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2018年5月

2018年5月31日 (木)

平和への願いを込めた一冊

先日、ピーター・バラカンさんの奥様とお会いした。
バラカンさんには『アハメドくんのいのちのリレー』(集英社)の英訳をしてもらったご縁がある。
そして、彼がMCをしているラジオ番組にも2度ほど呼んでくれた。

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パレスチナとイスラエルが憎しみの連鎖をやめ、
前向きに平和を語り合えるように、この本が役に立つといいなと思って書いたものである。

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2018年5月30日 (水)

来週、南三陸へ

南三陸町に「ひなたぼっこ」という居心地のいい居宅介護事業所がある。
東日本大震災で、ご主人を津波で亡くし、家を流された元保健師さん。
役所を辞めて、在宅ケアの会社を始めたが、そのオフィスも津波で無くした。
そこから立ち上げたのが、この「ひなたぼっこ」である。
地域包括ケアの要であるケアマネジャーら5、6人と、地域の居宅介護に取り組んでいる。

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6月8日、鎌田はここを訪ね、スタッフと一緒に往診にいったり、お昼ごはんの会を開く予定。
午後は、南三陸で「人生百年時代をどう生きるか。健康、命、在宅ケアを考える」と題した講演を行う。
翌日9日の午後は、気仙沼の対岸にある大島で、ボランティアで講演する。
お近くの方は、ぜひ、ご参加ください。

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2018年5月29日 (火)

カマラジオ #6

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鎌田實「いのちを語る」第6回を配信します。

「日々を丁寧に生きよう」

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2018年5月28日 (月)

新刊発売

「曇り、ときどき輝く」(鎌田實著、集英社)
「青春と読書」という雑誌で2年間、連載してきた24のあたたかな話が詰まっています。
フランスの映画監督ウニー・ルコントと鎌田の往復書簡をした話などをしながら、家族や地域のつながりなどを掘り下げています。
事前にパイロット版をつくり、たくさんの人に読んでいただきました。
うるうる来た、あたたかくなった、元気が出た・・・などの声が寄せられています。

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今月号の「青春と読書」では、「曇天の時代を輝かせる24の物語」と紹介されています。
どんな厳しい状況に追い込まれても、
人生はけっこうもしろい
と思いながら、この本を書きました。
ぜひ、24の物語を読んでください。

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2018年5月27日 (日)

ゲルニカ

1937年、ドイツ軍はスペインの北東の町ゲルニカが無差別空爆を行なった。
スペインはフランコ率いる帝国主義が権力を握りつつあったときである。
ピカソは、そのゲルニカ空爆を受けて、バリ万博に出品する絵を急きょ変え、一か月半で「ゲルニカ」を仕上げる。

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「ゲルニカ」はフランコ政権が倒れたあと、プラド美術館に戻って来る。
現在はソフィア王妃芸術センターに収蔵されている。
数年前、その絵とゲルニカのまちを訪ねたことがある。
ゲルニカ空爆を実際に体験した人たちにも、当時の様子を聞いた。
無差別攻撃の恐ろしさが語られた。

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戦争のいちばんいけないところは、闘いとは関係ない子どもや女性が被害者になりやすいというということだ。

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2018年5月26日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(386)

「ヒトラーを欺いた黄色い星」
ナチスのゲッペルスは、ベルリンにはユダヤ人がいなくなったと宣言したが、
実は7000人の主に若者たちが地下に潜り、終戦まで1500人が生き延びた。
彼らはどうやって生き延びたのか、ドキュメンタリー映画である。
地下の潜るユダヤ人たちのために、食べ物を運ぶなど、多くの協力者がいた。
ナチスの高官の家でさえも、ユダヤ人とわかっていながらメイドとして雇っている人もいた。
一方、ユダヤ人のなかにも自分の身を守るためにスパイになって、
ユダヤ人狩りをする人もいる。
ヒトラーの狂気の政策に納得できない人たちがいて、密かにまっとうなことをしようとした人たちがいる。
ここに人間の意味が見えてくる。

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すばらしい映画。
だが、こういう歴史を経験してきたのに、ユダヤ人がなぜ、パレスチナ難民を追い込むようなことをするのか、
不思議に思ってしまう。
あまりにも苦しかったので、二度とこういう迫害が起こらないように過剰防衛しているのだろうが、
痛めつけれる人間の苦しみを、悲劇の民ユダヤ人だからこそもっと理解して、パレスチナ人たちに手を差し伸べることが大事なのではないか。

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2018年5月25日 (金)

鎌田劇場へようこそ!(385)

「ウインド・リバー」
カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞受賞。
力作である。
美しい雪景色のなかで、18歳の少女の他殺体が見つかる。
舞台はネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。
何もない、雪以外。
忘れられた土地だ。
そんな景色のなかで人間の心が病んでいく。

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ネイティブアメリカンがもっていた絆や部族、信仰、自然とのつながり。
それらを全部奪い、居留地で意味のない仕事をさせる。
かつてはあったはずの自然の法が壊れて、完全に無法地帯になっていく。
許しがたい犯罪が起きていく。
極上のクライム・サスペンス映画。

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2018年5月24日 (木)

スタバの対応

2万1000店舗、19万人以上の従業員が働くコーヒーショップ、スターバックス。
世界的規模に拡大したのは、ハワード・シュルツ会長だ。
父親はタクシー運転手や工場労働者として働いていた。
あるとき、足を骨折した父親は職を失い、健康保険の権利も失った。
「父のような人が生活できるような会社にしたい」とシュルツは考え、
給与は最低保証賃金より多く、福利厚生を重視、社員にストックオプションを提供した。
今年4月、フィラデルフィアのスタバで、注文しないで友人を待っていたアフリカ系アメリカ人の男性2人が逮捕されるという騒動が起きた。
白人だったら逮捕されなかったのではないか、との批判も出た。
スタバはすぐに謝罪し、全米の9000店舗を一日閉鎖。
従業員に人種差別を防ぐ研修を行なった。
対応が早い。
財務省も、セクシュアルハラスメントが起きたとき、
こういうことが二度とないように、研修を徹底するなどの対策が必要なのではないか。
人間はたびたび間違いをするが、すぐに間違いを認め、修正することが大事なのだ。

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2018年5月23日 (水)

カマラジオ #5

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鎌田實「いのちを語る」第5回を配信します。

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2018年5月22日 (火)

岸井成格さんを悼む

ジャーナリストの岸井成格さんが亡くなりました。
「NEWS23」のキャスターや「サンデーモーニング」のレギュラーコメンテーターをなさっていました。
あるとき、ぼくが書いたり、話したりしていたパレスチナでの「命のリレー」の話について、
岸井さんは「究極の決断」とコメントされました。
パレスチナの少年がイスラエル兵に撃たれ、脳死状態になりました。
その父親は、息子の心臓を、イスラエルの少女に提供することを決断したのです。
その話を取り上げ、「究極の決断」と話してくれました。

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お会いしたのは8年ほど前、岸井さんは大腸がんを患っていました。
腸を40㎝ほど切除し、ほぼ完治したということですが、その後、肺がんとなり亡くなられました。
大きな力に対しても、恐れず、大切なことを発言しつづけていた岸井さんがいなくなり、残念です。
今のような時代こそ、岸井さんのようなジャーナリストのパワーが必要なのに。
岸井さんの熱い思いを、たくさんの人がバトンとして受け継いで、おかしいことはおかしいと言い続けていく必要があると思います。
岸井さんのご冥福をお祈りします。

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2018年5月21日 (月)

忖度という空気

4月19日の熊本日日新聞のコラム「新生面」に、『忖度バカ』のことが書かれていた。
以下はその一部。
「・・・そんな忖度問題に明け暮れるうち、国際社会から蚊帳の外に置かれた感のある安倍政治。挽回すべく日米首脳会談が開かれた▼首相は北朝鮮問題での成果を強調したが、自国第一の大統領が「日朝問題にどの程度熱意を持っているかは未知数」という懸念は強い。首相は大統領の真意をどう推し量っているのだろう▼話を戻すと、過度な忖度の背景に社会の分断や不寛容を読み取るのは医師の鎌田實さんだ(「忖度バカ」小学館新書)。その息苦しさから逃れるために先回りで服従している、と▼野党議員に「お前は国民の敵」と暴言を吐く自衛官、セクハラ被害の女性に「名乗って」と言う政治家も何やらつながって見える。よどんだ空気を変えるのは「王様は裸」と言い切る純粋な目だ」

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日本の空気を正常に戻すには、勇気をもって空気をかきまわし、入れ替えることが大切だ。

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2018年5月20日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(384)

「死の谷間」
地球全体が核汚染されたが、
奇蹟的に放射能汚染されない谷があり、
そこで一人の女が生き残った。
そこへ放射能防護服の研究者の男が、この谷を訪ねあててやってくる。

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一人の生活から二人の生活になり、疑心から恋愛感情が生まれるなか、
もう一人の男がやってくる。
三人は協力し合って暮らすが、やがてジェラシーや欲望が渦巻きだす。
アダムとイブはどんな生き方を選択するのだろうか。
衝撃の映画。

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2018年5月19日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(383)

「フジコ・ヘミングの時間」
1990年、60代後半になって見出されたピアニスト。
こういうこともあるから、人生は面白い。
生活のため、音楽講師もしていた。
それでも、毎日4時間の練習を欠かさなかった。

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「君はそのピアノで、いまに成功者になるよ」と言ってくれる人がいた。
彼女には時間が必要だったのだろう。
古いものを愛し、猫を愛し、音楽を愛して生きていく。
フジコ・ヘミングの生い立ちや生き方がよくわかってくるドキュメンタリー。

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2018年5月18日 (金)

かかと落とし

マサイ族の若者たちはどれだけ高く跳べるか競っている。
以前、アフリカを訪ねたとき、ジャンプするマサイ族に加わって、ぼくもジャンプしたら、
みんな大喜びだった。

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骨粗しょう症の予防には、ジャンプなどで骨に刺激を与えるのがいい。
ただ、マサイ族のようにジャンプできない中高年にはかかと落としがおすすめだ。
かかと落としをすると、骨からオステオカルシンという骨ホルモンがよく出る。
このオステオカルシンが骨密度を上げて強い骨をつくるだけでなく、血糖値を下げたりすることがわかってきた。
さらに慢性炎症を減らして動脈硬化を減らしたり、認知症を減らすらしいということもわかってきた。
かかと落としは血流をよくする。
毛細血管の血流がなくなってしまう「ゴースト血管」も復活し、老化を防ぐといわれている。

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注意することはまず、背筋を伸ばして立つこと。
かかとを上げて、1、2、3と数えて、ストンとかかとを落とす。
これを10回1セットで一日3セット。
テレビを見ながら、台所に立ちながら、あるいは信号を待ちながら、やってみよう。
だれでも、いつでも簡単にできるかかと落とし、ぜひ、習慣にしてほしい。

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2018年5月17日 (木)

地域医療みらい塾

地域医療みらい塾では、ベーシックコースの2回目 ベーシックスキルⅡ
「地域をデザインする力を養う」を5/23、開催します。
複数の医療機関の再建を担ってきた地域包括ケア研究所の藤井雅巳と、
医療機関の組織作りのプロフェッショナルである地域包括ケア研究所の大曽根衛が担当します。
何よりも、北海道本別町の地域包括ケア支援や東京都町田市の地域医療機関作りを主に担当しているメンバーによる具体的な事例などを踏まえた講義を予定しています。

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<講義内容>
地域医療に関わっていくことにとって大切な「地域における役割」。
地域社会に飛び込んでいくと、職場だけでなく、行政、自治会、医師会、専門家の集まり、
その他地域のコミュニティがとても身近になってきます。
その地域社会の中で、どのような役割を担うか?
ただ、フォロワーになるのか、自らが起点になって様々な関係者を巻き込んでいくのか。
それによって、地域に関わっていった結果が大きく異なります。
この講座では、地域をデザインするために必要な分析力、デッサン力、ファシリテーション力など、そのための基本的な要素を学ぶ充実の講座です。
<開催概要>
・日時:5月23日(水) 19:00~21:00
・場所:〒104-0061 東京都中央区銀座1-6-2 銀座Aビル3階
  ビジョンセンター東京有楽町 B会議室
<参加者>
 定員30名
・地域医療に関わっている、今後関わっていきたいと考えている医療・介護・福祉従事者
・地域包括ケア研究所の活動に関わってみたいと考えている医療・介護・福祉の専門家
<お申し込み>
 以下の申し込みフォームにご記入ください。
(FBの参加では参加となりませんのでご留意ください)
<参加費>
 3000円
鎌田も7月の「地域医療みらい塾」にて
「地域包括ケアのつくり方」のレクチャーを行います。
※7月11日 19:00~都内にて
こちらもお楽しみに!

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2018年5月16日 (水)

大使夫人らがバザーで応援

駐日ヨルダン大使夫人のシーファさんが、JIM-NETの活動のためにバザーをしてくれました。
イタリア大使夫人やベネズエラ大使夫人、中東の大使夫人たちが列席。
高円宮妃殿下もおいでになりました。

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午後はいろいろな形で社会活動している人たちが100人近く集まり、ぼくの講演を聞き、
バザーで絵画などを買っていただきました。

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2018年5月15日 (火)

カマラジオ 配信開始! 

いよいよ、カマラジオ「鎌田實・いのちを語る」が始まります!
 

1年ほど前、音声配信アプリ「ヒマラヤ」からアプローチを受け、1本目を配信。その後、忙しく、なかなか更新しておりませんでした。本日よりやっと、配信再スタートします!

NHKラジオ「鎌田實・いのちの対話」を聞いてくださっていた方々から、今も、「あの番組をもう一度ききたい」という声を頂きます。
番組の中で特に人気の高かった、鎌田が音楽に合わせて書き下ろしを読むコーナーをイメージして、「カマラジオ」で新しくお届けしようと思います。

本日より、オープニング記念として、4日連続でアップします。
鎌田の声を楽しんでいただければうれしいです。

その後は不定期で、週2回くらいを目標に、新作をお送りしていきます。

忙しい方にご迷惑にならによう、できるだけ2分を目標!
と思いつつ、なかなか・・・(笑)。

楽しんで、ラジオ放送局のつもりで始めました。
たくさんの人に広げて頂ければありがたいです。

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2018年5月14日 (月)

友情

シーファさんとは14年のつきあいになる。
現在、駐日ヨルダン大使夫人である。
彼女が独身だったころ、ヨルダンで行なったイラクのドクターたちとのカンファランスで、
通訳をしてくれたのがはじまりだった。
ぼくたちJIM-NETの活動を評価してくれ、通訳料はいらないと言ってくれた。
それだけではない。
カンファランスに参加するのは、日本人の医療スタッフ10人と、イラクのドクター10人都合20人。
当初、大きなホテルを予約してカンファランスをする予定だったが、
ホテルの予約をキャンセルして、ご自宅のアパートで手作りのアラブ料理をふるまってくれた。
手作りの料理をみんなで食べたことで、距離感が近くなり、国を超えて友情が生まれたのを覚えている。
その後も、ご両親の家に招待していだき、再び夕食会をしていただいた。
もう親戚みたいである。

Img_9466 14年来の友人シーファさん(左から2番目)

先日は、日本で、シーファさんのご自宅で、中東の病気の子どもたちを助ける活動のためのバザーを開催。
ぼくも、大使夫人たちの集まりに呼ばれ、話をした。
今回が3回目である。
エネルギッシュで、情熱的で、大きなやさしさをもつシーファさん。
大使夫人たちも各国の親善のために大事な役割をしている。

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2018年5月13日 (日)

病院の庭

病院の庭が、緑や花々で輝いている。
クリスマスローズも咲いている。
花屋を営むがんの患者さんが、患者さんやご家族、スタッフに楽しんでもらいたいと寄付してくれた自慢のクリスマスローズだ。

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チューリップも色とりどりに咲いている。
この球根のいくつかは、蓼科のイングリッシュガーデンでいただいたもの。
諏訪中央病院の庭は、いろんな人たちの思いによって支えられている。

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2018年5月12日 (土)

森のレストランへ

原村のカナディアンファームに、まちだ丘の上病院の院長をお連れした。
まちだ丘の上病院には、2週間前に回診したが、
たくさんの地域の方たちの評価をいただき、患者さんを紹介してもらえるようになってきた。
入院78床のうち55~65床の患者さんが入院。
まだまだ課題はあり、解決していかなけばいけないが、働きやすい病院をつくり、
地域に愛される病院をつくろうとしている。

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原村は、ちょうどいい季節になった。
ハセやんのつくった燻製や、窯で焼いたチキンは絶品。
森のレストラン、カナディアンファームへ行ってみてください。

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2018年5月11日 (金)

女の子のとき

ぼくの友人にふうちゃんという女性がいる。
諏訪中央病院看護専門学校の校長をしていたとき、毎年「命とは何か」というテーマで、
看護学生たちに授業をしてもらっていた。
迫力のある、すてきな授業だ。
ふうちゃんは「女の子のとき」という詩集を出している。
そのなかに同じタイトルの詩を書いている。

“女の子”のとき

母さん
もう何年前になるかな
“女の子”のときに いつも思い出す
母さんの言葉
“やっかいだから”
“大変だから”
“手術しなさい・・・”
何も言えなかった あの頃の私
母さんの心 見えるから  (一部抜粋)

脳性麻痺で「体は不自由だけれど、心は自由だ」と言い切って生きてきたふうちゃんらしい詩だ。
不幸か、幸せかは人が決めることじゃない。

L1010611 足の指で演奏するふうちゃん

旧優生保護法下では、特に50年代、たくさんの障害者に不本意な形で不妊手術が繰り返された。
国や自治体の文書のなかには、
「精神障害者は年々増加傾向にあり、憂慮に耐えない」
「不良な子孫の出生を防止し、社会福祉に貢献していただきたい」などの記述がかつてあった。
なんとも悲しい文章である。
国も自治体も医療者も誤りを認め、障害者に丁寧な謝罪をすべきである。
二度とこういうことが起こらないように。

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2018年5月10日 (木)

洞窟の手形

スペインのアルタミラ洞窟は、洞窟壁画で有名。
世界遺産であり、現在、洞窟は非公開になっている。
そこから数十キロ離れたところにあるエル・カスティージョ洞窟に行ったことがある。
今は世界遺産なって見学が制限されているようだが、当時はまだ入れた。

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ここにある壁画は、数万年の人類の祖先が残したといわれている。
まだ、文字がなかった時代、「おれはここに生きている」と主張するように手形が残っている。
手を岩に置いて、上から絵具を吹き付け輪郭を浮かび上がらせている。
単に手に絵の具を塗って、ペタンとつける方法より手がこんでいる。
そんな手のプリントを見ていると、不思議な気持ちになる。
なんのためにこんな手形を残したのか。
ぼくには、「おれ」という自我が表現されているように思える。
他者を大事にする前に、まず自分が存在しているということが大事なのことなのだ。

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2018年5月 9日 (水)

なぜ、学ぶのか

石の建物があれば、たいていそれは診療所か学校。
診療所は命を守るところ。
学校は未来への希望である。
ケニアにあるキベラ・スラムに行ったことがある。
世界最大級のスラムといわれている。
銃で武装した5人の警察官に護衛されて入っていくと、
いちばん奥のところに学校があった。

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学校では、若者たちが必死に勉強していた。
このスラムから出て、自由になろうとしている。
ぼくを歌とダンスで歓迎してくれた。
手をつかまれて、引きずられるようにダンスをした。
なぜ、ぼくたちは学ぶのか、なぜ、ぼくたちは生きるのか。
人生とは何か。
今年9月出版予定で、10代の若者に向けた本をつくっている。
若者たちからの「うるさい親を黙らせる方法を教えてください」
「アルバイト先の店長がクソなんです、だれがこんな人を店長にしたんですか」などという質問に答えながら、
鎌田流の人生哲学の本ができそうだ。

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2018年5月 8日 (火)

鎌田實の一日一冊(335)

「カフカ」(フランツ・カフカ著、多和田葉子編、集英社文庫ヘリテージシリーズ)
唐十郎の世界は独特だ。
水たまりから異世界へ入っていく。
ブリキのやかんを見たりすると、そこに入れないかと想像する、と唐さん自身も語っていた。
ぼくはカフカも好きだが、そんなわからない世界観が似ている。
カフカは1916年前後、チェコのプラハ城の裏にある錬金術通りといういかがわしい一室を借りて、夜、小説を書いていた。

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この部屋は、プラハ城の城主があやしい錬金術に凝って、錬金術師を住まわてせいた一帯。
天井が低く、窒息しそうな空間ななかで、彼独特の不条理の世界や穢れの感覚、罪の意識を作品に練り上げていた。
その間には、膨大な手紙を書いていた。
異常とも思える量だ。
気に入った女性がいると、一日に二通も三通も長大な手紙を書く。
そのなかには、君以外には手紙を書いていなから、ほかの人に話されると気まずい、なんていう記述も残っている。
よくいうよ、というような一面がうかがえる。
人間はもともとわかりにくい存在。
自分で自分のことがわからないのだから。

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カフカの作品も新訳で読んでみると、ずいぶん読みやすくなる。
集英社文庫のヘリテージシリーズの「カフカ」だ。
虫になっいてくグレゴール・ザムザが有名な「変身」は、「かわりみ」とルビを振っている。
最近、ちょっと気に入っている本だ。

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2018年5月 7日 (月)

紅テントがやってくる

劇団「唐組」の全国ツアーが話題を呼んでいる。
唐組創立30周年ということもあり、紅テントが4月下旬から6月下旬にかけて、大阪、新宿・花園神社、雑司ヶ谷・鬼子母神、長野、静岡で公演される。
演目は、芥川賞作家・唐十郎の40年以上前の名作「吸血姫(きゅうけつき)」。
唐十郎の芝居は、肉体が勝負みたいなところがある。
彼のなかにある分裂した世界が次々と展開され、観客を異次元にいざなう。

L1040397_2 写真は、以前、唐十郎から招待されて、芝居の稽古を見物させてもらったときのもの

ぼくは、月刊誌「毎日が発見」で「もっともっとおもしろく生きようよ」という連載をしている。
最新号の5月号では、楽しんでいる人は健康で長生きしているということをデータを交えて紹介した。
6月号では、映画や芝居を見に行こうとすすめている。
フランスの歌姫を描いた映画「ダリダ あまい囁き」や劇団唐組の「吸血姫」について紹介する予定。
暗い映画館や芝居小屋に居ると、胎内回帰したような気分に襲われる。
ぼくにとっては幸せな時間だ。
ぜひ、劇団唐組の芝居をはじめ、演劇、映画などを楽しんでもらいたい。

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2018年5月 6日 (日)

座っている男との対話

現代人が抱える閉塞感を表現している彫刻家がいる。
ジュリアーノ・ヴァンジ。
以前、ラジオの仕事で、クレマチスの丘にあるヴァンジ彫刻庭園美術館に行った。
そこである彫刻に出合い、不思議な感銘を受けた。

Img_1663 ジュリアーノ・ヴァンジ作「座っている人物」と対話

タイトルは「座っている人物」。
ルネサンス時代のミケランジェロの彫刻もすごいが、元気すぎて、こちらが疲れてしまう。
その点、ヴァンジの彫刻は、人間の感情の複雑さを表している。
ぼくの心が元気だろうが、疲れていようが、悲しみのなかにいようが、
この彫刻はすべてを受け入れてくれるような気がするのである。
生きるとはどういうこと?
「座っている人物」に問いかけた。
答えてくれそうな気がしてしまう。
そこにヴァンジのすごさがある。

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2018年5月 5日 (土)

鎌田實の一日一冊(334)

『「在宅ホスピス」という仕組み』(山崎章郎著、新潮選書)
この本の中のスピリチュアルペインについての文章が出色だ。
人間には4つの痛みがあるといわれている。
体の痛み、心の痛み、社会的な存在としての痛み、そして、スピリチュアルペイン。
4つ目のスピリチュアルペインは、日本人にとって最もわかりにくいといわれている。
「霊的な痛み」と訳されることがあるが、よくわからない。
キリスト教徒にとっては神を信じ、神の愛につつまれることによって解決していく。

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スピリチュアルペインとは何か。
この世からいなくなる存在のあやふやさによる切なさ、ぼくはそんなふうに考えてきた。
だから、家族のつながりや自分の生きて来たのことの肯定が、スピリチュアルペインをいやすことにつながると思ってきた。
山崎氏は、「スピリチュアルペインとは、その状況における自己のありようが肯定できない状況から生じる苦痛」と定義している。
人間とは何であるのか、人間の本質を探りながら、
山崎氏はスピリチュアルペインを自己と他者との人間の関係のなかで解決しようとしていく。
他者のなかには信仰や自然、哲学なども含まれてくる。
それゆえに真に拠り所となる他者の存在が、スピリチュアルペインを緩和するうえで大事ということだ。
こうした「痛み」についての考察や模索が、たくさんのページを割いて、わかりやすく書かれている。
ぜひ、たくさんの人に読んでもらいたい。

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2018年5月 4日 (金)

ゲストは山崎章郎先生

6日の「日曜はがんばらない」(文化放送、午前10時~)は、「死の哲学」を持とうということで、
ゲストはベストセラー「病院で死ぬということ」の山崎章郎先生。
在宅診療専門のケアタウン小平クリニックの院長だ。
山崎先生とは、このケアタウン小平ができたとき見学にいったり、
彼がやっている命の勉強会のための講演会で2回ほど講演したことがある。
今回は、久々にお会いしたことになる。

Photo ゲストの山崎章郎先生(中央)と、番組パートナーの村上信夫さんと

ラジオの収録が終わってから、山崎先生がぼくの西高時代の文章がネット上にあることを指摘された。
それを見ると、ぼくは東京医科歯科大学と千葉大と横浜市立大に合格したとある。
1つ歳上の山崎先生は、2年浪人して千葉大に入った。
ぼくは1年浪人して東京医科歯科大に入ったが、もし千葉大に行っていたら、
2人は千葉大で同級生だったかもしれない。
「こんな熱苦しいのが2人いたら、医学部の空気が変わっちゃうよね」と笑い合った。
そんな浅からぬ山崎先生をゲストに迎えた「日曜はがんばらない」。
ぜひ、聞いてください。

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2018年5月 3日 (木)

盛岡でうた語り

先日、加藤登紀子さんと盛岡でイベントを行なった。
鎌田の「がんばらない介護」の講演と、おトキさんのコンサートだ。
4年ぶりに「海よ、大地よ」という一曲を、鎌田が朗読をし、おトキさんが歌った。
作詞はぼくとおトキさん。
1500人の聴衆が集まったが、震災後からずっと支援を続けている陸前高田や南三陸からも、聞きに来てくれた。

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来月6月8、9日は、南三陸と気仙沼大島でボランティアの講演会をする。
ぜひ、聞きにきてください。

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2018年5月 2日 (水)

星空キャンプ

医師や看護師、医療系の学生たちが地域医療の先達とふれあう
地域医療体験プログラム「星空キャンプ」開催
日時 2018年7月6~8日
場所 北海道本別町
対象は、地域医療や地域包括ケアに関心のある専門職や、医学生、看護学生、研修医・・・。
講義やワークショップはもちろん、キャンプファイヤーなどを通して、地域医療の先達からおもしろい話が聞けます。
講師には、医学生や研修医のあこがれの的・山中克郎先生を筆頭にしたそうそうたるメンバー。
もちろん、鎌田も参加します。
まだ交渉中ですが、旭川医科大学の教授も駆け付け、レクチャーしてくれるかもしれません。

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昨年は鹿児島から北海道までの若者たち20人が参加。
十勝の大自然のなかで、地域医療の神髄を体験しました。
今年は、最大40人定員で開催します。
主催は、一般社団法人地域包括ケア研究所
申し込み締め切りは6月15日まで
詳しくはこちら↓
ぜひ、十勝でお会いしましょう!

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2018年5月 1日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(382)

「オンリー・ザ・ブレイプ」
2013年、アリゾナで未曾有の巨大な山火事が起きた。
20人の男たちが立ち向かう。
山林の消防隊だ。
家族や友人の家を守るために、命を懸けた男たちの実話。

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感動的。
実話だが、実に劇的につくられている。
アメリカ映画らしいアメリカ映画。

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