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2017年10月 3日 (火)

新・空気の研究92

高齢になると、食べても体重が減っていく人がいる。
おそらく食べても腸粘膜の細胞が老化して、吸収ができなくなっている。
同時に、慢性炎症によって、エネルギーが消耗される。
この慢性炎症は、ウイルスや細菌による炎症ではなく、免疫反応によるものだ。
そうやって筋肉が減って、サルコペニアとかフレイルという虚弱や衰弱になっていくのである。
当然、いろいろな細胞のアポトーシス(自死)も起こって来る。
このときに無理に胃ろうなどの経管栄養で高カロリーの栄養分を補給しても、なかなか栄養を吸収できない。

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20年ほど前、老人保健施設やすらぎの丘の施設長をしていたころ、
食欲がまったくなくなってしまった高齢者に、アイスクリームを食べてもらっていた。
スタッフが交代で、声をかけながら、アイスクリームをひとさじひとさじ食べさせていた。
そのアイスクリームだけで、2か月ほど長らえた。
諏訪中央病院の緩和ケア病棟では、末期の患者さんにかき氷が好評だ。
病棟にはかき氷削り器が置いてあって、これだけを食べる患者さんがいる。
さっぱりしておいしい、と本当に幸せそうな顔をする。
いま、こういう手法にスポットライトが当たっている。
「スロー・ハンド・フーディング」と名前がついているらしい。
このスロー・ハンド・フーディングには栄養という意味だけでなく、
ひとさじひとさじを介した、心の交流という意味も大きい。
特に、終末期には大事な意味をもつ。
自分の死、家族の死を後悔しないためには、
1、科学的な事実から目をそらさないこと
2、その人が幸せと思っているかどうか、その人の身になって考えみること
3、元気なうちから本人が人生の終い方の意思を残しておくこと
これを大事にしながら、決して見捨てないことだ。
ぼくたちには、愛と知恵と魂がある。
それらを総動員すればいろんなことができる。
スロー・ハンド・フーディングは、すてきな愛の技術だと思う。

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