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2018年7月

2018年7月31日 (火)

よく働き、よく遊ぶ

山下先生を囲んで、人生を語る会を開いた。
山下先生は55歳のとき、自転車で九州一週。
スノーボードの季節は1シーズン、ニセコで新雪を滑って過ごした。
よく遊ぶために、2倍働くということで、研修委員会や感染委員会の委員長をするなど、
大事な役回りを務めている。

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仕事もよくやるけれど、自分の時間をつくって人生を楽しむ。
医療の働き方改革は難しいといわれているが、新しい医師の働き方のヒントになるように思った。

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2018年7月30日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(390)

「万引き家族」
カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した。
監督は是枝裕和。
「そして父になる」もすばらしかったが、この作品はさらにクオリティを上げているように思った。
役者陣が、すばらしい。
リリー・フランキーは、ダメ男だけど愛らしいキャラクターを演じている。
安藤サクラはこれまでの作品を見て、女優としての能力の高さは感じていたが、
今回はそれを上回るものだった。

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もっと、おもしろかったのは樹木希林。
河瀨直美監督の「あん」もよかった。
樹木希林さんのお宅にお邪魔したことがある。
「きたないばあちゃん」の役を演じることがある樹木さんだが、家はほんとうに美しい。
美しいものを少量だけ残して、ほとんどものを置かない生活をしている。
二回ほど雑誌で対談し、一回は大ホールで対談をした。
どんなときでも空気を読み取って、自分の役割を見事に演じる。
女優のなかの女優と思っている。

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2018年7月29日 (日)

難民キャンプで健康づくり⑥

ライス先生は、モスル郊外のハムダニアの病院の院長だったが、
2014年にISに追われ、職員全員をつれて避難してきた。
当時、難民キャンプにPHC診療所がなかったため、モバイルクリニックを活用して、難民キャンプの人たちを診療することになった。
しかし、クルド自治政府とイラク中央政府の確執があるなかで、アラブ系のライス先生は、クルド自治区のアルビルで活動することを非難された。
それでも、ライス先生は負けずに、難民キャンプの近くに診療所を作ろうとし、ぼくたちを説得にやってきた。

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Fullsizerender9 約3年前のモバイルクリニックの様子

クルド自治政府側のナジーム先生ら5人と、ライス先生を中心にしたイラク中央政府側、
そしてJCFのスタッフが集まり、ホテルで食事をしながら作戦会議をもった。
医療関係者としての志と協力により、信頼関係は今の活動を支えている。
今回は、ライス先生のお宅にも呼ばれ、ライス先生も県議会議長から感謝状が出された。

Img_0486 右端がライス先生

JCFはアルビルの医療の底上げを目指してきた。
JIM-NETはアルビルを拠点にしながら、バスラやバグダッド、モスルの広範囲での医療支援を行ってきた。
二つのNPOが強力して、イラクの医療水準を上げようとしている。

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2018年7月28日 (土)

難民キャンプで健康づくり⑤

2015年4月、急激に難民キャンプが大きくなった。
ぼくも、トプザワPHC診療所がある周辺にも来て、
大王製紙からたくさん寄付してもらった紙パンツを、ここで配給してとても喜ばれた。
そのころの写真↓

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3年前のイラクとシリア国境付近の難民の生活は、こんな様子だった。

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このころぼくは肩を骨折していた。
1月、4月、6月と、被害地域へ入らなければならず、三角巾で腕をつって肩を固定し、難民キャンプへ入った。

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それが原因で交感神経過緊張症候群になり、肩に問題があったはずなのに、
左の指5本がまったく動かなくなってしまった。
病院でマッサージと針の治療を連日、受けていた。

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2018年7月27日 (金)

難民キャンプで健康づくり④

トプザワPHC診療所を視察した。
JCFの今年度の大きな事業だ。
今、トプザワPHCを含めて2つの診療所を作っている。
トプザワPHCはAタイプで、地域医療のタイプとしては最高の評価。
歯科医が2人、内科医が2人、産婦人科医が1人いて、
妊婦の健康管理と、出産後の母子の健康管理が行われている。
歯科は、プライベートな病院では高額な医療費がかかるが、
ここでは一回20円ほどの手続き料だけで治療を受けることができる。

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トプザワPHC診療所は以前からあった診療所。
老朽化のため新築移転する予定だったが、整備計画が立てらず、頓挫していた。
JCFの支援で、新しいトプザワPHCが来月オープンする。
ここにはシリア難民キャンプがあるので、
10%はシリア難民キャンプの患者さん、50%は地元のクルド人、
あとの40%はモスルを中心に避難してきた国内避難民が利用することになる。
人口7万人の地域なので、本来は病院が必要だが、地域の健康を守る拠点としての機能をこの診療所が担うことになる。

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2018年7月26日 (木)

難民キャンプで健康づくり③

ダルシャクランの難民キャンプに行った。
ここにはもう10回ほど来ている。
健康づくり運動も、今回で4回目。
顔なじみの人もできた。
シリア人の難民キャンプで、現在は約2万人が身を寄せている。
ISの勢力は小さくなったが、シリアでは今も政府と反政府軍のつば競り合いが続いている。
シリアに帰っても家は壊されてなくなり、働き口もない。
そのために帰れない人たちが多い。

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心房中隔欠損の子どもを、手術をせずに、4年ほど経過を追ってみている。
その子の家族も、これからのことを思うと途方に暮れていた。
急性骨髄性白血病で脳腫瘍も合併している子どもの家に行った。
この子はぼくたちが支援しているナナカリ病院で治療を受けているが、
両親がとても心配している。
ナナカリ病院の院長をよく知っているので、できるだけしっかり診てもらえるようにしたと、励ました。
家族が病気で、仕事はなく、そして、シリアにも帰れないという三重苦。

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そんな状況のなかで、少しでも健康を保つためにはどうしたらいいか。
体を動かすことの大切さを話した。
体を動かすと、うつ病や認知症、糖尿病のリスクを少し減らすことができる。
外は50度近い暑さなので、ウォーキングをすすめるわけにはいかない。
スクワットとかかと落としをみんなでやった。
笑いがあふれた。
みんなで体を動かすと、一体感が出てくる。

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2018年7月25日 (水)

難民キャンプで健康づくり②

アルビルの県議会議長に呼ばれて、JCFの日本人スタッフと現地スタッフ全員に感謝状が渡された。
JCFでは、3つのプライマリヘルスケア診療所を作り、アラブの避難民とクルドの現地の人たちの医療の質の向上に寄与したというのが理由だ。
県議会議長は、アルビル県で最も長く住民の信頼を受け、県知事の選任にも大きな力を持っているといわれている。

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ISがモスルに侵攻した後、アルビルのアインカワ地域には数万人の避難民があふれたが、
そのとき、JCFが診療所を開設し、薬を供給したことが、大きな緊急支援になり助かったといわれた。
ロジャー病院の手術室を直したことも、ISとの闘いで負傷した兵士や一般市民を助けることになったということも知っていた。
ぼくたちJCFの支援活動をよく理解してくれていた。
大変ありがたいことだ。

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2018年7月24日 (火)

難民キャンプで健康づくり①

7月中旬から1週間、イラクの難民キャンプに入った。
42度の熱風が吹き、過酷な生活を続けている難民キャンプの人たち。
支援の大きな柱である「難民キャンプで健康づくり」の様子などを紹介していく。
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イラクではクルド民族とアラブ民族がなかなか信頼関係を築けない。
そこで日本政府とJCFが接着剤になって、難民キャンプに3つの診療所を作ってきた。
イラク国内のPHC(プライマリ・ヘルス・ケア)診療所のなかでも、診療内容が最高の評価を受けている。
歯科、外科、内科、産婦人科、小児科などもそろっている。
レントゲンやエコー、血液検査の機器も、JCFが寄付をした。

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3つ目の最新の診療所であるザイトゥーンPHC診療所で、
今回はじめて健康づくり運動を行った。
鎌田とモスルの小児科医だったリカア先生(現在は信州大学)が、
難民として生活するなかで、自分の健康を守るために、減塩と、野菜をたくさん食べること、運動の大切さを話した。
全員でスクワットをしたり、かかと落としをやってみると、みんなから笑顔が出て来た。
フレイルにならないように、特に社会的なフレイル(閉じこもり)にならないようにしようという話もした。

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BMI測定にも、みんな興味津々。
98㎏の女性が、初めて自分が太っていることを認識できた、というのには思わず笑ってしまった。
健康づくりのスタートは、現実を認識することから始まる。
体脂肪計で表示される傾向年齢にも、みんな面白がっている。
多くの人は、プラス20歳くらいの年齢で出てしまう。
肥満があるためだ。
こうした目に見える数字を上手に活用しながら、健康づくりを成功させようと思っている。

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2018年7月23日 (月)

リームがラジオのゲストに

シリアの難民で、今ぼくたちJIM-NETのスタッフとなり、イラクのダラシャクラン難民キャンプで働いているリームが、15日の「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜午前10時から)にゲスト出演した。

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リームの生後7か月の女の子は、ラジオの取材中はお昼寝中。
ぼくとリームは、偶然、同じ誕生日。
リームから70歳の誕生日の花束をいただいた。

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リームは、イスラム教徒。
ハムやベーコンはダメ。
鶏は大丈夫だが、きちんと教義に沿って処理したハラル食でないと食べられない。
そのことをイタリアンレストランに伝え、昼食会を開いた。

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「日曜はがんばらない」のリームがゲスト出演した回は、こちらからお聞きいただけます。
↓ ↓ ↓

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2018年7月22日 (日)

星空キャンプ4

昨年、地域包括ケア研究所が主催した地域包括ケア甲子園では、
本別町とスカイプでつないだ。
今年は、地域包括ケア研究所の理事の鷹野教授が、非常勤講師をしている大分医大の学生たちを指導し、本別の地域包括ケアづくりの企画を発表。
どれがいちばん魅力的か、票を投じて一等賞を決めた。

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星空キャンプ恒例の地域診断。
学生たちが地域を見にいき、その町の特徴をつかんだうえで、どうしたら発展するかを考えていく。
病院の横にある老人保健施設に行った学生。

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この町は、人間と牛の数が一緒ということで、牛を見にいった学生もいる。

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地域診断の成果を、模造紙にまとめて発表した。

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3日間の星空キャンプは、あっという間に終わった。
参加した学生たちはみんな一生懸命だが、町の人たちや食、自然、動物たちに癒され、楽しむ姿もみられた。
ぼくも、ウェルカムスピーチからはじまって3日間、参加者たちと充実した時間を過ごすことができた。

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星空キャンプは来年も開催する予定!
興味のある方は、ぜひ、ご参加ください。

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2018年7月21日 (土)

星空キャンプ3

鎌田の講演の風景

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勉強の会場に鹿がやってきた

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「貯筋」にこだわっている鎌田は合間をみて、腕立て伏せ

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参加者の抱負などが書かれた七夕の短冊

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夜は本別町の職員の方たちが準備してくれた焼き肉会

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2018年7月20日 (金)

星空キャンプ2

星空キャンプでは夜、元校庭に集まって、地元のボランティアの人たちが準備してくれたキャンプファイヤーを囲み、将来の夢や人生を語り合う予定だった。

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だが、天気は雨。
急きょ、室内でローソクをともしてもらい、
先達たちがどうして医師をめざしたのか、など後輩たちに語った。

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この日のごはんは豚丼、とてもおいしかった。

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2018年7月19日 (木)

カマラジオ #11

鎌田實「いのちを語る」第11回

Inochi2 Kamaradio

http://m.himalaya.fm/album/329156/sound/14054720/2/jp

鎌田實「いのちを語る」第11回

「新版 へこたれない」平成30年8月8日 光文社より発売予定。

生きにくい時代を生きる、すべての人へ・・・。

BGMは、がんばらないレーベルより ブラダン・コチ「ふるさと」。

 

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2018年7月18日 (水)

星空キャンプ1

北海道の本別町で7月6~8日、星空キャンプが行われた。
地域包括ケア研究所が主催する地域医療を実践的に学ぶ地域医療体験プログラムだ。
その様子を、写真を中心に紹介していこうと思う。

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諏訪中央病院院長補佐・山中克郎先生は、日本プライマリ・ケア連合学会から田坂賞を受賞した名医。
その山中先生が、医学生や看護学生たちに患者の診方をレクチャー。

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2018年7月17日 (火)

JCFにご支援を!

過日、JCFの理事会、総会が東京で開かれ、これまでの活動を報告した。
イラク支援では、外務省の日本NGO協力で約2800万円の補助をいただき、
プライマリヘルス診療所を難民キャンプにつくってきた。
クルド自治政府には建物を、イラク中央政府には薬や人材を、
そして、両者の接着剤として日本がかかわり、
三者が協力しあって難民キャンプで暮らす人たちへの診療行為を行っている。

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診療所で使われているエコーや放射線の機器などは、日本政府から補助を受け導入できた。
現地でとても感謝されている。
昨年度の決算は約6000万円。
どこのNPOも厳しいといわれているが、まあまあの状況で運営できている。
今年度は、今月、イラクに7人が支援に入る。
12月にはチェルノブイリにも支援に入る予定だ。
これからも支援を続けていくために、みなさんのご協力をお願いいたします。

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2018年7月16日 (月)

攻めの姿勢

まちだ丘の上病院は院長や新しく入ってくれたドクター、イギリスで研究している小森ドクターらを中心に、新しい態勢ができつつある。
当直医には、大学の先生が来てくれることになった。
さらに、東芝病院の副院長していたぼくの同級生が、週一回応援に入ってくれる。
入院患者は61人。
地域の専門家集団からも評価いいただき、紹介をいただけるようになってきた。
医師会にも入り、医師会の先生とも仲良くしながら、できるだけ地域とともに歩んでいこうと思っている。
7月25日の午後には、まちだ丘の上病院で鎌田實の地域包括ケアのつくり方の第三回講演会をおこなう予定。
いよいよ攻めの時期に入ってきた。

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このブログ「八ヶ岳山麓日記」のアクセス数が、1200万PVを超えました。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。

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2018年7月15日 (日)

お知らせ

『言葉で治療する』(朝日新聞出版)の増刷が決まりました。
2009年に出版してから9刷。

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いまも講演などで「愛読しています。サインしてください」とこの本を持ってきてくれる読者もいます。
繰り返し読んでいます、という人もいて、ありがたいことです。
ぜひ、お読みください。

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2018年7月14日 (土)

鎌田劇場へようこそ!(389)

「男と女、モントーク岬で」
カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した「ブリキの太鼓」で知られるドイツの名匠シュレンドルフ監督の作品。
主役は、ニーナ・ホス。
「東ベルリンから来た女」に出ていた魅力的な女優だ。
ベルリンの壁を越えていく女性医師の話。
林のなかを自転車に乗る光景の美しさは、今も忘れられない。

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有名小説家が昔、恋した女性と過ごしたモントーク岬。
ニーナ・ホス演じるレベッカと17年ぶりにドライブをする。
17年前に何があったのか、17年間どうしていたのか、次第にわかってくる。
レベッカは弁護士となり、小説家と別れた後、新しい恋人と一緒に生活した。
しかし、そのパートナーが突然、亡くなって、魂がパートナーのところへいってしまった。
17年ぶりに小説家と海岸を歩く彼女は、まるで「幽霊」のよう。
だが、再会したことで、それぞれスタートを切ることができる。
とても素敵な映画だ。

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2018年7月13日 (金)

材木屋さんの応援団

諏訪中央病院の庭は、多くのグリーンボランティアたちによって支えられている。
そのなかに材木屋さんがいる。
サンルームや堆肥小屋を建てたりするときの材木を持ってきてくれるのだ。

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彼は15年ほど前、諏訪中央病院にセカンドオピニオンを受けに来た。
地元の病院で手術をすすめられていたが、ぼくの意見を聞きたいという。
ぼくの見解は、手術はしないほうがいいというものだった。
結局、彼は手術をしないことを選んだ。
そして、今も元気である。

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そんなご縁があり、諏訪中央病院のグリーンボランティアを応援しようと、何かあるときには材木を届けてくれる。
そのうちに、この材木屋さんは特別な材木を扱っていることが知れ渡り、
原村など近隣の建築会社が注文してくれるようになったという。
商売の材木を運びがてら、諏訪中央病院のためにボランティアで木材を運んでくれるのだ。
こういう応援団がいてくれる、本当にありがたいことだ。

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2018年7月12日 (木)

カマラジオ #10

鎌田實「いのちを語る」第10回

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http://m.himalaya.fm/album/329156/sound/13788583/2/jp

激しいモダンジャズのサックス奏者、坂田明が奏でる、優しい音色。

4万枚を売り上げた、がんばらないレーベル 坂田明「ひまわり」誕生秘話など。

※がんばらないレーベルは、鎌田が代表を務めるJCFが、支援金を集めるために立ち上げたオリジナルのレーベルです。

ご購入はこちらから

 

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2018年7月11日 (水)

鎌田劇場へようこそ!(388)

「母という名の女」
ミシェル・フランコ監督。
メキシコの映画だ。
カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞作。
「母」という言葉には、いつも「海」のように大きな器を感じる。
その一方で、「母という病」や「母源病」という側面が語られるようになった。
母はいつも大きな愛をもつパーフェクトな存在だと考えがちだが、
「海」だって寛容な海と、人を拒絶する激しい嵐のときもある。
津波のようにすべてを破壊することもある。

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この映画は、人間の心のなかを暴いていく。
傑作ミステリーだ。
17歳の娘が出産する。
母親として娘を助けていくうちに、嫉妬や欲望が生まれてくる。
「母」が「女」に変身していくのだ。
フランコ監督は、「母」と「女」の両方をまだら状にもつ生身の人間を映し出していく。
別れた夫に「娘を助けて」といいに行くが、冷たくあしらわれる。
その夫と同じように、自分も冷たい母になっていく。
人間という生きものがいかに厄介なものかわかる映画だ。

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2018年7月10日 (火)

緩和ケア病棟の焼き肉会

諏訪中央病院の緩和ケア病棟で、焼き肉会があった。
患者さんやご家族のために、5階のベランダで焼き肉やトウモロコシを焼く。
すると、いい匂いに、若い医師たちも集まってきた。
この焼き肉会は、毎年やっているが、きっかけは若い末期がんの女性の「焼き肉が食べたい」という言葉だった。

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病院では、食べやすい食事、消化のいい食事を出すようにしてきたが、
たまには焼き肉を食べたい人がいるんだな、と気づかされた。
スタッフで話し合って、焼き肉を出すことにすると、
この患者さんのお母さんがすばらしい提案をしてくれた。
自分の娘のためだけでなく、緩和ケア病棟のみなさんと一緒に食べようということになったのだ。

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以来、年に一度の焼き肉会が、緩和ケア病棟の恒例の行事となった。
ホスピスボランティアの人たちも、寒天料理をつくってきてくれた。
楽しい焼き肉会である。

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2018年7月 9日 (月)

坂田明ジャズライブ

久しぶりに、坂田明のライブを聞きに行った。
小淵沢にある女神の森セントラルガーデンでの「梵人譚ライブ」だ。
メンバーは、ベースのジム・オルーク、キーボードのジョバンニ・ディ・ドメニコ、ドラムスの山本達久。
そして、サックスとボーカルは坂田明。
4人の即興の掛け合いが激しく、炸裂した。

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坂田さんはご存知の通り、かつて山下洋輔トリオにサックスで参加し、
その後、ヨーロッパツアーを経験したモダンジャズ界のトップランナー。
JCFでは坂田さんに、CDアルバム「ひまわり」と「おむすび」を作ってもらった。
「ひまわり」は映画音楽として名高いが、
ぼくとベラルーシのゴメり州立病院に行き、演奏したのが「ひまわり」だった。
その話をしながら、今回のライブも「ひまわり」の演奏で〆られた。
坂田さんは、東京薬科大学生命科学部客員教授や広島大学の客員教授もしている。
剛腕、坂田明、元気だ。
久しぶりに会えてうれしくなった。

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2018年7月 8日 (日)

鎌田劇場へようこそ!(387)

「告白小説、その結末」
鬼才ロマン・ポランスキー監督作品。
流行作家に名前のない脅迫状が送られてくる。
精神的に苦しいときに、謎に満ちた女性があらわれ、相談にのってくれたりする。
優秀なゴーストライターだという。
彼女は、マネジャーのようなことをしてくれ、作家に代わってメールの返事なども書き始める。

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小説と夢と嘘が入り乱れていく。
上質のサスペンス。
さすがポランスキーといえる映画だ。

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2018年7月 7日 (土)

住まい × 介護 × 医療展

 2018年7月10日(火)・11日(水)
 東京ビッグサイト 東3ホール
 介護・医療セミナー (鎌田實)

 2018年7月11日(水) 15:40 - 16:30

 楽しむことが大切 
 ~地域包括ケアに関わる全ての 方へのメッセージ~
 

 特別会場にて

 

入場・セミナー聴講共 無料
予約不要・先着順
主催:高齢者住宅新聞社

ぜひお聞きください。  

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2018年7月 6日 (金)

7/11 地域医療みらい塾

鎌田が登壇します。ぜひご参加ください。

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【7/25(水)】

まちだ丘の上病院講演会シリーズ~ 特別企画~
鎌田實先生 と丘の上特別講話&BBQ
日時: 7月25日(水)
    講話 15:00-16:00(14:30開場)
    BBQ 16:00-17:30
場所: まちだ丘の上病院(東京都町田市小野路町11-1)
主催 地域包括ケア研究所
参加費:講話は無料 BBQは500円(小学生以下無料)
主催 
お申込みお電話か FAX または E-Mailにて特別講話・BBQ 参加の旨をご連絡ください
TEL 042-735-3731
FAX 042-735-3732

【7/11(水)】

地域医療みらい塾 ベーシックコース第1回 
先人に学ぶⅠ「地域包括ケア実践ケース」

日時: 7月11日(水) 19:00~21:00
場所: AP東京 丸の内 BC会議室
    (東京都千代田区丸の内1丁目1-3
    日本生命丸の内ガーデンタワー3階)
主催 地域包括ケア研究所
参加費:2,000円
お申込み:https://goo.gl/forms/UpLTNywp6bSlYF3J3
 
<地域医療みらい塾とは>
 
『地域医療みらい塾』とは、これからの地域を共に創っていく”地域医療人”が集まり、ともに学び合っていく場です。
 
 私たちが考える”地域医療人”とは、臨床の現場だけではなく、地域にとってどのような医療・福祉・介護などのヘルスケアインフラが必要になのかを考え、地域を創り上げていく活動に参加していくことができるような人材です。
 
 臨床の専門家であったとしても、地域に住む人々の診療をするために、とても重要な視点です。「病」だけでなく、その背景にある人をケアするという視点を持った専門家です。
 
『地域医療みらい塾』では、諏訪中央病院で地域包括ケアの先駆けを作ってきた鎌田實所長だけでなく、様々な地域での地域医療・福祉等に関わってきた、優秀な講師陣を呼んだ学びの場のみならず、参加者がともに参加して研鑽していけるような対話型・参加型の塾です。

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2018年7月 5日 (木)

亡き子の誕生日

岩手県大槌町にある風の電話。
その風の電話のある庭をつくった佐々木さんは、一人でなんでもつくってしまう。
石をコツコツと積んだ森の図書館、暖炉。
コンテナを改造してつくったというカフェがまた居心地がいい。
なんでも自分でつくるという点で、ぼくの友人カナディアンファームのハセヤンに似ている。

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佐々木さん夫妻が、ぼくの70回目の誕生日を知って、サンドイッチを用意してくれた。
陸前高田の看護師さんがケーキを用意してくれていて、南三陸の看護師さんと男性のケアマネジャーらと一緒に祝ってくれた。
佐々木さんから、震災の3か月前に病気で息子さんを亡くした女性の話を聞いた。
その女性は、「生きていれば、明日で5歳になります。風の電話でお誕生日おめでとうが言えました。息子に届いたと思います。素敵な場所をありがとうございました」と言ったという。
ぼくも、心の中でその子の誕生日を祝いたいと思う。

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庭のベンチに座ってみた。
震災前は岩手の美しい海が見えたという。
巨大な堤防が作られ、さらに道路を利用した二重の堤防ができ、視界から海が消えた。
東北の被災地を歩いていると海が見えないところが増えている。
せめて海が見える場所をいくつもつくって、海の近くにいることを子どもたちに実感させてあげたいな。
そんなことを、見えない海に思った。

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2018年7月 4日 (水)

風の電話

釜石製鉄所で働いてきたという佐々木さんは、54歳で早期退職した。
彼の言葉でいうと「自分の田舎づくりをするため」だという。
鯨山の中腹を1000坪買った。
隣の山の持ち主が地続きの土地を買ってほしいということで、その土地も買い足した。
そこに森のコンサートやツリーハウスを作った。
庭造りのために鍛冶屋をやったり、花を活けるための器を作ったりもしている。
美しい庭になっている広い土地も、一人で開墾してきた。

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そのなかに、電話線のつながっていない「風の電話」がある。
3万人近くの人がこの風の電話を訪ねている。
ぼくも、電話ボックスに入ってみた。
昔のダイヤル式の黒い受話器をとると、過去の自分とつながったような気がした。
「今のぼくの生き方で、お前は納得しているの?」
返事はなかった。
電話ボックスの大きさが心地いい。
そこに置かれているノートには、震災で突然、大切な人を亡くし心の整理がつかないという人の思いが書かれていた。
でも、ここへ来て受話器をとって、うれしかった、という言葉も綴られていた。
死んだ人と今もつながっているという思いが大事なんだろう。
(続きます)

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2018年7月 3日 (火)

小高のラーメン

南相馬市の小高駅前の商店街。
いちばんの売り物は双葉食堂のラーメンだ。
ここはいつもお客さんが並んでいる。
今回、ぼくが行った昼時も、10人くらいが店内のテーブルで目当てのラーメンを待っていた。
無駄なものをすべてそぎ落とし、おいしい塊にしたような昔ながらの味は、ファンが多い。

Img_9951 双葉食堂のラーメン

震災直後からぼくと一緒に被災地をまわったり、一緒にチェルノブイリに行ったテレビマンも、
この味に魅せられて、月に一回この店に通い、手伝いながら修行を始めている。
通りを歩いていると、加藤さんが走り寄ってきて、ハグをした。
加藤バーバーの加藤さんだ。

Img_9941 理髪店を営む加藤さんと

震災後、早い段階で店を開け、一日1人か2人のお客でも頑張り続けていた。
今は息子さんも帰ってきて、店も元気になってきたという。
以前は、ぼくもここに来たとき、髪を切ってもらったことが何度かあるが、
今回はお客さんが待っているようだったので遠慮した。
大阪から移住してきた若者がコーヒー店を始めていた。
そして、昨日紹介した柳美里さんのフルハウス。
小高区も、少しずつ賑わいを増してきている。

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2018年7月 2日 (月)

10代に戻ったら読みたい20冊

南相馬市小高区に、芥川賞作家・柳美里さんの本屋「フルハウス」がオープンした。
とてもすてきな本屋さんだ。
ここの特徴は、なんといっても棚のつくり方。
鎌田實の「もし自分が10代に戻ったら読みたい20冊」というコーナーがあり、
おすすめ本の理由が冊子にまとめられている。
ぼくがおすすめする本を一冊、鎌田の本を一冊、買って、
冊子ももっていく人もいるとか。
一つの読書案内になるといいなと思う。

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詩人の和合亮一さんの「思わず詩が書きたくなる20冊」というコーナーには、
ぼくと同じように「田村隆一詩集」があるのを見てうれしくなった。
アレン・ギンズバーグの詩集もあり、ぼくもギンズバーグの「吠える」という詩集が大好きだ。
こんなふうに、24人の作家たちのおすすめの20冊があり、とても興味深い。
自分との共通点をみつけたり、まったく知らなかった世界を案内してくれたりする。

Img_9956 フルハウス店主の作家・柳美里さんと

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先日は、ここで鎌田の本の朗読会と、柳美里さんとのクロストークの会があった。
フルハウスの裏には元ポンプ屋さんの小屋があり、そこでコンサートや芝居、講演会ができるようになっている。
欧米では、作家が自作の朗読会をすることが多いが、柳美里さんはそんな文化をこの南相馬で広めようとしている。
本屋の可能性は大きい。

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2018年7月 1日 (日)

シリア難民のリーム来日

イラクの難民キャンプで准看護士として働いているリームが子どもを連れて来日している。
彼女は、18歳のときシリアのダマスカスの看護学校に通っていたが、
治安が悪化し、イラクのクルド地区に逃れてきた。

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Img_1253 難民キャンプでの生活や妊産婦支援の状況などについて語るJIM-NET現地スタッフのリーム・アッバス(左)

彼女はクルド人。
クルドは、国家を持たない最大の民族といわれている。
難民キャンプで暮らしながら、妊産婦支援をしていたJIM-NETと出会い、
現地スタッフとなって。
今は、妊産婦支援やシリア難民の小児がんの支援などを行っている。

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シリアはISがいなくなっても、緊張状態は続いている。
帰っても職がなく、学校に戻ることもできない。
7月中旬、「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜午前10時~)のゲストに出演予定。
ぜひ、リームの声を聞いてください。

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