亡き子の誕生日
岩手県大槌町にある風の電話。
その風の電話のある庭をつくった佐々木さんは、一人でなんでもつくってしまう。
石をコツコツと積んだ森の図書館、暖炉。
コンテナを改造してつくったというカフェがまた居心地がいい。
なんでも自分でつくるという点で、ぼくの友人カナディアンファームのハセヤンに似ている。
佐々木さん夫妻が、ぼくの70回目の誕生日を知って、サンドイッチを用意してくれた。
陸前高田の看護師さんがケーキを用意してくれていて、南三陸の看護師さんと男性のケアマネジャーらと一緒に祝ってくれた。
佐々木さんから、震災の3か月前に病気で息子さんを亡くした女性の話を聞いた。
その女性は、「生きていれば、明日で5歳になります。風の電話でお誕生日おめでとうが言えました。息子に届いたと思います。素敵な場所をありがとうございました」と言ったという。
ぼくも、心の中でその子の誕生日を祝いたいと思う。
庭のベンチに座ってみた。
震災前は岩手の美しい海が見えたという。
巨大な堤防が作られ、さらに道路を利用した二重の堤防ができ、視界から海が消えた。
東北の被災地を歩いていると海が見えないところが増えている。
せめて海が見える場所をいくつもつくって、海の近くにいることを子どもたちに実感させてあげたいな。
そんなことを、見えない海に思った。
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