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2017年10月

2017年10月31日 (火)

韓国との関係

韓国との関係が、慰安婦像などで相変わらずギスギスしている。
そのわりには、韓国からたくさんの観光客がやってきている。
日本では、一時、韓流ドラマがヒットしたが、今は冷ややかな関係になりだしている。
やってられないなという大方の空気がある。
徹底的にバッシングするヘイトスビーチの人たちもいる。
でも、東アジアでいちばん大事な問題は、北朝鮮と中国の問題である。
もっと大局的に考えて、韓国と信頼関係が大事。
韓国はそう考えているのではないだろうか。
だから、日本への観光客も多い。

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電通と国際交流基金の調査では、韓国には日本語を学ぶ成人が450~650万人いるらしい。
韓国の高校では35万人が日本語を学んでいる。
高校生の2割が学んでいるということだ。
反日は表向きで、心の底では日本と仲良くしたい、日本に行きたい、日本語を学びたいと思っているのではないか。
そのわりには日本では韓国語を学ぶ人は少ない。
ぼくたちも空気に騙されず、政治とは違うところで
韓国の映画を見たり、音楽を聴いたり、韓国を旅行したり、
異文化を知ろうと思い続けることが大事だと思う。

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2017年10月30日 (月)

最大6億円の値引き

森友学園の国有地の格安売却について、会計検査院は値引きは最大6億円と試算した。
これにともなって、大阪地検特捜部は刑事罰に問えるか別問題と、慎重な姿勢を示した。
忖度が働いているんだろうな、と思う。

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告発している側は、森友学園が国有地で開校予定だった小学校は、首相夫人が名誉校長をしていたため、
首相への忖度で、不当な値引きをしたと主張しているようだ。
たしかにこれを犯罪として立件できるかは難しいとは思うが、
簡単に6億も国民の財産を値引きしていることに、おとがめなしとは納得がいかない。

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2017年10月29日 (日)

手のひら返し?

選挙中はリップサービスをしていた政権が、選挙が終わると途端に厳しい方針を出してくる。
2018年年度予算編成で、医療機関に支払われる診療報酬について、
2%台半ば以上の引き下げを求める方針を出してきた。
調剤報酬も大幅な引き下げをするという。
19年度以降、75歳以上の医療費の窓口負担を段階的に1割から2割にする。

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先日、電車のなかで偶然、長野県医師会の幹部の方と会ったが、
高齢者も大変になると、この先のことを心配していた。
病院も診療所も診療報酬を2.5%もダウンされると、
トントンでやってきたところが、赤字経営になりかねない。
北朝鮮のミサイルに対して大騒ぎし、
イージス・アショアなどほとんど役に立たないようなものにべら棒なお金を出す。
軍事費を大幅にアップする半面、
医療や介護が削られていく。

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2017年10月28日 (土)

無農薬野菜

小淵沢にあるアルソアの畑では、無農薬の野菜がつくられています。
ニンジン、かぶの収穫を体験しました。
ニンジンの甘さには驚き!
柔らかくて、甘いんです。

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アルソアには大学院を卒業した研究熱心の若者が、無農薬の野菜をつくっています。
おもしろい企業です。
収穫した無農薬野菜は、アルソアの「奏樹カフェ&ダイニング」で出されたり、
アルソアが最も力を入れている酵素の材料にしているということです。

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2017年10月27日 (金)

新しい聴診器

聴診器を買いました。
今まではリットマンとサッカレーの聴診器を使っていたのですが、
もう何10年も使っていたため、サッカレーは頭の部分が壊れてしまいました。
リットマンも、聴こえが悪くなってきたので、新しいものに替えました。

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もう一度、聴診器を買うなんて思わなかったのですが、
新しいものを持つと、不思議に心がシャキッとします。
外来も、緩和ケアの回診も、往診も、
新しい聴診器を首にかけて、さらに気合いが入りました。

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2017年10月26日 (木)

お知らせ

「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」は感動的な映画。
ナチスに支配された町で、
時代の空気に流されずに、
権力にも流されずに、
勇気を持ち続けた一人の女性がいた。
女優のジェシカ・ジャスティンがとても魅力的だ。

鎌田實のコメントが、パンフレットや新聞広告に使われています。
ぜひ、映画をご覧ください。

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2017年10月25日 (水)

みんなでスクワット

愛媛県の市立宇和島病院の病院祭で講演した。
このところ、ぼくは講演で、ヒンドゥースクワットをみんなと一緒にやっている。
これで太もも美人になろう、太ももの筋肉からマイオカインを出そう、と呼びかけている。
マイオカインには、血圧や血糖値を下げ、がんや認知症、うつのリスクも少し減らす可能性がある。

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ぼくは、このスクワットをやって、レッグプレスを110キロ押せるようになった。
足の骨塩定量は、若い人の30%で、とても骨が強いこともわかった。
スキーをするために、必死にスクワットとウォーキングをし、運動後は30分以内のゴールデンタイムにプロテインをとるようにしている。
腕回りも、胸幅も大きくなり、ウエストは細くなった。
スクワット効果絶大です。

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2017年10月24日 (火)

「働き方」がおもしろい

『人間の値打ち』(集英社新書)に働き方のことを書いた。
サイボウズというIT企業では、介護休暇が3年間とれる。
在宅勤務でも、出勤でも自由。
もっと過激なパプアニューギニア海産のことも書いた。
この会社は、最近、テレビでも取り上げられたリしている。
ぼくがこの会社を知ったのは1年ほど前。
「日曜はがんばらない」(文化放送)に、工場長の武藤さんにゲスト出演していただいた。
ここでは、突然、欠勤することも自由、事前にことわらなくてもいい。
小さい子を育てている母親などは、子どもが熱を出して出勤できないということもある。
そんな母親は気が楽になって、働きやすくなった。
嫌いな仕事はしなくてもいい。
どんな仕事をしたいか、みんなに希望を聞くと、大体好きな仕事が分かれ、人が偏ることはない。
好きな仕事だと能率が上がる。責任感も出てくる。

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武藤さんからメールが来た。
11/5、柏の葉蔦屋書店「柏の葉ラウンジ」で、
未来食堂の小林せかいさんと対談するという。
「まかない」とか、「ただめし」とか斬新なアイデアで注目されている小林さんと、武藤さんとの対談。
とてもおもしろそうだ。
『人間の値打ち』で紹介した人に、スポットライトが当たるのはうれしいことである。

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2017年10月23日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(356)

「リュミエール!」
映画の父・リュミエール兄弟。
写真をどうにかして動かすことを思いついた。
1本50秒の作品を1422本撮った。
そのなかから、珠玉の108本をまとめた。
映画の始まりがわかる。
多くは固定ショットで撮っている。
たまに電車に乗って、動いている町を撮ったりしているが、それなりにすごい。

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圧倒的なのは蒸気機関車が駅に入って来るところを、斜めから撮っている。
その構図のすばらしさ。
もちろん、チャップリンはまだ出てこないのだが、
いずれ出でくるだろうなと思わせるような、ちょっと笑わせるシーンがたくさん。
ここからたくさんの人たちが刺激を受け、映画人となって自分の映画をつくっていった。
そんなことがわかる映画だ。

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2017年10月22日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(355)

「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」
ノーベル文学賞を受賞したチリの詩人、パブロ・ネルーダ。
ぼくの大好きな詩人である。
チリ政権がファシストになり、それに対抗するために共産党的発言をしたことで逮捕されそうになる。
逃亡しながら、戦争や平和について考え、南アメリカの不条理、怒り、絶望を感じ、
「大いなる歌」という最高傑作をつくる。

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映画のなかでも「二〇の愛の詩と一つの絶望の歌」のフレーズが何度も出てくる。
市民たちに請われて朗読するネルーダ。
それに市民が唱和するシーンが印象的だ。
ふだん詩を読まないような労働者たちがネルーダの詩に共感する。
「夜にはおまえの心臓をおれの心臓とひとつにしておくれ
眠りのなかから暗闇を追い散らすために
ちょうど深い森のなかの二つの太鼓が
濡れた木の葉の厚い壁をやぶって轟くように」
こんなフレーズが次々に続いていく。
ネルーダの詩には力がある。
11/11ロードショー。

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2017年10月21日 (土)

鎌田實の一日一冊(316)

「僕はこうして科学者になった」(益川敏英著、文藝春秋)
電話がかかってきた。
英語で何か話した。
すぐに日本語の通訳が電話口に出た。
「ノーベル賞を一時間後に発表するのだが、受けてもらえませんか」
「私はカチンときた。
だって、賞というものはふつう数日前に内定を知らせ、受けてもらえるかどうか返事を待つもんだろう。
どうせ欲しいんでしょうという高飛車な態度に腹が立ったのだ」
ノーベル物理学賞の益川先生は、そんなふうに書いている。
いいなあと思う。
こういう人、大好き。
英語が苦手というのも、親近感をもつ。

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この益川先生と、名古屋で公開対談をした。
久しぶりに胸のすくような人物に出会った。
小中学校では宿題は一切やらなかったという。
どうしてですか、と対談で聞くと、
「遊んでいるほうが面白いじゃないか」
好きなことをやってきた結果が、ノーベル賞。
すごいなあ、と思う。
益川先生は科学が軍事や戦争に利用されてしまうことを危惧している。
ノーベルは、ダイナマイトを開発した。
大規模な土木工事が簡単にできるようになったが、同時に戦争の道具として使われるようになった。
その反省を込めてノーベル賞をつくったといわれている。
科学者が権力に巻き込まれていくとき、
技術的動員の前に、逆らえないようにする「精神的動員」があるという。
「精神的動員」という益川先生の言葉は、とても印象的だった。
とてもおもしろい本だ。

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2017年10月20日 (金)

新・空気の研究101

肥大化した内閣官房は、集団的自衛権の解釈変更や、安全保障政策、
働き方改革、女性活躍などの成長戦略など、次々に目玉をつくっていった。
女性活躍や介護離職ゼロ、待機児童ゼロなど、ほとんどがスローガンだけで終わっている。

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首相官邸に大きな権力が集中することは、力学的には仕方ないことかもしれない。
しかし、一強になって「帝国」になってはいけないのだ。
権力に対して、反対意見を述べやすいようなシステムがあることが大事。
言うべきときに、言うべきことができる人間がいること。
権力の暴走を防ぐチェック機構がないといけない。
透明性を高くし、開かれた関係をどうつくるかが問われている。

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2017年10月19日 (木)

新・空気の研究100

なぜ官邸で病的な忖度が広がったのか。
国家公務員制度改革のなかで、内閣人事局がつくられ、官僚の人事権を握ったことが大きい。
志をもって官僚になった人も、やはり大きな仕事、おもしろい仕事をするには、それなりのポジションにつきたい。
ここに共同幻想が生まれる。

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安倍さんが一強になり、自分好みの政治家を大臣に任命していくのを見ていくと、
官僚も寵愛を得て、いいポジションにつけるという思惑が働く。
そうやって、安倍一強体制を強固なものにしてしまう。
それは、忖度バカ競走を生じさせる芽となった。
そして、内閣官房を巨大化していった。

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2017年10月18日 (水)

クルド国民投票の波紋

イラクのクルド自治政府が行った独立を問う国民投票が波紋が広がっている。
イラク中央政府は、クルド自治区にあるアルビルの国際空港を閉鎖して、
運航を禁止。
油田のあるキルクークの近郊では、イラク軍と人民動員部隊というシーア派民兵が進軍。
それに対して、クルドのペシュメルガという強い部隊は6000人増強し、一触即発の緊張感が高まっている。
キルクークの油田をどちらも抑えておきたいのだろう。

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アルビルの国際空港が閉鎖されれば、比較的よかったクルドの経済は抑制され、さらにイラク全体の死活問題になりかねない。
クルドにとって独立は悲願だが、本当はすぐに独立できるとは思っていないように思う。
クルド側がイラク中央政府側と話し合い、何とか矛を収めなければ。
国際空港は近々再開する、とぼく勝手に予想している。

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2017年10月17日 (火)

新・空気の研究99

9/28の毎日新聞に、「政治を忖度」という見出しが載っていた。
一票の格差が最大3.08倍だった昨年の参院選を合憲とした最高裁判決に対して、
訴え側の弁護士グルーブが記者会見で、「政治に最大限配慮し、忖度した判決だ」と述べた。
今まで違憲とする判例が多かった。
それによって10人の定数を減らしながら一票の格差の是正が行われた。
しかし、最高裁が格差3倍でも合憲とするなら、これから選挙制度改革は行われにくくなっていく。

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ぼくは、もっと国会議員の数を減らすことを検討する必要があると思っている。
参議院もをやめて一院制にする、というのは、希望の党の若狭さんが言いかけたが、
小池さんの一人決めで党の中心的な政策にはならなかった。
議員数を減らすとか、一院制にすることに反対する政治屋たちに忖度して、
小池さんも自民党も、それについて言わなくなっている。
言葉では、「愚直に」とか「身を切る改革」などというが、
自らを大事にすることを、愚直にやっているようにみえる。
身を切るのは、自分の身ではなく、国民の身だ。
政治がどんどん寂しくなるような気がする。
もっと大きな志をもてないものなのかな。
            ◇
本日、新刊『人間の値打ち』(集英社新書)が発売になりました。
朝日新聞に広告が載っています。
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お金では買えない価値がある。
それが、人間なんだ。

ぜひ、お買い求めください。

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2017年10月16日 (月)

明日、新刊発売

「人間の値打ち」(鎌田實著、集英社新書)
格差社会の中で、自分には生きる価値がないと思わされている人たちが増えている。
あるいは、上司からパワハラをされ、うつ病や自殺に追い込まれる若者もいる。
そして、一部の勝ち組だけが、大きな顔をしている――。
人間は、善も悪も内に秘めている。
困難ななかにこそ問われる人間の値打ち。
服従は人間の値打ちを下げる。

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「空気に流されない生き方」「人生を楽しむ力」
「愛と死」「破壊力」「稼ぐ力」「別解力」「孤独を怖がらない力」
人間の値打ちを決める7つの知恵(=カタマリ)を提示しています。
ぜひ、お読みください。

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2017年10月15日 (日)

答えのない問

廣済堂あかつき書店から出ている小学校道徳教科書「道徳6」に、
ぼくの文章が掲載されています。
「『がんばる』はぼくの宿題」
ぼくの「がんばりましょう」という何気ない言葉が、患者さんを泣かしてしまったことがあります。
「先生、もうこれ以上がんばれません」
教科書では、「答えのない問」として、
その後、鎌田医師はどうしたのか?
人を思いやることであらためて考えたことや、気付いたことはありますか?
など、子どもたちに問いかけています。

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正解は一つではありません。
一人ひとりみんなが想像を働かせて、考えてみることが大切です。
いろんな意見があっていいのです。
ぼくたち大人だって30年ほど前は、「がんばらない」なんて許されない時代がありました。
がんばったり、がんばらなかったり。
大切なのは、あきらめないことです。

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2017年10月14日 (土)

新・空気の研究98

日本人は空気に弱い。
それは、山本七平が戦争中のいくつもの事実を通して述べていることだ。
空気をつくっていくのは、短い言葉。
そういう意味では、安倍さんはうまいと思う。
「アベノミクス」なんていっているが、実際はデフレ脱却はできていない。
民主党政権のときに経済は停滞したといっているが、
民主党時代の実質成長率は1.8%、安倍政権は1.3%。
2%のデフレはまったくできていない。

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「女性活躍改革」といったが、女性が活躍しやすい社会ができたとは思えない。
「地方創生」も、「一億総活躍」も、言葉だけが躍っているようだ。
地方が元気になるどころか、ますます厳しくなってきているし、
活躍している人としたくてもできない人の格差が大きくなっている。
「人づくり革命」も「生産革命」も耳に聞こえはいいが、どう実現していくのかが見えない。
実体のない空気や言葉だけで政治家たちが勝負しているように思えてならない。
政治家はもっとリアリストにならないといけないのではないか。

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2017年10月13日 (金)

お知らせ

「中央公論」11月号で、特集「介護施設が危ない」で、鎌田も施設について述べている。
「大金をかけてハコモノをつくる時代は終わった」
「看取りに対応するサ高住は魅力的」
「在宅と施設利用を組み合わせていけば、その人らしい人生を生ききることができる」
「地域全体が大きな屋根のない特養になる」

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施設は余りだして、施設淘汰の時代がやってきている。
もちろん足りない地域もあるが、特養ですら満床になっていない地域もあるのだ。
これからの介護はどうなるのか、ぜひ、お読みください。

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2017年10月12日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(354)

「我は神なり」
「新感染ファイナル・エクスプレス」を監督したヨン・サンホが衝撃のアニメーションをつくった。
ダム建設で水没が予定されている小さな村が舞台。
そこに教会がつくられるが、実は立ち退き料に目をつけた詐欺師集団だった。
そこへ、これ以上、狂暴な男はいないという男がその村に戻ってくる。
教会の陰謀に気づき、真実をまくしたてるがだれも信じない。
フェイクを語り続ける詐欺師集団のなかで、ピュアな牧師が手玉に取られるが、
牧師のほんとうの姿は?
間違った信仰でも、人は生きていけるように見えてくる。

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サンホ監督は、デビッド・リンチの「ツインピークス」や、日本の漫画「ヒミズ」が好きと語っているが、
わかるような気がする。
10月21日からロードショー。

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2017年10月11日 (水)

新・空気の研究97

12月ロードショーの「ヒトラーに屈しなかった国王」というノルウェーの映画を見た。
実際の話を映画化したものだ。
1940年、ナチスが進行し、降伏をせられた国王ホーコン7世は悩む。
国民を苦しめないためには、降伏したほうがいいのか。
ここでも忖度バカが出てくる。
クビスリングという親ナチ派の政治家は、政策や哲学をもっていない。
危機を上手に利用して、自分が首相になろうとする。
ノルウェーを包囲したナチスが降伏を迫っているのに、今の政権はそれを拒否して国民を危機にさらしている、というのだ。
しかし、この男は国民や国をことは考えていない。
国民や国のことを思うふりをして、自分が偉くなるためなのだ。

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結局、ナチスから攻め込まれたノルウェーは降伏。
国王や政権はイギリスで亡命政府をつくり、5年間ナチスに抵抗し続ける。
当時の国王の息子が2016年に、こんなことを言っている。
「ノルウェーとは何でしょう。
ノルウェーとは人でできてます。
私の祖父母は110年前のデンマークと英国からきた移民です。
私たちの故郷は私たちの心のなかにあり、国境で位置づけることはできません。
ノルウェー人はキリストを、アッラーを、すべてを信じます。
何も信じない人もいます。
ノルウェーとはあなたがたであり、私たちです。
ノルウェーへの最大の望みは、互いに思い合うことです。
私たちには違う面もありますが、私たちは一つです。
ノルウェーとは一つなのです」
ナチスと闘った父の血が流れている。
その孫である皇太子は、オスロ大学時代にシングルマザーのメッテ・マーリットと出会い結婚する。
彼女の元夫は麻薬の常習者であったらしい。
マスコミは非難したが、婚約発表で過去を謝罪し、その後、国民の絶大な支持を得た。
毅然としていること。
信念をもっていること。
一強に忖度してしがみつくのではなく、遠回りしても、たくさんの人の幸せを考えること。
いま、ノルウェーは幸福度ランキング世界一である。

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2017年10月10日 (火)

新・空気の研究96

45年ほど前に読んだ吉本隆明の「共同幻想論」をもう一度紐解いてみた。
自己幻想と対幻想と共同幻想を語っている。
人間は一人では生きていけない弱い存在。
コミュティーができ、そこに共同幻想が生まれる。
ある領域を超えると、神隠しにあってしまったりする。
一人ひとりは自分に対する自己幻想をもっている。
自分とは何か、実際はなかなかわからないが、自己幻想をもっている。
その一人ひとりの自己幻想が重なりあったものが、共同幻想である。
カケモリ問題の官僚たちの忖度バカは、自己幻想と共同幻想がからまりあったものと考えるとわかりやすい。
「自分のために」という思いが「国家のために」という思いにつながっていく。

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緩和ケア病棟に、90代の元特攻がいる。
死ぬのは怖くなったかと聞くと、「家族のことを考えると逃げれなかった」と言った。
共同幻想のなかで、ときに喜んで、ときには仕方なく逃げられず、
死を覚悟することもできるのだろう。
国家という共同幻想は、病的な忖度を生み出しやすい幻想空間なのだと思う。

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2017年10月 9日 (月)

日経電子版「リーダーの母校」

日本経済新聞電子版「リーダーの母校」

ぼくの出身校、東京都立西高時代を思い出しながら、語りました。
今日と来週月曜日、二回配信です。
西高はちょうど今年で80周年を迎えます。
11月22日(水)より なかのZERO大ホール  にて
80周年の記念講演会を頼まれています。
高校や大学に講演で呼ばれることが多くなりました。
少しでも、
若い人達の役に立つことはうれしいことです。

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2017年10月 8日 (日)

新・空気の研究95

「ユダヤ人を救った動物園」という12月にロードショーされる映画のコメントを求められ、試写を見た。
第二次世界大戦の最中、ナチスがポーランドのワルシャワに侵攻する。
ソ連とドイツの駆け引きのなか自らの存立が危ぶまれるワルシャワ。
ワルシャワ蜂起などの抵抗も起こる。
そんななか、動物園を経営する夫婦が、キリスト教徒でありながら、ゲットーから絶滅収容所に移送されるユダヤ人たちを助けようと努力する。
妻のアントニーナがすごい。
動物と話し合い、お産にも立ち会って、象を助ける。
水一杯でも、ユダヤ人にあげるのは危険だという夫の言葉がある。
そういう時代の空気に支配されず、
妻は、必死にユダヤ人たちを助ける。
映画では、かくまっているユダヤ人たちがアントニーナの服を貸してもらって着ている。
彼女は動物園で、300人のユダヤ人を助けた。

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ワルシャワはナチスが支配して、その後、ソ連が支配しようとする。
そのなかで、女性は余計なことをしなくていい、家で家事をやっていればいいとされるが、
彼女は、権力や偏見に支配されなかった。
ユダヤ人やローマ人、障害者は生きる権利がないというナチスの身勝手な思想に対して、
支配されない生き方を見せつけてくれる映画だ。
権力に支配されていないか、
時代の空気に支配されていないか、
偏見や思い込みに支配されていないか。
この映画をみながら、自分に問い続けた。

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2017年10月 7日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(353)

「笑う故郷」
アルゼンチンの映画。
ベネチア国際映画祭の主演男優賞、アルゼンチンアカデミー賞などを受賞。
スペイン在住のノーベル賞受賞作家が、40年ぶりに故郷アルゼンチンに戻る。
架空の町サラスで、繰り広げられるほろ苦い人間関係。
この作家は、サラスを舞台に小説を書き続けてきた。
書いている側は文学だと思っているが、書かれている側は複雑だ。
ときには誇りに思い、ときには傷つけられたリする。
「百年の孤独」を書いたガルシア・マルケスを髣髴させるが、
マルケスはヨーロッパには移住していない。
チリにはぼくの大好きなパブロ・ネルーダという、ノーベル文学賞を受賞した詩人がいる。
アルゼンチンでノーベル文学賞をとった人はいないので、架空の話である。

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ぼくは信州に移り住んで、信州のことも書いてきた。
エッセイという手法で、人間の物語を書いてきたつもりだ。
生きるということは、物語と現実のズレや歪みのなかで七転八倒することなのだろう。

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2017年10月 6日 (金)

生島ヒロシさんと筋トレ談義

羽田空港に1時間半ばかり早く着いたので、
空港内の伊勢丹で帽子を買っていた。
このとき、「鎌田先生」と声をかけられた。
生島ヒロシさんだった。
生島さんにはTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」に時々出演させていだくなど、お世話になっている。
奥さんはぼくのファンだと言ってくれた。

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喫茶店に入り、二人でゆっくりと話した。
彼がライザップで15キロ近く痩せたときの話。
再び体重が増加傾向のため、ジムに通いだしたという。
ぼくも専属トレーナーについて、ベンチプレスやレッグプレスをしている話をした。
生島さんは、食事もかなり注意しているようだ。
鎌田はタンパク質を多めにとるようにして、足りない分は低脂肪牛乳か、豆乳にプロテインを溶かして飲んでいる。
肉は、馬の冷しゃぶしゃぶ、鶏のささみ、胸肉など。
糖質を以前の半分くらいの量にして、脂質はできるだけ注意して減らすようにしている。
オメガ3の油は例外的にとっている。
生島さんの15キロには及ばないが、時間をかけて6キロは痩せてきた。
リバウンドしないようにしている。

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レッグプレスが120キロ押せるようになり、太ももが一回り太くなった。
ふくらはぎの筋肉も一回り大きくなった。
胸幅も、骨折して落ちた肩の筋肉も復活しだしてきた。
我慢する痩せ方と違い、筋肉をつけながら痩せると、わりあい長続きする、と意見が一致した。
また10月末ごろ、生島さんの番組に呼ばれたらいいなと思っている。

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2017年10月 5日 (木)

新・空気の研究94

ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体 ナショナリズムの起源流行』(書籍工房早山)によると、
国民とは、想像のなかにのみ実在しているもの、心のなかで想像されたものであるという。

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ホモ・サピエンスは他者を意識し、想像し、忖度する存在だ。
だからこそ、社会ができ、国家ができ、国民ができていく。
「想像としての共同体」のなかで、ときには「一億特攻」などというとんでもない発想が生まれる。
だから、ぼくたちはいつも注意していないといけない。

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2017年10月 4日 (水)

新・空気の研究93

世界中に不寛容の空気が広がっている。
考え方、宗教、肌の色・・・など、自分とは違うものがあるとそれを認めることができず、
バッシングが始まる。
特にインターネットの世界では顕著。
そんな大人たちの姿を見ている子どもたちも、不寛容になりはじめた。
原発事故で福島から自主避難してきた中学一年生がいじめられ、学校側にも相手にされず、
「ばい菌扱いがつらい」という手記を書いている。
そもそも「自主避難者」という言葉はどうなのだろう。
まるで自分勝手に避難したような印象を与える。
しかし、本当にそうだろうか。
原発事故で放射能が飛び散ったのは事実で、逃げるしかなかったのではないか。

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チェルノブイリの放射線汚染地域のルールはわかりやすい。
年間20ミリシーベルト以上は居住できない地域とした。
「埋葬の村」ともいわれるようになった。
年間5~20ミリシーベルトは強制移住地域に指定された。
土地と家が与えられる。
しかし、残ることを選択した場合には、健康診断や子どもを年二回保養に出す、食べ物の放射線測定など、
生活支援があった。
年間1~5ミリシーベルトは移住の選択権付与地域とされた。
福島ではこのレベルの地域がかなり多く、この地域の人は「自主避難」となる。
チェルノブイリでは移住の選択権が与えられ、移住したい人には土地と住宅が付与された。
年間0.5~1ミリシーベルトは放射線管理地域とし、検診や食べ物の放射線測定などは強制化した。
移住権はない。
「自主避難者」は、自分勝手に避難したのではなく、逃げるしかなかったから避難したのだ。
ベラルーシという貧しい国でできたことが、日本の「自主避難者」にはできていない。
「自主避難者」というレッテルを貼って、差別や分断を生んだ。
国が年間1ミリシーベル以上の地域の人たちに移住権を与えた上で選択できるようにしていれば、
辞職したある大臣のように自主避難者を「勝手な人」と言わなかったと思う。
自分たちで勝手なルールをつくって、自主避難者を悪者にしていく。
そういう社会をみて、子どもたちは自主避難してきた友だちを、ばい菌扱いするのだ。
もっと大きくて、寛容な政治が行われていれば、福島のこれほどの分断は起こらなかったと思う。
出て行った人も残った人もみんな被害者という大前提に立ち返るべきだ。

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2017年10月 3日 (火)

新・空気の研究92

高齢になると、食べても体重が減っていく人がいる。
おそらく食べても腸粘膜の細胞が老化して、吸収ができなくなっている。
同時に、慢性炎症によって、エネルギーが消耗される。
この慢性炎症は、ウイルスや細菌による炎症ではなく、免疫反応によるものだ。
そうやって筋肉が減って、サルコペニアとかフレイルという虚弱や衰弱になっていくのである。
当然、いろいろな細胞のアポトーシス(自死)も起こって来る。
このときに無理に胃ろうなどの経管栄養で高カロリーの栄養分を補給しても、なかなか栄養を吸収できない。

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20年ほど前、老人保健施設やすらぎの丘の施設長をしていたころ、
食欲がまったくなくなってしまった高齢者に、アイスクリームを食べてもらっていた。
スタッフが交代で、声をかけながら、アイスクリームをひとさじひとさじ食べさせていた。
そのアイスクリームだけで、2か月ほど長らえた。
諏訪中央病院の緩和ケア病棟では、末期の患者さんにかき氷が好評だ。
病棟にはかき氷削り器が置いてあって、これだけを食べる患者さんがいる。
さっぱりしておいしい、と本当に幸せそうな顔をする。
いま、こういう手法にスポットライトが当たっている。
「スロー・ハンド・フーディング」と名前がついているらしい。
このスロー・ハンド・フーディングには栄養という意味だけでなく、
ひとさじひとさじを介した、心の交流という意味も大きい。
特に、終末期には大事な意味をもつ。
自分の死、家族の死を後悔しないためには、
1、科学的な事実から目をそらさないこと
2、その人が幸せと思っているかどうか、その人の身になって考えみること
3、元気なうちから本人が人生の終い方の意思を残しておくこと
これを大事にしながら、決して見捨てないことだ。
ぼくたちには、愛と知恵と魂がある。
それらを総動員すればいろんなことができる。
スロー・ハンド・フーディングは、すてきな愛の技術だと思う。

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豪雨の爪痕

九州豪雨で被害を受けた福岡県の朝倉市。
水害にあって2か月半経つが、土砂の恐ろしさがまざまざと残っている。
家の中に入った土砂を、取っても取っても取り切れない、と奮闘する人も多い。

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地元のお菓子と、そば・うどん店を営むあさくら堂は、流木の被害に遭った。
お菓子を作る機械が壊れてしまい、有名な富有柿を使った和菓子は作れなくなった。
それでも、そば・うどんのお店は10月17日からオープンするということだ。
被災者たちの仮設住宅ができていた。
プレハブではなく、木のぬくもりがあり、とてもいい感じだった。
ただ、入居している人にきくと、風通しがよくないためか、「暑くて困る」と言う。

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来年3月3日に、市民の体と心を元気づける講演会をボランティアですることが決まった。
さだまさしさんもスケジュールが調整できれば、「風に立つライオン基金」で行こうかという話をしている。
少しでも役立てばと思い、個人的にはふるさと納税で、朝倉市に寄付した。
ふるさと納税にはいろいろな批判があるが、被災地への支援にはいいと思う。

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2017年10月 1日 (日)

益城町を訪ねて

熊本県益城町へ行ってきた。
今回で3回目だ。
内村さんご夫妻は、以前、避難所にいたときお会いした。
このご夫婦はとてもあたたかい。
避難所では、野菜や豆腐を買って届けていた。
いまご夫婦は仮設住宅にいるが、そこでも、
アルバイトに行き、そのお金で、仮設住宅にいる一人暮らしの人たちに、おかずを作って届けている。

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笠井さんは、昨年夏訪ねたときには、米の収穫をとても心配していた。
地震と大雨で川の護岸が決壊し、田んぼに泥水が流れ込む被害にあった。
今年、訪ねると、米の出来は良いという。
田んぼの力が回復しつつあるようだ。

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83歳の集路(しゅうじ)さんは、家が全壊したので、妻と二人で家を新築している。

壊れたら作り直せる人は作り直せばいい。年齢なんか関係ない。作っておけば、だれかがうまく利用してくれる。そんな、大きな心をもった楽しい人だ。

新築祝いには、一升瓶を持って訪ねようと思っている。

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益城町では、復興支援の講演をした。
熊本の郷土料理だご汁もいただいた。
「だご」とは、小麦粉を平らなだんご状にしたもの。
野菜や肉が入り、ぱぱっと食べられる。
とてもおいしかった。

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