしいものをいっぱい食べて、森の空気を吸って、
元気が出てきたようだ。

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2017年9月 2日 (土)

美しい自然のなかで健康講演会

山梨県の小淵沢にあるアルソアの女神の森セントラルガーデンで、講演をした。
「しあわせライフスタイル八ヶ岳vol.1~まあるい心をはぐくむ食と健康」と題し、
ぼくの講演の後、浅田真央さんの管理栄養士の方と、アルソアのレストランのシェフが作ったランチを食べてもらった。
美しい環境のなかでの食事は、いい時間になったのではないか。

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ランチメニューは、野菜たっぷり。
長野県では、野菜たっぷりの具だくさんみそ汁などで、毎日の食事から野菜をたくさん食べる習慣を身に着け、
平均寿命日本一になった。
この日は、野菜たっぷりのコンソメスープが出た。
スーパーフードをいといわれているアマランサスも、上手に使われている。
アマランサスは、カリウムや鉄分、カルシウ

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ム、マグネシウムなど体にいいものを含んでいる。
小淵沢のある山梨県北杜市は健康寿命日本一のおしゃれな町だ。
講演をしていると、国蝶のオオムラサキが飛んできた。
この辺りでは、よく見られるという。

 

自然や食、運動、音楽を通して、定期的に健康講演会をしていきます。
次回以降の予定は、次の通り。
10月14日「鎌田先生に学ぶ健康と運動」
来年1月24日「鎌田先生に学ぶ心豊かな人生」(音楽ライブ同時開催予定)
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。

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2017年9月 1日 (金)

講演会のお知らせ

 中央法規出版 創立70周年記念 × 新刊『「わがまま」のつながり方出版記念』

たいとう3丁目ゼミナール
「しあわせな介護のつくりかた」
~地域包括ケアは、わがままをつなぐネットワーク~

■ 日 時 : 2017年9月21日(木)18:00 ~ 19:00 (17:00受付開始)
■ 会 場 : 中央法規出版(株)入場無料(定員100名)

サイン会も行います。

定員になり次第締め切りますので、ぜひお早めにお申込みください。

お申込み方法・詳細はこちら      

新刊:「わがまま」のつながり方
鎌田 實=著
1,620円(税込)
中央法規 刊

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