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2017年12月

2017年12月31日 (日)

いい言葉はいい人生をつくる

今年もたくさんの連載を抱えながら、本を書きまくった。
『遊行を生きる』(清流出版)
書きながら、遊び心の大切さに気づくことができた。
いい人生はいい言葉を生み出し、いい言葉はいい人生をつくると思い、
『カマタノコトバ』(悟空出版)という本も書いた。
『検査なんか嫌いだ』(集英社)では、検査さえしたら安心と思い込んで、自分の生活習慣を変えない人が多いなかで、
医者がこんなタイトルをつけていいのかと思いながら、検査との付き合い方について書いた。
『「わがまま」のつながり方』(中央法規出版)は地域包括ケアを実践してきた経験から、本当の意味のあるべき地域包括ケアについてまとめた。

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そして、その後は、怒りの二部作。
『人間の値打ち』(集英社新書)は、お金では買えない人間の価値とは何か、考え直してみた。
日本に蔓延する病気の正体を解明しようと『忖度バカ』(小学館新書)という本も書いた。
「忖度」というキーワードで、停滞した現代の病態を鎌田流に読み解こうとした本である。
一部の政治家や官僚を批判するだけでなく、自分自身も忖度バカに陥らないためにどうしたらいいのか考えた。
来年も出版の要請がたくさんあるが、もう少しゆっくりとしたペースでやっていこうと考えている。
                  ◇
今年一年、「八ヶ岳山麓日記」をお読みいただき、ありがとうございました。
皆様、よいお年をお迎えください。

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2017年12月30日 (土)

心揺さぶられるもの

「十代への君へ」(仮題)という本を頼まれている。
単館ものの映画を応援してきたが、若者の気持ちを知りたいと思い、
ふだんあまり見ないハリウッド映画の「最後のジェダイ」や「オリエント急行殺人事件」を映画館をみている。
音や振動、映画そのものが進化していることがよくわかった。
ジャズライブで坂田明さんやマルタのライブに行ったりしていたのに、
Xジャパンのライプにも行った。
どれもこれもうまくできており、手玉にとられるように感動してしまう。
NHKの「アナザーストーリー」という番組で、手塚治虫の「ブラック・ジャック」についてコメントした。
「オレンジ」(高野苺)や「四月は君の嘘」(新川直司)など、今のマンガも読もうと思い、
読み始めたらどちらもすばらしかった。

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どんなジャンルもいいものはいい。
映画も、ライブも、マンガも、心揺さぶられる。
あまり難しいことを考えず、心を揺さぶられていようと思っている。
その揺さぶられた心がどんなふうに動きだすのか、これからが楽しみだ。

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2017年12月29日 (金)

バカ美味ぎょうざ

ぼくが応援団長をしている宮城県の障害者施設「虹の園」は、障害者の雇用拡大に取り組んでいる。
グループでは、お団子やピザ、パンなどのほか、バカ美味(うま)ぎょうざもを作って販売している。
どれもおいしく、評判がいい。
障害のある人たちが一生懸命働く姿も、とても気持ちがいい。

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ここでは毎年、味わいのある手すきの紙に、鎌田の筆文字を印刷したカレンダーも販売。
少し先になるが、角田市にある虹の園で、2018年12月にボランティアで講演することも決まっている。
おいしいものがたくさんあるので、ぜひ、各店舗を訪ねてもらいたい。
バカ美味ぎょうざについてはこちら↓

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2017年12月28日 (木)

アハメド君のメッセージ

イスラエルとパレスチナの間で、、憎しみを超えた心臓移植が行われた。
イスラエル兵に撃ち殺されたパレスチナの12歳の少年アハメド君。
父親は、その心臓の提供に承諾した。
アハメド君の心臓は、イスラエルの重い心筋症の少女サマハさんに移植された。
ぼくは、その物語を「アハメドくんのいのちのリレー」(集英社)という本にかいた。
2011年のことだ。

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写真の左端にいるのが、心臓を提供した少年の父親。
その心臓を移植した当時12歳の少女サマハさんは、ぼくがプレゼントした浴衣を着ている。
隣にいる妹は、同じ心筋症を患っており、この少女は亡くなった。
国連パレスチナ難民救済事業機関(URNWA)の清田さんに協力をいただき、「アハメドくんのいのちのリレー」の印税で、ユダヤ人が読めるようにヘブライ語版、パレスチナ人が読めるようにアラビア語版、そして英語版を作った。
ぼくは、この3種類の本をもって、パレスチナ西岸やガザ、イスラエルを訪ね、無料で配りながら、読書会をした。
パレスチナの平和のきっかけにしてほしい、と思ったからである。

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多くの地域では「これはいい本だ、これがパレスチナとイスラエルを平和にする」と称賛されたが、ベツレヘムの若者たちは激しい怒りを表した。
「イスラエルは、パレスチナ人の居住地を奪っただけでなく、
毎年毎年、侵略し、周囲を高い塀で囲って、いい暮らしをしている。
一方、自分たちパレスチナ人は仕事もなく厳しい生活が続いている。
これが平等にならないかぎり、パレスチナに平和はやってこない」と述べていた。
トランプがエルサレムを首都に認定すると言い出したことで、
パレスチナでは激しいデモが続いている。
キリスト誕生の地とされるベツレヘムでも、デモが行われていると聞き、
読書会で怒りを表した若者のことを思い出した。

もともと9割近い西側のエルサレムは、ほとんどイスラエルがコントロールしていたが、東エルサレムはパレスチナ人たちが市場をつくり、生活していた。
そこも一気にイスラエル化していこうと考えているようだ。
激しい暴動が起こらなければいいと思っている。
穏やかな形で、少しずつ平和をすすめていく必要がある。
今こそ「アハメドくんのいのちのリレー」を読んでもらい、アハメド君のメッセージを受け取ってもらいたいと思う。

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2017年12月27日 (水)

「光は人を幸福にする」

イラクからクリスマスカードが届いた。
チェルノブイリ連帯基金(JCF)にご寄付をいただいた方々に、
子どもたちに描いてもらったものだ。
アラビア語で書かれているのは「光は人を幸福にする」という意味。
もう一つは「「イスラム国」の死」と書かれている。
「イスラム国」が大暴れし、イラクは瀕死の状態になった。
避難民となり、病気の治療ができなくなった子どもたちも多い。
そんな子どもたちにとって「イスラム国」は憎い相手なのだ。
「イスラム国」は黒旗を使っていたが、モスルから撤退後、
今度は、白旗団というテログループが動き出しているというニュースも聞く。
まだまだ混乱は続いている。

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1月中旬、イラクのアルビルに行く予定。
治安のいいアルビルに入り、JIM-NETがずっと支援を続けてきた4つの小児病院のドクターたちと連絡をとり、今後の支援について話し合うつもりだ。
難民キャンプで健康づくりをしたり、新しいプライマリヘルスケア診療所をつくる準備もしてこようと思う。
本当は、モスルの病院の支援を検討するため、モスルにも行きたいのだが、
今の状態ではモスルに入るのは難しいようだ。
そもそもアルビルの国際空港が開かれるかどうかも、不明である。
空港が開かれない場合は、バグダッドを経由して国内線でアルビルに行かざるを得なくなるかもしれない。
バグダッドでは、イラクの保健省の大臣に会いたいと考えているが、
バグダッドの市内を通ること自体も危険という情報もある。
何とか、アルビルまで飛行機が飛ぶことを願っている。

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2017年12月26日 (火)

入試問題

受験シーズン到来。
毎年、高校や大学の入学試験に、ぼくの文章が使われる。

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今年もさっそく、新潟大学歯学部口腔生命福祉学科の試験で
「それでもやっぱり がんばらない」(集英社)の文章が使われたようだ。
ぼくの文章はわかりやすいので、入試問題になりやすい。

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2017年12月25日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(368)

「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」
ボスの作品があるスペイン・マドリードにあるプラド美術館で撮影された。
「超現実主義宣言」を書いたアンドレ・ブルトンは、「ボスは幻想的だ」と述べている。
ぼくが大好きなノーベル文学賞受賞作家のオルハン・パムクは
「百科事典のような絵画であり、とんでもなく詩的でもある」と言う。

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幻想的、詩的というのが、ボスの真骨頂。
ユニーク、唯一無二といっていいだろう。
幻想的な絵のなかにも、スペインの下町の市場の光景を切り出していたりする。
人間がつくられた「はじまりの世界」と「この世」を描き、やがてそれは「あの世」へとながっていく。
そんなボスの世界観が広がっている。
とんでもなくいろんなことを考えさせてくれる。
今年、没後500年のボス。
たくさんの芸術家がボスの絵を解析するが、どこまでいっても、なぜこんな絵が描かれたのかわからない。
謎の画家の世界観に迫るドキュメンタリー映画。

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2017年12月24日 (日)

ハッピー・チョコレート!

今年も16万個用意したチョコ募金。
現在のところ6万2000個のご注文をいただきました。
ありがとうございます。
今年のキャッチフレーズは、
「みんなが、あなたがハッピーになれるチョコ」。
絵を描いたのは、10歳で卵巣がんになったスースです。
手術後、再発しましたが、現在は完治に近い状態になりました。
イラストの子どもたちは、マスクをしています。
ぼくたちはイラクで医療支援をしてきましたが、医薬品を送るだけでなく、
マスクや手洗い励行といった感染症対策のノウハウも指導してきました。
その結果、子どもたちの救命率は高くなりました。

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チョコレートは六花亭製。
ホワイトとモカ、ミルクの3種類のハート型のチョコレートが入っています。
1セット4缶で2200円(送料別)。
利益は、イラクと福島の子どもたちのために使います。
ほんの少し、あなたの幸せをおすそわけください。
メリー・クリスマス!
HAPPY チョコレート!!
チョコ募金の申し込みは
電話03-6908-8473(平日10~16時)
メールフォームはこちら↓

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2017年12月23日 (土)

鎌田式スクワット

ぼくはカレーやとんかつをよく食べるが、
7㎏やせて、ウエスト9㎝、ヒップ3㎝小さくなった。
スーツも直してもらって着ている。
鎌田の健康法は我慢をしない。
食べたいものを食べて、筋肉をつくる。
代謝率の高い体にすることで、食べても太りにくい体づくりに成功した。

Img_8360 甲斐大泉にあるアフガンのベーコンエッグカレー

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基本は、スクワットとウォーキング。
講演のときにもできるだけ会場で立ち上がって、鎌田式スクワットを覚えてもらっている。
2000人の会場でやると壮観だ。
一度、こういう時間を設けると、会場全体があたたかくなり、
話にもより集中してもらえる。
生き方や生活習慣の行動変容も起こりやすくなるように思う。

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2017年12月22日 (金)

紙芝居「アリとキリギリス」

日本に残る紙芝居文化。
外国へも広がっているという。
紙芝居をみんなで見るという文化は、子どもの脳の発達や集中力、協調性などを育てるのに一役買っていると思う。

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童心社は毎月、2本の新作紙芝居を作っている。
2018年11月には「カマタ先生のアリとキリギリス」という作品を出す予定だ。
アリとキリギリスは、お互い違うけれど、理解し合う心をもとう、というお話。
意地悪せず、しがみついたり、親切の押し売りもしない。
アリもキリギリスも、毅然として、自分の人生を歩んでいくことのすばらしさをお話にしていく。
鎌田初の紙芝居になる。
絵は、なんとえはすすぎこうじさん。
すずきさんが絵を描いてくれるだけでうれしい。
すでに一枚、出来上がっているが、迫力満点ですばらしい出来だ。
「アリとキリギリス」の話はみんなが知っているが、
まったく違うカマタ版が子どもたちに広がったらいいなと思っている。

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2017年12月21日 (木)

医師の不満

アメリカでは50人に1人の医師が「2年以内に医師を辞めたい」と、アンケートに答えている。
電子カルテに伴う作業への不満、保険会社に治療方針まで決められる不満、訴訟問題などで、燃え尽き症候群も多くなっている。
ワーク・ライフ・バランスも保てない不満もあり、もはや医師のプライドだけでは支えきれなくなっている。

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日本でも、来年4月の医療費改定はマイナス改定になるという。
今まで以上に赤字病院が多くなっていくだろう。
医療をしながら、そろばんをはじかなければならないプレッシャーが強くなり、
医療そのもののおもしろみがなくなっていく可能性がある。
政府は、こうした重大な危機に気づいているのだろうか。

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2017年12月20日 (水)

お知らせ

明日12月21日午前4時20分からNHK総合「視点・論点」に、鎌田實が出演。
「シリーズ・次世代への遺産 日野原重明」と題し、
日野原先生の思い出を語ります。
再放送は、同日午後1時50分から、Eテレで。
ぜひ、ご覧ください。

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鎌田實の一日一冊(320)

「進化するアートコミュニケーション」(林容子、湖山泰成共著、インライン)
アメリカのコロンビア大学大学院で、日本人初の芸術運営管理学修士(MFA)を取得した林容子さん。
芸術活動を認知症ケアの現場に持ち込んだリ、チャレンジングな活動をしている。
湖山泰成さんは全国に事業展開する湖山医療福祉グループの代表。
福祉の現場に、なぜアートが必要なのか2人によって語られていく。
ケアを受けている人も、ケアする側もアートに支えられるのだ。

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湖山グループが今のように大きなグループではなかったころ、諏訪中央病院に研修に来たことがある。
当時から諏訪中央病院は、地域との活動や庭造り、芸術作品の展示、病院コンサートなどに力を入れていた。
ヘルスケアの現場でのアートの役割は大きい。

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2017年12月19日 (火)

至福のコンサート

古澤巌とベルリン・フィルハーモニー ヴィルトゥオーゾによるコンサートが、
小淵沢の女神の森セントラルガーデンで行われた。
古澤のバイオリンと弦楽四重奏よるラブソングの数々。
なかでも「ミスター・ロンリー」がとてもすばらしかった。
色っぽくて、叙情的で、ダイナミックな音色に圧倒された。

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女神の森のホールは、舞台の向こう側に大きな窓があり、雪景色が見えるのもすばらしい。
この日、古澤巌が使ったバイオリンは黄金期のストラディバリウス。
その音を反響板を介さず、目の前で聞くことができた。
至福のコンサートだった。

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2017年12月18日 (月)

今年の鎌田の本

つくばで講演したとき、販売に来てくれた近くの本屋さんから、
自分の書店の『忖度バカ』(小学館新書)の売り場に置きたいので、とサインを頼まれた。
忖度が過剰な人も、不足している人もいる日本社会。
これを「忖度症候群」と名付けて、鎌田流に病理の解説をした。
ここがとてもおもしろいと言われ、うれしかった。

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振り返ると今年はよく本を出した。

『遊行を生きる』(清流出版)
『検査なんか嫌いだ』(集英社)
『カマタノコトバ』(悟空出版)
『「わがまま」のつながり方』(中央法規出版)
『人間の値打ち』(集英社新書)
そして『忖度バカ』(小学館新書)

内容も、医療や地域包括ケアの問題から生き方まで。
原稿を書きながら、イラクの難民キャンプにも2回行った。
とにかくよく働いた1年だった。

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2017年12月17日 (日)

鎌田實の一日一冊(319)

「生き方入門 何のために生きるのか」(致知出版)
何のために生きるのか、各界20人の先達のインタビューや対談を収録している。
作家の五木寛之さんと稲盛和夫さんの対談をはじめ、iPS細胞の山中伸弥さん、柳澤桂子さんなどの言葉を紹介。
「感動秘話」として、鎌田の「お母さんからの命のバトンタッチ」も収録されている。

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ぼくが生き方でいちばん大事にしているのは、
自分の命は自分で決めること、自分の人生は自分で決めること。
夢中になって、生きたいと常に思っている。
だれかのために生きることによって、自分の存在している意味が見えてくる。
生きるというのはむずかしいが、おもしろい。

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2017年12月16日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(367)

「憲法を武器として 恵庭事件 知られざる50年目の真実」
監督は稲塚秀孝。
仲代達矢が語りをしている。
恵庭事件とは、1962年、北海道の自衛隊演習所の近くで、酪農をしている兄弟が起こした事件。
演習の騒音のために、牛の乳量が低下し、流産が起きたり、家族も健康被害を受ける。
砲弾演習するときには事前に連絡すると約束していたにもかかわらず、
連絡なしで激しい演習が行われたため、兄弟は通信線を切断する。
恵庭裁判は、3年半、40回の公判が開かれた。
被告側は、自衛隊は憲法9条に違反と主張した。

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67年判決では「被告は無罪」としたが、自衛隊の憲法判断は回避され「肩すかし判決」と言われた。
裁判長は亡くなる前、家族にこう語っている。
「上から自衛隊の憲法判断はするな、と神の声がかかった」
上からの電話一本で、過剰な忖度が働いてしまったようだ。

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2017年12月15日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(366)

「ライオンは今夜死ぬ」
久々の諏訪敦彦監督の映画。
ジャン・ピエール・レオ―が主演。
トリュフォーの「大人は判ってくれない」でデビューし、ゴダールの作品などに出演。
ヌーベルバーグの申し子といわれたレオ―が、年をとりいい味を出している。
愛の映画だ。

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かつての恋人ジュリエットを演じるのはポーリーヌ・エチエンヌ。
美しいまちで映画づくりをする子どもたちと出会い、俳優のレオ―が子どもたちの映画に出演する。
コメントを頼まれ、ぼくはこんな感想を書いた。
「なんとすてきな映画なんだ。
生と死と恋と思い出があふれ、
美しい光のなかで子どもたちとライオンと観客が一体化する。
すごい!」

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2017年12月14日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(365)

「ジュピターズ・ムーン」
ハンガリーの映画。
人間臭いファンタジー映画だ。
カンヌ国際映画祭で審査員を務めた俳優ウィル・スミスがこの作品を推したが、
ほかの審査員を説得できなかった。
「ときに民主主義って最低だね」と発言している。
すぐれたものが必ず支持されるわけではない。
そのときのムードや流れで決まっていくことも多い。
ウィル・スミスがなぜ、それほどまでに推したのか、よくわかる。

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シリアの難民がヨーロッパを目指すが、その途中にハンガリーがある。
そこでの出来事だ。
少年は逃げ遅れ、国境の警備隊員に銃撃される。
そこから少年は、宙を飛ぶ不思議な力をもつ。
少年の名はアリアン。
Alien、エイリアンのことだ。
CGをほとんど使わず、少年をクレーンで釣り上げての撮影。
映画に出て来る人物がみんな何か問題をもっていたり、邪悪な心をもっている。
裏切りと絶望のなかで、少年と治療した医師との間に友情と信頼が芽生えていく。
この人のために、と動き出すところが実におもしろい。
来年1/27からロードショー。

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2017年12月13日 (水)

鎌田實の一日一冊(318)

「森の探偵-無人カメラがとらえた日本の自然」(宮崎学、小原真史著、亜紀書房)
信州で長く活躍する動物写真家の宮崎学は、土門拳賞をはじめいろいろな賞を総ナメにしている。
フクロウが野ネズミを捕まえて飛び立つ姿などは自然の美しさを見事にとらえている。
宮崎さんは森のなかに入りこんで、クマやイノシシ、キツネなどの写真を撮りながら、
どんな命のやりとりがあるのかを探っていく。

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彼の考案した無人カメラはどんどん進歩し、動物たちが自然なふるまいを見せてくれる。
彼は、その姿から自然の発するメッセージを読み解いていく「森の探偵」である。
一枚一枚の写真の意味を読み解いていく不思議な写真集である。

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2017年12月12日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(364)

「5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生」
実話である。
ベーチェット病で視力が5%になってしまった弱視の若者には、
5つ星ホテルで働くという夢がった。
目が見えないことを隠して、働き始めるが、
グラスを洗っても、水滴の拭き残しがある。
上司にそれをしかられ、夜中じゅうグラスを洗い直しする。
お客の姿は見えないまで、声で聞き分ける。
ハムのスライサーでケガをしてしまう。
そんな苦労を重ねるうち、少しずつ応援が入る。
夢を諦めなければ、何とかなるものだ。

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彼は、自分を失っていない。
親友をつくり、持前のやさしさが恋を成就させる。
大きな夢が実現していくのだ。
嘘から始まる素敵な人生。
とにかく楽しくなる、人生の闘い方の映画だ。
まるで「ロッキー」をみているような気がした。

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2017年12月11日 (月)

世を問う歌

小室等さんの「プロテストソング2」が発売された。
谷川俊太郎の「死んだ男の残したものは」はすばらしい詩だが、
それに日本を代表する作曲家武満徹が曲をつけた。
サックス奏者の坂田明さんのCD「ひまわり」にも、この曲が入っている。

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「希望について私は書きしるす」
「詩人の死」など、いい曲が入っている。
今の世界はこのままでいいのか、と小室等が歌で語りかけている。

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2017年12月10日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(363)

「パーティで女の子に話しかけるには」
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督。
主演はエル・ファニング。
パンク音楽が鳴り響くなか、刺激的で切ない物語が展開していく。
1977年のイギリス、違う惑星から若者たちがやってきた。
そのなかにザンという女の子がいた。
青年は恋に落ちるが、どうやって声をかけていいかわからない。
許された時間は48時間。

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騒々しく破壊的なパンクだが、時折、昔懐かしい音楽も流れ、
人間的なにおいがする。
ラストは感動的だ。

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2017年12月 9日 (土)

お知らせ

明日12/10放送の「日曜はがんばらない」」(文化放送、午前10時~)は、
今年のキーワードになり、流行語大賞をとった「忖度」という言葉を取り上げます。
鎌田は、いきすぎた「忖度」がまん延する社会を危惧し、『忖度バカ』(小学館新書)を書きました。

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見返りを期待し、相手をコントロールしようとする忖度は、
政治を麻痺させ、経済を萎縮させます。
そして、ぼくたち一人ひとりの自由も奪いかねません。
番組では、パートナーの村上信夫さんと「忖度」について、あれこれ語り合います。
サイン本のプレゼントもあります。
ぜひ、お聞きください。

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2017年12月 8日 (金)

柏崎からお礼の新米

中越沖地震のとき、諏訪中央病院の医師や看護師が支援に行った。
そのお礼にと、毎年、新潟の柏崎から「病院の患者さんたちに食べてほしい」とお米が送られてくる。
無農薬でつくられたコシヒカリはとてもあまくておいしい。

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トレーに、そのいきさつを書いたものを添えて、患者さんにお出しした。
病院中、幸せな気分。

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2017年12月 7日 (木)

チョコに込めた思い

ぼくは日本テレビ系の番組「ニュース・エブリィ」で毎週木曜、コメンテーターとして出演している。
この番組では、ぼくがイラクの難民キャンプに行くときには同行取材して、
イラクで何が起きているか、ISがどんなことをしたのか、報告してきた。
11/30の「ナゼナニっ」というコーナーで、今年のチョコ募金キックオフイベントが紹介された。
イベントでは、チョコ募金を軌道に乗せ、目のがんで15歳で亡くなったサブリーンのことも映像としてまとめ、来場者にみてもらった。
サブリーンは亡くなる前、「私は死ぬけど、私のかいた絵がチョコ募金になり、イラクのほかの病気の子どもを助けることができる。私は幸せです」と言った。
15歳の少女にとって、ほかの病気の子どもたちを救うことができることが、希望だったのだ。
そのとき、同じように闘病していたもう一人のサブリーンがいた。
通称スースだ。
彼女は、卵巣がん再発を乗り越えて完治した。
そのスースがかいた絵は、今年のチョコ募金の缶にプリントされている。
病気を克服したスースの絵は活力に満ちている。
チョコ募金には、2人のサブリーンの思いが込められている。

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病気で亡くなったサブリーンは最期、「私のことを忘れないでください」と言ったが、
その言葉を会ったこともない神野美伽さんがしっかりと引き受けた。
イベントでは、サブリーンの絵をデザインした着物と帯を披露。
神野さんの事務所では、このサブリーンの絵をTシャツにしてみんなで着ている。
このTシャツは、ご厚意で、JIM-NETから購入することができる。
ぼくが着ているのが、それだ。
ニュース・エブリィのアーカイブ映像はこちら↓
 
チョコ募金やサブリーンのTシャツについてはこちら↓
せひ、チョコ募金にご協力ください!

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2017年12月 6日 (水)

おいしさで自立をめざす「虹の園」

白石蔵王から車で30分どのところに、「虹の園」がある。
障害者の就労を支援する多機能型の施設で、社会福祉法人臥牛三敬が経営している。
ぼくは、ここの応援団をしている。
障害者の給与を3万6000円まで上げたいという湯村理事長の思いに共感した。
現在の給与は月2万8000円。
約160人が働いている。
障害年金2級で約7万5000円の支給があるが、あと3万6000円あれば、
親が亡くなった後も障害者がアパートを借りて自立できる。
生活保護を受けなくても、年金と働いたお金で、障害者がいきいきと暮らせる社会は健全だと思う。

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「虹の園」開所10周年の記念講演会に呼ばれた。
グループ内にはピザハウスのぱぴハウスや、がぎゅうベーカリー、夢工房などがある。
障害者がピザを焼いたり、注文を取ったりしている。
材料も非常にぜいたくで、その日に七里ガ浜であがった魚や貝を使っている。
味は絶品である。
パンも本格的。パン焼きの名人が応援団となり、障害者にパンの焼き方を教えている。
パンは、仙台などのバザーに出すとあっという間になくなってしまうほど人気だ。
ジャムもおいしい。
餃子もおいしい。
以前、ぼくがエゴマ油はオメガ3系の油で健康にいいと言ったら、
虹の園でエゴマを栽培するようになった。
宮城県でエゴマをたくさん作っている色麻町(しかまちょう)の農耕者にお願いして、
エゴマ油をつくったり、郡山女子大学の食物栄養学の先生に協力してもらって、
ピザやぱんの生地に練り込むことを考えているという。
おいしさで、自立を目指す「虹の園」にぜひ、注目してください。

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2017年12月 5日 (火)

鎌田實の一日一冊(317)

「その介護離職、おまちなさい」(樋口恵子著、潮新書)
100年ライフ・大介護時代を豊かに生きるための知恵とヒントをまとめた本。
仕事をしながらの介護や趣味を続けながらの介護、そんな介護を「ながら介護」という。
樋口さんはこんなふうに書いている。
「ながら介護は先に鎌田先生が提唱なさった「がんばらない介護」に通底しています。
私は「がんばらない介護」の賛同者で、毎年の集会には協賛には加わらせていただいております。
「がんばらない介護」と鎌田先生に言っていただいたおかげで、
どれだけ介護に当たる家族、特に女性たちの心がほぐれ、胸があたたかくなったことか」
光栄なことだ。

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厚労省が11月11日を「介護の日」に決めたが、樋口さんはその委員の一人だった。
日本の介護をひっぱってきた人だ。
介護保険をつくるとき、彼女のカリスマが大きな力となった。
介護離職は毎年10万人出ている。
家族に介護が必要になったからといって、すぐに介護離職しないほうがいい。
この本には、そのためのヒントが満載されている。

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2017年12月 4日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(362)

「否定と肯定」
ユダヤ人歴史学者とホロコースト否定論者の対決。
否定論者は、「ホロコーストなんてなんかったんだ」
「ホロコーストを利用して、同情をかい、パレスチナの地にイスラエルは建国された」と言い張る。
そして、その主張を思い込んでしまう人がいる。
ぼくは、ビルケナウ収容所も、アウシュビッツ収容所も見て来た。
膨大な資料が虚構ではないことを物語っている。
ガス室に送り込まれた人たちの靴が、山のように積まれている。
ホロコースト否定論者は、「この靴はだれの靴かわからない」とたぶん主張するのだろう。
パレスチナの西岸にも、ガザにも行った。
イスラエルにも行った。
イスラエルが、パレスチナにいまも侵略的なことをしているのをみてきた。
ユダヤ人の悲劇を伝える映画や本が次々とつくられるのは、ビジネスに成功したユダヤ人たちが投資しているという影の理由もあるだろう。
しかし、だからといって、歴史の事実を虚構とするのはよくない。
この映画では、真実を否定する人をどうやって論破していくか、
真実とは何か、ということを描いている。

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ホロコースト否定論者は裁判で負けるが、それでも、自分の学説が間違いであるとは認めない。
ネオナチの若者を扇動し続ける。
わざと社会をギスギスさせるのである。
フェイクニュースやヘイトがあふれているいまこそ、
「否定と肯定」を、たくさんの人にみてもらいたい。
今、何が大事なのかがわかってくる。

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2017年12月 3日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(361)

「DESTINY 鎌倉ものがたり」
「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴が監督。
堺雅人とNHKの朝ドラでブレイクした高畑充希が夫婦役を演じ、いい味を出している。
魔物がすむ想像の鎌倉を舞台にした、日本流の壮大なファンタジー。
貧乏神や死神、カッパ・・・いろんな魔物や幽霊、妖怪が出てくる。
ぼくは比較的ファンタジーとかは苦手だが、この映画はとても懐かしい感じがしていい。
死んだはずの人が、まだこの世にいろんな思いを持ちながら留まっていることも、
あるかもしれないなと思わせてくれる。

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妻が死に、夫は黄泉の国へつながる江ノ電で、死んでしまった妻を引き戻しに行く。
荒唐無稽にみえるが、こうあったらいいなというのが、夢と現実のなかで実にリアルに描かれている。
映画だからできる世界観。
子どもからお年寄りまで、どの世代も満足させてくれる日本のファンタジーだ。

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2017年12月 2日 (土)

「わがまま」のある寛容な社会へ

『「わがまま」のつながり方』(鎌田實著、中央法規出版)が11/19の南日本新聞の書評欄で紹介された。
この本は、一人ひとりがその人らしく「わがまま」でいられるような地域包括ケアづくりについて書いたもの。
書店店主の羽原さんという方が、「生きやすい地域社会へ」と題し、ある障害をもつお客さんとのエピソードを交えて、「わがまま」の大切さを書いている。

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最近書いてきた『人間の値打ち』(集英社新書)『忖度バカ』(小学館新書)、そして来年1月に出す『だまされない』(KADOKAWA)は、怒りの三部作と思っている。
その怒りの根幹には、人間と人間、地域と人間、自然と人間のかかわりが壊れだしていることの危惧がある。
『「わがまま」のつながり方』は、そんなつながりを医療や介護、暮らしによってつなぎなおそうという鎌田の原点に立ち返った本。
地域包括ケアを、一人ひとり自由=わがままを実現する生きたネットワークにするにはどうしたらいいか。

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ぜひ、多くの人に読んでいただき、生きやすい地域社会とは何か考えてもらいたい。

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2017年12月 1日 (金)

相撲界でも忖度?

相撲界の暴行問題は、まさに日本にまん延している病的な忖度ではないか。
土俵の外で、暴力が行われた。
それを示談にしてもみ消そうとしたことから、問題はこじれた。
相撲協会がこの時点で、きちんと決断していたらよかったのだ。
貴ノ岩は「先輩に対して忖度が足りない」ということで、暴行された。
そして、翌日、謝らざるを得ない空気にしている。
暴行された側が謝らなければいけないというのは、学校のいじめでもよくあるパターンだと思う。
大きな権力をもつ横綱が貴ノ岩に「もっと忖度しろ」という空気が、場を支配しているように思う。
白鵬を含めてそこにた力士は、加担していたと考えていいと思う。
こういうよどんだ空気は、暴力の温床になり、星の貸し借りという不正につながったりする。
日馬富士はとても立派な人間だと思う。
それでも、やってしまったことにはけじめをつけないといけない。
相撲協会は絶対に暴力を許さないという原則を、貫き通さなければいけない。

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11/29、鎌田實の新刊『忖度バカ』(小学館新書)が発売されました。
ぜひ、お読みください。

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